Re:ゼロから始まる弾かれた王様の異世界生活   作:アーロニーロ

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 前回の倍近く書けました。今回も読んでくださった方、ありがとうございます。


ハートキャッチ♡魔女キュア☆

 光が満ちる。

 

 そこに広がっていたのは、黄金色の世界だった。

 

 夕映は燃え立つような朱さを持ち、その黄金色の世界の中心にある木がある。そんな世界の真ん中にある木の影に一つの光景が広がっていた。

 

『疲れているようだけど、大丈夫?』

 

『心配ない』

 

 そこには赤っぽい茶色い髪の色をしたひとりの青年と金色の髪の色をした美しい少女がそこにはいた。互いに慈しみ合うその光景は互いに想いあっていることが伺える。

 

『俺は神から授かったこの力で1人でも多くの人を救いたい』

 

 そんな中で青年は夢を語る。万人が望んでやまず夢物語で終わるはずの願いを心の底から願うように語る。しかし、その言葉を聞いた少女は嗤わずに微笑みながら答えた。

 

『神は見てくださってるわ■■■■。だから、信じてその道を進んで。大丈夫、貴方には私が付いている』

 

 心の底から祝福するように熱を帯びた声は1人の青年の願いを肯定する。青年はその言葉に心の底から嬉しそうに笑った。そんな青年を見ながら一人の少女は立ち上がり告げる。

 

『取り敢えず。その願いを叶えるにあたって必要なのは二つ。まず休息』

 

『?あと一つは』

 

『私よ』

 

 自慢げにそう告げる彼女を見た青年はくつくつと笑う。

 

『愛してるぜ、■■■。ずっと一緒にいてくれ』

 

 万感の願いを青年がそう告げると今度は少女が笑い返した。立ち上がった少女は先に走り出す。まるで幸せそうに跳ねるように。

 

 その様子を見た青年もその場から立ち上がり歩き出そうとする。すると、足が一歩も動かないことに気づいた。突然の緊急事態に少女を呼び止めようとする。

 

 が、声が出なかった。まるで、喉がつぶれたかのように掠れた音が口から出てくるだけだった。

 

 再度、彼女の方を見ると彼女の行先には闇が広がっていた。何も見えない。何も感じない。何も、意味がなく意味を成さない闇が。それが彼女を蝕む。体の端から順番に。動かない体を必死に動かさすとする、出ない声を必死に出そうとする。しかし、全てが無駄と言わんばかりに意味を成さない。血走った目が振り返る彼女を捉える。

 

 彼女の目は底のないウロのような、後ろに広がる闇に似た『虚無』が広がっていた。

 

 

 意識が浮上する。布団をはね飛ばし、上体を引き起こす。胸が高鳴り、額に流れる汗と急速に巡る血液が不快感を増長させる。久々に最低な夢を見せつけられたアーデンは腹立たしく思いながら舌打ちをしてベッドから降りようとする。すると、

 

「あれ?アーデンさんじゃあないっすか!こんなとこにいたんすか?」

 

 間の抜けた声がアーデンの鼓膜に響く。嫌な夢を見た方なため不機嫌になりながら声のした方を見る。ナツキ・スバルがそこにはいた。不機嫌そうなアーデンを見て朝に弱いと勘違いしたのか若干後ろに下がる。

 

「大丈夫だスバル。目が覚めたよ」

 

 それを見たアーデンは流石に自身の見た夢を理由に他人に当たり散らすのもどうかと思うとベッドから降りて笑いながらスバルを呼び止めた。ホッとした表情になったスバルはアーデンに駆け寄ると話しかける。

 

「いやぁ、いい朝っすね。アーデンさん」

 

「ああ、そうだな。後、悪ぃな。寝たの遅かったとはいえ、当たり散らして」

 

「いやいや、いいっすよアーデンさん。ていうか朝弱いんすね?」

 

「まあな。お前は?」

 

「俺は寝起きの悪い目覚めとは縁の遠いものなんで大丈夫っす」

 

 他愛のない話をしながらアーデンの部屋を出る2人。スバルの提案で探検すべく廊下にも飾られている調度品を眺めながら歩を進めていく。

 

「つーか、ここ、ラインハルトの家か、エミリアたんの家かわかんねぇな。もしかしてアーデンさんわかります?」

 

「ん?エミリアん家だぞ?ここに来るまで俺は意識あったからな。道中で色々とエミリアと話し合った上でここに泊めてもらうことになったからな」

 

「なにそれ羨ましいっ!ええい!アーデンさん!その記憶貰い受ける!」

 

「おうおう、やってみろ。返り討ちにしてやるよ」

 

 互いに冗談を言い合いながら歩き続ける。久々の打算のない会話に少しだけアーデン自身の警戒が薄まっていくとスバルはある事実に気がつく。

 

「あのー、何か廊下長くないっすか?」

 

「あ?」

 

「いや、この屋敷ってこんな広いのかなぁ〜って思ったり」

 

 そう言われてみれば確かにそうだ。アーデン自身は外側からロズワール邸を見ている。そうな上でどれほどの広さかわかっている。だからこそスバルの言う通り同じ光景が何度も続き、そしていつまでも変わらない景色に外側からは幻覚で小さく見えるようにしてあるのかと考えていると、廊下にも飾られている調度品(・・・・・・・・・・・・・)が見受けられた。それを見た瞬間、アーデンはあることに気がつく。

 

「繰り返してんなぁ」

 

「へ?」

 

「スバル。あれを見てみろ」

 

「えーっと、なんつーか高そうな壺っすね」

 

「OK覚えたな。んじゃあ、マナーがなってないが走るぞ」

 

「へ?」

 

 スバルの口から呆気に取られたような声が漏れた。それも当然だ。だっていきなりアーデンにお米様抱っこされたからだ。そして、

 

「あの〜、アーデンさん?」

 

 何するんで?とは言えなかった。理由はアーデンが加速したからだ。スバルの視界から見えるありとあらゆるものが後ろへと抜けていくような錯覚に陥る。早すぎて遅く感じるような感覚に陥るとアーデンは緩やかに加速を止めてそれと同時にスバルの視界も元に戻る。

 

「わかるか?」

 

 いきなりの出来事に脳の処理が追いつかないままアーデンにそう言われるとスバルもあることに気がついた。

 

「あれ?この絵って最初に出発した部屋の前で見なかったか……?」

 

「わかったな」

 

 そう言うとアーデンはが、スバルのことをそっと降ろす。が、

 

「ふんだばら!」

 

「……おい、大丈夫か?」

 

 いきなりのことで平衡感覚を失っていたのかバランスを崩して倒れ込んだ。アーデンも流石にやりすぎなかと思い頰をかきながら手を差し出す。手を取ったスバルは立ち上がる。

 

「つまりアーデンさんが今やったのはいくら走ってもループしてることを証明したかったんすね。この屋敷が円形でもない限り」

 

「いや、全体像は昨日見たけどコの字よりのくの字みたいな形状だったよ」

 

「んじゃあ、ループしてる可能性が濃厚ってわけだ」

 

 そう言いながらスバルは近くにあった扉を開く。そこは誰かがいた形跡があったがスバルの部屋らしく、アーデンも試しに開いてみたがスバル同様、自身の部屋に行き着いた。

 

 このような手段を取る考えは二つほど存在するとアーデンは考えた。

 一つ目、目も覚めたスバルやアーデンが勝手な行動をとらないように、こうして行き先に制限をかけたということ。

 二つ目、手間やら魔力やらの無駄遣い全開な気がするが、力の差を見せつけて抵抗する気力を奪う目論見。

 

 この二つだがアーデンからしたらあまりいい手段とは言えないと思えた。理由はまず一つ目の方だが、仮にも恩人である2人に監視はともかくとしてこのような制限をかけるのはあまりにも礼儀知らずと思えたからだ。もし、ロズワールの伝達ミスだったとしても咎められるのは仕掛けた側だというのは子供でも思いつく。二つ目だが、先程上げた通り完全に手間や魔力の無駄。こんな高等技術をそんな子供じみた理由で使われたとしたらアーデンとしてはため息も出せず呆れるところだ。

 

 それはさて置き、閉じ込められてる現状だが。最悪ここら一帯をファイガかシガイで消し飛ばすことで脱出は可能だ。その際、エミリアや双子メイドに迷惑をかけるだろうが軟禁状態にされたのだから文句を言われる筋合いはない。

 

 アーデンは歩きながら多少物騒なことを考えていると先を走っていたスバルが固まっていたことに気づく。何事かと思い駆け寄り扉の向こうに目を向ける。すると、そこには

 

「……なんて、心の底から腹の立つ奴らなのかしら」

 

 見覚えのない書庫の中、こちらを見つめる巻き毛の少女の恨み節を吐いていた。確かに今時見ないようなドリルヘアー、しかも幼女とインパクトのある光景だったがアーデンとしては後ろの光景に興味がまさった。

 

 そこはまさしく、『書庫』と呼ぶしかない部屋だった。

 広いスペースは自身の部屋の倍ほどもあり、壁際を始めとして至るところに書棚が設置されている。どの書棚にも本がみっちりと詰められていて、蔵書数はどれほどになるのか想像するのも難しい。

 

「広いなぁ、こんだけ本があれば一冊ぐらい俺の読める本が……ってのは高望みか?」

 

 スバルが辺りを物色するように見渡す。不用心さに流石にため息を吐きそうになったが、考えてみれば魔法やらとは無縁な世界だったことを思い出して堪える。いつでも対処できるように身構えながら「失礼しまーす」と一言告げるとアーデンも侵入する。実際、アーデンとしてもこの世界の文字を知らない。この世界で生きていくのなら、その習得は必須であるのだ。故に多少無茶してでも探る必要があった。すると、

 

「他人の書架をずけずけ眺めて、おまけにため息。……ひょっとしてケンカ売ってるのかしら? だったら買うのよ?」

 

「初対面の相手と準備なしに話せるほどコミュ能力なくてさぁ。ちょっぴり助走入れるくらい許してくれよ、メンゴ」

 

「いやぁ、ごめんね〜。あんまりにも珍しいもんだからさぁ。つい、ね?」

 

「お前はまだマシかしら。ここの価値をしっかりと理解している。その上不用心に入るのではなくそれ相応に身構えて入る点も評価できるのよ。そこの礼儀知らずとは余程立派かしら」

 

「おい待てこら」

 

 ゴスロリ幼女のセリフに青筋立てたスバルを無視しながらゴスロリ幼女はアーデンをやたらと高評価してくる。アーデンは疑問に覚えながら幼女を気づかれないように注意し、礼を言いながら観察する。そして、疑問はさらに深まった。幼女の目にはどういう訳か期待が宿っていた。まるでロズワールのように長年待ち続けたかのような期待が。これ以上探れば流石にバレると判断したアーデンは微笑みかけながら問いかける。

 

「いやぁにしても凄いところだなぁ。なんて言うのここ?」

 

「『禁書庫』かしら。文字通り、本を保管するところなのよ。ベティーはその番人」

 

「へぇー、本は良いよねぇ。字体から時代とか色んなことを学べるし原本?ここにあるの」

 

「そうかしら」

 

「へぇー」

 

 それを聞いたアーデンは素直に感心した。時代の流れで文献などが紛失する事態は少なくはない。そして文章は様々なことを語る。それを守るこの幼女は。

 

「相当信頼されてるんだねぇ、君」

 

「————当たり前かしら。ベティーほど優れた個体はそうはいないかしら」

 

 少し貯めを作った後、フフンとでも言いたげに胸を張りドヤ顔をする幼女。それを見たスバルはここぞとばかりに揶揄う。

 

「つんつんしてた可愛い顔が一気に素敵に!ほーら、もっともっとスマイルスマーイル」

 

「ベティーが可愛いのなんて当たり前なのよ。それよりも、こいつは兎も角としてお前をどうするかの方が問題なのかしら」

 

 

「可愛いは否定しないのかよ……。それならさ! もっと笑顔でいようぜ! ほら良く言うじゃねーか、ロリの笑顔に勝るものなしってな!」

 

「そろそろベティーも限界なのよ。ちょっと思い知らせてやった方がいいような気がするかしら」

 

 明らかにスバルが今作ったであろう言葉をベティーと名乗る幼女にかける。それを聞いた幼女は目頭を抑えた後に苛立たし気に立ち上がる。それを見たスバルは煽ってるのかと問いたくなるような戯けた態度を取る。そして、

 

「――動くんじゃないのよ」

 

 ゾッと、背筋を寒気が走るような感覚がスバルを襲った。それまで書庫の中を支配していた古い紙の臭いが消し飛ぶ。正直なところアーデンとしてはこうなることは読めていた。実際、スバルのような人間が土足で自室に上がり込み挙げ句の果てにあそこまで煽られたら流石に良くてキレる。悪ければ身分次第で証拠を残さずに消すぐらいはしていただろう。

 

「何か言いたいことでも?」

 

 少女は首を傾けて、目を見開き、唇を震わせるスバルに問いかける。まあ、いい機会だろう目一杯叱られるといいと思い眺める。

 

「い、痛くしないでね」

 

「軽口もここまで徹底してると感心するのよ。――痛いかどうか、それはお前次第じゃないかしら」

 

 本気で感心したような口調で言って、少女の手がスバルの胸に伸びる。掌がスバルの胸に合わされ、表面を優しく慎ましやかに撫でた。瞬間、呻き声をあげながらスバルは倒れた。

 

「は?」

 

「気絶しなかったみたいなのね。聞いてた通り、頑丈なのよ」

 

「な、何しやがった、ドリルロリ……」

 

「ちょっと体の中のマナに聞いただけなのよ。――凡庸なのに、変な魂の形をしているかしら。ゲートも閉じっ放しみたいだし」

 

 矛盾した内容を呟き、少女は崩れ落ちたスバルの前で膝を折る。彼女は必死に上体を支えているスバルを指でつんつんしながら、

 

「まあ、敵意がないみたいなのは確かめられたのよ。それに、これまでベティーに働いた散々の無礼も、今のマナ徴収で許したげるかしら」

 

 突かれて限界に達し、震える腕で支え切れずにスバルの上半身が床に落ちる。マナ、つまりは体内の魔力を奪ったというのだろか?そんな分析をしながら流石に致死量奪われたわけではないことは今のスバルを見てわかるがそれなりに奪われたことを察するアーデン。

 

「くそ……お前……人間じゃ……ねぇな……」

 

「気高く貴き存在を、お前の尺度で測るんじゃないのよ、ニンゲン」

 

 謎の遺言のような言葉を残してスバルは今度こそ意識を落とした。やりすぎか?と言われたのなら少しやりすぎと言うべきなのだろう。だが、アーデンからすればスバルの面倒な『死に戻り』が発生しなかっただけまあ、いいか、程度にしか思えなかった。そんなことを思いながらアーデンはスバルを担ぎその場から去ろうとする。すると、目の前の幼女が一向に立ち上がらないことに気がつく。不思議に思ったアーデンが近づくとベティーと名乗った幼女の顔が真っ青であることに気づいた。

 

「おい!大丈夫、じゃねぇな!どうした!」

 

「問題ない、かしらっ。放っておくといい、のよ」

 

「言ってる場合か!」

 

 目の前の幼女はループする廊下などを実演できることを考慮するとおそらく空間を司る魔法を使用しているのだと推測できる。そんな彼女が体調を崩して魔法の術式が崩れでもしたら何が起こるかわからない。最悪アーデンを除いて全員死亡とか有り得ない話じゃない。そう思ったアーデンは焦りながら幼女の体調を調べる。

 

 すると、信じられない事実に気がつく。なんと彼女はシガイに蝕まれていた。一瞬、頭の中にこの世界にもシガイがあるという可能性が浮かぶがすぐに否定する。理由はこの世界に国土病は存在してもシガイのような効力を持った病気は存在しないらしい。らしい、というのはあくまでもエミリア情報であったからだ。思考を巡らせているとアーデンはある事実に気がつく。

 

「ベティー、だったか?お前まさかこの屋敷の連中の魔力を徴収してねぇか?」

 

「だったら、なんなの、よ」

 

 息絶え絶えになり明らかに先程よりも状況が悪化している幼女を見てアーデンは頭を抱える。アーデンには魔力はおろか血液も臓物も骨も脳みそも存在しない。厳密には存在はしてるのだが形取ってるだけでそれら全ての機関などは代わりにシガイが働いているのだ。故にアーデンが他人に輸血しようものならば瞬時に他人もシガイ化してしまうのだ。今のベティーと名乗る幼女はその状況と同じだったのだ。この態度を見るにそこまでの量は吸っていないとわかるや否やアーデンは彼女の服を捲ると腹に手を当ててーーー一瞬、躊躇ったがーーー体内に巡るシガイを奪う。

 

 すると、先程よりは彼女の顔色が良くなった。立ち上がる程度には元気が出たのか手を振り解き立ち上がる。そして、少しバツが悪そうに礼を言う。

 

「……感謝するかしら」

 

「いいよ別に。でも、今度から俺の魔力は奪うなよ。当然、腹が立って過剰に奪うのも無しな」

 

「わかってるのよ……。そんなことよりそこまでその男が重要かしら」

 

「当たり前だろ?仮にも同郷だからな」

 

 そう言いながらスバルを担ぎ上げる。そして、ふとあることを思いつく。

 

「そうだ。ベティー、だったか?」

 

「ベアトリス、なのよ」

 

「んじゃあ、ベアトリス。俺はお前に恩を売った。違うか?」

 

「……腹立たしいことに正しいかしら。はあ、いいのよ。一つだけ願いを叶えてやるかしら」

 

「OK。んじゃあ質問。時間の」

 

 逆行って知ってるか?と問おうとした。だけど出来なかった。言葉にしようと、声を作ろうと、そう思った瞬間、それは訪れた。

 

 動きが魔力の流れが時がシガイの流れを除いて全てが止まった。アーデンはこれを知っていた。数度味わったことのあるものだったから。だからこそ混乱した。だって、あり得ないのだから。スバルを担いだその瞬間まで確かにスバルは生きていたのだから。そんなことを考えていると黒い靄が現れる。靄は腕の形状を取っていた。五指を備え、肘の先ほどまでの長さしかない浮遊する黒い腕。ソレは確かめるように指先を震わせると、明確な意思を伴ってアーデンの方へ迫る。そして、いとも容易くアーデンの心臓を握り潰した(・・・・・・・・・・・・・)

 

 それと同時に全てが動き出す。そして血が口に向かって競り上がる。痛みよりも気持ち悪さが勝り、吐き気を催したが競り上がった血を全て飲み干す。突然黙ったアーデンに疑問を覚えるベアトリスを見て笑って誤魔化す。

 

「いやぁ、ごめんね。禁書庫を使う時間とベアトリス先生の講座をお願いできる時間が欲しいなぁなんて」

 

「……まあ、いいかしら。何を言いたかったのかはあえて追求しないでやるのよ」

 

「ありがとね」

 

 アーデンはそう言うと心臓が再生したことを確認したのち気怠げな体を引きずって禁書庫を出た。その際、双子メイドに出くわしてその内の青髪のメイドにさらに鋭い目と寒気のするような殺気を向けられて憂鬱になったとのこと。

 

 

「あれがアーデン・イズニア。いや、アーデン・ルシス・チェラム」

 

 1人になった禁書庫でベアトリスは人名を口ずさむ。知りあるはずのない名前を。そして、背後にある安楽椅子に立てかけてある本を取り出す。それは無地の表紙。厚手の造り。辞典ほどの大きさで、持ち運ぶのにやや難儀しそうな重量感の黒塗りの本であった。本のほとんどは白紙が続く。

その一つにまるで新しく書かれたかのような文字(・・・・・・・・・・・・・・・・・)がポツンと存在していた。





アーデンに課されるペナルティ……心臓を握り潰される。なお、スバルがうっかり漏らした場合もそうなる模様。
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