Re:ゼロから始まる弾かれた王様の異世界生活   作:アーロニーロ

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夏休みが始まればこのペースで投稿していきたいです。


意味がわらないよ……

 

 

 人は一定以上の理解を超えたことが起こると思考が停止するらしいが、彼の現状は今まさにその状況に陥っていると言ってもおかしくないであろう。目の前を、巨大なトカゲ風の生き物に引かれた馬車的な乗り物が横切っていくことでようやく本人は思考が再開した。

 

「おいおい、何の冗談だよこれは」

 

 目の前に広がる光景を到底信じることができない。死にそびれて知らないところに無意識に『シフト』したのでは?と考えたがそれは断じてあり得なかった。死んだ。確実にそう断言できるほどの喪失感を味わった、なのに。

 

「何で俺の意識がある」

 

 燦々と照らす日の下には数え切れないほどの様々な「見たことのない」種族が、各々の目的の為に行動している。

 

 全身を毛で覆われた猫の顔をした女性が、人間の女性と普通に会話をしている。

 フル甲冑の騎士が道の端であくびをしている。

 人間の子供と、垂れた犬耳を持つ亜人が追いかけっこをしている。

 四足歩行の大きなトカゲが引く幌つき馬車が大量に、そしてひっきりなしに往来している。この光景を幻覚だ、と判断するにはあまりにも現実的がすぎた。

 

「どうなってんだよ……クソッ」

 

 目の前の出来事に理解が及ばないが現状を把握するために自身の身だしなみを確認する。赤いスカーフ擬き、よし。戦闘の影響を受けたせいか少しボロく黒い上着、よし。頭にかぶった真っ黒な帽子、よし。身につけた装飾品を全て確認した後、全身に軽く魔力を流して、『剣』の使用有無の確認、よし。体内に蠢く悍ましいものも確認できたことから自身がほぼ万全の状態であることを確認した。

 

(……体は問題なく動く。『剣』も使えるな。持ち物とかはあの時のまま変わらずか)

 

 だとしたら解せない。あれだけの戦闘の後に万全な状態に戻るにはそこそこの時間がかかるはず。そしてそれ以上に、

 

(……しかし、ここは一体どこなんだか。文化レベルは明らかに劣ってはいるが活気なところだ。だが、こんな場所はルシス王国の地域はおろかニフルハイム帝国の地域でも見なかった。何十年も様々な地域を見たこの俺が、だ。『人を食うのが文化です』的な未開の蛮族の住む国ならまだしもそんな様子も見られねぇ。何よりこんだけ人口が多ければ嫌でも話題になる)

 

 ここまでの情報をまとめて今までの経験を総合して考えた結果とある結論へと至った。

 

「また、なのか?」

 

 至って、しまった。

 

「また俺は『異世界転生』してしまったのか?」

 

 その事実に項垂れそうになるのを必死に堪えながら、再度現実を確認する。凹むのは我ながら無理のないことだと思う。だって、あんだけ転生は二度としたくねぇとか言った側からまた転生だぜ?いや、身だしなみとか年齢はそのままっぽいから具体的には『異世界転移』だけども。前世、いや前前世の知識はとっくの昔に廃れた以上、話の流れは確実に不明。というか、あったのならこの世界がどういう世界なのかすぐに理解できるだろうし。

 

 理解したくもない現実に嫌気がさして少しため息を漏らすと。誰かとぶつかった。

 

「ああ、すまねぇな、おっちゃん」

 

「ああ、いやいやこちらこそ」

 

 ぶつかった少年の見た目はこれといった特徴のない少年だ。短い黒髪に、高くも低くもない平均的な身長。体格は鍛えているのかやや筋肉質で、三白眼の鋭い目だけが印象的だが、今はその目尻も力なく落ちていて覇気がなく、群衆に紛れれば一瞬で見失いそうなほど凡庸な見た目だった。

 

「悪りぃ、大丈夫か?」

 

「ただぶつかっただけなんだから、問題ねぇよ、さあ、行った行った」

 

 手でしっしっと追い払う動作を行うと少しムッとした顔をしながら少年は去っていった。それにしても、

 

「ジャージに黒髪、ね」

 

 周りを見渡すと彼を見る人々の視線には『珍奇』なものでも見るような不可解な色が濃い。

 

 当然といえば当然の話――なにせ少年を眺める彼らの中には、ひとりとして『黒髪』のものも『ジャージ姿』のものもいない。

 彼らの頭髪は金髪や白髪、茶髪を始めとして緑髪から青髪まで様々で、さらに格好は鎧やら踊子風の衣装やら黒一色のローブやら『それ』らしすぎる。ということは、恐らくというかほぼ間違いなく俺と同じ転移者なのだろう。まあ、だけども。

 

「助ける理由にはならんわな」

 

 そう言うと俺は帽子を整えて。歩き始めた。

 

 

 一通り歩いてみてわかったことだが、ここは俺の予想通り異世界の可能性が高いことが判明した。理由としてまず貨幣であるギルが使えず、どうやらこちらでは価値の高いものから順に聖金貨、金貨、銀貨、銅貨の順番で種類分けされており、試しにリンゴに似たリンガとやらを買うためにギルを出しても普通に拒否された。

 

「さぁてと、どうしたもんかねぇ」

 

 一文無しというある意味で次の日生きることができるか怪しい状況に追いやられたことに気付かされた俺は少し現実逃避をしてしまう。

 

「ねぇ、君たちはどうしたらいいと思う?」

 

「へへ、どうしたら良いかって?金目のものを出してのたれ死んでくれよ。オッサン」

 

「俺たちはただでさえ機嫌が悪りぃんだ素直に聞いた方が身の為だぜ」

 

「それとも状況がわかってねぇんじゃねぇの?だったら、あのガキみたいに教えてやればいいんじゃないか?」

 

 男たちの侮蔑と嘲弄まじりの視線、それを受けながら俺もまた彼らを値踏みしていた。

 見た目はおそらく二十代半ばくらい。薄汚い身なりと、内面のいやしさがそのまま顔に表れたような雰囲気。ケモ耳生やしていないあたり亜人ではないようだが、善人でもありえない。

 

「やれやれ、この年でカツアゲとはねぇ」

 

 明らかに物盗り――しかも、手に持っている光物を見るに物だけじゃなく命まで盗られる可能性がある。それはさて置き。

 

「にしてもまあ、どこがとは言わないけど狙いすましたかのように大、中、小、だなぁ。君たちは」

 

「「「大中小で何が悪いってんだ!!」」」

 

「ワァオ!息ピッタリ!実は君達デキてたりする?」

 

「「「デキてねぇよ!つーか、金目のモン寄越せっつてんだろうが!!」」」

 

「金目の物を期待して俺に絡んできたんだったらぶっちゃけ無駄だよん。なにせ俺ちゃん一文無し」

 

「なら珍しい着物でも履物でもなんでもいーんだよ。路地裏で大ネズミの餌になれやぁ!!」

 

 大きい奴が走り出したことを皮切りに他の二人も怒りに身を任せ激昂しながら突貫して来る。その数秒後、路地裏で悲鳴がこだました。

 

 

「じゃあ、ここってルグニカ王国って言うんだ」

 

「はい!その通りですぅ!」

 

 勝負は一瞬だった、初めに突貫して来た大の男に向けて相手の勢いを利用しながら烏兎・人中・下昆の急所3カ所に、拳を叩き込みノックダウン、その様子を見て中と小の二人が少しだけ固まった為、瞬きの間に中くらいの男に向けて距離を詰めた後、背後に周り足払いをかけて体制を崩した後にチョークスリーパーを決めて締め落とした。そして、小さめの男の首を掴み壁に叩きつけて今に至る。

 

「共通語はイ文字、ロ文字、ハ文字ねぇ……。文字まで違うとなるといよいよもって厄介だなぁ……君もそう思うだろう?」

 

「はいぃぃ!その通りですぅぅ!」

 

「そんな怯えないでよ、傷つくじゃないか。安心しなよ、これ以上傷つけないからさ」

 

「こ、これで勘弁してください!」

 

「え!お金もらっちゃっていいの?そこの転がってる連中と違って気がきくなぁ君は。ま、君たちは喧嘩の才能ないんだから次からは真っ当に生きなよ」

 

「け、喧嘩の才能って?」

 

「それを聞いてる段階で才能ないってこと」

 

 喧嘩の才能とはわかりやすく言えば目の前にいる相手の戦力を瞬時に見抜く才能のことを指す。それは時に喧嘩の強さ以上に必要となる、不良にとって大事な才能だ。

 故に俺と自身との差を理解できなかった彼らに、不良の才能はなかっと言える。

 

「じゃあな、坊主」

 

「あ、あの」

 

「あ?」

 

「名前、なんて言うんですか?」

 

 それを聞いて一瞬悩んだが。仮に報復されても次は殺せば良いか、と思い名前を口にした。

 

「アーデン」

 

「え?」

 

「アーデン・イズニアって言うの。よろしくね」

 

 

 あれから特に何もせずにウロチョロしているといつのまにか日が暮れていた。少しだけ、小腹が空いて先程よった売り物が一種類しかない八百屋?というつぶれてもおかしくない店に向かった。

 

「よぉ、犯罪者面のおっちゃん。売れ行きはどーう?」

 

「嫌味を言いに来たんだったら消えな一文なし」

 

「いやいや、今回はちゃんと金持って来たから、ね?」

 

 そう言うと俺は財布を見せびらかす。すると、機嫌良さそうな顔をしながら歓迎してきた。わかりやすいなぁ、と思いながら提示された金額分の金を差し出してリンガを受け取ってその場で食べた。

 

「ん、うまいじゃないの」

 

「当たり前だ。『カドモン』舐めんな」

 

「へぇー、この店『カドモン』って言うんだ初めて知った」

 

「看板に書いてあんだろ何言ってんだ。たく、今日は妙な日だよ。無一文が二人も現れたんだからさ」

 

 無一文ってあのジャージ小僧だろうなぁ、と思いながらリンガの芯こと食べ尽くす。

 

「ん、おかわり」

 

「芯ごと食べんな芯ごと。たく、ちょっと待ってろ特別に新しいリンガをやるから」

 

 そう言うと男は屈んで下にあるリンガに手を伸ばした。律儀な奴だなぁ、と思いながらリンガを待つ。

 

「にしても寒いなぁ。さっきまで暖かかったのにいきなり冷え込むなんて聞いてないんだけどなぁ。ねぇ、オッちゃんこの国ってこんなに寒暖差が激しいの?」

 

 そう問いかける。しかし、一向に返事が来ない。

 

「ねぇ、オッちゃん」

 

 少し不思議に思い下を覗き込むと先程の店の店主そっくりな氷像がそこにはあった。

 

「ッ!!」

 

 すぐさま飛び退くと自身の息が白いことに気がつく。周りを見渡すと困惑した表情を浮かべた氷像達がある一点を見つめていた。そこには巨大で雄大な獣がそこにはいた。晴天だった昼間が嘘だったかのような吹雪が吹き荒れる大量の雪と台風のような暴風が吹き荒れるそれは、次々に王都の端を壊し始めていた。しかし、俺はその獣から目が離せなかった。その獣はどう考えても六神連中となんら変わらない力を秘めていたからだ。

 

『驚いたな』

 

「ッ!」

 

『未だに凍りついていない人間がいるなんて。しかも、剣聖ではなくただの人間が』

 

「なら、それに免じて見逃してくれませんかねぇ」

 

『だめだ、契約に従い、僕はこの世界を破壊する。この契約に例外は決して存在しない』

 

「あっそ、じゃあテメェがくたばれや」

 

 すぐさま羅刹の剣を中心に全ての『剣』を展開する。小手調に『剣』を射出した。

 

 次の瞬間、全てが止まった。

 

 『剣』も獣も冷気すらも止まっていた。何が起こったのか理解できないまま。固まる眼の前の獣と『剣』を目にしながら世界が一瞬で灰色と黒に色褪せ、自分の意志に反して体が。世界が、過去へと巻き戻り始めた。

 

 

 そして、目の前を、巨大なトカゲ風の生き物に引かれた馬車的な乗り物が横切っていった。




 主人公の正体はアーデンでしたー。わかった人はいるかな?まあ、それはさて置き、アーデンに死に戻りの効果が発動するのはスバルが死んでから約五分後くらいだぞ☆
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