Re:ゼロから始まる弾かれた王様の異世界生活   作:アーロニーロ

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戦闘シーンが恐ろしくむずいです。


洒落になってねぇなぁ、オイ

 地道に周りから事情を聞いていく内に今回のサテラ(仮)から貴重品を盗んだ輩はフェルトという子供とのことらしく、そして盗まれたものは盗品蔵にあるらしくそこの場所を聞きながら探し太陽が沈みかけた頃になった今。

――盗品蔵、と呼ばれている建物の前に着き、二人は顔を見合わせていた。

 

「なんつーか思った以上にでかいな」

 

「小屋でなく蔵、と言った意味がわかるわね。……この中にあるのが全部、名前の通りに盗んだ物ばっかりなら救えないわ」

 

 もちろん、定期的に売り払っているのだから盗品まみれということはないだろうが。それよりも驚いたことは、

 

「まさか、嬢ちゃんの精霊には時間制限があったとは」

 

「うん、これ以上は契約外だから。それにどうしても困ったら私のオドを使って呼び出すの」

 

 オド、つまりは体内の魔力であの精霊を呼び出すと言うことを聞き、あの怪物を自前の魔力だけで動かすサテラ(仮)を想像してどんな魔力量をしてるのだろうと少し驚かされた。

 

「ほら、行きな」

 

「うん、ここまでありがとう。アーデン」

 

「どういたしまして、お嬢さん。んじゃ、今度こそさようなら」

 

 そう言うと、同時に軽く手を張った後にアーデンは背を向けて去ろうとする。すると、

 

「ねぇアーデン」

 

 呼び止められる。今度は不快感無しに顔を見ると安心し切ったような顔をした少女がそこにはいた。何のようだ、と返すと。

 

「私の名前、エミリアっていうの」

 

 本名を明かした。晴れやかな顔で本名を明かした少女を見てアーデンは少しニヒルに笑い、ありがとさん、とだけ告げると今度こそその場を後にしようとする。

 

 しかし、その歩みはすぐに止められた。

 

 何故なら、戸を開ける音と共に尋常じゃない量の血の匂いが此方まで香ってきたからだ。すぐさま振り返りエミリアの背に向けて『剣』を射出しシフトをして瞬間移動をする。そして、エミリアの服の襟を掴んでバックステップすることで無理矢理死地から避難する。いきなりの出来事に思考が追いつかないのかオロオロとするエミリアの全身を見る。

 

 そして、すぐに自身の回避行動が間に合わなかったことを悟る。

 

 エミリアの胴体が半分ほどかっさばかれていて血と内臓をぶちまけていた。脊髄までは断たれてはいないが回復手段の持たないアーデンでは治すことは出来ず、いつ死んでもおかしくない状況だった。恐らくだが、エミリアを引く前に武器の持ち手を咄嗟に持ち変えて無理矢理リーチを伸ばしたのだろうと手遅れな憶測をする。エミリアがまるで陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクと動かす。数十秒もしない内にエミリアは目から光が消えた。そこにはもう意識はおろか生気も感じることはできなかった。

 

「あらあら、こんな時間にお客さん?まだ、あの少年の腸を観察していないのだけど」

 

 中から女の声が悪趣味な言葉と共に聞こえそれと同時に戸が開く。身長の高い女性だ。アーデンよりは低いが一般的な女性ほどの背丈に、年齢は二十台前半くらい。

 顔立ちは目尻の垂れたおっとりした雰囲気の美人で、病的に白い肌が薄暗くなり始めた外でもはっきりと目立つ。

 黒い外套を羽織っているが、前は開けているのでその内側の肌にぴったり張り付いた同色の装束が目につく。細身ながらも出るとこの出たナイスバディだ。

 そしてジャージ姿の少年と同じく、この世界では珍しいとされる黒い髪の持ち主。背を越して腰まで届く長い髪を編むように束ねて、指先でその先端を弄んでいる。

 恐らく、街中であれば口説いていたというか街中でなくとも口説いたと断言できるほどの美しさを女性は持っていた。最も、片手に血濡れたククリを持っていなければの話だが。

 

「よう、嬢ちゃん。そんな物騒なもしまえよ美人が勿体ないぜ?」

 

「あら、嬉しい。嬢ちゃんなんて言われるほど若く見られてたのね。こんな場でなければ貴方と一緒に遊んで上げてもいいと思ったのだろうけど、残念だけどこれも仕事なのよね」

 

「残念?ハッ、言うに事欠いて残念とはな、よく言うぜ!素直になれよ!私は人殺しが好きです!ってよぉ!」

 

 その言葉を聞いた女は突然のことに少し呆気に取られた顔をした後、突然笑い始めた。

 

「アハハハハハハハ!貴方いいわ!最高よ!こんな場であるのが本当に勿体ない!」

 

「安心しろよ、死ぬのはテメェだ。なにせ、俺は今気分が悪い。寝泊まりできる場所を紹介するやつが消えたせいでなぁ」

 

「まあ、素敵な殺気、ゾクゾクしちゃう。さっきまでのはあんまり楽しめなかった上に不完全燃焼だったけど貴方相手なら期待しても良さそうね」

 

「テメェの事情なんぞクソどうでもいいんだよサド女。後、前言撤回だ。今消えるんだったら追わねぇ。だから」

 

 今すぐ消えろ。そう言い切るのと黒装束の襲撃者がアーデンに肉薄したのはほぼ同時だった。  

 

 動きに無駄がなく、寸分違わずアーデンの腹部を狙ったククリナイフは高速と言って差し支えないほどの速度も持ってアーデンの腹を裂く、はずだった。

 

「それじゃあ、俺は殺せないよ」

 

 アーデンは襲撃者のナイフを視界にすら入れず振り切る前に(加速し切る前に)手首を押さえて攻撃の出鼻を正確に抑えていなすと同時に相手の挙動を押さえた。

 

「―――嗚呼、素敵だわ」

 

「君の中での俺は、さぞかし素敵なのだろうな」

 

 自身の攻撃を完全に防がれながらも襲撃者の女が恍惚と紡いだ。襲撃者のそんな様子にアーデンは皮肉混じりにそう襲撃者に告げる。

 

「でも、女の武器は一つではないのよ?」

 

 そう言うと、腰に手を伸ばす。しかし、襲撃者の様子が変わる。まるで、掴むものを探るような挙動へと変化していった。だが、アーデンはその様子を見てせせら笑った。だって、当たり前だ。

 

「ない腕で何を掴むって言うんだい?」

 

 その言葉を聞き襲撃者は固まった。自身の手に目をやると手首から先が存在していなかったのだ。そして、自身の腕を掴んでいる相手の手にはいつのまにか見たこともないような刀剣が握られておりその側に見慣れた手が転がっていた。

 

「楽しめたかい?俺は楽しめなかったよ。それじゃあ、オヤスミ」

 

 瞬間、襲撃者の体は腕を中心に真っ黒に染まり体の端からボロボロと朽ちて消えた。

 

 かつて、とある世界線にてある病が世界を滅ぼしかけたことがあった。その病の名を『シガイ』。それは人間や生き物を差別なく感染させるものであった。シガイ化したら最後、人間や動物などが目についたものに容赦なく襲いかかる狂暴な性質を持つようになる。そして、シガイ化した生き物が死を迎えれば遺体すら残さずに消えて無くなる。

 さらに厄介なのは感染症のような性質を持ち、一人でも感染しようものならば瞬く間に広がっていく。そんな病を治せる人物が存在した。名をアーデン・ルシス・チェラム。

 

 かつての彼は人間や生物をシガイに変異させてしまう寄生虫を取り込む事のできる特異体質で合ったことから、それを利用して、彼は感染者の寄生虫を自らの体に取り込むという方法で治療を行っており、民から寄生虫を取り除き続けた結果、自身のシガイ化が進み、不老不死の身となってしまう。 その果てにアーデンはとある能力を手に入れた。それが体内にある『シガイ』の操作であった。その能力を使えば簡単に相手をシガイ化させることが出来、それだけでなく過剰にシガイを相手に注ぎ込めば一瞬で相手を殺すことが出来た。そして、その被害者がまた一人このルグニカ王国で生まれた。

 

「じゃあな、エルザ・グランヒルテ。面白くも何ともない戦闘をどうもありがとう」

 

 そう言いながら片手に持っている夜叉王の剣を肩で担ぎエミリアの死体へと向かった。目を見開き苦痛に喘いだ姿で死んでなお彼女は美しく見えた。何故、胸が痛むのか疑問だった。ただただお人好しで他人に慣れていない、数時間程度の会話ではそれしか知ることが出来なかった。しかも、会って間もなく前回のループでは顔も見てなかったと言うのに。彼女との会話を思い出す。すると、あることに気づいた。ああ、なるほど。

 

「エイラに、似ていたのか」

 

 エイラ・ミルス・フルーレ。神と人とをつなぐ存在として選ばれた初代神凪。かつて、アーデンとは互いに深く愛し合っていた。彼女との思い出を忘れたことなど片時もなかった。そんな彼女にエミリアはよく似ていた。相手を思うが故に嘘をつき、かつて抱いて馬鹿な夢を話しても真剣に聞いてくれた優しさ。それらがかけがえのない何よりも大切に思えた彼女によく似ていたのだ。

 

「なんて、怠惰。なんて、愚か。また、失ってから気づくのかよ……」

 

 せめて、安らかに眠れるよう手で目を閉じさせる。惜しむようにその場を去ろうとする。瞬間、尋常じゃない衝撃がアーデンを襲った。

 

 

 とある少年の話をしよう。それは過去現在全ての剣士のいや、生物としての頂点に君臨する一人の少年の話をしよう。その少年は燃えるような赤髪と空を映したような澄み切った青の瞳に整った顔立ち、すらりと細い長身で、腰には鞘に竜爪の刻まれた騎士剣を下げていた。そして、何より少年を特筆すべきとして欠かせないものがある。それが完璧である、ということだ。清く正しく美しく勇ましくと、世界の正義を体現したような人物。騎士の中の騎士として国民からの信頼も厚い国民的スーパーヒーローでありながら、おどけてみせる親しみやすさも持つ、非の打ちどころのない完璧超人。剣の一振りで家を倒壊させる強大な力を持ち、白鯨などの三大魔獣はおろか四大精霊すらも打倒しうる力を持っていた。

 そんな少年はある出会いをした。理解不能と恐怖という感情と。

 

 ーーなんだあれは。

 

 理解不能としか言いようのない存在がそこにはあった。初見で魔術などに疎い少年ですら禍々しく危険な者だと判断できるものがそこには顕現していた。

 

 少年は完璧である。しかし、それ故に弱点が存在していた。それは完璧であるが故の不慣れ。敵なしであったはずの自身を殺しうる存在の出現、今までになかったはずの自身の持つ『加護』による警戒音。非常事態が重なり続け、少年の思考を鈍らせる。それでも少年にも一つだけ理解したことがある。あれは危険だ、世界を滅ぼしうるものであるということ。そうとわかればあとは簡単だった。腰にある剣を引き抜き排除を誓い死体の側にある目の前の『バケモノ』に向けて振り下ろした。

 

 

「イッテェ……なんだ今の」

 

 アーデンは文字通り五体がバラバラになるほどの衝撃を受けたことに困惑する。傷は5秒もしない内に回復する、はずだった。

 

「な!これは!」

 

 バラバラになった体は修復した。だが、自身の左肩から右脇にかけてつけられた傷跡が一向に治らなかった。数十秒かけてようやく回復した。そしてそれと同時にある事実に気がつく。

 

「なんであのクソ野郎(剣神バハムート)の気配を傷跡から感じる!?」

 

 運命を諭し、大人しく踏み台になれと抜かしてきた剣神バハムート(牙を抜かれた運命の飼い犬)の気配を確かに感じ取られた。そして、ある考えが頭に浮かぶ。

 

「まさか、俺がこの世界で生きていることに気づきやがったのか?」

 

 実際、無理な話ではない。六神の中でも最強に位置するあの神が全霊を賭せば異世界に介入することは不可能ではないのではないか。

 

 そう思った瞬間、賢王の剣、修羅王の刃、聖王の杖、獅子王の双剣、飛王の弓、夜叉王の刀剣、覇王の大剣、神凪の逆鉾、伏龍王の投剣、闘王の刀、鬼王の枉駕、慈王の盾、父王の剣、持てる全ての『武器』を顕現させる。そして、吹き飛ばされた地点へと向かう。

 

「誰だ…テメェは」

 

 するとそこには、見たこともない男がいた。顔立ちはイケメンと言って差し支えないほど整っており、顔だけでなく体型すら全て整っていた。十人いれば十人とも『イケメンである』と答えられるほどの造形を誇っていた。もっとも、

 

 ーーー目をギラつかせ常人であればショック死してもおかしくないほどの殺気を垂れ流していなければの話であるが。

 

 様子から察するにこの男が吹き飛ばしたのだろう。しかし、どう考えてもこの男から剣神の力を感じることは出来なかった。確かに本人からうっすらと剣からははっきりとわかるほど剣神の加護(クソ野郎のお墨付き)を感じることは出来たが、それ止まり。本神が現れた、もしくは干渉していると言い切るには程遠いほど剣神の力は感じることが出来なかった。だからこそ、

 

「なんで俺を攻撃する?」

 

 理解出来なかった。今回はおろかループでは何もしてない上に会ったことすらない目の前の男を相手に流石のアーデンも困惑していた。

 

「君を殺す」

 

「はあ!?俺の記憶違いじゃなきゃ、俺とお前は初対面のはずだ。なのに捕らえるならまだしも殺すってお前、騎士として品性を疑うね」

 

「例え疑われても、剣聖の地位を追われても構わない。先程見た君の中に巣食う得体の知れないナニカを打倒出来ればそれでいい……!」

 

 ああ、なるほど。つまりは、この男が気にしてるのは周りにある死体でもこの場に香る濃い血の匂いでもなく。

 

「シガイってわけだ」

 

 少し、論理感を問い正したいところもあるが優先順位という面では確かに正当な判断だ。話の内容から察するに俺がその場でシガイを使用してその様子をこの男は見てしまったことがことの発端らしい。しかし、

 

「納得できねぇ。なんで人の話を聞かねぇ……」

 

 先程のエミリアを思い出しながら。彼らというかこの世界の住人にはwhy who what howの概念はないのだろうかと天を仰ぐ。すると、ギリギリ反応できるかできないかの速度で相手が突っ込んできた。咄嗟に受けるも受けきれないことを悟り、すぐ様受け流した。そして、理解した。

 

(この小僧。俺よりも確実に強いな……)

 

 筋力、敏捷、恐らく耐久すらも全ての面で自身の上をいっていることを。そして、戦法を切り替えると同時に剣を構えた。

 

「――『剣聖』の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア」

 

「闇の、いや、『無銘』、アーデン・ルシス・チェラム」

 

 すさまじい剣気があたりを充満させ、向かい合う二人の戦意が大気を震わせる。

 覚悟を決めた顔と共に名乗りを挙げる少年、ーーラインハルトに対して、アーデンもまた厳かに頷いてそれに応じる。そして、

 

 闘い(殺し合い)が始まった。

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