Re:ゼロから始まる弾かれた王様の異世界生活   作:アーロニーロ

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最近、面白い作品が増えすぎでは?と思う作者です。


商談(仮)開始

 アーデンから見たフェルトは格好はともかく姿勢がしっかりとしており、磨けば光と言ったところだった。しかし、貧民街の連中すら心配するレベルで小汚い格好をしたアーデンやスバルと同じ程度には薄汚れて見えるのは、よほど今回の逃走劇が熾烈を極めたということだろう。

 

「なんでますます気の毒そーな顔すんだよ。おい、オッチャン。もしかしてこの兄ちゃん薄汚い小娘だって舐めてんのか?」

 

「違うと思うなぁ。で、そこんとこどうなの、スバル?」

 

「いや、それとは別の感傷なんだけど……とりま、会えてなにより」

 

 不快感を隠そうともしない少女に苦笑いしながらアーデンはスバルに話を振るとスバルは会えたことによる安心からか安堵に肩を落としていた。

 

 スバルの呟きに対して、フェルトは「なんだ、客か」と鼻を鳴らした。

 彼女は油断ない姿勢でそのままこちらを見つめ、

 

「ここまできたってことは、アタシに用があんだろ? ……格好からして、ここの住人じゃなさそーだしな」

 

「ありゃ、バレちゃったね。その心は?」

 

「んなもん。ここの連中でももうちょっと身綺麗にしてるからに決まってるっつーの。そんな汚してんだ。正直、うちの連中より小汚ぇよ今のアンタら。アタシ以上にな」

 

「お前以上って言われたらマジで深刻なんだな今の格好。そう言われてみりゃアーデンさんもマジで酷いな」

 

「やるよう命じたの君だけどね?」

 

「いい加減にしろよ。用件を早く済ませろ」

 

 そう言いながらフェルトは目を細めながら指を小刻みに動かし、手先の器用さをアピールする。その掌に、ふいに魔法のように小さなナイフが浮かび上がる。場合によっては、それを自衛の手段にするという戒めだろう。

 アーデンはナイフの出し方の仕組みは向こうと同じなのかと少し興味ありげだった。しかし、そんな考察をしている間に逃げられるのもアレだと思い、

 

「おら、スバル。用件を早く言えよ」

 

「OK OKアーデンさん。俺の用件はひとつ。――お前が盗んだ徽章を、こちらで買い取りたい」

 

 

「大ネズミに」

 

「ホウ酸団子ってどこで売ってんの? 毒」

 

「スケルトンに」

 

「意外と掘るのって労力いるよな。落とし穴」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「ファンタジー世界だから実際いるんだろうけど、マジ直接対面したらなんにもできないこと請け合い。でもロマンだから会いたいのも事実にクソったれな気分」

 

「余計な枕詞つけんと合言葉も言えんのか! 余計に腹立たしいわ!」

 

 扉が内側から蹴破られるように開かれるが、それを予期していたのかスバルは素早く後方に飛びのいてノーダメージ。扉から現れた悔しげに喉をうならせるのは、入口の高さに身長が噛み合っていない巨人だった。通常の人類ではあり得ない体つきと背の高さに新しく現れたこの世界の固有の生き物なのかとアーデンは興味深げに眺めていると。

 

「あー、悪い。コイツもアタシの客なんだ。入れてやってよ、ロム爺」

 

 アーデンの背後に隠れていたフェルトが現れた。「スバルのファンタジー世界だから」のくだりで身の危険を感じたフェルトはアーデンの後ろに隠れて盾にしたのだ。その言葉を聞いた巨人——ロム爺と呼ばれた老人は明らかに肩を落とした。

 

「オイ、スバル。老い先短い老人を嬲る真似だなんて感心しねぇなぁ。怒っちゃうぞぉう、俺?」

 

「言葉の節々から本気度が感じられねぇっすよ、アーデンさん。実はちょっと楽しんでたり?」

 

「ありゃ、バレちゃった?」

 

「アンタ等、かなり性格悪いな。控えめに言って最悪だ」

 

「「いやあ、それほどでも」」

 

「褒めてねぇよ。つーか、上がるぞロム爺」

 

 うなだれるロム爺の横を抜けて、フェルトが当たり前のように盗品蔵へ。

 説明を求める視線を無視され、ロム爺はアーデンとスバルに説明を求める。そんなロム爺にアーデンは笑いながら答える。

 

「単純に交渉ですよご老体。今回行われる徽章の、ね」

 

「! なるほどのぉ。その情報をどこで聞きつけたかは知らんが相わかった。上がれい」

 

 ロム爺は巨体を小さくして中へ戻る。その背中に続いて、埃っぽい盗品蔵の空気に歓迎されながらアーデンとスバルも中へ。前もってフェルトからは交渉相手(エルザ)の集合時間などを聞いていたが、念のためにも盗品蔵内を外に出さずに警戒しながら見渡す。現状、エルザが待ち構えているなどと言う事態には陥っておらず、その事実を確認すると少しだけ気を抜く。

 

「そんじゃまぁ、駆け足になるけどもこちらの出せるもんを紹介しようか!」

 

 そう言うとスバルは懐から携帯電話を取り出す。ロム爺はメタリックな見た目がまずその興味を惹き、大きすぎる手の中にあってはまさしく玩具のような機器を繊細な指触りが確かめるように撫でた。

 

「これは……ミーティアか?」

 

「そ、ミーティア。機能はこんな感じ」

 

 そう言うとスバルは立ち上がりアーデンとフェルトとロム爺に向けてシャッターを切る。暗がりだったためかフラッシュが出てアーデンは目が眩みかけ、フェルトとロム爺は少しだけ身構えた。

 

「オイ、一声かけろやスバル。ああ、もう目が痛てぇ」

 

「すまんすまん、とまあ、こんな感じで時間を凍結させる道具だ!」

 

 スバルはアーデンに軽く謝罪を入れた後に得意げに今撮った写真を見せた。元の世界であった場合、スバルの行動は贔屓目に言ってマナーのなってない変人の類になる。しかし、ここは異世界。魔法のみが特化していることはここに来る道中で嫌と言うほど理解してる。故に、

 

「ふぅーん、ロム爺、どう思う?」

 

「こりゃそんじょそこらじゃお目にかかれんだろうな。わしも初めて見たわい。そうさなぁ、確かに恐れ入ったわい。もしも儂が取り扱うなら、聖金貨で十五……いや、二十枚は下らずにさばいてみせる。それだけの価値はある」

 

 この反応はある意味で妥当と言える。売人としての職人魂が刺激されたのか、やたらと瞳を輝かせるロム爺。この反応を見るにこの国での聖金貨の価値はわからないが明らかに価値としては最上位に位置してると考えられる。

 

「それってどうなの?」

 

「わかんねぇのか兄ちゃん。取引に応じるってこったよ」

 

「よっしゃあ!んじゃ、交渉成立ってことで「まだ気が早えよスバル」な!なんでだよ!アーデンさん!」

 

 興奮して立ち上がりガッツポーズを決めながら叫ぶスバルの言葉を遮るアーデン。当然、勝確の文字を心の大部分に占めていたスバルからすればある意味で言いがかりに写ったのだろう。だが、アーデンはすぐに反論する。

 

「んなこと簡単だろ?相手が聖金貨20枚以上出せたら交渉は向こうに傾くんだ。喜ぶよりも次の一手を考えときな」

 

「ぐっ。わかったよ」

 

 そう言うと少し顔を顰めながら椅子に座るスバル。そんな様子を見てフェルトはある疑問を抱く。

 

「なあ、兄ちゃん達はなんでこの徽章を欲しがるんだ?」

 

 うぐ、と息を詰まらせたスバルを見られて、アーデンはスバル失策にため息をこぼす。

 ここでこそ、さっきまでのような軽口が発動すべきだったというのに、弱味をわざわざ見せるような真似は明らかに悪手であるからだ。

 

「アタシに依頼してきた姉さんも話したがらなかったけど、兄ちゃんもそーだな?」

 

「……そもそも、盗み自体がいかがわしい話なんだから、後ろ暗い理由があるのは誰でも一緒だと思うんですがー」

 

「でも、特にアンタは後ろ暗いわけだ。ま、落ち着いて考えてみりゃー、盗みを依頼された品物を横からかすめ取ろうってんだしな」

 

 フェルトの目に欲がちらつく。これを見たアーデンはすぐにフェルトがさらに値上げを試みようとしていることを悟る。そして、この予想はすぐに当たりだと理解させられる。

 

「この徽章は、なんだ? 実はこいつには、この見た目以上の価値があるんだ。だから欲しがるんだろ? それはつまり、魔法器以上の金になる価値ってことだ」

 

「オイ、嬢ちゃん。それ以上は辞めとけよ。あんまり欲に目が眩むとろくなことねぇぞ」

 

「オッチャンは黙っとけよ。これはあたしと兄ちゃんの交渉だ」

 

 正論を突きつけられ流石にそれもそうかと思い口を閉じる。しかし、それはスバルを見てすぐに撤回する。エルザを先程見たためか明らかに余裕がなかった。これではすぐにボロを出すこと間違い無いだろう。そこまで考えて、ふとまた『死に戻り』をしてしまうのではないかと考えが浮かぶアーデン。関わるのはめんどくさいと思ったが、『死に戻り』をされては更に面倒臭いと考えたアーデンはため息を吐き覚悟を決める。

 

「フェルト」

 

「なんだよ!オッチャンさっきも言ったけど今「少し黙れ」ヒュ」

 

 フェルトの口から喋るために使われるはずだった空気が漏れる。先程まで携帯電話を鑑定していたロム爺や余裕がなかったスバルすら動きを止めた。理由はアーデンから漏れた怒りと共に現れた殺気だった。そう、アーデンの考えた行動とは自身が殺気を放つことで劣勢だった状態をリセットすることだった。そして、その効果はご覧の通り。

 

「なあ、フェルト」

 

「な、なんだよ」

 

 掠れて引き攣った声がフェルトの口から漏れる。それを見て多少申し訳なく思えたが、自身の私情を優先させて続ける。

 

「お前の選択肢は二つある。一つ、今の発言は撤回して知らん顔でこれから来る交渉相手とスバルの交渉を眺めて金を得てハッピーエンド。二つ、余計なことを知ったが理由でここにいる連中がバットエンドを迎える。どっちがいい?」

 

「だ、だって、信頼に関わることだから」

 

「そうだなぁ信頼は重要だ。でもな、世の中には知っていいことと悪いことの2種類が存在するんだよ。今回は後者だ。それも何か?フェルト。お前」

 

 こんなクソしょうもないところで死にたいのか?その声が盗品蔵によく響いた。反響するほどの大きさを誇ってないのに。ロム爺もフェルトもスバルもみんな動かなかった。まるで空気が凍りついたかのように誰一人として動けなかった。アーデンがフェルトの顔を見ると泣きそうになっていることに気づく。流石にやりすぎたなと思い殺気を解き、

 

「なーんちゃって!」

 

 笑う。辺りに漂っていた張り詰めた空気が霧散し、代わりに和やかな空気が漂う。

 

「は?」

 

「冗談冗談。間に受けるなよフェルト。こんなくだらないことで人を殺すとでも?」

 

「いやいやまたんか!さっきのは明らかに!」

 

「本気で放ったけど、あくまで威圧。ああ、心配ならそこにはある棍棒を持ってもいいよ?」

 

「なっ!」

 

「こう言う手法もあるってこった。勉強になったかい?お嬢さん?」

 

 そこまで言うとフェルトの顔をがまるで林檎のように赤く染まり始める。それに比例するかのように目が涙目になりながら釣り上がってゆく。

 

「あら、やだ可愛いお顔」

 

「うがーー!!!」

 

「おごぉ!」

 

 蹴りが鳩尾に炸裂する。本来であれば避けれたがあくまでも謝罪として受け入れた。そこから何度か拳や蹴りが飛んできた。

 

「死ね!お前本当に死ね!」

 

「痛い痛い!悪かったって!」

 

「お前ぜってぇ許さねー!」

 

 フェルトの怒りはそこから10分ほど続いた。

 

 

「で、なんでだよ」

 

「徽章返して欲しい理由?」

 

「おう」

 

「値上げは無理だよ?」

 

「わかってる。ただ……知りてぇだけだ」

 

 懲りてないのかと思い、また殺気を放とうとするが、フェルトの覚悟を決めた顔を見て効果は半減かもしくは意味をなさないと理解したアーデンは殺気を放とうとするのをやめる。そして、目線をスバルに向けて話すよう促す。察したのかスバルは頷くと理由を話す。

 

「俺がそれを欲しがるのは……元の持ち主に返したいからだ」

 

「――は?」

 

「俺はそれを持ち主に返したい。だから徽章を欲しがってる。それだけだ」

 

 目を見開くフェルトに対して、スバルは顔を上げて同じ言葉を告げる。

 紅の双眸が敵意をはらんで威嚇してくるが、スバルはそれを受け止めた上で押し黙っているしかできなかった。

 

「……フェルト。どうもこの小僧、嘘をついてるようには見えんが」

 

「ロム爺までほだされんなよ。冗談に決まってんだろ? 持ち主に返す? 大金まで払って盗んだ相手から買い戻してかよ? 馬鹿馬鹿しい。衛兵のひとりでも連れてきて、アタシをとっ捕まえちまえばそれで済む話じゃねーか」

 

 それは確かにそうすべきなのだろう。だが前回のループでその手段はエミリア本人からダメだと言われている。理由はわからないが考察はできた。エミリアの欲している徽章はラインハルトの反応やエミリアの反応から察するに何か身分を証明するのに必要なものではないかと考えられた。それを無くしたと衛兵に公言すれば証明書一つ守れない無能であると公言してるようなものと同義である。故に、エミリアは周りに衛兵に相談できなかったのでは無いかと考えられる。

 

 当然こんなことアーデンの口から言える訳がない。関係者ではない以上、推測の域を出ないからだ。

 

「つくならもっとマシな嘘をつけよ。真剣なふりしても騙されねーよ。そうじゃなきゃ、アタシは……そうさ。アタシは騙されない」

 

「フェルト……」

 

 なにかを振り切るように、フェルトは絞るような掠れた声を出す。

 気遣わしげなロム爺は彼女のかつて何が起きたのかを知っているのか、その表情は痛ましげだった。すると、

 

コンコン

 

 鋭いノックの音が何度か続き、沈黙にロム爺が振り返る。その視線を受けて頷いたのはフェルトだ。フェルトは自分を指差し、

 

「アタシの客かもしれねー。まだ早い気がするけど」

 

 少し怒りが冷めやらないといった要素だったが、接客できる程度には立て直したらしい。戸に手をかけ向かいれるべくフェルトはドアへと向かう。が、

 

「フェルト待て」

 

 アーデンが済んでのところで止める。それに反応したフェルトが立ち止まり振り返る。常人離れした五感を持つアーデンにはしっかりと聞こえた。まるで、空気が凍りつくような音が複数回響くのが。瞬間、

 

 戸が吹き飛んだ。

 

 吹き飛び辺りに土煙が舞う。破片の一つがフェルトの顔面目掛けて突っ込んでくるのをアーデンは難なくキャッチする。その後、咳をこみながら軽く何度か腕を薙ぐと土煙が霧散していく。するとそこには仏頂面で唇を尖らせて、銀髪の少女が蔵の中へと足を踏み入れていた。

 

「よかった、いてくれて。……今度は逃がさないから」

 

 踏み込んできた銀髪の少女の姿に、フェルトが声もなく後ずさる。下がるフェルトの表情は悔しげで、忌々しさに唇を歪めながる。

 

「何?お客さん?」

 

「オッチャンの目は節穴かよ!?今、明らかに逃がさないって言ってたよな!?」

 

「冗談だよ。で、どうすんの?」

 

「知らねえよ、面倒臭せぇなぁ!」

 

「盗人猛々しいとはこのことね。神妙にすれば、痛い思いはしなくて済むわ」

 

 アーデンのボケに余裕なく声を荒げて突っ込むフェルトに対し、エミリアの声の温度はひどく冷たい。

 実際、部屋の気温が急速に下がり始めているのを感じ取れる。それと同時にパキパキという音共に先端を丸めた氷柱が複数本顕現する。殺傷能力はないがエミリアの機嫌の悪さを考慮すると手足の1、2本はへし折られそうだな、と思うアーデン。

 すると、ロム爺がその灰色の瞳をわずかに細めて、氷柱を展開するエミリアを見やる。その瞳にはどう言う訳か畏敬が込められていた。

 

「お嬢ちゃん。……あんた、エルフじゃろう」

 

 唇を震わせてのロム爺の問いかけ、スバルは思わず顔を上げ、アーデンはこの世界にはエルフまで存在するのかと驚く。そして、それと同時にロム爺がここまで怯えていることに疑問を覚える。

 

 ロム爺の問いにエミリアはしばし瞑目してから小さく吐息して、

 

「正しくは違う。――私がエルフなのは、半分だけだから」

 

 そう告げた。言い方といいまるで半分であることを晒すことがあまり良くないように告げるエミリアを見て、アーデンはこの国ではハーフに対する偏見や差別が激しいという結論に行き着く。しかし、その認識が甘かったことはフェルトとロム爺の反応を見てすぐにわかった。

 

「ハーフエルフ……それも、銀髪!? まさか……」

 

「他人の空似よ!私だって、迷惑してる……。いい?要件はたった一つ。私の徽章を」

 

 返して。そこまで言った瞬間、滑るように黒い影がエミリアに向けて忍び寄る。

 

「防げ!パ「必要ねぇよ」……え」

 

 そう言うとアーデンは手に持っていた木片を黒い影に向けて投擲。不意をつかれながらもすぐに反応した黒い影は木片を弾きながら盗品蔵に乱入した。

 

「アーデン……」

 

「間一髪だったね、礼を言うよ」

 

「どういたしまして、そら全員構えろ」

 

 奇襲を防がれた形になった襲撃者は喜悦の笑みを浮かべながらアーデンを見る。

 

「あらあら先程の殿方?素敵ね今のを防ぐなんて」

 

「そりゃあどうも。お礼にその物騒なのしまってくれてもいいんだぜ?」

 

 アーデンが構えながらヘラヘラと笑い受け答える相手はククリナイフを顔の前に持ち上げて、恍惚を浮かべるのは見慣れた殺人鬼――エルザだった。

 

「おい!なんのつもりだ!」

 

「何つもりも何も盗んだ徽章を、買い取るのがお仕事。持ち主まで持ってこられては商談なんてありえないでしょう?だから、この場にいる関係者は皆殺し。徽章はその上で回収することにしたの」

 

「自身の痕跡も消して尚且つ徽章も回収できる。合理的ではあるな」

 

「でしょう?」

 

「オッチャンはどっち味方だよ!」

 

 フェルトの表情が苦痛が浮かぶ。その顔から伺えるのは恐怖ではない別の感情が写し出させれていた。その感情は複雑であったが故にアーデンには理解出来なかった。すると、

 

「てめぇ、ふざけんなよ――!!」

 

 スバルが叫んだ。突然の出来事にアーデンだけでなく周りにいる連中もエルザすらも目を丸くしていた。実力差もわからないわけじゃないのに何をしているのだろうと疑問に思っていると。

 

「こんな小さいガキ、いじめて楽しんでんじゃねぇよ! 腸大好きのサディスティック女が!! そもそも出現が唐突すぎんだよ、外でタイミング待ってたのか!? うまくいくかもとかぬか喜びさせやがって、超恐いんだよマジ会いたくねぇんだよ! 俺がどんだけ痛くて泣きそうな思いしたと思ってやがんだ! 刃物でブッスリやられるたんびに小金貰ってたら今頃俺は億万長者だ!」

 

「……なにを言ってるの、あなた」

 

「なあ、スバルよぉ空気読もうぜ。それとも何?このタイミングで気が狂った?」

 

「二人ともひでぇなぁ、オイ!そんなお日柄ですが皆様いかがお過ごしでしょうかチャンネルはそのままでどうぞ!」

 

 意味不明なスバルの怒声に、エルザが珍しく呆れたような小さく吐息を吐き、アーデンはスバルの気が触れたのかと割と本気で心配する。

 

「時間稼ぎ終了――やっちまえ、パック!!」

 

「見事な無様さだったね。――ご期待に応えるよ」

 

 地面を踏み鳴らすスバルに飄々とした声が応じて、エルザが顔を上げる。

 立ち尽くすエルザの周囲、全方位を囲むのは先端を尖らせた氷柱が二十本以上存在していた。

 

「まだ自己紹介もしてなかったね、お嬢さん。ボクの名前はパック。――名前だけでも覚えて逝ってね」

 

 直後、全方位からの氷柱による砲撃がエルザの全身に叩きつけられていた。




次回は戦闘シーンなので少しかかるかもです。
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