てゐと紫がけんか?している。
てゐは兎たちに命令して紫に向かってロケットみたいに突っ込ませている。
そうしてあっというまに大きな白い山(兎たちが集まったもの)ができた。
しかし紫はスキマのなかにはいって俺の後ろに、てゐから隠れるように出てきた。
「ちょっとあの兎たちを止めてもらえないかしら?」
「じゃあ俺に何か得があれば止めてやろう。」
「えっと…じゃあお米を3kgほどあげるわ?」
「俺がそんな食べ物程度でつられると思っているのか?」
そういいながら俺はてゐとその兎たちをなだめ始める。
「行動と言葉が一致してないわよ。」
「気にしたら負けだ。」
「で?そこにいる変な妖怪はなんなのさ?」
てゐが不機嫌そうに言う。
「俺が知るわけないだろう。というわけで自己紹介とさっき聞き損ねたお前の夢だったかを聞かせてくれ。」
「そうねぇ…私は八雲紫。好きなことはお昼寝とかかしら。」
「昼寝か、悪くないな。そういやなんで紫は俺のこと見てたの?」
すっかり忘れていた。
「あぁ…それはそこの兎みたいな妖力がかなりあるほうの妖怪と全然妖力がない赤流がなんで一緒にいたのか気になったからかしら…
あぁ妖力が少ないってのは赤流が妖力隠してただけだったんですが…」
「そんなしょぼい理由かよ。」
「あら、私にとってはちゃんとした理由よ。力のもっている妖怪と力の全くない妖怪がなぜあんなにも親しくできるのかというね。
私の夢は妖怪と人間が共存できるような世界を作ることなの。だからどうすればいいかと考えているところだったから、あなたたちを見ていればなにかヒントがあるんじゃないかと思って。」
「なるほど…人間と妖怪の共存ね………悪くないね。」
そういうと紫が驚いた顔をする。
「馬鹿にしたりしないの?」
「なんでだよ、俺はどっちかというと人間側だしな。妖怪を食うのに妖怪の友達ができるわけないじゃないか。」
「あら?そこの兎は友達ではないのかしら?」
「えええ!!私は十分友達と思ってたのに!赤流は私のことは友達だと思ってなかったのか!?」
「いやまぁ例外はてゐみたいにいるけどさ…」
「そういえばなんで赤流は私を食べなかったのかしら?」
そう紫が質問してくるとてゐが得意げに答える。
「赤流は悪さをした妖怪しか食べないのさ。ちょっとした妖怪がよくやるような悪さじゃ食べないけど、赤流は人間を遊びで殺したり重傷を負わせる妖怪だけ食うのさ。」
「なんでお前が説明するんだよ…まぁ今てゐの言った通りで俺が食べる妖怪はそんな妖怪だ。だから俺はてゐも食べなかったし、紫も食べない。」
「そこにいる兎は人間をよく罠にはめて遊んでいるわよ?」
「それは妖怪がよくやることだろうよ。遊びで殺すっていうのが駄目なんだ。命をそんな遊びで奪っていい奴なんているわけない。」
「なるほど…よくわかったわ。」
わかってくれてよかったです。
「じゃあ赤流。あなた私の夢を実現させる協力をしてくれないかしら?もちろん無理にとは言わないわ。あなたみたいに私の夢をしゃべって笑わない、しかも同意してくれる妖怪なんて初めてだったから。」
「同意したっけ?同意はしてるけど言葉にはしてなかった気がする。
人間好きだし俺は協力してもいいよ。楽しそうじゃんか、妖怪と人間の共存?いいね、もしできた時は真っ先に俺に報告してくれよ?」
「もちろん、あなたみたいな伝説の妖怪が手伝ってくれるなんて最初に考えた時は思ってもいなかったわ。出来たらあなたに一番最初に報告するわ。」
「で?具体的には何を手伝えばいいんだ?」
「ちょっとまった!!」
てゐが話に入ってくる。今いいところなんだけども。
「その計画!私も手伝うわ!」
予想外っ!
「あなたも…?私の夢に同意してくれて手伝ってくれる人数が増えるのはうれしいんだけど…どうして?」
「私は人間をよく罠に引っ掛けたりするけどなんだかんだいって人間は好きだからね。そんな夢のような世界が作れるなら私だって手伝うよ!
さぁ、赤流の質問に戻ろう、手伝うにはなにをすればいいんだい?」
「ありがとう…本当に……本当は私の考えは間違っているんじゃないか、と弱気になっていたの…」
「別に正解不正解じゃないだろ、自分がやりたいかどうかだ。夢だったんだろ?実現させろよ。絶対に。」
「わかったわ…」
「それで手伝いなんだけど…妖怪と人間の共存に同意してくれる妖怪とであったら私が作っている場所に送ってほしいの。送るときはこのお札を使って。」
紫がお札を渡してくる。
「そのお札を使ったらスキマが開くから、そのスキマが私の作っている場所につながっているわ。もちろんあなたたちも入ってこれる。そこにその妖怪を入らせてくれればいいわ。」
「それだけ?」
てゐが紫に聞き返す。俺は声には出さないが俺もそれだけ?とは思っている。
「それだけよ。だけど同意してくれる妖怪を探すのは大変っていうレベルじゃないわ。私は200年ほどそう思って妖怪たちに声を駆け回ったのにもかかわらずあなたたちが初めてだったのよ?」
「んー、確かに…」
てゐが頷く。
そう言われてみればそうかもな、気長にやろう。別に今すぐに作るってわけじゃないだろうし。
「私はまだやることがたくさんあるからここでいったんお別れ。手伝ってくれてありがとう。」
「いや例には及ばないさ、俺にも得があるからね。…そうだ、米忘れるなよ?」
「ちゃんと持ってくわよ。」
紫がスキマに入っていなくなる。
「米ってなんだ?」
てゐが聞いてくる。
「よくやったぞてゐ、お前のおかげで明日も俺は米が食えるぞ。」
「なんで!?」
「じゃあ俺らもここでお別れだ。俺にはやることがたくさんあるからな。はははは。」
紫の真似をしながら俺は走って去ってゆく。
「おい!なんでだよ!…じゃーな!」
「おう!」
しっかり別れるときにじゃあな、というあたりがてゐのかわいいところだと思う。
やることなんてまったくないけどね。
今思えばもう少してゐと話していればよかった。なんて思う。
紫の手伝いもしなきゃならんからもうそろそろ竹林から出ていくか…
そう思ったのは紫の手伝いをすると決まった日から次の日のことだった。
この竹林にはかなり滞在したし、正直もうやることもない。
よって竹林から出ていくことにした。出ていくって言ってももうてゐと会わなくなるわけじゃないし大丈夫。
そうして俺は竹林から出ていく前に一言てゐに何か言ってから出ていこう、と決めたのでてゐの家まできたよ。
てゐの家に着くとてゐは外で兎たちと罠を考えていたらしく、俺を見つけるや否や、家の中に作戦用紙であろうものを隠しにいった。
「やー赤流じゃないか、赤流が自ら私の家に来るなんて珍しいね。」
「竹林から出て聞くから一言くらい挨拶をしておこうと思って。」
てゐは残念そうな顔をする。
「やっぱりか、赤流は面白いことを探していろんな所へ行っているんだろう?だからここに滞在するのももう長くないかな、とは思ってはいたんだよね。そして昨日のあの出来事もあったからそれで決心しちゃうかな、みたいなね。」
「別にもう会えなくなるわけじゃないじゃないか。またすぐ会えるって。」
「そうだね、じゃあ私も一言で済ませようかな。」
てゐは俺の前まで歩いてきて、
「またね、赤流。」
と一言
そのあとに俺が、
「またな、てゐ。」
そしててゐに背を向けて竹林から出ていこうとする、しかし俺はハッと気づき、
「てゐごめん。竹林出るまで案内してくれない?」
「なんだよ、せっかくの感動の思い出みたいなのになったのに、台無しじゃないか。」
「いいから案内してくれ。」
「わかったよ…」
どこに向かって歩いていけば一番町に近いかわからないので、てゐに案内してもらわなければ。このまま一人で行ってたら迷子になってたわ。
と思っていると、てゐは俺の隣に来て俺の手をつかむ、てゐと手をつないだのは初めてだな。
「こっちだ、ついてきな。」
そう告げるてゐの顔はいつもより赤かった気がした。
次回はもこもこした名前の人と会う予定です。