目が覚めると辺り一面に森が広がっていた。
壁を作った時にかなりの妖力を使ったと思ったんだが、ほぼ全回復しているといってもいいだろう。
あれだけの妖力を使ったのに回復しているとなると、しばらく気を失っていたということになる。
ただそれだけなら回復はもっと早く済んでいたと思う。
なんと俺の周りにあの時に張った壁がまだ残っている。
自分の妖力回復とともに壁の維持となると、俺の妖力回復速度はとてつもなく遅かっただろう。
とりあえず生き延びることができた、ということでよしとしよう。
もし死んでいれば永琳との約束を破ってしまうことになるからな。
「壁解除しないとな。」
目が覚めた今こんなところにいつまでもいる気はないので壁を解除する。
そうして俺は森を抜けるために歩き出した。
しばらく歩いていると森から抜けることができた。
しかしその森を抜ける時に神力が組み込まれている縄が森を囲むように結ばれていて、森に誰も入れないようになっていた。
空を飛べば入れるのだが…
空を飛べない妖怪や人間が入れないようにするためのものだろう。
俺は空を飛ぶことはできないので縄を切るしかない。
もし空を飛ぶことができる妖怪を食べることができれば、俺も空を飛ぶことができるのだが、空を飛ぶ妖怪で人間を娯楽のために殺すようなやつに会うことがなかっただけ、ということである。
昔月夜見を神力の檻を食ったときは頭三つの蛇でギリギリ食うことができたので、神力を食ったり破るときは見た目で強さを判断せずに、食いにいくことにしている。
あの時の檻は俺の目には見えなくなっていたのでその分にも神力を使っていたはずである。
しかしこの縄は目に見える分そのぶんの神力も強度や威力が強くなっているはず。
俺は自分の半分の妖力を開放し腕に纏わせ縄をつかむ、はずだったのだが…
「あれ?」
腕に妖力を纏わせ縄に近づいて、縄をつかもうと手を縄に向かって伸ばしたときに、縄が俺の腕から溢れでている妖力に耐えきれずにボロボロになりちぎれてしまった。
「まぁ縄をちぎったことには変わらないしまあいいか。」
縄もなくなったことだし妖力を隠してどこかに行こうかと思い、前を見ると妖怪二匹と人間一人が目を丸くしてこちらを見ていたので、とりあえず話しかけてみた。
「その人間はどうしたの?」
~人間side~
私はいつも通りに神社の境内を掃除していると神社の裏にある森から急になにか変な感じがしました。
私の神社で祀られている諏訪子様も裏の森だけは近づいちゃだめだよ。といわれていたのですが、この変な感じはいつまでたっても収まる気はしませんでした。
しばらくは諏訪子様の言っていた通りに神社でおとなしく待っていたのですが、ずっと続く胸騒ぎに耐えることができずに裏にある森へと向かいました。
森には諏訪子様が森を囲むように全力の封印を施してありますから、ここの封印が解けるなんてことはあるはずがないのです。その縄には縄の向こう側にあるものが見えなくなるような封印もしてあるはずなので、私などのような者が見てもただ森が続いているだけです。なにも異常がないことを確認してあの変な感じはなんだったのかと少し考え、神社に戻ろうとしたときに二匹ほど、妖怪が私の目の前に現れました。
「俺らの縄張りに入ってくるなんて、人間よぉ?いい度胸してるじゃないか?」
「最近妖怪しか殺してなかったから人間を殺すのは久しぶりで楽しみだ!」
私も神社の巫女をしているということで、人里を襲う妖怪を退治したりはしているのですが、この二匹の妖怪は私の力じゃとてもかないそうにありません。
この妖怪達がお互いに話している内容を聞いているとこの二匹がなんの妖怪かわかりました。
なぜわかるかといいますと、自分の縄張りに入ったものは人間でも妖怪でも絶対生かして返さない、ということで最近人里で有名になってきていた妖怪だったのです。
諏訪子様が言っていたのはこのことだったのかと思いましたが、だったらこの強力な封印はなんだろうと思いましたが、その謎が解ける前に私は死ぬようです。
「人間。最後に何か言い残すことはあるか?」
「俺たちは優しいからな。ちゃんと聞いてやるぞ。十文字までだがなぁ?」
二匹の妖怪は一斉に笑い出します。
私はちょっと力を抜いただけで涙が出てきそうでしたが、そこは頑張ってこらえます。そして最後になるはずであった言葉を、『諏訪子様、ごめんなさい。』と言おうとしたとき、封印の中から感じたこともないようなほどの膨大な量の妖力が出てきたのです。
私と妖怪二匹は恐怖で動くことができなかったのですが、首だけをゆっくり、ゆっくりと一人と二匹はその妖力の方向に向けます。
すると縄はボロボロに朽ちて封印が解けました。それと同時に森の奥が見えるようになったのと、今まで封印で抑えられていた妖力が私たちに襲いかかりました。私は気を失いそうになったけど最後に言葉だけでもこの世に残さねば死にきれないと、自分を奮い立たせ、なんとか気を失わずに済みました。
しかしすこしでも気を抜けば気を失ってしまうと思ったので、油断は禁物です。
私を殺そうとしていた妖怪達は私よりは妖力の影響を受けていないところを見るとそれなりに力がある妖怪だったことがわかります。
この妖力の前では手も足も出ませんが。
すると封印の奥から出てきた目が赤くて、ぼさぼさの黒い髪で、真っ黒で地面につくくらい長い服(永琳に作ってもらったロングコート)の男の妖怪が私達に気付くと、
「その人間はどうしたの?」
と話しかけてきました。やっぱり私はここで食べられてしまうのか、と思ったのと同時に妖怪達は、この人間をわたせば助かると思ったらしく、封印の中から出てきた妖怪にむかって、
「俺らの縄張りに入ってきたので、殺すつもりでした。最近は人間を殺していなくてつまらなかったので人間を前に気分が高揚していました。この人間はあなた様に献上します。」
「つまらなかった…とは?」
「あなた様もそこまで強いならわかるでしょうに。死ぬときに一番いい表情をするのは人間じゃないですか。妖怪を殺しても人間ほどいい表情はしません。」
「どこにでも娯楽で人間を殺す妖怪がいるということか…残念だ。貴様ら妖怪は私の糧となってもらおうか。」
と言い終わったと同時に会話をしていた妖怪がその場からいなくなり、代わりに赤目の妖怪がそこにいるだけでした。
「ひさしぶりに食事をとったな…さてもう一匹か。」
と言い終わるともう一匹いた妖怪も消えて、その場には赤目の妖怪と私だけになりました。きっと次に殺されるのは私だと思うと震えが止まらなくなってきました。
「大丈夫。俺は人間は食べないよ。」
~赤流side~
久しぶりの食事でちょっと気分がよくなる。
のはいいんだが巫女服を来た女の子がすげぇ怯えてる。
人間は食べないとは言ったものの信じていないっぽい。
どうしようかなとか思っていると神力の塊みたいなのがこっちにすごい速さで向かってきてる。そのまま神力の塊がここに着くと、その神力の塊が俺の前に立ちはだかり、俺に向かって、
「私の封印が解けたから急いできたと思えば、貴様、沙苗になにをした?」
とかちっこい神?が言ってきたんだけど俺悪者じゃないし。助けてあげたのに。
「待ってくれ、俺はこの子が妖怪に襲われていたから助けてあげただけだ。」
「妖怪が人間を助けるだと?信じられないな。その口もとの血はどうした?」
そう言われてハッとする。そういえば月夜見が俺が伝説になってるとか何とか言ってたっけ。これだ!
「この子を襲っている妖怪を食べた。お前たちは聞いたことがないか?妖怪を食べる妖怪って話をさ。それ俺なんだわ。だから人間は食べないってことだ、わかったか?」
すると神力を結構もっているちっこい神がそれはもうものすごい顔をして、
「貴様…私をおちょくるとはいい度胸だ!」
神力の塊をこっちに投げてきた。どう投げればあの小さい体からこんな速さで神力を投げれるのか。油断してたらたぶん食らってたわ。油断してたら、ね?
俺は黒い蛇を具現化し、神力を食べるよう命じる、頭の数は九つだ。
ちっこい神は急に現れた蛇に驚き、その蛇の頭の数に驚き、その蛇に自分の神力を食われたことに驚く。三回連続。
「これで信じてくれたかな?」
「諏訪子様。このお方は本当に私を妖怪から救っていただきました。さきほどまでは信じることができず申し訳ありません。」
「仕方ないよ、もし俺が反対の立場だったらすぐに信じることなんてできないさ。
だからまだ信じることはできてないと思うけど、信じてもらえるように頑張るよ。」
「ありがとうございます。」
まだ巫女の子は震えてるけど信じてくれたっぽい。これから仲良くなれるといいな。
「で?」
ちっこい神のこと忘れてた。
「あー申し訳ない、忘れてたよ。ちっこい神さん。」
「あーうー!ちっちゃくないもん!私には洩矢諏訪子って名前があるの!」
「そうか、よろしく諏訪子。俺は赤流だ。というわけで俺は人間は襲わない。だから警戒を解いてくれないか?そうだ、巫女の子の名前は?」
「まだ名乗ってませんでしたね。私は沙苗と申します。忘れないでくださいね?」
「沙苗こそ忘れないでくれよ?」
「あんたほんとに妖怪を食べたの?」
諏訪子が俺をつついてくる。
「とりあえず落ち着いて話せる場所に言って話したいんだが、どこかないか?」
「それならすぐそこに私の神社があるから、とりあえずそこにいこうよ。」
「私は諏訪子さまの神社の巫女なんですよー」
なるほど、諏訪子が沙苗のことを守ろうとしていた理由がわかった。
歩いてすぐに神社についた。五分もかかってないんじゃないか?
「そういえばどうやって私の封印を解いたの?封印を解くために必要な術とかもあるのに…もしかして術知ってた?」
諏訪子が俺に聞いてきた。
「なんか知らないけどちぎろうとして、力こめて近づいたら勝手にちぎれたよ。」
「どれだけ妖力だしてたのさ…」
「でも全開の半分くらいだよ?」
「赤流の全開を見てみたくなるね。」
「そういえばなんで俺の周り封印してたの?」
諏訪子は、あぁと声を出し、
「初めて森に入った時にね、眠ってるような妖怪とその周りある結界みたいなの
があって、妖怪を囲んでる結界に触れた奴がその結界にすいこまれていなくなった所を偶然見かけちゃって、結界を解こうとしたんだけど結界に神力がすいとられて、埒があかないから、もしそのままにしておけばいずれ人間も吸い込んでしまうのではないかと思ってね。信仰してくれる人間が次々と減っていってしまうのは大変だから、少なくとも人間だけでもこの森に入れないようにしなくては、と思ってね。」
「なるほどねぇ…でも俺がもういなくなってその結界もなくなったからもう封印する必要はないんじゃないか?」
俺が気を失ってる間にそうやって吸い込んだ分の妖力や神力も俺の力になってるってわけか。
「なんで結界がなくなってるの?」
「あーもしかして気づいてなかった?その結界の中にいたの俺だよ。」
ええええええええっ!?
諏訪子が祀られている洩矢神社から諏訪子の驚きの声が響き渡った。今日4度目か。
そのあとは諏訪子からなんで結界を張ってたの、とかなんで気を失ってたの、とか質問攻めにあった。一応質問には全部答えている。諏訪子は一回一回あーうーとか言っててかわいい。
そう質問攻めにあっていると、沙苗が夕飯を作ったらしく俺たちを呼びに来た。
沙苗は俺の分の夕食も作ってくれたらしく、ありがたくいただくことにした。
諏訪子はまだ質問し足りないっぽかったが、沙苗が、
「赤流様が困っていらっしゃいますのでそろそろ質問はやめてあげましょう?」
と助けてくれた。ありがとう、そういう気遣いができる人俺は好きだよ。
って言ったら顔を赤くして、小さい声で
「ありがとう…ございます…」
と言ってた。うーん、ここにはかわいい生き物しかいないのか?
ご飯を頂きながら、これからどうするの?と聞いてくる諏訪子に対して野宿は慣れてるからしばらく野宿かな、と答えると
「じゃあ赤流は今日からうちに住むといいよ!うんそうしよう!
「いいですね諏訪子様!」
こっちは普通にうれしいんだけど、今日初めて会った奴とこれから一緒に住むとか大丈夫?と聞いてみると諏訪子は
「私の代わりに人里を襲う妖怪から人里を守ってもらうから大丈夫。ね?私にも利益あるでしょ?」
別にいいんだけどせめて聞くとかはしてほしかったな~
沙苗は
「助けていただきましたので悪い妖怪ではないことを知っています!ですので問題ありません!」
それでいいのか?
まぁ野宿するより絶対こっちのほうがいいので俺は洩矢神社に住むことになりました。俺はいったい何年ほど寝ていたのだろうか…
赤流君が1億年ほど気を失ってたと知るのはまだ先の話。
気を失いすぎじゃないかって?それくらい防御壁が強くて燃費悪かったってことにしといて。俺の文才じゃ一億年も赤流一人の生活を書くのは無理です。