大人ピーシェが頑張る話。合同コラボ   作:ほのりん

8 / 24
【登場人物】
ピーシェ、ルナ

※今回のお話はある程度台本形式ではありません。


湯けむり姉妹

《旅館》

 

 見た目は年季の入っている木造建築の旅館で、少し古いがよく手入れされているのかわかる。おそらく長年人気の温泉なのだろう。

 

ピーシェ「つきました。ここです」

ルナ「わぁ…風情がある旅館だね」

ピーシェ「はい。私も初めてきたのですが、良いところですね」

 

 ピーシェは外観を見ながら微笑み、ルナの手をつな……。

 

ピーシェ「おっと……すこし慣れなれしすぎますね」

 

 苦笑いして、手を引っ込めた。

 

ルナ「…ううん。いいよ、手、繋ご?」

 

そんなピーシェへルナは優しく微笑み、手を差し出した。

 

ピーシェ「あ……うん。そう……だね」

 

 ピーシェは妙に挙動不審になりながらルナの手をつなぐ。

 おそらくわからないのだ。どう接したら良いのか。ミキはおとなしく、あまり人と馴れ合いそうな雰囲気ではなかった。

 ピーシェはなれていないのであろう。この二人の状況に。

 

ルナ「ふふっ…嬉しいな、こうやってお姉ちゃんと手を繋ぐの」

 

 ルナはそう言いながら、繋がれた手を見つめる。温もりが伝わるそれを、言葉通り嬉しそうに。

 

ピーシェ「……小さいね、ルナちゃんの手」

 

 ピーシェは優しく見つめながら手を優しく握る。

 

ルナ「そうかな。お姉ちゃんの手は柔らかくてあったかいね」

ピーシェ「……それ、ミキにも、言われた」

 

 少しだけ、ほんの少しだけ挙動が落ち着いてきているのがわかった。

 ピーシェは少しほほえみ、その建物に足を踏み入れた。

 

ピーシェは「すいません。これお願いします。温泉二人」

店主「はいはい、一泊の温泉付き2名様ですね。」

ピーシェ「? ちょっと待ってください」

ルナ「一泊? お姉ちゃん、ここにお泊りするの?」

ピーシェ「そ、そんなはずは……」

 

 ピーシェはすぐに差し出したチケットを取り、内容を確認する。

 

ピーシェ「……ホントだ。これ宿泊のチケットだ……」

 

 ピーシェが目を白黒させる。

 どうやらピーシェ勘違いしていたらしい。

 

ピーシェ「えっ……ちょ…まっ……えぇ? これ……どうする?」

 

 ピーシェは目に見えて動揺している。

 ルナは姉のようなピーシェしか見ていないので、これはこれで新鮮だ。

 

ルナ「あっ……うん。せっかくだから、泊まっていこうよ。これはこれでいいと思うんだ」

 

 そのピーシェの姿に最初は少し驚いていたものの、同じように動揺することなく、逆に冷静になれたルナは、落ち着いてそう提案した。

 

ピーシェ「……そう……だね。ごめんね、日帰りのつもりだったのに、丸一日時間割いちゃって」

 

 申し訳なさそうにピーシェは謝罪する。

 

ルナ「謝らないでほしいな。私はむしろお姉ちゃんと一緒にいられる時間が増えて、とっても嬉しいから」

 

 そう微笑むルナの顔は今の言葉に嘘偽りがないことをはっきりと表れていた。

 

ピーシェ「ありがとう……」

 

 その笑顔を見て安心したように、ピーシェもまた微笑みを返す。

 

店主「あのーっ……」

「「……っ!」」

 

 その瞬間、目の前しか見えていなかった少女達はその場に人がいる事を思い出し、瞬時に顔が朱色に染まる。

 

ピーシェ「で。ではっ! 二人一部屋でお願いします!」

店主「かしこまりました」

ルナ「あぅ……」

 

 ルナはその羞恥心から朱色に染まった顔を隠すように、ピーシェの背へと少しだけ隠れた。

 そして二人は部屋の鍵を貰うと、目的であった露天風呂へと向かった。

 

 

 

《お風呂》

 

 少しの水分の匂いと、頬をつたう湯気の温かみが感じる脱衣室。

 人の影はなく、まるで二人しか存在しないかのようだ。

 

ピーシェ「ひといない……」

ルナ「なんだか貸し切りみたいだね……」

ピーシェ「だね。女二人で貸し切りなんて、色気ないことこの上ないけど」

 

 苦笑いを浮かべ、ピーシェは来ていたジャージをするり…っ、と脱ぎ始める。

 

ピーシェ「とりあえず入りましょうか」

ルナ「うんっ」

 

 ルナはピーシェの言葉に元気に頷くと、服を脱ぎ始める。まずは上着を、とパーカーを脱ぎ脱衣所に置かれたカゴへ入れ……視界の端に映った肌色に目が釣られピーシェの体を見ると、その美しさに見惚れ固まった。

 ピーシェの身体はとても引き締まっていて、とても女性らしい体をしている。綺麗な黄色の髪は流れるように胸元に掛かっていて自然とそちらに目が言っいってしまう。そしてそこから見える引き締まった足。女性のルナからしてみても、とても魅惑的だ。

 

ピーシェ「? どうしました?」

ルナ「…あっ、え、えっと…その、綺麗だなぁって……」

 

 ピーシェに話しかけられ、ようやく自分が見惚れて動きが止まっていたことに気付いたルナは、何と言おうか迷った結果、素直に自分の思ったことを伝えた。

 

ピーシェ「綺麗?」

 

 首を傾げ、ゆっくりとピーシェは振り向く。

 そこには、体重計があった。

 

ピーシェ「……あれが?」

ルナ「ち、ちがうよ! さすがに体重計をそう思う感性は持ち合わせてないよ!」

ピーシェ「びっくりした……そういう癖なのかと……」

ルナ「違うよ、もう……ただお姉ちゃんの体が綺麗で見惚れてただけだよ」

 

 ルナはピーシェの言葉を否定した後、残りの纏う服を脱ぎながら言った。

 

ピーシェ「そうですか? 綺麗なのはそちらのほうでは?」

 

ピーシェはじっと、脱いで露出されたルナの肌を凝視する。

 

ルナ「ふぇっ!? わ、私はそんな…お姉ちゃんと比べたら全然だよ……!」

 

 そう照れて謙虚に言うルナの肌は穢れを知らないようなシミ一つない白い色をしている。そしてその白さがよく合う銀よりのプラチナブロンドのミディアムロングの髪。ピーシェと比べれば小さい、けれど並以上にはある二つの柔らかそうな膨らみ。成熟とも未成熟とも取れる、ルナはまさに年頃の少女のような体つきをしていた。

 

ピーシェ「そうですか? とても未来有望そうな身体をしてますが」

 

 髪を弄りながら、ピーシェはクスクスと微笑みを浮かべた。

 

ルナ「も、もうっ…!」

 

そう怒っているかのような言葉を発するもその声に怒りの色はなく、むしろその表情はピーシェの言葉に嬉しさを隠せていなかった。

 

ピーシェ「ふふっ……では、入りましょうか」

 

 その表情に笑みを浮かべ、ピーシェはタオルを持って浴槽があるところ前まで歩く。

 

ルナ「あっ…うん!」

 

その笑みに釣られ先ほどまでの恥ずかしさを忘れて笑顔に。すぐに髪のリボンは外し、髪を頭の高い位置に結って、ルナはピーシェを追いかけるように浴室へと向かった。

 

 

 

《温泉内》

 

 ガラガラッ──。

 引き戸にピーシェが手をかけ、あけると小さな音が響く。内装はとてもきれいで、隣には富士山の絵がか書かれている。

 右側には身体を洗うシャワーがあり、左手には水風呂や電気風呂、少し変わった浴槽があり、そして真ん中にはとても大きな四十度ほどに調整された浴槽がある。

 

ピーシェ「さて、まずはからだ…っと」

ルナ「うん。…あ、お姉ちゃん、背中洗うの手伝うよ」

 

そう言ってルナは手にボディソープを垂らし、両手に馴染ませ泡立たせ始めた。

 

ピーシェ「えっ? あらってくれるの……?」

 

 ピーシェはスポンジが無いことにスルーしつつ、苦笑いをする。

 

ピーシェ「え、えっと……じぶんで…やるから…ね?」

ルナ「えー…お姉ちゃんの背中を洗うの、今回のお風呂で楽しみにしてたことの一つなのに……」

 

ルナは不満な声をあげ、しょぼんと落ち込みながらそう言った。

 

ピーシェ「うっ……そんな顔されると……。わかったわかった。背中お願いね」

ルナ「~~、うんっ! ちゃんと洗うからね安心してね、お姉ちゃんっ!」

 

ピーシェの許可が出た途端喜びが顔に出るルナ。そして上機嫌のままピーシェの背中に手を滑らせる。その手付きはルナの今のテンションとは裏腹に落ち着いた、優しい触れ方だった。

 

ピーシェ「ぅ……っ……んっ……!」

 

 優しく触れていると、ピーシェが何かを我慢するように声を漏らしているのがわかる。

 

ピーシェ「……ひゅぅ……! ……ぅあぁ……っ!」

 

 そのピーシェの瞳は火照っていて、あせがじんわりと身体からつたっていく。

 

ルナ「…? ど、どうしたの…? もしかして痛かった……?」

 

何かダメだったのだろうか、とルナはピーシェの様子に不安になり、手を止めた。

 

ピーシェ「あ……、そういうのじゃないんだけど……」

 

 ピーシェはすこし口をモゴモゴさせてから、重い口を開いた。

 

ピーシェ「ちょっと……私は、肌弱くてね、他人に触られるのは……慣れないんだ」

ルナ「あっ…ご、ごめんお姉ちゃん…私がやりたがったからお姉ちゃんに我慢させちゃって…その、やめる……?」

 

自分の気持ちを優先しすぎてピーシェの気持ちを考えていなかったとルナは落ち込みながら反省し、やめるかどうか訊く。

 

ピーシェ「だ、大丈夫。妹がやりたいって言うんだもん……すこしは耐えなきゃね……?」

ルナ「そう…? そう言ってくれるなら…でも痛かったり嫌なところがあったら言ってね」

 

そう言ってルナは洗うのを再開する。だが先ほどよりもより姉の体に優しくしようとしてしまって手付きがさらに優しくなってしまい……

 

ピーシェ「んっ……ぁぅ……っ!」

 

 先程よりもどかしく、むず痒いまるで静電気を浴びせられてるような感覚がジワリ、ジワリ、と伝わっていき、結果的に格段に肌が敏感に反応してしまっている。

 

ピーシェ「ふぅぅ……んっ! ……ぅぁ……!」

ルナ「…うーん……」

 

そんなこととは露知らず、どう洗えばピーシェが喜んでくれるような洗い方が出来るのか考えながら手を動かすルナ。時々声が聞こえても、お姉ちゃんは私の為に我慢してくれているからと手を止めず洗う。

 そして、背中が完全に洗い終わったが、どうすれば喜んでくれるかを考えていて、そのまま腕の方も無意識にやろうとした。

 そのとき──

 

ピーシェ「すっ、すとっぷ!」

 

 大きな声に、ルナの手が静止する。

 

ピーシェ「もう……いいよ……ありがとう」

 

 何故か乱れた呼吸法を整えながら、ピーシェはそういった。

 

ピーシェ「さて……、次はルナの番だね」

ルナ「ふぇっ!? わ、私はいいよ、じぶんでやるから……」

 

自分が口にした言葉をルナは意識していなかったが、先ほどピーシェがルナの申し出を断った時と同じ言葉を口にしていた。

 

ピーシェ「いいや。やる、嫌と言われても、ルナ。覚悟してね?」

 

 そう言って、ピーシェは優しくルナの身体を洗い始めた。

まるで慈しむように優しく、子供をあやすように丁寧に洗う。

 

ルナ「っ……んっ……っぁ……」

 

その丁寧な手つきはこそばゆくもあり、けれどルナはその手のぬくもりや優しさに心地よさを感じる。ずっとしていたいと、そう思う心地よさと気持ちよさを感じていた。

 

ピーシェ「ふふっ……ルナ、かわいい……。とっても……」

 

 耳元で囁かれたその言葉は甘く、まるで身体の芯から溶かされ、自分自身がおかしく、壊れてしまいそうな感覚なのに、何処か心地よく、自分の心臓の鼓動が無意識に早くなる。

 

ルナ「にゃ…ぁぁ……んぅ……」

 

これ以上はまずい。そう頭のどこかで警鐘がなっている。けれどそれすらも段々と聞こえなくなっていくピーシェのテクに、ルナはとろけていく。

 

ピーシェ「……ねぇルナ、そっち見すぎだよ」

 

 ピーシェは優しく触りながら、まるで自身の子供を寝かしつけるような口調で囁く。

 

ピーシェ「今貴女……、別のことに目を向けてたでしょ……? だ、めっ」

 

 包み込むようにルナを抱きしめて、ピーシェは微笑み。

 

ピーシェ「ちゃんと私だけ見てよ……、ここには私達しかいないんだから……。他の人なんて忘れて…、ルナ。私だけを見て…」

ルナ「ぁっ……おね、ちゃ──」

 

 その言葉にルナの頭の中はピーシェで埋まっていく。直接伝わる肌の感触。心が安らぐその微笑み。他の思考を溶かす優しい声。安心する匂い。触覚視覚聴覚嗅覚、五感のうち四つの感覚がピーシェで染まる。もうそのままいいんじゃないか。そう思ってしまい「お姉ちゃん」と口にしようとして──その瞬間、頭の中に何かがよぎった。正確には分からない。けれど確かによぎった、誰か。このまま身を委ねてしまえば、その誰かが悲しむとルナはそう分かって──

 

ルナ「だ、だめっ!」

ピーシェ「っ!」

 

 少し驚き、ピーシェは下がった。

 

ルナ「…ぁっ、あの、ごめ…でも、あの……!」

 

ピーシェを拒んでしまった。けれどあのままだったらきっと悲しいことが起きていた。それを言いたいけど、自分の気持ちさえもまとまらない。どうして自分はピーシェを拒んでしまったのかも分からない。だからこそルナは説明をしようにも、言葉がままならなくなってしまっていた。

 

ピーシェ「……」

 

 ピーシェは軽く微笑み、浴槽に向かう。

 

ピーシェ「お風呂に浸かりましょうルナさん。悪ノリが過ぎました」

ルナ「う、うん……」

 

そう言われ、ルナも体を洗い流して続く。せっかくのピーシェの好意を拒んでしまった、嫌われてしまったかもしれない。そのことでルナは落ち込み、けれどちゃんと説明するためにも、と考えたそのときにはもうすでに、頭の中に誰かがいたことさえも忘れてしまっていた。

 

ピーシェ「そうだ。ルナさん。ご家族は?」

 

 浴槽に浸かり、ピーシェはそんなことを聞いてきた。

 

ルナ「っ……か、家族か…えと…わかんない、かな。今の私になる前の記憶は、全然ないから…はは……」

 

ピーシェのその言葉に、その呼び方にルナは気付き…けれどそれに気付いていないように答え、自分の中の気持ちを誤魔化すように笑った。短い、楽しいという感情なんて何も入っていない笑いを。

 

ピーシェ「そっか」

 

背伸びをしたあと、ピーシェは続けた。

 

ピーシェ「多分、きみ、姉いるよ」

ルナ「…へ?」

 

ピーシェのその言葉に、一瞬何を言われたのか分からず、思考が停止し、ルナは間抜けな返しをしてしまう。

 

ピーシェ「勿論、確証はありません。しかし根拠はあります」

 

 そう言って、ピーシェはルナの頭を撫でる。

 

ピーシェ「イリゼさんや私、妙に年上の女性に飢えてる事に加え、私がルナちゃんを妹扱いしてもすぐにそれには気が付かなかった。つまり『元々当たり前だった』可能性があるんです」

 

 優しく、ゆっくりと頭をなでながら、話を続ける。

 

ピーシェ「だから、と言うわけではないですが。少しでも姉になろうと、出来るだけ気に掛けましたし、先程は口調も少し変えてみました」

ルナ「そう、なの……?」

 

頭を撫でられることで固まった思考が解れ、再び動き出す。けれどピーシェから言われる言葉に、その意味に頭の中が混乱しそうだった。けれどそれでも混乱せずピーシェの言葉を最後まで聞けたのも、ピーシェが優しく、ゆっくりと頭を撫でながら言ってくれたからで。だがルナ自身にその自覚はなく、姉がいたなんて言われても実感が湧かなかった。

 

ピーシェ「さっき、私のこと避けたでしょ。あれは典型的な現れ、これ以上はあの人じゃなきゃ駄目っ。そう無意識に考えたんだよ」

 

 優しい水の音を感じながら、話を続ける。

 

ピーシェ「元々、愛に飢えてると思ってたから姉っぽく振舞ってたんだ。でももうその必要もないかな。どうやら、私じゃ満たせないみたいだからね」

 

 少し悲しそうな表情を見せてから、ピーシェは優しく微笑む。

 

ピーシェ「きっと記憶を取り戻してね。どんなに辛い過去でも、あなたの人生は、愛情に溢れたもののはずだから……」

ルナ「…うん。絶対、取り戻すよ…何があっても、絶対。きっと“私”にとってもとても大切な記憶のはずだから。

…でもね、不安なんだ。だから、約束したいことがあるの。この気持ちを、決意を持ち続けるための約束を」

 

 ルナは改めてピーシェを見て……二人はある約束をする。いつか守り、果たす約束を。

 

 

 

 

 

《部屋》

 

 二人一部屋のその部屋は、まさしく旅館のすべてを象徴した部屋だった。テーブルにあるせんべい、テレビ。小さいトイレ付きの浴槽。 しかし…

 

ピーシェ「ベッドぉ……」

 

 強いて不満を上げるとするなら、ベッドが一つしかないということだ。

 

ルナ「あ、あはは……二人のはずなのに、なんでだろうね……?」

ピーシェは「……おかしいな…人気な旅館が欠陥だら──」

 

 ピーシェは、ポケットに入れていたここの旅館のパンフレットをみて、察した。

 『恋が成就?! カップルに大人気!』

 

ルナ「…はは。そうだね、一泊二人ってそういうの多いもんね……」

 

苦笑いしていたルナは、今度は乾いた笑いを漏らす。それは最初の招待券のこともだが、部屋のことにも頭の回らなかった自分に、どれだけ楽しみにしていたんだと呆れたからであった。

 

ピーシェ「そっかぁ……。さて」

 

 ピーシェは考え込む、その後。 仕方ないとため息をついた。

 

ピーシェ「私はそこの椅子で寝るね」

ルナ「うぇっ!? だ、ダメだよ! おね…ピーシェがベッド! 椅子には私が寝るから!」

ピーシェ「いやいや! 子供にそんなことさせれるわけないでしょ?! ルナちゃんがベッド!」

ルナ「それを言ったら女神様にそんなことさせられないよ! お姉ちゃんがベッド!」

ピーシェ「常識考えてよ女神様が妹椅子でねさせるわけないでしょ!! ルナがベッド!」

ルナ「そんな常識どうでもいいよ! お姉ちゃんがベッド! これ絶対!!」

ピーシェ「じゃあお姉ちゃん命令! ルナちゃんがベッド! だんじて!」

「「むむむむむっ!!」」

 

 

 

「「……」」

 

 結局、1時間ほどにらみあい、ピーシェが代案を口にした。

 

ピーシェ「もう……二人で使おう」

ルナ「…だね……それがいいよ……」

 

 ルナは少し疲れたように、ピーシェの言葉に同意した。

 そして、二人は布団に入った。

 

ピーシェ「……」

 

 その瞬間、どこか落ち着くような、しかし落ち着かない。心臓の鼓動が早く制御が聞かない感覚に二人はおちいった。

 

ピーシェ「……なんか、はずかしいな…」

ルナ「そ、そうだね…あは、は……」

 

ルナの誤魔化そうとした笑いは全然誤魔化せず落ち着かない。さっきまではあんなにも安心して、落ち着ける場所だったはずなのに、今は何だかそわそわしてしまっていた。

 布団がこすれる音、目の前の姉と呼べるほど信頼している女性の火照り、体温、身体との摩擦の小さな音。すべてが鮮明に聞こえ、身体を支配してくる。

 

ピーシェ「……」

 

 ピーシェはじっと見つめてくる。まるで宝石のようなその瞳で、ルナを見ていた。まるで労るようなそんな視線だ。その瞳は美しく、何処までも吸い込まれそうなほど魔性の魅力を放っている。

 

ピーシェ「……ぎゅぅ」

 

 そして。

 突然、本当に突然だった。

 綺麗な瞳に心奪われていたその時、ルナの身体はピーシェによって包み込まれるように抱きしめられていた。

 

ルナ「ぅえっ……!?」

 

突然のことにルナの心臓が跳ね上がり、大きく早く鼓動する。ここに来る前であれば落ち着くものだったが、先の出来事のせいで緊張してしまっていた。

 

ピーシェ「よし……よし……」

 

 ピーシェは優しく、少女を落ち着かせるように頭をなでた。

 

ピーシェ「ごめんね」

ルナ「…どうして、謝るの……?」

 

頭を撫でる優しさはルナの心臓を少しずつ落ち着かせる。しかしピーシェのその言葉が何に対してなのかは分からなかった。

 

ピーシェ「ほんとに……ごめん……、あの時……ずっと見守ってなきゃいけなかったのに……。貴女の苦しみに気がつけなかった……」

 

 ピーシェは少女を抱きしめる。優しく……そして強く。

 誰もいない、二人だけしかいない空間の中で、その世界の闇から少女を守るように強く……強く。

 

ピーシェ「ずっと一人で頑張って……我慢しすぎちゃったよね……」

 

 まるで少女のすべてを受け入れるかのように、優しく、そして傷つけないように丁寧に頭を撫でて、背中を擦った。疲れを溶かすかのように、きれいに丁寧に……。

 

ピーシェ「私の立場なんて、姉でも……母親でも……おばさんでも……なんでもいい。誰もいない……二人だけの時は、せめてその時だけは……自分を許してあげて……甘えていいんだよ……」

ルナ「…あぁ、そっか」

 

 ピーシェの言葉に、ルナは自分がピーシェの優しさを受け入れられずに壁を作ってしまっていたことを自覚した。けれど……

 

ルナ「…ごめんね。お姉ちゃん」

ピーシェ「……私は、何もしてないよ。さぁ、今は寝よう……寝れば嫌なことは無くなるはずだから……、今はゆっくり……それだけでいい」

 

 その言葉を皮切りに、少女達は眠りについた。深く───。

 今までの思考、体の疲労。今までの行動、それらをすべて、二人で協力し、無くそうとするかのように、少女達は眠った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。