作戦第一段階によって
ヤマト艦隊総旗艦ブリュンヒルトは赤く焼けただれた地球に正対し、その白きなめらかな艦体を衛星軌道上に倒立させる。これぞまさにヤマト作戦の真骨頂と言うべき壮観たる眺めだ。
その周りを護衛する同盟軍艦隊は自力での地球往還機能を持ち合わせていない。
「こちら北米大陸跡地、敵影なし」
「ユーラシアも同様だ。何もいない」
「アフリカもだ、一体どうなっている、」
ヤマト作戦艦隊の不安もよそに地上のレジスタンスたちは勝利の美酒に酔いしれていた。
今や戦艦ブリュンヒルトは大気を突き抜け、なめらかに天空をはばたく白鳥だ。
それはさながらヴァルハラを遊弋する戦乙女のごときであった──
* *
「参ったな、すっかり道に迷ってしまったぞ」
暗がりの地下迷宮を呑気に歩くヤンは軍人としての規律より歴史学者としての好奇心が勝ったようで、呑気にも迷いこんでしまった。
ふと上を見上げれば、赤茶色の岩盤が露出した低めの天井の上には天文学的単位の重量の岩盤が数千メートルにも渡って積載されているのだ。
その実感が彼を身震いさせる。
何億リットルもの血を湯水のごとく扱い親しい幕僚にすら被保護者を通して皮肉られる用兵家の彼がである。
岩盤から赤黒い水滴が落ちるる──
ヤンはふと足に違和感を覚え、下を見やると……
──司令官自身の左足から数リットルの血が上記に追加されていた。
銃口から白煙が立ち昇る。
凶器のトリガーにいまだ痩せこけた指をかけているアンドリュー・フォークははじめてヤン・ウェンリーを跪かせることに成功した快挙に酔いしれていた。
フォークがこの日自尊心を満たせたのはほんの数分の間でしかなかった。
銀河帝国皇帝の玉体で鉄拳制裁を受けることとなった自由惑星同盟軍予備役准将アンドリュー・フォークはぶざまに地に這いつくばっている。
ラインハルトの声が地下通路の露わとなった岩にこだまする。
「生きろ、生きて恥をかけ。どんな屈辱にまみれても、生き抜くんだ!」
レンネンカンプが顔を跳ねあげた。
「人間は弱い。間違える。それがどうした!?」
ラインハルトは刮目し、眉に力を込める。全宇宙全人類を統べるにふさわしい銀河帝国皇帝の顔だ。
獅子帝の金髪が神々しく揺れた。
「俺たちは──神じゃない!」
ラインハルトの一人称が社会体制に反発していた少年の心に戻り、理不尽な今に革命の嚆矢を放つ。
「神は恥を知らない」
駆けつけたレンネンカンプがフォークを羽交締めにする!
「恥をかくのも、間違えるのも、全部人間の特権なんだ!」
レンネンカンプはカートリッジらしきものを壁で叩き割る。
「何をしている!」
フォークにレンネンカンプは声を低めて答えてやった。
「ゼッフル粒子だ」
フォークのなまっちろい顔が青くなる。
自称軍師様は自分自身の身を守ることに関しては高度の柔軟性をもって臨機応変になど対応できていなかった。
洞窟にくぐもった爆発が響いた。
ヤンがラインハルトに肩を貸し、這い出てきた……
らいとすたっふルールに準拠しているか
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ルール違反
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ルール範囲内