銀河英雄伝説:改新篇   作:松コンテンツ製作委員会

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第四章「ハイネセンの落日」
第12話『ハイネセン騒乱』


 クーデター発生の報受け、戦艦ブリュンヒルト、ヒューベリオンらヤマト艦隊は急ぎハイネセンへと向かう。

「自治領主、今回の協力に感謝申し上げる」

「面目ない」

 義眼の参謀長が電子画面越しに労うはフェザーンの黒狐。

 ハイネセンでクーデターとの情報をリークしたのはフェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーであった。そう。自身の脳腫瘍の治療と引き換えに、地球教の動向をリークしたのである。

 策士策に溺れる。

 この改新篇の時空間では黒狐の脳腫瘍は早く進行していた。

 もはや策謀家に残されていたのは自身の身柄だけだった。

 ルビンスキーの目的は帝国と同盟を争わせ双方疲弊させフェザーンのアドバンテージを確立するところにあったが、帝国の全宇宙の覇権に経済的覇権を組み入れる形にシフト。それも結局はラグナロック作戦でオーディンは制圧。帝国の遷都先に選ばれてしまった。

 もともと地球教を化かしていたルビンスキーだが、地球教との関係は悪化、見限られたというわけだ。

 

 今、ルビンスキーの乗るシャトルが厳戒態勢でブリュンヒルトに収容された。

 

 ラインハルト帝とヤン総督の枢軸に、地球教を背景とするトリューニヒト議長が立ちはだかる!

 

     *     *

 

 体から蕁麻疹が出るようなトリューニヒトの演説が始まった。クーデターの大義を唱えようというのか。

 

『今やカイザーラインハルトは、普通選挙の導入というささやかな同盟の要望を帝国主導での制限選挙にすり替え、同盟に対して水面下の圧力を加え続けております。これに対し、私ヨブ・トリューニヒトは同盟市民の皆さんの声に推され決断致しました』

 

 トリューニヒトの勇壮な弁とともに、憂国騎士団がアジトでサーベルを振るい吠える。

 

『今、ハイネセン衛星軌道上には、同盟残存艦隊が集結し、本土の守りを固めております! ハイネセンを拠点に籠城し、自由選挙の願いをカイザーラインハルトに届け、民意を突きつけましょう!』

 

 明朗なる同盟国歌が皮肉な歌詞でトリューニヒトの感受性を酔わす。

 

 おお吾ら自由の民

 吾ら永遠に征服されず……

 

 プツン、とロイエンタールがテレビの電源を切る。

 会議室にはラインハルトとヤン双方の幕僚らが集結していた。

「つまりトリューニヒトは、自由選挙の導入を大義名分に新体制におけるトリューニヒト派の進出を狙い、それが叶うまでは実力部隊を用いて籠城するというわけか」

 ロイエンタールが低音の男らしい声でトリューニヒトを侮蔑する。

「困ったことになった。これではどう動いても同盟の市民感情を刺激してしまう」

 ミッターマイヤーが蜂蜜色の髪をかいて渋い顔をする。

「クーデターなど許さぬ!」

 獅子帝はいきり立った。

「クーデターに対してはあくまで武力による懲罰を加える」

「ラインハルト、それはどうかと思うよ」

 救国軍事会議事案で義父を亡くしていたヤンが唯一の友人として諫言する。

「立ったままで御意を得ます、カイザーラインハルト陛下」

「どうした」

「陛下、トリューニヒト派の自由選挙の要求を受け入れてください」

「大胆な発言だな」

 ラインハルトはユリアンをアイスブルーの瞳で睨みつけるが、彼はひるまない。

「トリューニヒト派の要求を一部受け入れれば、彼らの態度も軟化して軍を引かせるでしょう。そうすれば同盟市民の強硬派の不満も和らぎ、来たるべき総選挙の際に争点つぶしになります」

「ユリアン、お前の言うことはもっともだが、冷静じゃない。外の空気を吸ってきなさい」

「……はい」

「待て」

 渋々外に出ていこうとしたユリアンを当のカイザーが呼び止める。

 

「勅令により、ユリアン・ミンツ中尉に対し、観戦武官としての旗艦ブリュンヒルト搭乗を命じる」

 

 

     *    *

 

 72時間後、作戦会議は終わった。

 無限の星空の向こうに輝く一筋の光こそ、アーレ・ハイネセンが開拓した自由共和の楽園。

 その星を今からもう一度侵略するのだ。重圧は当然ある。

 戦艦ブリュンヒルトの艦橋で、ヤンとユリアンが紙コップの紅茶をすする。

「なるほど。ユリアンお前は選挙で僕が勝つことに賭けて、あえてトリューニヒト派の選挙の要求を受け入れることを提案したというのだね」

「はい。選挙戦で正々堂々ヤン総督が主張なさればきっと同盟市民はわかってくれますよ」

「選挙に勝ち、トリューニヒトを倒す。銀河帝国初代内閣総理大臣としての役目は引き受けよう。だが雄弁さは持ち合わせていないのでね、ゴーストライターはユリアンに任せるよ」

「そう言えばどうして総督はカイザーラインハルト陛下からの首相就任要請を受けたんですか? 普段の提督のお人柄から言ったら断るかと思っていましたよ」

「その通りさユリアン、僕は本当は総理大臣なんてまっぴらごめんだね」

 ヤンはスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めた。

「え、じゃあなんで」

「同盟の独立を守るためにマスコットになってるだけさ。トリューニヒトの前では義務感にかられたように演技したけどね」

「しかし変わりましたね総督は。政治家らしくなった」

「どういう意味だいユリアン」

 と、その時、

 

「皇帝陛下入られます!」

 

『ハイネセンカチコミ分艦隊、編成を完了』

『確認する、残置するヤマト艦隊の指揮はロイエンタール、ミッターマイヤー両提督が行う旨よろしいか』

『空間跳躍の準備、予定より3パーセント遅れています』

『フライホイールインジケーター、規定値で推移。帝国法令における艦艇運用基準をクリア』

『推力上昇、11600000トン』

 

「皇帝陛下、いつでもトリューニヒトを殴り込めます」

 

 銀河帝国皇帝は堂々と仁王立ちし、闡明した。

 

『これより本艦は、ハイネセンの国譲りを日本神話になぞらえたイズモ作戦を発動! 最高評議会ビルに奇襲ワープを行う!』

 

 虹色のリングがブリュンヒルトを包み甲高いマシンのうなりが皆の士気を昂らせる。

 

『帝国同盟有志から提供された冷凍生殖細胞および地球の動植物種子をブリュンヒルトより分離、これより分離ユニットをオオゲツヒメと呼称』

『ノアの箱舟、ラグランジュポイントに投入完了』

『これよりハイネセンカチコミ分艦隊をニニギ艦隊と呼称』

 

 ラインハルトが天孫降臨するニニギノミコトだとすればハイネセンに居座るトリューニヒトはさしずめオオクニヌシか。ならばハイネセンはスサノオか。出雲神話がヤマト政権に統合されたようにハイネセン神話はローエングラム紀に統一されるのか。

 

『全艦発進!』

 

 ワープの衝撃でユリアンの可愛い顔が歪む。が、ラインハルトは叱咤した。

「くっ……!」

「しっかり見届けろ、そのためにここにいるのだろうが!」

 

 ──ブリュンヒルトが次に現れたのは最高評議会ビルだった。ブリュンヒルトの艦首、その舳先が最高評議会ビルにコンと突き立てられ、トリューニヒトの執務室の窓ガラスがひび割れる。

 

 

『ラインハルト・フォン・ローエングラムより最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトに告ぐ。予は正々堂々と自由選挙とやらで民意による審判を受ける覚悟だ。クーデターの陣を解き、言論とペンで選挙を戦え!』

 

 

 

 




 国を譲らせる日本神話と出雲神話の関係を、ローエングラム神話とハイネセン神話になぞらえてイズモ作戦と名付けてみました。

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