銀河英雄伝説:改新篇   作:松コンテンツ製作委員会

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第14話『グリューネワルト大公妃殿下の恋人』

 銀河帝国帝都オーディンの守りはミッターマイヤーとロイエンタール両元帥が引き受けていた。そして山荘に住むグリューネワルト伯爵夫人を迎えに行く役目も彼らだった。

「大公妃殿下、ご報告がございます」

 アンネローゼは報道であらかじめ知っていたものの、彼らは改めて説明した。

 ラインハルトがヤンを政治家として登用し、ヤンがあくまで民主主義を守るためにトリューニヒトに対抗する枢軸をラインハルトと組んだこと。

 地球教を叩いたこと。

 同盟と行政協定を結び、まもなく選挙があること。

 アンネローゼはそっと胸を撫で下ろした。

「そう、、、弟が人を許し、同盟の人たちとも融和しているのですね」

 白桃のワインの栓が開けられた。

 鳥が鳴き出し、針葉樹が夕焼けを背景に風でかすかに揺れる。

「大公妃殿下、夜は危ないのではないですか? 私ロイエンタールが泊まってお守りしましょう」

 ロイエンタールの目は鋭くらんらんと光っていた。

 清純でうぶなアンネローゼは顔を真っ赤にして俯く。

 ゴホン、とミッターマイヤーが咳払いをひとつ。

 彼は気を利かせて席を外した。

「ロイエンタール、くれぐれもカイザーを怒らせるなよ」

 ミッターマイヤーは心配そうにロイエンタールの肩に手を置いた。

 ロイエンタールは不敵に笑うだけだった。

 

 ミッターマイヤーは去った。

 

 ロイエンタールはアンネローゼに拝跪して手の甲にくちづけを落とし、お姫様抱っこし、寝台へと運ぶ。

 ロイエンタールがアンネローゼを押し倒す!

 

「皇帝の寵姫であり、マインカイザーの姉君である貴女は、俺如きの夜伽では満足いただけぬかな?」

「ロイエンタール元帥、そんな、ひどいわ」

「大公妃殿下、ずっとこうしたかった」

 この時ロイエンタールはリヒテンラーデ一門に連なる女とも関係を持っていた。が、今は関係ない。

 ……衣擦れの音とロイエンタールの男らしいため息、アンネローゼの甘い息がまじりあう……

「大公妃殿下」

「アンネローゼでよくてよ」

 ロイエンタールがアンネローゼの黄金の髪を優しく撫でる。

 夜は更けていった……

 

     *     *

 

 銀河帝国の親衛隊と自由惑星同盟の警察双方の責任者がテントでヤン総督私邸宅の警備計画を打ち合わせる。ヤン衆議院議員、ヤン内閣総理大臣が誕生した場合、ここは一種の聖地になってしまうからだ。

 すでにマスコミをシャットアウトしているのに四苦八苦している状態だ。

「ただいま帰りましたよっと」

「お邪魔する」

 ヤン・ウェンリーは銀河帝国からの客人を連れて帰宅した。

 ユリアンが先に上がり、紅茶を淹れる。

「カイザーラインハルト陛下はコーヒーの方が良かったんでしたっけ」

「いや、紅茶をもらおう。それと仰々しい呼び方でなくていい」

「じゃあラインハルトさん」

「ぷっ!」

 ヒルダとフレデリカが吹き出した。

「借りるぞ」

「どうぞ」

 ラインハルトはヤン邸の蔵書の山を見上げ、数冊を手に取り、ソファーに腰を沈めた。

 高級ホテルに滞在する予定だったが、早めに切り上げ、ヤン邸にお泊まりすることにしたのだ。

 

 ここから、ヤン衆議院議員候補の選挙戦の準備が始まる。

 その一方で、ロイエンタールとアンネローゼは不穏な動きを見せているのだ。




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