「君たちはここまででいい」
「は」
内務警察に金貨が渡され人払いされる。
銀河帝国内務次官ハイドリッヒ・ラングの捜査対象には悪徳政治家トリューニヒトも含まれていたが、彼らは事情聴取にカムフラージュして密談していたのである。
「新しいネタだ」
「ご苦労」
同人種のにおいがする彼らにとって、もはや敬語は不要だった。
ラングが茶色の封筒から写真を取り出し、トリューニヒトが手に取り一瞥する。
「大公妃殿下はロイエンタール元帥にご執心のようだね」
「ロイエンタール元帥のような野心あふれる鷹を放置するのは私の出世にとって危険だ。同盟にその翼を広げて愛の逃避行をしてくれればよいのだがね」
「よろしい! お二人を同盟の亡命者として迎えよう」
トリューニヒトのそれが実現すれば、アンネローゼが女帝となる銀河帝国第二次亡命政府が誕生し、軍権を握るのがロイエンタール元帥ということになる。
「私は地球が好きでね、地球に遷都しても構わないと思っている」
その場合、とうぜんカイザーラインハルトは烈火のごとく怒り、全軍を挙げて討伐に向かうだろう。
そのためにも、タイミングを合わせた地球教の武装蜂起が必要不可欠であった。
「地球教の生き残りの糾合は進んでいるのか?」
「問題ない。トリューニヒト派の傘下として動かしている」
ラングは地球教と癒着関係にあるトリューニヒトに再確認した。ヤマト作戦で地球教総本山はヒマラヤ山脈ごと粉砕されていたからだ。
あの時無人戦艦爆弾の業火に焼かれたのは何も知らない庶民の信徒とサイオキシン麻薬漬けで廃人となった信徒だった。つまり、要らない者を人柱にし、あたかも地球教殲滅を旨とするヤマト作戦が成功していたかのような偽装工作をやってのけたのだ。
ド・ヴィリエ以下地球教徒の中でも政略を好む者たちは脱出し、トリューニヒトの従兵として隠密行動をとっている。
トリューニヒトは証拠写真を暖炉にくべた。
「ではこれにて最高評議会議長閣下。捜査へのご協力感謝します」
* *
カール・ブラッケとオイゲンリヒターがヤン邸を訪ねてきたのは、自由共和政体における政治家の育て方に熟知しているからだった。
「卿らは予のことを、暴君になる危険性がある、そのためには民主主義の土壌を押し広げねばならぬ。その旨発言したらしいな」
「一言一句そうではありませんが、事実です」
「よい。いちいち咎める気はない」
この日かれらは新政権とそれを実現するための新党について意見を戦わせていた。
「ならば私からも提案がある」
オーベルシュタイン軍務尚書が持ってきたのは──辞表。それと提案書。
「陛下、私は民衆からの歓心が悪いのは自覚しております。私を一旦降格なさるがよろしい、そのうえで私は事務担当の内閣官房副長官に収まるのです」
オーベルシュタインは自らの策謀のためなら自らの降格人事もいとわない。
「カール・ブラッケ、オイゲンリヒター両名にも政務担当内閣官房副長官として入閣していただく」
「うむ、異存はない」
「ヤン候補、新党の名前は決まっているのか?」
ラインハルトがたずねると、ヤンは照れくさそうに一枚の紙を出した。
かくしてヤン新党は改新党、と命名された。
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