第16話『衆議院議員候補ヤン・ウェンリー出陣壮行会』
宇宙歴799年11月3日。この日、自由惑星同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトは議会を解散。銀河帝国と自由惑星同盟双方の命運を占う選挙戦に突入した。
情報戦、経済戦も進行していた。アドリアン・ルビンスキーは選挙に関する欺瞞情報を知人の地球教徒に送り続け、個人資産をマネーロンダリングにより間接的に改新党に政治献金。
同盟首都星ハイネセンの大型商業施設をテナントとして借りた選挙事務所には、改新党ハイネセン1区選挙支部事務所兼衆議院議員候補ヤン・ウェンリー選挙事務所が設けられ、その演劇ホールには銀河帝国大本営将帥幕僚とヤン総督府主要幹部が集められ、衆議院選挙に向けた最終的な人事が発表されていた。
壇上に立った銀河帝国皇帝が凛とした声で雛壇に座る同盟領総督を呼び、ヤンが直立不動で侍立する。
「銀河帝国は行政協定に基づき、ヤン・ウェンリー同盟領総督を内閣総理大臣指名に見据えた衆議院議員候補に擁立する」
「承知しました」
「ヤン・ウェンリー、選挙戦を勝ち抜き、同盟市民の権利を守り、銀河帝国の国政の全権を掌握せよ」
ラインハルトは推薦状を交付し、ヤンは左の脇に収める。
「続いて、ヤン陣営の人事に移ります」
オーベルシュタインがマイクを握り、役員名簿を読み上げる。
「政務担当秘書カールブラッケ、同オイゲンリヒター、事務担当秘書と統括責任者は小官が務めます。いずれもヤン政権樹立後は内閣官房副長官に横滑りで就任します」
3人が壇上から頭を下げる。
「以下、会計責任者アレックス・キャゼルヌ大将、後援会長アレクサンドル・ビュコック元帥、選挙対策本部長ムライ中将、青年部長オリビエ・ポプラン中佐、女性部長フレデリカ・グリーンヒル少佐、学生部長ユリアン・ミンツ中尉! それぞれ推薦します」
「はっ!」
「選挙戦実働部隊には、エドワーズ委員会有志が協力します」
ここで拍手が送られる。
「エルネスト・メックリンガー上級大将、メディア芸術による宣伝戦略を立案し、選挙戦に参加せよ」
「はっ!」
「ウルリッヒ・ケスラー上級大将。憲兵総監として不正のひとつも見逃すな!」
「はっ!」
大迫力の決起集会の前半は終わった。
続いて、ヤン・ウェンリーにマイクが渡され、決意表明の時間となる。
──聞こえているか、ジェシカ。
──聞こえているか、ラップ。
「柄にもなく、総理大臣なんて、衆議院議員なんて立候補することになったけど、何か一言と言われたので」
ヤンはヤンらしく、どうにも締まらないスピーチで場を和ませる。
「みなさん苦しいでしょう、ネクタイ外していいですよ」
一同爆笑。
「さて、みんな、これから選挙戦が始まる。総理大臣なんてそんなに偉いもんじゃない、単なる行政のまとめ役でしかない。だからこそ、市民のしもべとなって徹底的に下働きに徹する。国と市民が対立した時は市民の側に立つ政治家でありたい。この信念だけは天地神明に誓って本当だ」
自然発生的に皆が温かい拍手を送った。
「ありがとう。皆、頑張るよ」
ヤン・ウェンリーは権力への階段を踏み出した。
このシーンはディノイエテーゼ第四期策謀第三章のラグナロック作戦の部隊編成で諸将が集められたシーンで流れていたサウンドトラックのshowdownという曲が脳内劇伴です。
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