銀河英雄伝説:改新篇   作:松コンテンツ製作委員会

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第17話『トリューニヒト節』

 改新党を結党したラインハルト=ヤン枢軸に対し、トリューニヒト率いる民自党は改新党、エドワーズ委員会が戦うすべての選挙区に刺客候補を擁立。

 地球教徒、憂国騎士団を一般市民に偽装させ選挙スタッフとして用いるというなりふり構わぬ戦いぶりだった。さらにトリューニヒト派の軍需産業や民間大企業にも協力を要請。

 

 トリューニヒトの悪だくみはこれだけにとどまらない。

 公約に掲げたサイオキシン麻薬の撲滅。麻薬を監視するという名目で、自治官僚、警察官僚、厚生官僚、農政官僚、司法官僚のポストと天下り先を確保。これにより官吏からの支持を盤石なものとした。まさに、麻薬取締りをうたいながら利権を生み出したのである。

 さらに、ヤマト作戦で解放された地球にはトリューニヒト派の大企業を誘致することを持ち掛けた。大企業優遇、マクロ経済優先のトリューニヒトを経済界も支持した。雇用創出による労働者票の取り込みの狙いもあった。

 それらがトリューニヒトドクトリンの全貌である!

 

 今、彼らを総動員し、ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長の集会が開かれていた。

 がんばれヨブさん! 同盟を取り戻せ! と一般市民に偽装した憂国騎士団がばかでかい横断幕を掲げる。

 紙製の同盟の国旗を無料配布する素性のわからぬ者がいるが、特に気にせず皆が受け取っていく。

 前座で演説を務める情報交通委員長を務めた女性代議員が絶叫しながら聴衆にアピールする。

 

 黒塗りの高級車がステーション前ロータリーに滑り込んだ。

 

『たった今、自由惑星同盟ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長が駆けつけてくださいました! この選挙戦、ハイネセン1区から、民自党の議席を守り抜き、政権を奪還する覚悟です!』

 

 紺のスーツに金色のネクタイのヨブ・トリューニヒトが登壇する。片手を軽く上げ、聴衆がそれに応え歓声を上げる。

 

『同盟市民の皆様、民自党総裁のヨブ・トリューニヒトでございます』

 

 ヨブさん! ここで拍手が巻き起こる。

 

『同盟市民の皆様、いま同盟は激動の時代にあります。同盟領総督として同盟市民の権利を擁護する立場であるはずのミラクルヤンは裏切りヤンとなったではありませんか! エルファシルの英雄は今や銀河帝国の尖兵となり、我が国を裏切ったのであります』

 

 そうだ! と憂国騎士団のサクラが怒声を上げる。

 

『同盟市民諸君! 想像してほしい! かつての英雄が帝国の操り人形となり、銀河帝国内閣総理大臣として専横を振るう姿を! 悪夢のようなヤン政権を、許してはならないのだ!』

 

 だめだ! と民衆が呼応する。もうサクラもいらなかった。

 

『このハイネセン1区こそがミラクルヤンの魔術から同盟市民を守り抜く象徴的な選挙区ではありませんか!』

 

 トリューニヒトは握り拳を掲げ、力強い弁舌を振るう。それとは対照的にシークレットサービスが冷徹なまなざしで周囲を警戒する。

 

『このハイネセン1区から私たちの答えを示そうではありませんか!』

 

 いいぞ! と民衆が同盟国旗を振る。

 

『銀河帝国の、脅かしに、屈しては、ならないのです!』

 

 トリューニヒトは言葉を区切り、人差し指を立てながら大見得を切った。歓声が爆発した。

 

『そのためにも強い外交力、経済力を以て銀河帝国と対峙して参ります。ヤマト作戦で地球はカルト宗教の汚染から解放された。企業を誘致し、雇用を創出してまいります。GDP、有効求人倍率はⅤ字回復した! 私は知っている。トリューニヒトドクトリンの成功は同盟市民の力があってこそだと!』

 

 トリューニヒトは平手で市民を示し、深く頭を下げるパフォーマンスをやってのけた。

 

『皆さん、軍人しかいないアマチュア政党をなめてはいけません。ヤンはいずれ第二のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムとなるでしょう』

 

 第二のルドルフ裏切りヤンを許すな! コールが繰り返される。

 

『同盟の主権を、市民の暮らしを、子供たちの笑顔を守り抜く! 政権担当能力があるのは私たち民主自由党であります! どうかミラクルヤンに騙されることなく、清き一票を! 同盟を、取り戻す!』

 

 演説は終わった。

 それをヤンたちは街頭の立体テレビジョンで観ている。

 

 大型地上車の屋根にはパネルスクリーンが四方に設けられ、自由惑星同盟の公職選挙法に従って事前審査されたヤンの映像とキャッチコピーを繰り返し投影する。

 ポプランがハンドルを握り、アッテンボローとフレデリカとユリアンが手を振る。彼らが選挙運動員だ。

『エルファシルの英雄、ヤン・ウェンリ―! ヤン・ウェンリー! ハイネセン1区から、民主共和政治を守るため、政界に挑んでまいります』

 微妙にシュールだが選挙とはこういうものだ。

 そうしてトリューニヒト陣営の演説会場の前に差し掛かった。

『トリューニヒト候補、お疲れ様でございます。共に頑張って参りましょう』

 

 これから同じ場所でヤンの集会が始まる。

 

 

 

 




 現実の政治家っぽく描き過ぎるとらいとすたっふルールに抵触しそうな感がありますが、トリューニヒトを深みのある悪役っぽく描きたいところです。
 ご意見お待ちしております。辛口でも歓迎です。

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