第20話『内閣総理大臣就任式典』
宇宙歴800年。この日のハイネセンは冬にしては異常なほど暑く、人々は不気味な凶兆を覚えていた。
が、帝国同盟双方にとっての一大行事の挙行に制動はもはやかけられなかった。
ある不審な男がいた。黒いフードで顔を隠し、ポケットからリモコンのようなものを取り出す。
ハイネセンのシークレットサービスが通りかかるが、とくに見咎める様子もない。
「花粉は飛んでいますか?」
「私は杉の木こりです」
謎の符牒を交わし、シークレットサービスが紙片を渡す。それに従い男がリモコンのパスコードを認証。
『こちら警護001、ゼッフル粒子の点検作業に入る』
『本日は暑いため、ミストを撒きます』
会場に妙なアナウンスがあった。
銀河帝国初代内閣総理大臣ヤン・ウェンリーは就任式典に臨む。
銀河帝国皇帝の親臨はもちろんのこと。三権の長として立法府からジョアン・レベロ衆議院議長、フランツ・フォン・マリーンドルフ貴族院議長。司法府からはウルリッヒ・ケスラー最高裁判所長官が参列する。
最高評議会ビルを改装した首相官邸では敷地内にステージが設けられ、帝国と同盟双方の旗が交互に飾られる。
ケスラー最高裁長官が漆黒の法服を身にまとい、ヤンの前に恭しく立つ。
『それでは右手を上げてください』
ヤンは平手を示し、もう片方の手を同盟憲章に置く。同盟憲章はフレデリカが持つ。
『復唱してください。私ヤン・ウェンリーは』
『私ヤン・ウェンリーは』
『厳粛に誓います』
『厳粛に誓います』
『銀河帝国内閣総理大臣として』
『銀河帝国内閣総理大臣として』
『自由惑星同盟の民意を衆議院を通じて代表し、銀河帝国皇帝と協議し、民主主義を擁護します』
『自由惑星同盟の民意を衆議院を通じて代表し、銀河帝国皇帝と協議し、民主主義を擁護します』
『市民の市民による市民のための政治を』
『市民の市民による市民のための政治を』
『歴史に恥じることのないように』
『歴史に恥じることのないように』
歴史に恥じることのないように、それはヤンが自戒として盛り込んだフレーズだった。
宣誓が終わるとケスラーが微笑み、行政府の長に握手を求めた。
『おめでとうございます。ヤン閣下』
『ありがとう。ケスラー長官』
続いて、内閣総理大臣が深く頭を下げてから歩み出て、皇帝から辞令が交付される。
同時に花火が打ち上げられる手はずになっている。
その時、ラインハルトは常勝の天才ゆえの嗅覚で危険を察知した!
祝砲が打ち上げられた。が、予め空中に散布されたゼッフル粒子に引火!
会場の一角が爆発し、民衆の歓声が怒号と悲鳴に変わった。
らいとすたっふルールに準拠しているか
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ルール違反
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ルール範囲内