太陽系第三惑星地球こそが地球教の聖地であり、トリューニヒトの新天地であった。
ハイネセンの騒乱状態と時を同じくして、前自由惑星同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトは演壇に立ち、超光速通信で全宇宙全銀河に声明を発した。
トリューニヒトはスーツに喪章を着け、演壇に上がる。
『……本日、ハイネセンの内閣総理大臣就任式典において不幸な事件がありました。自由惑星同盟領で地球教徒が武装蜂起し、全銀河を混乱状態に陥れたのです』
パシャ、パシャとシャッター音が鳴る。この瞬間にも騒乱状態は続いている。地球教はトリューニヒトと蜜月関係にあるのに白々しいことだ。地球教と癒着しながら表では地球教とプロレスし、利権を生み出している。
『銀河帝国皇帝と三権を担う内閣総理大臣、衆議院議員議長、貴族院議長、最高裁判所長官の安否が不明となり、すでに政府機能は喪失しております』
『しかし、その中にあって唯一地球教の汚染から免れ得たユートピアが、まさに地球そのものなのです。我々は母なる大地を、専制主義者と狂信者から守らねばならないのです!』
ヤマト作戦で教団が掃討された地球をトリューニヒトは本拠地としようというのだ。
『私、ヨブ・トリューニヒトは全人類の歴史に巨大な転機が訪れたことをここに宣言します。この宣言を行う立場にあることを私は深く喜びとし、かつ誇りとするものであります』
『先日、一人のか弱い姫君と、誇り高き騎士が我らが自由惑星同盟に亡命を申し入れてきました。すなわち、アンネローゼ・フォン・グリューネワルト大公妃! オスカー・フォン・ロイエンタール元帥! その二人であります』
さしずめ愛の逃避行がトリューニヒトが担ぐ神輿となった形となった。
『既にハイネセンの大企業、国営公社はドライアイスの箱舟で地球に新天地を求めつつあります! 私はここに、グリューネワルト朝およびレコンギスタ銀河連合王国の樹立を宣言するものであります!』
* *
『最高評議会ビル地上部分、2628から2630まで敵が制圧!』
『ハイネセン公安当局は我々に協力すると言っていますが──』
『評議会ビル10番街、倒壊!』
『地球教と市民の衝突が続いています!』
『トリアージ急げ!』
『ヤン総理大臣を守れ!』
『オーディンに救援を要請しろ!』
『トリューニヒト派は我々を殲滅するまで徹底的にヤン政権を倒閣するつもりだ! 地球教を使って!』
──もう、やめてくれ。
──これ以上、僕らの国民を殺さないでくれ。
危機管理センターには血達磨となったハイネセン市民らの救援活動の様子がモニターで映される。モニター越しにも鉄血のにおいが鼻を衝く。
総理大臣席にてヤンが手で顔を包み、うなだれる。
対照的にラインハルトはいきり立つが、ヒルダ嬢とオーベルシュタイン官房副長官に諫められ、玉座に力なく腰を下ろす。
ヤンは背もたれにぐったりと体重を預け、惨状から目を背けるように椅子を回して思案したのち、やおら立ち上がった。頭を垂れ
重々しい足取りで数歩歩いたのち、騎士のようにラインハルトに跪き、こうべを垂れた。
「皇帝陛下、内閣総理大臣として勅令に基づいて奏上します」
「ヤン総理?」
「──降伏しよう、もう勝ち目はない」
「ヤン、何を申すか! あの愚劣なトリューニヒトがごときの策謀に負けハイネセンを売り渡すというのか!?」
ラインハルトがヤンのスーツの胸ぐらを掴む!
ヒルダとフレデリカが一瞬虚を突かれるが、やや遅れて二人を引きはがそうとする。
「陛下、おやめください!」
「あなた!」
「卿はミラクルヤンだろうが! 考えろ、考えて考えて考え抜いて、人々を救ってきたのが卿ではなかったのか!?」
「同盟市民にこれ以上犠牲を出すことはできない!」
「これは銀河帝国皇帝としての命令だ!」
「無茶な命令には反対する権利がある!」
引きはがされ、息を切らしながら、にらみ合うラインハルトとヤン。
「──それでいいんですかっ、それでいいんですか!?」
ユリアン・ミンツは皇帝と内閣総理大臣を糾弾した。
二人は息を切らしながらにらみ合う。
「馬鹿だ、みんな大馬鹿だ」
ユリアンは懐から拳銃を取り出し、カイザーラインハルトに銃口を突きつけた!
「ユリアン!?」
「もっと早くこうするべきだった……!」
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