銀河英雄伝説:改新篇   作:松コンテンツ製作委員会

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第25話『総理にされた男』

『Bカメラスタンバイオーケーです』

『正面のライト、もっと明るく』

『周波数装置、リンク良好』

 

 ──聞こえているか、ラップ。

 ──聞こえているか、ジェシカ。

 これがヤン・ウェンリー、一世一代の演説だ。

 

 

『本日。私はヤン政権を組閣しました。様々な困難や苦しみがハイネセンを包む中、自分だけが地下シェルターにこもり、指図だけをする立場となったことにはもどかしく思いますが、だからこそ、等身大の言葉で語り、トリューニヒト前議長にも聞いてもらうためこのスピーチをセッテイングしました』

 

 ヤンは神妙な面持ちで語りだした。

 

『カイザーラインハルトが私を首相に推挙した経緯は、市民の皆様がご存じのとおりです。責めるなら私一人だけを、殺すなら私一人だけを狙えばいい、立憲君主制においては皇帝に助言と承認をし国政の全責任を負うのは首相なのですから』

 

 確かに、立憲君主制で理屈を言えばそうだ。首相に全責任がある。がそれは同時にヤンの過剰すぎる責任感が決壊寸前であることを示すものではなかったか。

 スタジオでフレデリカが心配そうに見つめる。ヤンはばつが悪そうに微笑んで大丈夫であると示した。

 

『正直に言いましょう、私の責任感、義務感、使命感の源がトリューニヒト政治を間近で見てきたゆえの、彼よりましに政治ができるだろうといううぬぼれであり、民主主義を守るためと言いながら、思考の本質においてはかのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのそれと等しいのです。トリューニヒト前議長のおっしゃることはまことに正しい』

 

 ヤンは大胆にも自身をそう分析した。

 

『私の首相就任構想がカイザーラインハルトとの個人的友誼ゆえであることは否定しません。だけれどもあの時私は胸を打たれた。私と対等の友人となり皇帝と首相として協議しながら理想の政治を目指すというラインハルトの青臭い夢が、それを語るまなざしがあまりにも真摯でまっすぐなピュアなものだったからです』

 

 ヤンにも政治に対して思うところはさまざまある。

 

『ラインハルトと私は主従ではない。対等の友人だ。彼とは理想を共有できる。国あっての国民ではなく、国民あっての国だと。政治とは愛国心の賛美ではなく、国民の衣食住の保障であるはずだ』

 

 ラインハルトとヤンの共通項だった。

 

『何度でも言う。総理大臣なんてそんなに偉いもんじゃない。行政のまとめ役でしかない。だからこそ、みんなのために、みんなの幸福のためだけに働く。このことは天地神明に誓って本当だ』

 

『だけれど、それでも、もしもトリューニヒト前議長が勝ったら、それは彼の正義が通ったものとみなし、私は内閣総理大臣を辞職します』

 

『だが私は信じる。ラインハルトがロイエンタールをぶん殴ってでも連れ戻し、アンネローゼさんと再会できることを』

 

 それはラインハルトへの信頼の裏返しでもあった。

 

     *     *

 

 地球をレコンギスタの拠点と定めたヨブ・トリューニヒト。彼ににもたらされたのは良くない報告だった。

「地球教徒の洗脳が解けていきます!」

「敵はフェザーンの秘匿兵器を使った模様!」

「ハイネセンの破壊工作活動、停滞しています」

  

 地球と月のラグランジュポイント。宇宙空間に虹色の花が咲き、黒色槍騎兵艦隊に先導されて戦艦ブリュンヒルトが出現した。

 

 ビッテンフェルトは艦橋で腕を組み、二っと笑った

 

『マインカイザーに告ぐ、我に続け』

 

 その打電を聞いたラインハルトは高笑いした。

 

「ははは、ビッテンフェルトはよくやってくれる!」

 

 皇帝直卒艦隊が地球を包囲し、銀河系大戦の火蓋が切られた!!

 

 

 

 




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