第28話『ハイネセンの復興・トリューニヒト容疑者への提案』
ハイネセンの官公庁を借りた臨時首相官邸において、銀河系大戦復興に関する対策会議の関係閣僚会合が開かれていた。
産業大臣シルヴァーベルヒが中心となり、首都星ハイネセン復興の青写真が描かれていた。
のちにヤン首相は復興特措法を、これまた演劇場を借りた帝国議会衆議院に提出。レベロ衆議院議長の調整能力により、与野党が復興特措法に大筋合意。もっとも野党民自党は首魁トリューニヒトを失ったことにより小間切れ状態となっていた。ので強固な反対はなかった。
復興計画には帝国側企業と同盟側企業との連携が進むという一面もあった。フェザーンも事がこうなった以上は帝国と同盟の通商の仲立ちをし、経済的主導権を確立したい構えだ。
ヤン首相は衆議院仮議場のロビーを歩きながらおさまりの悪い黒髪をかきあげ、脳内に復興プランを思い描く。
遺族への戦後補償、トリューニヒト派企業群の扱い、やるべきことは山ほどある。
食堂の前を通りかかった。
フレデリカは地球決戦でハイネセンから離れている。今は彼女の手料理が恋しい。
一応入ってみると、オーベルシュタイン内務大臣が一人で書類をパラパラめくりながらホットドッグをかじり、コーヒーで流し込んでいた。ちなみに犬は食堂の勝手口で鶏肉の余りをもらっている。
「お隣よろしいですか? 」
ヤンはサンドイッチの乗ったトレーを持ってオーベルシュタインに話しかける。
オーベルシュタインは驚きの色を顔にあらわした。
「どうぞ」
オーベルシュタインはパンをちぎりながら席をすすめた。
「ヤン総理、私はあなたを誤解していました」
パンをちぎる手を止め、義眼の参謀は言った。
「ほう」
「組織にナンバーツーは不要。そう思ってきましたが、対等の友人が立憲君主と民選首相として競い合うことで政治によい緊張感が生まれています」
「ほうほう」
国家元首と行政の長が分離し、ルドルフ以前の銀河連邦に戻りつつある。
「政治にナンバーワンは不要です。」
オーベルシュタインは断じた。
「国家の主権者は国民ひとりひとり、皇帝も首相もその下働きをする公僕に過ぎないのです」
「よく言ったオーベルシュタイン君」
レベロ衆議院議長がパスタをトレーに持ちながら歩み寄り、話に加わる。
「ちょうどよかったレベロ議長、お話があります」
「どうしたね?」
レベロはランチを乗せたトレーをテーブルに置く。
「レベロ議長、次の選挙の前に私は内閣総理大臣の地位を降りたいと考えています」
ヤン・ウェンリーはぺこりと頭を下げた。
「それは……」
レベロは驚くが、慰留はしなかった。
「確かに今のラインハルト=ヤン枢軸体制は一時的な戦時体制にすぎない。いずれは文民の首相が必要だろうな」
「そして、それができうるのは、レベロ議長、議長しかいません」
「ふーむ」
レベロは口を波線にした。
「いいのか? せっかく手にした内閣総理大臣の椅子だぞ」
「私は歴史学者ですよ」
「ヤン総理大臣」
官僚がヤンに近づく。
「地球カチコミ艦隊が帰還しました」
* *
どこまでも晴れ上がる青い空を宇宙艦隊が降りてくる。
帝国同盟両臣民市民の歓声の大爆発に包まれながら、凱旋の先陣を切るのは、戦艦ブリュンヒルトだ。
まず搭乗橋に護送車両が横付けし、トリューニヒト容疑者を乗り込ませる。
ラインハルトが降りてきて、ケスラーと敬礼を交わし、法的書類にラインハルトとオーベルシュタインがサイン。
これはラインハルトがトリューニヒトを現行犯逮捕したことを法的に擁護されたことを意味する。
トリューニヒトの身柄は銀河帝国ハイネセン拘置所に送られ、憲兵隊などの聴取が行われる。新体制の文民警察はまだ整備途上なのだ。
手続きが終わったのち、ラインハルトは片手を挙げ、民衆の歓声に応えた。
ジークカイザーラインハルト!
トリューニヒトが逮捕拘禁された喜びで騒ぐ民衆とは対照的にラインハルトは冷静だった。
ラインハルトは民衆に背を向けると、アクセルを踏みかけていた護送車両を呼び止める。
困惑する憲兵をケスラーが制し、ラインハルトを見守る。
ラインハルトは身をかがめ、トリューニヒトの隣の座席についた。
「トリューニヒト、復興にあたり、政治家としての卿の知恵を貸してほしい」
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