第8話『地球へ』
自由惑星同盟軍宇宙艦隊司令長官に復職したアレクサンドル・ビュコック退役元帥は復帰した途端に同盟軍の若手のホープが首から下は役立たず(原文ママ)であることを思い出すはめになった。
『今何とおっしゃった!?』
連合艦隊旗艦ブリュンヒルト艦橋のスクリーン越しに作戦前の顔合わせをやろうとしていたビュコックはフレデリカに問いただした。
「ヤン提督は昼寝をなさっておられます」
フレデリカは総参謀長を務めた父がロボス元帥に対応したように申し訳なさげに言う。
娘が父親に似るのはどうやら本当らしいぞ、と老練なビュコックは思う。
同盟と帝国の青年士官が肩をすくめておどけてみせる。
『全くカイザーラインハルト陛下とヤン元帥が和解し、その初の共同作戦が始まるというからにハイネセンの留守を引き受けたものの、そのヤンが書物の海に埋没していようとはな』
当然、その任務のうちにはハイネセンにとどまるトリューニヒトの監視も含まれている。
ビュコックはベレー帽をめくり白髪頭をぼりぼりとかいた……
「はっくしょん!」
……ヤンウェンリー退役元帥がもはやすっかり文民気分でエアコンを涼しいどころか寒いまでに効かせながらホットパンチから紅茶とお湯とレモンを抜いたものをすすり(酒?)ソファーに寝っ転がりながらふて寝を決め込んでいる。
「じゃあ僕は書斎で読書に勤しんでいるのでね、ピンチになったらお呼びくださいね」
ヤンを私室から引きずり出す役をラインハルトから仰せつかったビッテンフェルトは苦虫を嚙み潰したような顔になった。ビッテンフェルトは我ながらカイザーの人選ミスを呪った。
「何をおっしゃるのか! 艦橋ではカイザーが知将ヤン総督を軍師としてお迎えすることを首を長くしてお待ちになっておられる! ご友人をカイザーの元までお連れするのが俺への言付けなれば、失礼つかまつる!」
ビッテンフェルトがヤンのソファーを抱え込むのと同時に、どさくさに紛れてアッテンボロー、シェーンコップ、ポプランがソファーに群がる。
「回れ回れ」
「頭が一番重いからな」
「どういう意味だいそりゃ」
どぎついジョークにポプランが噴き出した……
……ヤンが艦に引きづられてくるまでの間、ラインハルトとビュコックがつかの間の対談に花を咲かせる。
「ビュコック提督にもヤマト作戦にご同行願いたかったが、」
『カイザーラインハルト陛下、わしはあなたの才能と器量を高く評価しているつもりだ。孫を持つなら、あなたのような人物を持ちたいものだ』
孫扱いされたことに複雑な気分となりながらラインハルトは目を伏せる。
『だが、あなたの臣下にはなれん! ヤンウェンリーもあなたの友人にはなれたが臣下にはなれなかった。他人事だが保証してもよいくらいさ。だから私はあなたの配下となり艦隊を動かすことはできなかったのだ』
ラインハルトは頬をかすかに紅潮させ、背の軍旗がわずかに揺らいだ。
そんな彼を見やり、ビュコックは片目をつむり、笑みを浮かべる。
「……と、まあ偉そうなことを言わせてもらったが、あなたはとうにヤンの友人だ。友人の友人の頼みなら喜んで引き受けよう」
そこへヤンが寝っ転がっているソファーごと到着。
ラインハルトはヤンにベレー帽をと作戦開始の音頭を取らせたが、作劇上むだめs……ミラクルヤンの演説を律儀に全文表記すると勢いをそぎかねないので割愛する。
代わりにラインハルトが命じる──
『全艦に達する。艦隊はこれより、旧ヒマラヤ爆心地跡地球教総本部を強襲! 人類共通の財産である地球の奪還を目的としたヤマト作戦を発動! 連合艦隊、出撃!』
漆黒の宇宙空間を埋め尽くす銀河帝国自由惑星同盟両軍連合艦隊のスラスターが一斉に火を噴いた!
《 銀河英雄伝説:改新篇 第8話 第三章『共同作戦』 ──Ⅰ── 》
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