銀河英雄伝説:改新篇   作:松コンテンツ製作委員会

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第9話『ヤマト作戦発動!ヒマラヤを叩け!!』

 銀河帝国内閣総理大臣という役職が正式に設けられれば、自由惑星同盟議会を母体とする帝国衆議院から公選されし総理大臣は自由惑星同盟市民が選挙区の衆議院議員を通じて託した数十億もの圧倒的民意を背負っていることになるし、その権威、もっといえば銀河帝国皇帝に対する影響力は、単に身内あるいは側近から皇帝に勅任されるだけの帝国宰相とは比べ物にならないだろう。

 これが議会制民主主義、立憲君主制の本質である。

 

 歴史は繰り返すのだ。

 

 同様の原理で、かつての英国では議会が国王から立法権と司法権を剥奪し、国王と議会が互いの血を処刑台に塗り込めながらもなんとか共存の道を探り、自由惑星同盟の建国理念の原点というべき思想をあまねく世界へ浸透させたのである。

 

 歴史学者としてそれがわかっているからヤン・ウェンリーは夢の年金暮らしを諦め、民主共和制の防波堤としてあえて私的にはラインハルトの友人、公的には自由惑星同盟を銀河帝国皇帝の下、最高評議会議長の上で間接統治する総督などという役職を条件付きで引き受けたのである。

 ヤンのひと回り年上の事務的後見人とひと回り年下の被保護者兼生活的後見人と倍以上生きている人生全般の師匠はとうとう辞表を受理されなかった。

 その条件の中には今まさに彼が謳歌しているように、銀河帝国皇帝をファーストネームで呼び、玉座の横にソファーを横たえナッツを片手で口に運びながら寝ころび視線をもう片方の手で支え持つ本に傾けたままにする自由も含まれている。

 

 威厳を持って帝国軍服に身を固め華麗な玉座に威風堂々と鎮座するラインハルト・フォン・ローエングラムと、その隣で気楽に同盟軍服を着崩しソファーに寝っ転がるヤン・ウェンリーは何もかも正反対だ。

 

『現在、月軌道L5、地球より38万キロメートルの空間点』

『ハイネセン本国艦隊、メルカッツ艦隊合流、全作戦部隊の集結を確認。これより連合艦隊をヤマト艦隊と呼称』

『ヤマト艦隊の編成、予定より3パーセント遅れています』

『ヤン艦隊秘匿通信打電、トリューニヒト派あるいは地球教潜入の可能性がある、ハイネセン本国艦隊の動向に警戒されたし』

『分艦隊遠隔操艦電子演習完了。これより分艦隊第1打撃群、第2打撃群、第4打撃群をブリティッシュフリートと呼称』

 

 ヤン艦隊幕僚団の報告を片手間で聞き流しているミラクルヤン。

 ラインハルトは不敗の魔術師に幕僚(スタッフ)としての発言権を認めども指揮命令系統(ライン)としての指揮命令権を与えてはいなかった。すなわち大本営幕僚総監としてのヒルダの特別待遇と同様である。

 

 アッテンボローはそんな彼に元気良く敬礼した。

「それではヤン提督、分艦隊(ブリティッシュフリート)の指揮に行って参ります」

「ああ、行っておいで」

 ヤンは机のレコードを引き寄せると古めかしいものを一枚セットし、寝そべったまま手をぴらぴらと振った。

 そこに書かれていた作曲者は……「伊福部昭(いふくべあきら)

 

    *    *

 

『……では、ヤマト作戦を開始する!』

 

 地球と宇宙の狭間にあって、自由惑星同盟軍のブリティッシュフリートなる無人特別攻撃艦隊のカーキ色の艦体が地球の青い大気に照り、その舳先をヒマラヤ山脈へと向ける。

 その舳先は分厚い装甲で固められていた。大気圏突入の断熱圧縮に耐えるため、条約処分艦の装甲を溶断し貼り合わせたものだ。

 

『第一段階、質量兵器投下!』

 

 血湧き肉踊るドラムマーチに、肺活量を根こそぎ使い果たすトランペットの暴風が吹き荒れ、ピアノは打楽器だと言わんばかりに鍵盤が叩かれ、羊毛でコーティングされたハンマーが鋼の弦にぶちこまれ、疾風怒濤の人類反撃のマーチを奏でる。

 

 ブリティッシュフリート第1打撃群、第2打撃群、第4打撃群がいっせいにブースターを吹かし、星空の世界に噴射炎の花を狂い咲かせる。

 その艦隊の前面は装甲版が溶接されており、断熱圧縮に耐えられるようにするためだ。

 そのままの勢いでヒマラヤ山脈へとまっすぐにその巨体を叩き込む──逃がさない!

 

【 無人戦艦爆弾 (自由惑星同盟軍宇宙艦隊条約処分宇宙艦艇流用) 】

 

「「これでも喰らえ!!!」」

 

 核爆発と見紛う規模の爆発が起こり、何十ものキノコ雲が不気味にも成層圏にまで達し、天空に揺らめく。数百人の地球教徒を生き埋めにし、また数千人もの地球教徒を生きたまま焼き殺した。

 驚く前者と断末魔の叫びが混声合唱を奏でる。

 瞬間的には前者の苦痛がはるかにマシだったものの、むしろ前者はヴァルハラにて後者の幸運を呪ったにちがいないだろう。

 

 作戦展開空域に戦闘機が進出し、戦火の上を勇猛果敢に飛びぬけていった。

 

 

 

 




 

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