ゴーストレイル 戯言遣いと幽霊女   作:角刈りツインテール

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戯言シリーズ続編『キドナプキディング』発売決定ってことで久しぶりに続き書きました。
第五話です、よろしくお願いします!


005 そして、時は動き出す。

『えー?零崎が死んだぁー?』

うけるー、と電話越しに聞こえてくる緊張感のない声の主は勿論、最強の請負人こと哀川潤である。

ウケねぇよ。

いくら請負人でもそれは流石にウケないし、請け負わない。

「よく人が死んだって言われて平気でいられますね。貴方、一体何色の血をしているんですか。それにまだ死んだかどうか確実ではないです」

『いや、だって私はアイツの友達でもなんでもないし。多分私が死んでもアイツは何も思わないと思うぜ?』

「恐らく貴方を知る大多数の人間がザマァ見ろと言うと思います」

『あ?』

「戯言です」

『それはそうといーたん。今すげぇ発見したんだけどよ、電話越しだからかもしれないけどこれちょっと球磨川禊っぽい喋り口調になってねぇ?』

「嬉しそうに言わないでくださいよ。最低最悪の過負荷と同じ口調でいることを。むしろ不名誉ですよ」

『草』

「何が草なんですか…」

『僕は悪くない』

「気味が悪いです」

そんなどこからどう見ても戯言めいた無意味で無価値な会話を終えて本題に入る。

『で、どうすんのお前。復讐でもすんのか?』

「他人事みたいに言わないでくださいよ。あなたが蒔いた種でしょうに」

『おぉ、そうだったな、悪い悪い』

「まぁ復讐なんてしませんが———ただ、事件を解決する気だけは起きました」

『人はそれを復讐と言うんじゃねぇのか?』

誤魔化さなくていいぞ、そういうの大好きだ———と哀川さん。果たして本当にそうなのか。面白半分———ではないにしろ、不思議なことにモチベーションが上がっているのを感じる。

復讐心。

僕にそんなものがあったなんて。

一体いつからなのだろうか。何がきっかけで、今の僕がいるのか。結婚、と一言で言えるような気もするが、そうでないようにも思われる。哀川さんや零崎や、色々が複雑に絡み合って、今の僕がいるのだろう。

本当に、つくづく面倒臭い。

ピ、と携帯電話の電源をオフにする。そして流れるような動作で横を見る。

すーすーと友が寝息を立てていた。

可愛い。

思わず僕は、かつて破壊衝動を覚えていた彼女のほっぺたをつついてみた。「うにー」と不満げな顔をして向こうに寝返りを打つのもまた、なんとも愛おしいものだ。

うん、やっぱり可愛い。やはり可愛いは正義。可愛いは全てを解決する。

「……それこそ戯言だよなぁ…」

だったらさっさと解決してみせろ、という話である。

さて、どうしたものか。前回の話の更新から大分空いていたため数少ない読者からは「何ボケッとしてんださっさと助けに行けや」という声が寄せられている気がしてならないのだが、どこかの美少年探偵団の美観のように、一応は訂正しておこう。

決して友人を放置して数ヶ月間ぐーたらしていたわけではないのだ。

まぁそれはそうとしてこれだけタイムラグがあれば当然記憶も曖昧になってくるだろう。なんだったか。えーと…そう、エビングハウスの忘却曲線。あれの通りに考えるとするならば、僕は現在、9割の出来事を忘れていることになる。それはもう完全に覚えていないのと同意義である。

今の僕はさながら忘却探偵———いや、忘却請負人か。

「どうでもいいね」

よいしょ、と共の目が覚めないよう慎重に起き上がる。

時刻は午後10時を少し過ぎたくらいである。逢魔時(おうまがどき)であれば物語に雰囲気が出ていたかもしれないが現実は小説のようにはそう上手くはいかないものだ。

悲しくても空は快晴で。

辛くても世界は回り続ける。

世界は僕を中心になんか回っていない。当然だけど。

それにしても、まじでどうしようかな…。

零崎を探すべきか?いや、きっと見つからないだろう。何故なら彼は殺しの天才だ。

攻撃は最大の防御とはよく言った話で、今まで哀川さんから逃げてきたのが1番の証明だろう。そもそも、死んでいる確証なんてない。殺しの天才なら幽霊だって殺せて当然なはずではないか。

なら、今僕がするべきことはこれじゃない。

パソコンの電源をオンにし、YouTubeを開く。検索にかけようかと思ったがおすすめ欄に既に出てきていたのでそれをクリック。

僕にできることは、この動画を見続けることだ。まだ僕は一度しか見ていない。二回、三回と見れば何か分かるかもしれない。———その頃にはもう手遅れかもしれないが。こうなった以上、これくらいの博打は必須だ。いつまでたっても自分が安全圏にいるなんて思うな。

片足突っ込んだ時点で覚悟くらいしていただろ。

もう片方の足を入れるのも、朝飯前の赤子の手を捻るくらい余裕だ。

だけど。

足を踏み入れたとして、そこからどうするべきなんだ…?

死亡した人数は、視聴回数のおよそ半分。

それを少ないというべきか多いというべきかはさておき、一体これが何を意味しているのかについて考えなければならない。

例えば、見るにしても何らかの条件があるのではないか?

例えば、ブックマークに入れておいた例の動画をクリックする。

「例えば…早送りにして見る、とか」

…いや、流石にそれはないだろう。視聴者のうち半数が早送りで見ているとは到底思えない。この場合の半分は明らかに『多い』である。故にこれは違う、と思われる……が、一応やってみた。想像通り、特に何も起きなかった。

なら、時間とか。

よし、こうなったら、しらみつぶしだ。

そう決意を固め、僕は一晩中その動画を再生し続けた。とっくに3回以上は見ているので、視聴回数は無関係のようだ。

時間——— 逢魔時。あるいは、この動画が撮られた、投稿された時間。

字幕の言語。

他に何か、気づくべき存在が映り込んでいるのか。

文字通り、一晩中だった。

時刻は午前六時。既にスズメも泣き始めている頃だ。

けれど成果はゼロだった。

零。

零崎人識。

本当に意味が分からない。

なんだかもう疲労困憊だ。いい加減寝なければ明日(いや、今日か)の体力も尽きてしまう。これではもし哀川さんに連れ回されたら死んでしまいそうだ。だからもう寝よう。おやすみ、世界。

と、その時。

「電話……」

りりり、と騒がしい着信音が流れた。友を起こしてしまうかと焦ったが、当の本人は未だ夢の中だった。

画面には『哀川潤』の文字。一体どうしたのだろうかと電話に出る。

『おー、いーたん!やっと出てくれた』

「どうも。どうしたんですこんなド早朝に。何かわかりましたか」

『分かったどころじゃねーよ、ったく…おい、面倒なことになりやがった』

面倒なこと。

あの哀川さんをもってしても面倒と言わせる事態とは一体。

「何があったんですか」

『あー、どうやら私呪われたみてーだ』

はっはっは、と快活な笑い声がスマホの向こうから聞こえてきた。

だから笑い事じゃないんだって。

嘘だ、哀川さんが呪われた…?じゃあもしかして。

 

 

 

 

人類最強

哀川潤が、死ぬ……?

『な訳あるか』

と同時に、頭を殴られたかのような感覚。何だ今の。哀川さん今何をやったんだ。

『どーだっていいんだよーそれは。とりあえず私は私で調査するからよ、呪われる方法だけ教えとくわ』

「呪われる方法」

『あぁ。それはな———』

 

 

 

◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯だ。

『それと、零崎な。あいつも多分生きてる』

「! 本当ですか」

『おう。おめっとさん。じゃあちょっくら幽霊と戦ってくるから切るぜ』

「え、ちょ、哀か———」

本当に切れた。

さて、哀川さんが呪われた。正直こちらに関してはあまり危機感を抱いていない。異星人と戦ったこともあるらしい哀川さんにとって幽霊なんて今更のものだろう。なんならどうして今まで戦わなかったんだとさえ思われる。

そんな彼女のおかげで、ようやく呪われ方は分かったわけでだが…。

どうする?

呪われちゃう?




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