ウマ娘プリティダービー《Unusual world line》 作:K.T.G.Y
年末中山で行われる、一年の〆とも言えるグランプリ。それが『有馬記念』。
宝塚記念と同じく出場ウマ娘がファン投票で決まり、「あなたの夢は叶うのか」がキャッチフレーズとなっている。
だが、今年の有馬記念は10年に一度の注目度、などと呼ばれていた。まるでボジョレーヌーボーである。
「さあ、今年の有馬記念の出場ウマ娘が決まり、ニュースでも広く取り上げていく形となりますが……」
「今年の注目バは、やはりビワハヤヒデとナリタブライアンの姉妹対決ですね」
「二人のインタビューも行われましたので、早速見ていきましょう」
まずはビワハヤヒデからだ。報道機関のカメラとマイクの数も他とは比べ物にならない。
『今回の有馬記念、姉妹対決という点だけに限れば、私は子供の頃から待ち望んでいた対決だと見ている。
確かに私は知られている通り、直前に軽傷を負った。しかし私の構築した理論に間違いはない。怪我も短期間で治し、既に調整に入っている。
周りのウマ娘のレベルも高い。だが、勝つのは私だ。当日は私の勝利に期待してほしい』
続いてはナリタブライアン。既に目つきは臨戦態勢と言える。
『私は子供の頃から常に姉貴の背中を追い続けてきた。この有馬という大舞台でその背中を追い抜くのは最大の恩返しだと思っている。
姉妹だからだと注目されているが、関係ない。最後に周りのウマをブチ抜いて勝つのは、この私だ』
更にテイエムオペラオー、スペシャルウィーク、グラスワンダーといったジャパンカップ組も取材に応じてくれた。
『ジャパンカップでは不覚を追ったが、今回のボクは一味違う。世紀末覇王と言われた脚を存分に見せつけ、勝利の歌を奏でよう』
『最近扱いが何か酷いように感じるので、絶対に勝ちます! 勝ちは他の人に、あげません!』
『最近出番が少ないので、勝ちたいですね……誰のせいとは言えませんけど』
BNWのナリタタイシン、ウイニングチケットも名を連ねている。
『まあ、選んでくれたのは嬉しいけど……誰が出ようとどんなレースだろうとやる事は変わらないから』
『選んでくれてあ゛り゛か゛と゛ーーーー!!! よーし、頑張るぞお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!』
芦毛コンビのタマモクロス、オグリキャップも選ばれた。
『よっしゃ! 久々の有馬や! 燃えてきたで! 勝つのはウチや。間違いない! 早くオグリ達と戦いたいわ!』
『体重はベストだ。問題ない』
『嘘つけ! その腹はなんやねん!?』
投票こそ下位だったものの、有馬記念優勝ウマ娘メジロパーマー、キングヘイローの姿もあった。
『今回も爆逃げしちゃうよ! ウェーイ! これでも元優勝ウマ娘だしね。頑張るから応援シクヨロ!』
『確かにわたしは短距離路線の方が結果を残せるかもしれない……。でももう一度、もう一度だけ夢を適えるために挑戦してみたいの』
「いやいや、錚々たる顔ぶれですね。GⅠ優勝ウマ娘が10人以上揃うとは……」
「一体誰が勝つのか全く予想が付きませんね。当日は果たしてどのような結末になるのか、今から注目です」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんでーーーーーーーーーーー!?」
チーム・カノープスの部室で、ツインターボはテレビを見ながら地団太を踏みながら絶叫した。
「どうしてターボの所にはマスコミが来ないの!? なんでターボの所にはカメラもマイクもないの!? 不公平だーーーーーーー!!」
「いや、それはやっぱり投票滑り込み順位だったし」
「ネイチャさんとタンホイザさんが辞退してこの順位ですから、本来なら落選でもおかしくなかったんですよ」
「だからってーーーーーー!!」
ネイチャは怪我の影響もあって出場は辞退した。タンホイザも1つ勝てば充分ということで出場は見送った。というか逃げた。イクノは普通に落ちた。
結果、ツインターボは繰り上げ14位。下の下の下での参加である。
まあGⅠウマ娘でないので仕方ないといえば仕方ないのだが。
「前評判でも見事な14番人気。最下位です」
「分かってはいるけど、酷い扱いだねー」
「ちくしょーーーーーー! こうなったらターボ、みんなを見返してやるーー!! 有馬勝つんだからーーー!!」
「うーん……でもターボじゃなあ」
「前回、前々回、と大逃げ失敗。しかも周りは精鋭ばかり。有馬は長距離。普通に考えれば惨敗は目に見えています」
イクノが眼鏡をクイッと持ち上げた。
「もーー、イクノもマチタンもターボの応援してよーーー!!」
確かにターボだって自分が置かれた立場ぐらい分かっている。だがやるからには1着を目指すのが当然だ。
しかし残念ながら注目度はゼロ。当然と言えば当然だが、すねるのも無理はない。
コンコン。
「ん、誰だろ?」
「トレーナーかな?」
ガチャ。
「やあやあ、ターボの声は大きいねえ。外まで聞こえてきたよ」
「ばーちゃん!」
ドアを開けたのはシンザンだった。確か、今日は臨時トレーナーとして学園内で仕事をしてきた筈だ。その帰りだろうか。
「ねえシンザンさん、仕事の方は順調? 他の強豪チームを脅かすウマ娘っている?」
「うーん、そうだねえ……」
シンザンは顎に手をやった。
「ここまで30人ぐらい見たけど、モノになりそうなのは2、3人ってところかねえ」
「そんなに少ないのですか?」
イクノが尋ねる。
「トレセン学園には毎年多くのウマ娘が入学してくるけどね、数は年々増加してるけど、全体のレベルは下がっているね。あんた達はまだ才能に恵まれた方だよ」
「そっかー……」
「だけどそれはしょうがないことなのさ。華やかに見えて厳しい世界だからね。中には一勝も出来ずに終わる娘もいるさ。まあ勝たせてあげたいのが親心だけどね」
「そんな事よりばーちゃん、聞いてくれ!」
ツインターボが頬をぷうっと膨らませながら目の前に立つ。
「ターボ、次の有馬勝ちたいんだ! 周りを見返してやりたい! ばーちゃん、何かアドバイスをくれ!」
「ほう、有馬に勝ちたいとはでかくでたもんじゃないか……」
「私も現役時代最後に走ったのが有馬だったねえ……いや懐かしい。あの時は外ラチに突っ込んだのかとか消えたとか言われて随分騒がれたものだが」
「いや、ばーちゃんの昔話はいいから~」
「そう言ってもねえ……確かにターボは強くなった。他の誰よりも練習してきたからね。だが、有馬となると、まだ力不足かねえ」
「ええっ!? あれだけ練習したのに、まだ足りないのか……そんなぁ~……」
「練習だけじゃどうにもならないものもあるのさ。悲しいけどそれが現実なんだ。けど、もし諦めないというのなら……」
「いうのなら?」
「走りに対して、どれだけ対価を払えるか、だろうね」
「走りに、対価……? ターボよくわかんない」
「この前の天皇賞秋のネイチャがいい例さ」
「あの時、ネイチャは一瞬諦めようとした。あの娘は自己評価が低いから自分の限界を自分で決めてしまう癖が付いていた。しかし最後の最後で、あの娘は全てを投げうった」
「うん。あの時のネイチャ、凄かった。最後なんて凄い末脚だった!」
「でもあの走りの代償として、ネイチャは脚に重症を負った。対価とは、そういうものさ」
「じゃあ、じゃあ、ターボがもう2度と走れなくなってもいいってくらいの覚悟でドーン! って感じで大逃げすれば、勝てるのか?」
「……何かを得ようとすれば何かを失う。人の道とは不思議とそうなっている。私ゃ好きじゃないけどね。でも、ターボの場合はまた違う」
「違う?」
「……以前に言ったね。ターボ……あんたの走りは、人に勇気を与える『希望の走り』だと」
「うん!(本当はあんまり覚えてないけど……)」
「だから、何があっても諦めないこと。絶対に諦めない走り……それができれば、勝ち筋が見えるかもしれないね」
「うーん……」
ツインターボは学園のジム室で筋トレ用の器具を無言でがっちゃがっちゃ鳴らしていた。
シンザンから言われたことを頭の中で反復してみる。絶対に諦めない走り。というが、自分はそれなりにそれを遂行してきた筈だ。だから今の自分がある。
それでもまだ足りないというのか? ならば足りないピースとは何なのか?
「うーん……ターボ頭つかうのは苦手なんだけどな」
「相変わらず凄い練習量だね」
そこへ話しかけてきたウマ娘が一人。
「テイオー!」
その声の主はトウカイテイオーだった。もはやすっかりトレーナー補佐の仕事も板についてきた。きっと卒業までこんな調子なのだろう。
「やあ、ツインターボ師匠。聞いたよ。有馬に出るんだってね。うちからはスぺちゃんが出るんだ。スぺちゃん負けないって気合入ってるよ」
「ターボ負けないもん! 有馬勝つのはターボだ!」
「はは、凄い自信だね。でも凄いのは自信だけじゃないよね」
「へ、どういう事?」
「知らないの? ツインターボの猛練習を見て、他のウマ娘たちも影響受けて頑張るぞ!って気合入ってるんだよ」
「そーなの?」
これは驚いた。自分は誰にも負けない為に、シンザンが課した猛練習をこなしてきただけなのに、周りにいい影響を与えていたとは。
ターボもちょっとだけ鼻が高くなった。
「ボクも引退した時は寂しかったけど、その後を走るウマ娘に襷を渡せたんだとしたら、それはそれで満足かな……」
「……!」
ここでターボは閃いた。テイオーなら、有馬を走る秘訣とかを教えてもらえるかもしれない。
「なあテイオー!」
「ん、なーに?」
「テイオーってGⅠ走る時ってどんな気持ちだった? 皐月賞とかダービーとか有馬とか!」
「え……GⅠの思い出って事? うーん、そうだなあ……」
テイオーは目を閉じ、首を傾げたり足先をとんとんと地面を突いたりしながら思考する。
「……ボクは以前、夢があったんだ。シンボリルドルフ会長みたいなウマ娘になるって。だからまずはクラシックを無敗で勝つことが目標だったな」
「ふんふん」
「でも、その夢は怪我で敗れちゃって、その後は無敗のウマ娘をキープするのが目標だったけど、結局これもマックイーンに止められちゃった」
「ふんふん」
「その時は悔しくて泣いたりもしたけど、マックイーンが「これからは私があなたの走る理由になりますわ」って言ってくれてさ。もう一度ターフで対決しようって流れになった」
「ふんふん。それでそれで?」
ターボは興奮しながらテイオーの話を聞いていた。内心テイオーのライバルは自分一人でいいのにとは思ったが。
「でも……その約束はとうとう果たされることはなかったんだ。ボクは骨折して、マックイーンも怪我して、もうターフで競い合うことはできなくなった。
あの時、マックイーンはボクの前で泣いたんだ。あれ程気丈に振舞ってたマックイーンが泣く所なんて初めて見たし、それだけ辛いのも痛い程分かった」
「それで、その次が有馬だよね!」
「そうだよ。正直、ボクは自信なかった。体も脚も、とても本調子とは程遠かった。でも、このレースだけは絶対に負けられなかったんだ。そして、奇跡は起きた」
「ターボもあの時感動したぞ! あのテイオーが戻ってきたって!」
「今思えば、あの奇跡は、自分の為だけじゃなくて、誰かの為のものだったから起きたのかもしれない。望みが独りよがりなものだったら、ボクは負けてたよ」
「…………」
(奇跡、か……)
(自分の為じゃなくて、誰かの為に、か……)
「うーん……」
ターボは悩んだ。
負けることの方が多かった自分の走りは、いつだって奇跡とは無縁だった筈だ。誰かの為に走るという事もなかった。
強いて言えばテイオーに自分の走りを見せつけるために走った、あのオールカマ―ぐらいだろうか。
そういえば、ばーちゃんも言っていた。自分の走りは、人に勇気を与える希望の走りなのだと。
(つまり、誰かの為に走るっていうのが、ターボの理想の走りなのかな?)
とはいえそれは容易なことではない。いつも自分の事だけで手いっぱいなのだ。誰かの為に走る余裕なんてない。
(うーん、うーん、なんだろ、もう少しで答えが出そうな気がするんだけどな)
「どうしたの、ツインターボ?」
「え、いや、なんでもない、いや、なんでもあるぞ、テイオー」
「???」
(そうだ。テイオーとなら、答えが出るかもしれない)
「テイオー、一つだけわがまま言っていいか?」
「ん、何? 急に」
「ターボと、勝負してくれないか?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あれ、あそこにいるのテイオー先輩だよね?」
「その隣にいるのがツインターボ……。なんか二人とも走る準備してるみたいだけど」
「ええ? だってテイオー先輩引退したでしょ」
モブウマ娘が注目する中、二人はターフに立って準備運動をしていた。
ターボはストレッチで全身をほぐし、テイオーは屈伸で下半身を主に柔らかくしている。
「準備できたぞ、テイオー」
「うん、ボクも。……コースは、芝2000mでいいかな?」
「ターボはそれでいいぞ!」
「よーし、それじゃあ、よーい……スタート!」
スタートの合図とともに、ツインターボはロケット花火のように走り出す。飽きる程繰り返してきたスタートダッシュの練習だ。出遅れることなんてありえない。
その後ろを、トウカイテイオーが追ってくる。しかし全速力で走るターボとは、どんどん差が拡がっていく。
ましてや日々練習に打ち込んでいるターボと、もう引退してろくに走っていないテイオーとでは、雲泥の差があるだろう。
(感じる……感じるぞ……テイオーの息遣い、土を踏みしめる音、ぜーんぶターボに伝わってくる)
ツインターボは容赦しなかった。全速力で走り、途中で逆噴射するかつての自分はいない。2000mでバテバテになってたら、2500mの有馬なんて走り抜けない。
「うりゃりゃりゃりゃー!!」
ターボは早くも第四コーナーを曲がり、直線へと入る。かつてのオールカマ―みたいだ。2着以下に大差を付けて自分だけが直線に入る。気持ちいい。
でもテイオーは……。
(いや、テイオーは諦めてなんかいない! コーナーを回って、最後の直線で勝負する気だ! ターボには分かる!)
ツインターボは脚色が落ちてきたのを感じた。情けない。こんな模擬レースで。
でも走るのは止めない。テイオーを待つ。テイオーは来る。必ず来る。
「……行くよ、ツインターボ」
読み通り、テイオーは最後の直線に入るとスパートを掛けてきた。
医者にローソクの脚だと言われていたのに、また折れることをこれっぽっちも考えちゃいない。
「やっぱり気持ちいいなあ……。こうしてると、現役に戻りたくなっちゃう。とうに諦めたのにさ」
テイオー特有のバネを利かせた力強い走りがターボとの差をぐんぐん詰める。
しかし、その差はあまりにも遠すぎた。
ツインターボは、2000mの標識を駆け抜ける。次いで、テイオーもゴール板を駆け抜けた。
レースは終わった。周りからすればツインターボの圧勝。だが、今一度テイオーの走る姿を見られたギャラリー達は、拍手でテイオーを出迎えた。
「テイオーさん、凄い走りでした!」
「恰好よかったです!」
「まだ現役で通じるんじゃないですか!?」
「はは……そんなに褒めないでよ。勝ったのはツインターボ。負けたのはボク。だからツインターボを祝福してあげてよ」
そう言いながら、テイオーは照れた。確かに全盛期の走りには遠く及ばない。
それでも久々に本気で走ることができたテイオーの顔には充実感が滲み出ていた。
「テイオー!」
走り終えたツインターボが駆け寄ってくる。
「ツインターボ。誘ってくれてありがとね。おかげでいい経験になったよ」
「ターボもテイオーと勝負できて嬉しいぞ! でもテイオー、脚は大丈夫か? 折れてないか?」
「ん……平気みたい。力も入るし、痺れてもいない。よかった。レース途中で折れたら興ざめだしね」
「なあテイオー」
「ん、どうしたの?」
「どうしてターボの勝負受けてくれたんだ? 断ることもできたのに」
「えー、それはないよ。だって……ツインターボはボクの師匠だから」
「ふえっ?」
「ボクが三度目の骨折で引退を考えた時、ボクはターボを冷たくあしらった。でもその後、ターボが諦めない走りを見せつけてくれて、ボクはもう一度ターフに戻ることを決意した」
「うん。後からトレーナーやネイチャに聞いたぞ。テイオー泣きながらもう一度頑張るって宣言して、みんな喜んでたって」
「ボクからすれば、ツインターボは恩人みたいなものだよ。だから、誘われたら、ボクは断る事なんかできなかった」
「…………」
「君の存在は、ボクの中でそれだけ大きくなったってことさ。ね、ツインターボ」
(諦めない……諦めない……か)
そういえばテイオーは言った。
入学前にイクノも言った。
ばーちゃんもそうだった。それは自分のためだけじゃない、誰かの為に走る事。その時、ウマ娘は凄いパワーを出せる。
(そうか……そうか!)
「ありがとテイオー! ターボ、ようやく分かった! どうしてウマ娘が諦めてはいけないのかを!」
「え……!」
「ターボ、また練習してくる! じゃあな、テイオー!」
そう言って、ターボは練習場を走り去っていった。
「あ、ボクを残して行かないでよ……。もう、しょうがないなあ……」
その後、ツインターボは有馬記念の為に猛練習を積んだ。
朝誰よりも早く起き、夜誰よりも遅く寝る。
走り、泳ぎ、鍛えた。
それでも他の強豪ウマ娘との差はあっただろう。
だが、ターボは誰よりも頑張った。
それは、諦めない気持ちの持っていく場所が、今までと違ったからなのだが、他の人々は知らない……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、遂に有馬記念本番当日を迎えた。
そこには医者に無理を言って応援に来たナイスネイチャの姿もある。
勝負服に着替えたツインターボは控室のベンチに座り、瞑想をしていた。
その姿に、カノープスのメンバーも、シンザンですらも、驚いていた。
「凄い……まるで体中からオーラが溢れ出ているみたい」
「鬼気迫るとはこのことを言うのでしょうね」
「こんなターボ初めて見るよ」
「どうなんでしょう。このターボさんは。掛かっているのでしょうか」
南坂トレーナーが動揺している、
「いや、違うね。……まあ入れ込み過ぎかもしれないが」
シンザンは冷静に答える。
コンコン。ガチャ
「ツインターボさん。時間です。本バ場まで来てください」
「おっしゃー!」
「ターボ、頑張って!」
「応援してますよ!」
「有馬取って戻ってきてね」
「うん。みんな、ありがと。じゃ、ターボ行ってくる!」
そう言って、ツインターボは控室を飛び出していった。
コツ……コツ……
廊下を蹄鉄付きシューズで歩くツインターボ。
(今日のレース、ターボに期待してる人は殆どいないんだろうね)
コツ……コツ……
(でも、レースは何が起こるか……)
コツ……コツ……
(……分からないよ!)