短編集 ラブライブ スーパースター多め   作:カーテンと手袋

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わたししたわ (天王寺璃奈 一話完結)

部室に入ると、明らかに落ち込んだせつ菜さんがいた。普通に挨拶をしてやり過ごそうとしたけど、ちょっとだけ気にかかった。

せつ菜「はぁ……」

璃奈「どうしたの?」

せつ菜「あ、璃奈さん、もう来てたんですね」

璃奈「うん、私はステルス能力を身につけた【璃奈ちゃんボード『誰にも見つけられはしない』】」

せつ菜「それは凄いです……」

トルネード・ケンの第8話の名台詞を言っても反応がない。これは思ったよりも重症かもしれない。

璃奈「……はなし戻すけど何かあったの?」

せつ菜「……」

璃奈「……」

せつ菜「……うぅ」

璃奈「えっ」

せつ菜「ごめんなさい」

璃奈「……」

せつ菜「……あの、私……歩夢さんに嫌われてしまったかもしれません……」

璃奈「歩夢さんに?」

せつ菜「……はい」

璃奈「どうしてそう思ったの?」

あの優しい歩夢さんが……そんな事あるのかな。

せつ菜「先程まで歩夢さんと話していたんですが、どこか冷たいような、そっけないような感じがして……」

璃奈「そうなんだ」

せつ菜「はい……思い返してみると、先日も冷たかったような気がして……」

璃奈「何かしちゃったの?」

せつ菜「そういう事があれば、まだ納得出来るんですが……」

璃奈「心当たりがない?」

せつ菜「はい……」

私が気がついていないだけで何かあったのかもしれない。かくなる上は……

璃奈「……私が歩夢さんにそれとなく聞いてみる」

せつ菜「えっ、良いんですか。でも……」

璃奈「二人には仲良くいて欲しい」

せつ菜「璃奈さん……!」

 

部室を出て色々な場所を探し、侑さんに運良く会えた後、歩夢さんの居場所を聞き出すことができた。どうやら料理研究会に顔を出しているらしく、行ってみると彼方さんと一緒にいた。

璃奈「歩夢さんってせつ菜さんのこと好き?」

歩夢「ええぇ!?」

単刀直入に聞いてしまい、歩夢さんを驚かせてしまったらしい。でもこれが一番確実。背に腹は変えられない。

歩夢「えっと……普通に好きだよ」

璃奈「そうなの? 例えばどういうところが?」

歩夢「えっ、えっと。まっ真っ直ぐな所とか……私のこと……励ましてくれたりとか、あと……」

璃奈「あと?」

歩夢「もっもうおしまい!」

歩夢さんは顔を真っ赤にして話を終わらせた。もう少し詳しく聞きたくてしつこくしてしまったけど、どうやら本当にお終いらしかった。私はお礼を言ってせつ菜さんの所へ駆け足で向かう。

璃奈「歩夢さんはせつ菜さんのこと嫌ってなんかないし、むしろ好き。たくっ、ラブラブで世話が焼けるぜ」

私の勘は働いていた。

璃奈「あれ、部室のドアが開いてる?」

誰かが来たのかなと思った。私はドアに近づく。すると声が聞こえて来た。

璃奈「せつ菜さんの声が聞こえる、あれっ? 歩夢さん!? もう戻ったの? それにしても速い気が……とにかく、まだせつ菜さんの誤解は解けていないし」

私は急な出来事に立ち止まってしまった。

せつ菜「あっ、歩夢さん。きょ今日は暑いですね。麦茶でも飲みますか? キンキンですよ!」

歩夢「いらないよ。水筒あるから」

せつ菜「そっそうですよね、あはは……」

歩夢「……」

せつ菜「……」

タイミングを没収されたように、私は部室の前で二人の会話に聞き耳を立てる。

せつ菜「皆さん遅いですねー」

歩夢「ねぇ、せつ菜ちゃん」

せつ菜「はい!」

歩夢「私ね、本を読む時は静かな場所がいいんだよね」

二人が二人だけで誤解をといてくれるのならと願って。

せつ菜「ごめんなさい……」

歩夢「あーあー 疲れちゃうなぁ」

せつ菜「えっ、あ……」

せつ菜さんは私が初めに部室に来た時よりも暗い表情をした。歩夢さんのあんな表情も見たことはない。

歩夢「そんな顔して私に当てつけ?」

せつ菜「えっと」

歩夢「もういいや。図書室で本でも読も」

そう言って立ち上がった歩夢さんはドアに手をかけ開く。そこに居た私に二人は気がついた。

せつ菜「っ……」

形容できない顔だった。せつ菜さんは私が知らない表情で私を発見した。私はそれが何だか分からないけれど、逃げるみたいに歩夢さんを追いかけた。

璃奈「あっ歩夢さん!」

角を曲がり階段を駆け降りると、そこには歩夢さんはいなかった。おかしいと思って、辺りを散策してみるけど、最初から存在していないかのように、痕跡がどこにもなかった。

璃奈「どっ、どこへいった?」

私は諦めて、走った道を戻る。歩夢さんはどこに行ったのだろうと初めは考えながら。けど、部室が近づくと私の中の怯えが膨らんでいくのを感じた。せつ菜さんに申し訳ないことをした。逃げ出してしまったと。

璃奈「よし……」

薄く開いたドアの前で決意をして、手を掛ける。すると、部室から話し声が聞こえて来た。一方はせつ菜さんで、もう一方はーー

璃奈「嘘……なんで……」

私は二、三歩後退りをした。くらっと頭をやられたみたいにふらつき、膝から崩れ落ちる。泣いているせつ菜さんと、それを慰める私が部室の中で空間を作っていた。出来上がっていた。そして、私は下を向いたままだった。やけにワックスが効いた床に私の顔が反射している。その顔は、今まで馴染みがない顔をしていた。

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