短編集 ラブライブ スーパースター多め   作:カーテンと手袋

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女の子 (平安名すみれ 『くぅすみでもあり』一話完結)

「氷結してしまったとしても、あなたの喝は茹だる太陽に似て、私を温める。私が旅人だとしたら、あなたに降参してもいいのかもしれない。私が大人に塗れた世界に居ても、あなたの無垢さは、私を一瞬にして子供に帰る。そんなことを考えていると、あなたと手を繋いでいたいって、幼い気持ちが湧き上がるの」

 

すみれ「私が……センター?」

そこは憧れの場所だった。

誰もが認める場所だった。

絶対に立ってやるって意気込んでいた。

かのん「そうだよ」

舞台上を広々と使い、誰よりも目立つ格好を与えられて、優雅に披露する者。

可可「この衣装はあなたのために作りました」

スポットライトが当たって、分厚い台本の殆どがその人物の為に書かれていて、その物語も主人公の為に存在している。

恋「是非ともお願いしたいです」

私は、誰かを引き立たせる星の下に生まれたのだと、ショウビジネスの世界にいる時に悟った。それも随分序盤の方で、子どもながらに世の中の不条理を恨んだりもした。

千砂都「動画撮ろうよ」

スターたるものの素質を与える神様が居るとして、私はいっとき罵声を浴びせてやろうとも考えたけど、そんなものはいやしないし、ただただ可哀想になるだけだから、私はただ真っ直ぐに立っていようと思った。

すみれ「ギャラクシー!」

妹「お姉ちゃん。最近は特に努力してるね」

すみれ「まぁね、そうしないと立ちたい場所には行けないからね」

妹「気負いすぎちゃダメってお母さん言ってたよ」

すみれ「私よりも大人っぽいセリフを言うのはやめなさい。ほら、そろそろ夕食の時間でしょ。私はまだ練習するから、そう伝えて」

妹「わかった。お姉ちゃんがんばってね。お姉ちゃんはどこにいたって素敵だよ」

すたこらと家へ戻っていく。

すみれ「はぁ……妹に気を遣われちゃって、ダメなお姉ちゃんね。でも、もう少しで魅せてあげられる気がするから、もう少し待っててね……」

努力を怠ることはなかったし、スクールアイドルの活動も、少しは舐めていたけれど、手を抜いたことなんて一度もなかった。だけど、やっぱりねという形が私の元へさっそうと現れて、幸せに暮らしていたお姫様を連れ去るような、KYな魔物に擬態したそれは、私の頬を引っ叩いて現実へと引き戻した。

かのん「みんながセンターの気持ちでやる事が大切だと思う」

千砂都「みんなは勝つためなら変えたほうが良いかもしれないって……」

偶然、聞いてしまった。いや、教室を何やら不審に抜け出す二人を怪しんだ私は、後をつけた。それがこのざま。

可可「逃げるのデスか!」

私は一層気がついてしまったの。注目を浴びる事が恐ろしい事だって。重圧が、責任が、私一人に向けられている気がして、今まで突き動かしていた原動力を根こそぎ引っこ抜く悪魔に化けてしまったの。センターが決まってから、尚気合を入れて、何倍も努力してみても付け焼き刃であることは変わらなかった。

「っあの!」

校舎を飛び出して、人混みに紛れてしまおうと大通りに出ようとした時、私は背後から声をかけられた。

すみれ「あなたは、同じクラスの……」

「うん、あまり話した事ないけど、ごめんなさい急に話しかけちゃったりしてっ」

すみれ「かまわないけど、それでどうしたの? 私に用事?」

彼女は決心の大きさを、その深呼吸で表すように胸を何度か膨らませた後、また叫ぶように言った。

「わっ私はっ! すみれちゃんのこと応援してるからっ! 大人っぽくてかっこいいと思ってるし、大人っぽいって思ってるからっ!」

すみれ「ふふ、二回言ってるわよ」

「あっあぁ……」

すみれ「でも、ありがとう、嬉しい」

色々な感情が入り混じる中、もう日課の体にしていたランニングと発声練習を、一時でもざわつく心を紛らわせたいがために行った。ほんの一瞬でも無心でいられる、それだけが救いなのだと思った。

「嬢ちゃん。歌でもやってるのかい?」

あぁ、誰も居ないと思って油断をしていた。何か色々な音さえも塞ぎ込みたくて、大きな声で歌っていたのが、仇となったのか、ベンチに座っていた男が話し出した。

すみれ「えぇ、まぁ」

17時なる前のまだ日差しが差し込む公園にいた男を私は怪しんだ。その視線に勘付いたのか投げやりに言ってのけた。

「まさか、そんななりに見えてるって?」

すみれ「女子高生に話しかけるところが」

私は言ってしまった後に、後悔した。何故だか、するりと毒を帯びた言葉が、男を追ってしまったのだった。

「娘を待っているだけだよ。すぐそこが幼稚園でね。ただ、ママ友の群れに居たくないだけさ。井戸端会議なんて物が、昔から盛んに行われていたらしいけれど、あれは醜悪だね。害悪であるよ」

自分に向けられた訂正をした後、一つ呟いた。

「華はないが、上手いな」

そして、続けて言った。

「それにくるものがあったよ。ここにさ。昔を思い出したよ。白球を追いかけてた、あのクソ暑い茹だる日々をね」

私が答えにまごついていると、本当に娘が現れた。

娘「おとあーさーん!」

男はそんな様子に気がつき、私に又もや言ってのけた。

「嬢ちゃん、今のもう一度娘に見せてくれないか。センターなんだろう?」

 

可可がそれについて私に食って掛かった時、この子にとって本気なものを汚したのだと、あれほど自分を悔やんでしまった日はなかった。ひたむきに努力をする人間を、愚弄する権利など誰にもないのだから。そんなこと、私が一番わかっているはずなのに。報われない人の気持ちを誰よりも分かっているはずなのに。

可可「聞いていたのですね。やはり性根から叩き直してやるデス」

すみれ「みんなには言ってるの?」

可可「イエ、これは私の問題。私のためにスクールアイドルをやって欲しくありマセン!」

すみれ「だったら、なおさらじゃない! そう思っててもっ、世の中ってのは甘くない! 勝たなくちゃダメなんでしょ! だったら、同情なんてしないで! 私知ってるんだからっ! あんたがこっそり見ていたことくらい!」

センターをやりたい、でもやりたくない。個性的でありたい、でも怖い。勝たなくちゃいけない、彼女のためにも、そのためなら。

可可「同情でセンターに立たせてあげるほど、可可は大人じゃありマセン!!」

すみれ「っなっ!?」

可可「覗いていたのは謝りますが、あなたの姿は、可可の……ココを、心を動かしました!」

先生が村人も立派な役だと言った。ディレクターがグソクムシにも華があると言った。

可可「奪うのでしょう? センターを。あなたは私の心から、かのんからセンターを奪ったのデス! ダカラこそ、あなたはその役目を……すみれは全うシナケればいけマセン!!」

ただ名前を呼ばれただけなのに、その叫びの上から下まで、滑らかに私の耳から侵入して、頭のてっぺんからつま先まで私を震わせてみせた。この子の言葉には純粋な子どものような無垢な綺麗さがあった。

可可「さぁ、これは私が作ったティアラデス! すみれの為に作ったものデス。見えますか? センターにふさわしい人だけが持つコトが許されマス。さぁ……奪って下さい。今度は力づくで。心ダケでなく、身体でも証明してくだサイ!」

真っ直ぐ突き出した両手の中に、あの日夢見た黄金が眠っている。それを奪い取れるのはわたしだけ? かのんでも千砂都でも恋でも、可可でもなく、このわたし。

すみれ「……なによ……あんたが私に勝てると思ってるの?」

秋の香りを運んだ風が私の背中を押した。

9月にしてはやけに肌寒い、そんな風だった。

私は重圧やら不安やらも吹き飛ばして欲しいと思ったけど、どうやら上手くはいかないようで、まだ心の中に居座っていた。

もしかしたら、また、

たちまち私を蝕むかもしれない。

神様なんてものが障害を与えてくるかもしれない。

でも、私は平安名すみれ。

何もかもを変えられはしないけど、

私はもう少しだけ自信を持とうと思うの。

ショウビジネス云々じゃない。

だって今からセンターを掴みにいくんだから。

ありがとう……可可。お礼は今度、直接言うから。

それまで私を鼓舞していて。

私に敵対心を燃やしていて。

性格が悪いかもしれないけど、その方が安心する。

私たちはそうやって過ごしてきたのだから。

……それも、

これからも私は奪いに行ってあげるわ。

あなたと言い合う時間だったり、

悔しい顔だったり、嬉しそうな顔だったり、

笑顔や諸々、

奪ってやるったら、奪ってやるんだから。

覚悟しなさい!

私に火をつけたあなたが悪いんだからね。

この平安名すみれを、誰だと思っているの!!

ギャラクシーな、センターにふさわしいっ、

一番目立つっ、キラキラなスターよ!!

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