妖精王としてカレコレの世界に転生した もう一つのカレコレ屋 作:ikkun
sideヒサメ
今日の依頼人はバンドマンの三人だった。
「カレコレ屋さんにはバンドの運営の裏方作業をお願いしたいんです。」
「今までになかった仕事だな。」
「アーシも頑張るよ!」
「音楽ですか・・・良いですね。」
シディ、カンナちゃん、フィーアちゃんはやる気満々のようだ。私も楽しそうでワクワクしてる。だけどカゲはなんだか嫌そうだった。
「そうかぁ?バンドの裏方なんて仕事は大変なだけでバンドマンばっか目立って陰でこき使われながら脚光浴びる姿を恨めしく見上げるだけなんだよ・・・」
「バンドマンに恨みでもあんのか。」
だからもてないんだよ・・・
「いや~バンド活動って言うと華やかに聞こえますけど実際そうでもないですし、全然持てないんですよ。」
「え、そうなの?」
「ええ、いやーもう全然!カゲチヨさんと同じくらいですよ。」
「なんで俺がもてないの知ってんだ!」
そりゃさっきの発言でわかるでしょ・・・
「チケットだって全然売れてませんし。」
凄い量・・・
「僕らみたいな知名度ないバンドのライブなんて結局は親とか友達くらいしか来てくれませんから・・・」
「動画配信で宣伝するってのも一つの手だと思いますよ。」
カンナちゃんが言うと
「やってはいるんですがやっぱり再生数はイマイチで・・・だから皆さんには宣伝とかも手伝ってもらいたくて。」
「宣伝か・・・」
シディもどうするか悩んでいると
「あ、チケットは売れた枚数分依頼料にインセンティブを上乗せして支払います!」
「なるほど~!そういうことならもうなんでも申し付けてくださいよ。」
カゲ・・・
「まぁでもお金はあるに越したことはないよね、お金の管理はアーシがしてるけど
依頼料貰わずにやるお人好しでやる依頼もあるしここで稼いでおかなくちゃ。」
「「「「うっ・・・」」」」
カレコレ屋の金銭管理は簿記検定のあるカンナちゃんやってもらっているんだけど、
私たちがほっとけなくて依頼料無しでやる依頼や悪者に利用されて支払われないこともあるのでカンナちゃんには苦労かけてるんだ・・・
「そちらも大変なんですね・・・」
依頼人に同情されてしまった・・・
こうして私たちはチケット配りに向かった。
sideフィーア
「今度ライブハウスVEPP異宙でライブやりまーすチケットも売ってます。」
「ぜひきてくださーい。」
「カゲチヨ!もっと声出して!ただでさえ雰囲気暗いんだからせめて声出さなきゃ不審なもの配ってると思われて通報されちゃうよ!」
「カンナ、ひでぇ!?」
三人は苦戦中ですね・・・
私たちはというと・・・
「お兄さんマジかっこよすぎ!!」
「あの・・・お姉さまと呼ばせてもらっていいですか・・・」
何故か女子が大勢来ています・・・
「チケット500枚ください!」
「私は100枚!」
裁けるのはいいですけどこれはこれで大変ですね・・・
「シディさん大丈夫ですか?」
「あぁ、依頼人のバンドが少しでも有名になってくれたらうれしいからな。頑張るぞ!」
その後、
「あのライブの後お二人と写真撮らせてくれませんか・・・そうしたらチケット買いますから・・・」
とお願いされて写真を撮られつつチケットやチラシをさばいたら、
「完売してしまったな・・・」
「はい・・・」
私たちは三人のところに行きました。
「そちらはどうですか?」
「うん!ミキとノリコも買ってくれたし結構さばけてるよ!」
「アーシも順調だよ!」
「俺なんて声を掛けた瞬間目をそらされるんだよな・・・・」
少し哀れですね・・・・
「どうせ買うならシディやフィーアちゃんから買いたいもんね。」
「泣くぞ!?」
私たちは完売したことと写真のことを話すとカゲチヨが
「チェキの文化があるのはV系とか一部のバンドな気がするな・・・」
「ていうか二人はバンドメンバーじゃないでしょ・・・」
カゲチヨとカンナに突っ込まれましたそういえばそうですね・・・
「あ!俺もサイン入りチェキ付けるっていったらチケット売れるか!?」
「より傷つくことになるからやめたら?」
ヒサメちゃんに毒を吐かれるカゲチヨでした・・・
sideカンナ
アーシたちは依頼人に報告しに行った。
「どうですか?チケットさばけてますか?」
「まーぼちぼちっす。あとは当日までにどれだけ売り切るかってとこっすね。」
カゲチヨが答える。
「そっすか~・・・チケットの売り上げからスタジオの使用料とか賄うつもりなんで頑張ってくださいっす!」
「だいぶ自転車操業っすね。」
カゲチヨがびっくりする。
「いや~俺らもスタジオ代とか楽器代でマジ金が無くて・・・ライブ後の物販とかでCDとか写真とか売ってなんとか回収できるかどうかって感じなんすよ。練習場所借りたり衣装買ったり、バンド活動って金がかかるんすわ。」
まぁ、確かにバンド才能もそうだしお金あったらいいって感じだからね・・・
「華やかなイメージだけど大変なんだね。」
「頑張りますよ大事なライブと・・・インセンティブのためにね!」
「なんでどや顔なの?」
「きもいな。」
アーシとヒサメちゃんは突っ込んだ。
sideカゲチヨ
そうして数日たったころ
「た、大変です!」
突然依頼人がやってきた。
「どうしたんすか?」
「実はボーカルが扁桃炎になって・・・本番無理そうっす!」
マジかよ!?
「チケットはソールド済みですよね?どうするんですか?」
フィーアが聞くと
「今からオーディションをしてあなた方のうち誰かにボーカルをやって欲しいんです!」
「ええっ!?」
ヒサは驚くが、
「うぬ?ボーカルってなんだ?」
「シディ・・・アーシが説明するから・・・」
依頼受けてたのにそんな認識だったのかよ・・・
こうして俺たちはそれぞれ一人ずつ依頼人の前で歌い実力を披露することになった。
まずはヒサだ。
「わたしの~気持ちは~・・・♪」
綺麗な声だけど緊張してるのか細いな・・・
「まぁヒサはこうやって前に出るタイプでもねーしな。」
「緊張したよ~!」
次はシディだ。
「実は歌には自信があるんだ。昔妖精王の森でカラオケ大会したことを覚えてるか?」
「あれ?やった記憶はあるんだけど・・・」
「なんか記憶が・・・・」
まぁ、昔のことだもんな・・・そうしてシディが披露したのは
「フゴォ!フゴゴっ、ゴフッ、フゴゴォ!」
なんかの叫び声だった。
「これって歌!?」
カンナちゃんが突っ込むけどその通りだぜ・・・
「ああ、俺を育ててくれたゴブリンたちに伝わる伝統的な音楽だ。」
「こ、個性的でいいね・・・」
ヒサもさすがに苦笑いしてる
依頼人も
「ど、どうもありがとう・・・」
これしか言えてなかった・・・異宙文化・・・未だ奥が深いぜ・・・
次はカンナだった。
「じゃあ、行きまーす。」
アイツ大丈夫か・・・サイコパスはなんか歌が下手ってイメージが・・・ハックとか・・・俺が不安に思っていると
「正しくなれない霧が毒をみた 片っ端から確かめたくて♪」
メチャクチャ美声で歌ったのだ・・・
「凄いですよ!カンナさん!ボーカルお願いしていいですか?」
「もちろん!でも・・・ねぇヒサメちゃん一緒にデュエットしない?」
「ええっ!?それっていいんですか?」
「勿論!バンドも華やかになりますしいいですよ!」
こうしてヒサとカンナのボーカルは決まり次はフィーアとなった。
「実は私も歌は結構自身あるんですよ。」
へぇ・・・
俺たちが聞こうとした瞬間
「終わんないー、愛を抱いてたくないの、もっと、ちゃんと、不安にしてよ・・・」
ギャアアアァ!!
とてつもない音程の音が俺の耳に入ってきた!
頭痛が止まらねぇ・・・まるで死の妖精が歌っているといっても過言じゃねぇ・・・
「どうでしたか?」
フィーアは聞いてくるが
「あ、ああ僕たちの音楽とは合わなそうだな・・・」
こう絞り出すのが依頼人の精一杯だった・・・
「思い出した・・・カラオケ大会の時はフィーアちゃんが歌った瞬間に意識が飛んで・・・」
「その後アーシたちは記憶から抹消したんだった・・・」
そんなことが・・・
「さ、最後はカゲチヨさんよろしくお願いします。」
ようやく俺か表舞台立つ時が来たぜ・・・
sideヒサメ
「今日は集まってくれてマジでサンキュー!臨時メンバーボーカル!ヒサメ&カンナ&シディ!」
男性の低い声も欲しいってことでシディもボーカルに加わり三人で歌った。
カゲとフィーアちゃんはというと
「そりゃこうなるか・・・」
「なに言ってるんですか頑張りましょうよ。」
「お前はいいよな!キーボードの楽譜も作ってたからってキーボードやらせてもらってるんだから!俺はタンバリンだぜ!?」
こうしてライブは無事に終了した。
「タンバリンって必要だったか?」
カゲは不機嫌そうに言う
「カゲチヨさんは歌が下手ですし、ビジュアルに華がないので後ろにいってほしかったんです。」
「正直か!!」
まぁ、そうだよね・・・
「俺の時代が・・・」
「だからカゲの時代って何?」
「何か一つのことに真摯に打ち込む姿はカッコいいと思うぞ。カゲチヨもタンバリンを極めたらどうだ?」
「シディさん・・そういうことじゃないですよ・・・」
「あのなー」
すると
「失礼します。先ほどの演奏でタンバリンを叩いてた方ですよね?私はあるバンドのマネージャーをしているものです。あなたの虚ろな目をみて必要だと思ったんです。うちのバンドのボーカルになってください!」
嘘っ!?
「よっしゃ!今度こそ俺はバンドのボーカルとして待ってろよ武道館!」
飛躍しすぎでしょ・・・
そうしてカゲはデビューしたんだけど・・・
「今日は俺たちの演奏で・・・お前らは地獄に落とす!行くぜボーカル!」
「ヴぇ~!」
まさかのデスメタルだった・・・
「カッコいいぞ!カゲチヨ!」
「イメージとは違うけどね・・・」
「本人が良いならいいんじゃない?」
「私も歌いたかったです・・・」
お願いだからフィーアちゃんはもう歌わないで・・・無自覚な音痴に私たちはそう思うのだった・・・