ISてぃーちゃあ〜/upper!   作:BlueRider

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夏季休暇編
第一時限目~御盆の教師達~


あの激闘から数ヶ月、夏期休暇に入ったIS学園は静まり返り、外ではセミがうるさいくらい元気に鳴いていた。

 

そして、俺も元気(夏バテ)に仕事を開始

 

職員室内では虚しく響くキーボードを叩く音だけが聞こえる

 

「はぁ………」

 

溜め息をつきながら周りを見渡し、卓上に置かれたカレンダーに目を向ける

 

「盆だしな…」

 

流石のIS学園も盆と正月になると皆故郷に帰省する。

 

それは教師達にも言えることで、現状がそれを物語っていた。

 

彼以外誰もいない職員室、当然やる気など起こるわけが無い

 

―少し休憩するか

 

「仕事はほぼ今年いっぱい、片付けちまったし………コーヒーでも飲みながら、ラノベでも読むか」

 

席を立ち上がりインスタントコーヒーを自分のマグカップに入れお湯を注ぐ

 

グラン・ブレイバー!とメール着信音が盛大に響く

 

「?誰だろう?」

 

携帯を開きメールを見る

 

織斑千冬

 

題名:今なにをしている?

 

―まさかの本文無し…

 

暇を持て余していると言う内容を書いて送る

 

「流石に俺がIS学園にいるとは思うまい」

 

コーヒーを飲み、ラノベを読んでいるとメールが届く

 

織斑千冬

 

題名:まさかとは思うが

 

本文:IS学園にいるわけではないな?

 

―!

 

「エ、エスパーかあんたは!」

 

―は!思わず声を出してしまった

 

携帯から今度は24時間仕事していそうな人の内線音が鳴る。どうやら、核心を突くために電話をかけてきたようだ。

 

―言い逃れは無理そうだな

 

ピ!

 

「はい赤城です」

 

「私だ」

 

「あ~千冬さん、何かご用で?」

 

「単刀直入に言う…私の家に来い」

 

「え?」

 

「クラリッサをそちらに向かわせた、恐らくもう着く頃だろう」

 

「へ?ちょ!」

 

開けっ放しの窓から入る突風と轟音

 

「切るぞ優」

 

「ちょま!」

 

ブツ!プープー

 

突風を受けながら窓の外を見ると軍用ヘリがホバーリングし待機していた

 

―おいおい…

 

頭を抱えながら、ボケーッと見ていると軍用ヘリの扉が開き縄梯子が降ろされる

 

―乗れって事か?

 

「スタントマンもビックリだな」

 

手早く荷物をまとめ窓の縁に足をかけ縄梯子を掴み、開いた片手で窓を閉める

 

「いいぞ!上げろ!」

 

クラリッサさんの声が聞こえたの同時に徐々に高度が上がり始める

 

「俺縄梯子にしがみついたままの移動ですか…」

 

―あ~風を感じる

 

優雅な空の旅を満喫していると

 

「優様ー!もうじき着きますから!」

 

クラリッサさんの声が頭上から聞こえる

 

「ようやく、このタマヒュンから解放ですか」

 

―正直、握力がガタガタになっちょります…はい

 

ゆっくりと降下を開始していく軍用ヘリだったが、地表が見えて来た所でまさかのアクシデント

 

「え……」

 

縄梯子の揺れを感じ頭上を見上げるとクラリッサさんが降りてきているではありませんかヤダー

 

―見え、見え…

 

ブワ!っと突風が吹くと言う援護のおかげでスカートがなびき、白い物が見えた

 

「見えた!」

 

―やべ!思わず声が…

 

「!」

 

それを聞いたクラリッサさんは頬を赤く染め右脚を上げ、ほぼ迷い無しにこちらの顔面目掛け蹴る

 

「ぐべ!」

 

余りの痛さに両手で顔面を覆う

 

不意に体全体に感じる浮遊感

 

「「あ…………」」

 

2人ともそのような声を出す

 

「ゐぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

悲鳴を上げながら自由落下を開始する自分の肉体、数秒間の落下後、運良く巨木の中へダイブイン

 

「死ぬぅぅぅぅぅ!」

 

ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ……

 

巨木の枝を派手に折りながら降下していき、枝に左足が引っ掛かり逆さ吊りで頭が地面にかする手前で止まった

 

―あ、悪運強いな……俺

 

「さて、洗濯物を……」

 

目と目が合う瞬間………

 

「やぁ、一夏元気?」

 

「赤城さん何やってるんですか?」

 

こうして俺は鬼教官の自宅に降り立った。

 

「すみません、優様…」

 

「いえいえ、元はといえば俺が悪い訳ですからお気になさらず…にぃ!」

 

消毒液を染み込ませたコットンを傷口にグリグリと押す千冬

 

ノーロープバンジーでのダイブ後、枝に引っ掛かり逆さ吊りで助かった俺は、何故こうなったのかを千冬さんに事情聴取され、千冬さんの不機嫌メーターを上げ今に至る

 

「動くな!動くと消毒出来ないだろ」

 

ガシッと左手で頭を固定され、再び傷口をグリグリし始める

 

―痛い痛いよ……これは…い、生き地獄だ……

 

「終わったぞ優」

 

「あ、ありがとうございます」

 

最後に手痛く絆創膏を貼られ終わる

 

「優様も見たいなら見たいと言って下されば、いつでも見せたのですが」

 

チラッとスカートをめくるクラリッサの動作に反応し、ガシッ!とこちらの両目を目一杯の指圧で千冬がガードする

 

「痛い!目が…目がぁぁぁぁぁ」

 

「クラリッサ……ほどほどにな」

 

「千冬氏、火蓋は既に切って落とされているんですよ」

 

その一言を気ににらみ合いと言う冷戦が始まる

 

「ち、千冬ねぇ赤城さんの目早く解いた方が……」

 

「ん?あぁすまんな」

 

キュポ!

 

「あぁ……マジで目を持って行かれるところだった」

 

両目を擦りながら視界の状態を確認する

 

「それは赤城さんが悪いと思いますよ」

 

―コイツにだけは言われたくない

 

ピンポーン

 

「ん?宅急便か?」

 

「いや、多分箒かな?開いてるぞ箒!」

 

ふすまから顔を出す2人

 

ガラガラ

 

「よく私だとわかったな一夏」

 

そう言いながら玄関に入る箒

 

「そりゃファースト幼なじみだし」

 

―いやいや、人の影で当てただけだろ…

 

ふすまから顔を出している2人に近づく箒

 

「赤城先生………クラリッサさんもいるのか?」

 

部屋の中にいるクラリッサを見て驚く箒

 

「おう、ちょうど今着たところだ」

 

「はい!優様とほぼ同時にです、ほぼ同時に」

 

大事な事なので二度言いました的なことを言い返すや否や再び、千冬さんとのにらみ合いに戻る

 

「……それより赤城先生目のあたりに付いている赤い斑点は何ですか?」

 

「あぁこれか、ファッションだカッコよいだろぅ」

 

「…………………」

 

箒の冷たい眼差しに耐えかねポンと両手で箒の両肩を叩く

 

「箒…………せめて罵るか、何かしらの反応を…………」

 

「す、すみません、あまりの事にどう反応すればいいか分からずに」

 

「とりあえず、適当に座って待っててくれ今麦茶持ってくるから」

 

「あぁわかった」

 

「あいよ」

 

箒と対面の席に座る。

 

ちなみに真横では2人がまだ、にらみ合いと言う名の冷戦を続けていた

 

「赤城先生、少し真面目な話をしていいですか?」

 

「いいけど、その前にその先生止めないか?プライベートまで先生だと何か気が狂う」

 

「では、赤城…さん?」

 

―くそ!うまい具合に回避しやがった

 

「何か用かな?」

 

「単刀直入に言います…………夏休みが終わったら私の稽古につきあってください」

 

「え?稽古?」

 

「はい!」

 

「稽古相手なら一夏とか千冬さんがいるだろう」

 

「一夏では、私の稽古にはなりませんし、千冬さんは忙しいと思うので」

 

―確かに見たところ一夏相手だと一夏の稽古って感じだしな…千冬さんだと無理ゲーに近いか

 

「まぁ、俺が暇なら相手してもいいが……剣術なんて知らないぞ?」

 

昔から拳で戦ってるせいか、剣や槍等の近接武器を持つと邪魔で仕方なくなり最終的に武器を投擲して終わるパターンが多い。

 

ちなみに射撃武器も同様だ、それに俺の場合撃っても当たらない、それも『動かない的』にだ………要は俺の射撃センスは、神なるノーコンの称号を貰うほどだと言うことだ

 

―射撃は苦手でな!

 

「大丈夫です、赤城さんは防具をつけて普通に戦ってもらえれば充分ですので」

 

「そういう事ならいいけど」

 

「お待ちどおさま」

 

テーブルに並ぶ麦茶

 

「サンキュー!やっぱ夏はキンキンに冷えた麦茶だな」

 

ゴクゴクと一気に麦茶を飲み干す

 

「その気持ち何か俺もわかる気がします」

 

ゴクリと一口飲む一夏

 

「だな」

 

正座をし両手で麦茶を掴み上品に飲む箒

 

ピンポーン、ピンポーン

 

チャイムが二回続けてなる

 

「お、この鳴らし方は鈴だな」

 

―鳴らし方でわかるのか?あ~あれか、ファースト幼なじみは一回でセカンド幼なじみは二回的な

 

そんな事を思いつつ箒の方を見る

 

「…………」

 

―あまり良い顔をしていないと言うか不機嫌になってるな

 

玄関に出迎えに行く一夏について行く箒

 

俺はと言うと、麦茶を入れ真横の冷戦を眺めていた。

 

双方とも動かざるごと山のごとし

 

「いらっしゃい、あれ、みんな来たのか」

 

「た、たまたまですわ」

 

「そうよ、たまたま、そこであったのよ、たまたま」

 

「我が嫁に会いに来て何が悪い」

 

「………き、来ちゃった」

 

「………………」

 

―何故だろうかこの会話聞いただけで箒の唖然とした顔が想像出来る

 

―あぁ…嵐が来るなこりゃ

 

そんな事を思いつつ、俺はお代わり(三杯目)を飲むのであった

 

「麦茶うめぇ」

 

麦茶に現実逃避していると一夏が何やらサインを出していた

 

―……キッチンまで……来て………ください………?

 

「で……結局は全員集合パターンだと」

 

「あはは、みたいです」

 

俺と一夏はキッチンで話をしていた

 

「それで、俺をここに呼んだ理由は?」

 

―わざわざブロックサインまで使って

 

「今日生き延びるために力を貸してください」

 

「待て、それはあれか?食の事だよな」

 

「はい!」

 

―事実、このメンツの中でまとも?な料理を作れるのは、俺を入れ4人くらいだろう………C4級が3人、地雷級が2人

 

「確かにこれは協力プレイしないと…無理そうだな」

 

「ちなみに赤城さんは何が作れますか?」

 

「俺か?俺は簡単なお菓子くらいしか作れないぞ」

 

「例えば?」

 

「ロールケーキとかゼリー、プリンとか」

 

「ロールケーキって簡単な部類何ですか?あれ」

 

「え?簡単じゃない?あれ」

 

「とりあえず、話を元に戻しましょう」

 

「だな、まぁ一番手っ取り早くやるなら………」

 

「「C4級と地雷級をこの聖地に入れないこと」」

 

同じ意見にガッチリと固い握手をする2人

 

「お互い明日の日の出を盛大に祝うために」

 

「あぁ、この作戦(オペレーション)名を『明けの明星作戦』と名付けさせて貰おう」

 

たった2人の戦いが始まりを告げる。

 

開戦、もはや戦闘はなかったに等しい、その代わりにあったもの、それは暴虐と言う名の戦力差であった……

 

「ぐべ!」

 

「ぐは!」

 

ドザッ!

 

ドサ……

 

廊下(墓地)を見れば、投げ出された1人の赤髪、押し出された1人の唐変木、防衛ラインは何の意味もなさずに突破、前線は壊滅

 

キッチン(聖地)をC4級、地雷級、女神級に占拠される

 

―我々の明日が…………がは………

 

チーン……

 

「赤城さん敗因は何でしょうか?」

 

「決まってるだろ………」

 

「「圧倒的人員不足」」

 

ムクリと壁を支えに立ち上がる2人

 

「こうなったら、薬局に行って胃薬と整腸薬を買い占めるしかない」

 

「ですね」

 

そう言うや否や光の速さで薬局屋に向かう2人

 

一方、占拠されたキッチンでは………

 

「うむ……完璧だ」

 

「ちょっと、皮むきに失敗したけど味は大丈夫だしOKでしょ」

 

エプロンが似合う箒、鈴音……さすがは、女神級である。

 

そして地雷級2人はと言うと

 

「ねぇラウラ……それ「おでんだ」

 

グツグツ

 

「おでんだ」

 

「うん分かった分かったから」

 

地雷は地雷でも、対戦車地雷では無いらしい。しかしクレイモアで在ることは確かなようで、2人の寿命は幾分か延びたに過ぎないであろう。

 

そして、今回2人の命運を握るC4組は

 

ザク!ザク!

 

「………………」

 

ウィィィィィィィン!

 

「………………」

 

ジャスジャス

 

「ふふ、ふふふ」

 

………………見なかった事にしよう…うん見なかった事に…大事な事なので二度言いましたよっと…

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「赤城さん」

 

「何かようかな?」

 

薬局で薬品の箱を眺める2人

 

「今日千冬ねぇがですね」

 

「おう」

 

「赤城さんに声をかけるのに」

 

「ほむほむ」

 

「どう話し掛けたらいいか俺に相談してきたんですよ」

 

「へぇ~」

 

―あの千冬さんがねぇ

 

頬を赤くしながら携帯を持ち、電話しようかメールにしようかもじもじする千冬さん。

そして、後に聞いた俺が「どっちでも良かったのに」と言うと完全に顔を真っ赤にして「う、うるさい!」と言うのを想像すると

 

「やべぇマッハで、かぁいいんだが」

 

小声で一夏に聞こえないように口に出す

 

「赤城さん何か言いました?」

 

「んや、独り言だ」

 

「そうですか、てっきり赤城さんまた千冬ねぇを怒らせる事したんじゃないかって気が気でなかったですよ」

 

―コイツは………

 

「はぁ……」

 

「ん?」

 

「ラバーズが救われんな」

 

「???」

 

胃薬、整腸薬を買い店を出る2人

 

「赤城さん」

 

「何かようかな?」

 

空を眺めたまま一夏の話を聞く

 

―どうせまた、ろくでもない話だろう

 

「千冬ねぇ悲しませる事したら俺マジで許しませんから」

 

意外だった。ここに来て真面目話とは……

 

視線を空から一夏に移すと真剣な眼差しでこちらを見ていた

 

―参ったなこりゃ…んでも…

 

「たく、言われなくってそのつもりだよ、だからお前も早く姉離れしろよシスコン、そして周りのラバーズを何とかしろよ」

 

「………」

 

―任せとけよ一夏……俺も前に踏み出し始めたんだ。

 

それに、あの人には泣き顔は元より笑顔の方が相応しい

 

「「ただいま~」」

 

帰宅する男子2人

 

「ようやく帰ってきたか馬鹿者共」

 

玄関で仁王立ちしている千冬

 

「どうしたんですか?仁王立ちして」

 

「料理は冷めると美味しくなくなりますから」

 

千冬の影からひょこっと出てくるクラリッサ

 

「「……………」」

 

いよいよ来たか……我々2人の死が

 

「準備できているな?」

 

「はい、そのつもりです」

 

「それはよかった、それじゃ逝こうか」

 

俺らはゆっくりと着実に断頭台と言う名の料理が並べられた居間に向かう

 

ふすまを開けるとそこには………

 

「ちょっとラウラ!ラウラってば」

 

すでに犠牲者が出ていた

 

―奴め、千冬さんの料理を摘み食いしたな

 

「デュノア、コレ」

 

そっと、買ってきた胃薬と整腸薬を渡す

 

それをコクリと頷き受け取るとラウラを引きずりながらキッチンに行くデュノア

 

テーブルに残された痕跡を見る限り一摘みパクリとしただけであの状態………

 

―前の比べ物にならないくらいグレードアップしている。

 

テーブルには、女神級が作った神々しい料理、地雷級のやや危うい料理、そして…………ゴポ!グポ!と得体の知れない効果音が響くC4級の料理が並べられていた

 

「「…………」」

 

そして、こちらを見る女神2人は恐らくこう思ってるに違いない……

 

グットラック……幸運を

 

―ふ………

 

「冷めない内にどうぞ優様」

 

「さっさと食べろ…」

 

「一夏さんも召し上がれ」

 

満面の笑みでこちらを見る3人

 

「「い、頂きます!!」」

 

半ばやけくそ状態で箸を持つ2人

 

そして、意識は遙か遠く果てしない彼方へと飛んでいった。

 

 

 

 

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