第十五時限目~不穏な陰り~
「しかし……」
白い天井を眺め体を利き手側に向ける。
「はぁ……暇だなぁ」
あの後、千冬さんとクラリッサさんが戻ってきてから話を聞くに、一週間程度の入院そして、打鉄は修理でしばらくIS無しの生活になった訳だ。
筋トレできる状態でもないし、積みゲーも消化できない、仕事もできない。
「暇すぐる」
ー売店行くか?少年誌くらいならあるだろう
そう決め体を起こし、サンダルを履き立ち上がる。
「う!足も来てるな、これ」
痛みと倦怠感で数歩進むだけで目一杯な状態
ー一週間の入院で正解だな……少々自分の状態を見くびってたな……
不格好だが壁を支えにして歩いてみる。
「あぁ……楽だぁ」
扉を開け手摺を持ち、売店のある一階へと向かう為エレベーター前へ移動して気づく
「はぁ……はぁ……」
少し息切れを起こしていた。
おかしい、ケガをしたとはいえ、ここまで極端に体が疲弊するものだろうか?
エレベーターの扉が開き歩みを進め、中に入りボタンを押し壁に背を預ける。
「しんどいなぁ……」
心無しか少し熱っぽい気もする。
買うもの買ってすぐ戻ろう、その方が絶対いい
一階へ到着し体に力を入れエレベーターから出、数歩先の売店へ向かう。
売店を物色し、少年誌を手に取りレジへそそくさと移動、慣れない片手だけで動作しながら財布を出し小銭を出す。
ー戻ろう
買った少年誌が心なしか重く感じる。
来た道をなんとか戻り、ベットに少年誌を投げ仰向けに倒れる
「あぁ、眠気が急に」
目を閉じると直ぐに意識が飛んでいく、暗闇の世界が数分続き、視界が唐突に明るくなり気が付くと、そこは見覚えのない場所だった。
一面に広がる荒野に夕焼け
これが噂に聞く心象風景の世界ってやつか?にしても荒野って
「今度はちゃんと会えたね、私の主(あるじ)よ」
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赤城がベットに寝込んだと同時刻、とある廃屋ではせかせかと女性が動いていた。
人が寄り付かないであろう場所に自分の研究所を忍ばせる辺り彼女らしい。
ハンガーに破損した打鉄を固定し、外装を外し基礎フレームと内部機構のみにしている最中であった。
「もうゆーくんってばISの扱いが荒いんだから!治す方にもなってほしいよ!ぷんぷん」
現状バラシて見てわかった事は、完全に左腕が使い物にならないくらい大破しており、脚部や背部等の推進機全般の同調もおかしく、コアブロックから四肢に繋がる動力供給用パイプはあちこちひしゃげ、パッキンが割れSEが駄々洩れ、関節部のベヤリングやギヤも原形を留めていない状態
「ほんとそんな月日たってないのに、よくここまでボロボロに使うよ」
ガチャガチャと工具を動かしコアとセットになっているコアブロックを抜き取り、専用の台座に置きSEを供給してやると淡く発光する。
「おや?この反応は……お取込み中みたいだね、よきかなよきかな」
にっこりと笑みを浮かべ修繕作業プラス強化改修に精を出す。
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「君が前から呼びかけていたのか」
「うん、こうして面と向かって話したのは今日が初めてのはずだよ」
目の前にいる少女は、当初予想していた姿とは違い鈴音達と同い年くらいであろうといったところか
「そうか、こうやって話せていると言う事はコアブロックは無事だった訳だな?」
「コアブロックだけはね、他はボロボロで今束に治して貰ってるの」
「束が頑張ってるのか、これで少しは嫌がらせになればいいんだがな」
「それはそれとして、主にはもう少し優しく扱って欲しいな!」
こちらを見上げるように怒った顔をする少女
「それについては正直すまないとしか、俺もできるだけのことはしているつもりなんだけど」
「ふーん、て事はさ、私の性能が他に劣ってるって事でいいのかな?」
その辺の岩に飛び乗り腰掛ける少女とそれを見上げる赤城
「まぁな、だがそれは俺の技量不足と努力不足もあるから全て君のせいじゃない、そこのところは理解してくれるか?」
「……以外ね、大抵のIS乗りは性能差で判別するじゃない?」
「否定はしないが、俺をそんじょそこらのIS乗りと一緒にするのはどうかと思うぞ」
「そうね、私達(打鉄)以外乗れないんだものね」
こちらをねっとりとした視線で見ながら足をパタパタと動かす
「あぁ、何故かは知らないがな」
過去にラファールに弾かれたことを思い出す。
「ま、私としては浮気されなくていいから嬉しいんだけどもね」
「そうかい」
「さてそろそろ本題に入ろうか」
「本題?」
「うん、主を危険にしてまでも、ここに呼んだ理由」
「危険?この心象風景の世界がか?」
「当たり前でしょ?無理やり精神だけをこっちに引きずりこんでるんだから、長居すると戻れなくなって脳死状態になるの」
今の一言でドバっと冷や汗が流れた。
「ちょ!おま!」
「だから、簡潔に言うね『私は覚悟出来ている汝は覚悟出来ているか?』」
ー覚悟だと?いったい何の事だ?
「『出来ているのならトリッガーを引けさすれば与えられん』私から言えることは以上あとは考えてね」
「待て、脈絡が無さすぎる「あー時間みたい、んじゃね主」人の話を」
心象風景が急速に収縮するように消え目が覚める。
「にゃろう、肝心なところでこっちに戻しやがって」
先ほどまで感じていた眠気や倦怠感、熱っぽさもなくなり大分体が楽になった
ーこれがISの共有依存か
共有依存、ある一定以上ISと共に戦闘をこなすと身体に蓄積したダメージをISが自ら引き受け搭乗者の負担を減らすと言うもの
これが発動したと言う事は、俺もこの打鉄と信頼関係が出来上がってきたということであろう。
「そう考えたらアイツも成長してるって訳だから、最初に声を聞いた時と印象が変わっているのは当たり前か」
ふむと自分の中でそう頷き先ほど買った少年誌を開けることにする。
ーハ〇タ〇また休刊か……
「そう言えば一夏のやつ無事なのか?」
ページを捲る度に気になっていく、かといってあまり病室を出るのも不味い気がする。
「電話かけるか」
少年誌を閉じ携帯を開き電話帳から鈴音の番号を探しかける
「もしもし鈴音か?今電話大丈夫か?」
「平気よ、何?電話なんかかけてきて」
「一夏の容体を聞きたくてな……」
「……命に別状はないそうよ」
「そ、そうか」
なんだ最初の間は
「話はそれだけ?」
「あ、あぁ、すまないな手数かけた、んじゃ切るぞ」
ブツ
通話を切った携帯の画面を見つめる。
「何かあったみたいだな」
行動を起こそうと思い立ったが、ISもなければ左腕もこの様だ
ー様子見するのも手か
歯痒いのが癪だが現状できるのが、それだけなのだからそうするしかない