ISてぃーちゃあ〜/upper!   作:BlueRider

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第十六時限目~陰の日常~

入院から数日

 

護衛としてほぼ四六時中病室に居座るクラリッサ、そして仕事終わりにかならず様子見に来る千冬、これが毎日の流れである

 

「どうやら大人しくはしているようだな」

 

差し入れを食べている彼に千冬がそう聞く

 

「そりゃISないですし左腕も本調子じゃありませんし、普通にやることなくて暇です」

 

もぐもぐと差し入れを食べながら答える

 

「普段もそれくらい大人しければいいのだがな、後退院したら死ぬほどこき使ってやるから安心しろ」

 

「俺の性格知ってるのならわかるでしょう?仕事量の分散を要求します」

 

「あぁ聞いた私が馬鹿だった、仕事に関しては善処しよう」

 

軽くこちらと会話をすませるとクラリッサにアイコンタクトする千冬

 

それを見て席を立ち、こちらに微笑みながら軽く会釈し千冬と共に病室を出るクラリッサ

 

ー事態は深刻のようだ

 

差し入れを食べ終えお茶を飲む

 

さて、いかがしたものか、体の疲労は無い、左腕はまだ使用不可、くわえてISは束の元から帰って来ていない。

 

「情報を集めるのが先決か」

 

携帯端末を使い専用機持ちに片っ端からメールを送る。

 

ー二人が話す気が無いのなら、こちらから情報を探し出すまでだ

 

いざとなれば無理をしなければならない、痛み止めの数を確認、携帯端末を使いIS学園の所有する打鉄の整備状態を確認。

 

「何とかなるか」

 

畳んである私服も見、窓から外を確認そこそこ高いが右手が生きているなら片手でも何とかなりそうだ。

 

ー脱出路も確保

 

どうやら二人は扉前で話しているらしい。

 

聞き耳も立てようかとも思ったが感知能力の高さは把握しているのでやめることにしよう。

 

携帯端末で時刻を確認する、ラバーズが来るにはまだしばらく掛かりそうだ。

 

「本でも読んで時間を潰すか」

 

しおりを挟んでいたラノベを開き読み始める。

 

 

-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

優を病室に残し部屋を出る二人

 

「千冬様進展は?」

 

「なしに近い」

 

互いに腕を組み病室前で話を始める。

 

「ドイツの諜報網はどうだ?」

 

「残念ながら何も、隊長の指揮の元皆フルで動いていますが……」

 

「待つしかないか……」

 

浮かない顔をし互いに目を伏せる。

 

「やはり千冬様、優様に話ませんか?隠し「駄目だ」

 

「ですが「駄目だ」

 

「話したが最後きっと探しに行ってしまうだろう、怪我の状態関係なしに」

 

「そう……ですね……」

 

「今回の件は不幸中の幸いだった、下手をすれば死んでいても不思議じゃない状態だ」

 

二人の脳裏に惨劇が鮮明に悲鳴と共に蘇る

 

「それに言える訳がない、『一夏が失踪した』などと口が裂けてもな」

 

優が眠っている間、先に運び込まれていた一夏は軽症程度で一日検査入院だった。

 

それ故危機感が抜けていた、私が優の見舞い帰りに一夏の病室を訪れたときには、窓が開かれカーテンがなびき一夏の姿はなかった。

 

病室内で争った形跡もなく、ましては悲鳴やナースコールもない、このことから私は……

 

「やはり自ら行ったと考えるべきか」

 

「憶測で行動するのは危険ですよ千冬様」

 

「わかっている、だが現実は常に悪い方向に転ぶ、心構えはしといた方がいいだろう」

 

袖を捲り腕時計を見る

 

「すまない、私はこれで戻る事にする」

 

「はい、千冬様もお気をつけて」

 

千冬の背中を見届けるクラリッサ

 

ーどこに行ったあの馬鹿は……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一通りの話が終わったのか病室へ戻ってくるクラリッサ

 

「あれ?千冬さんは?」

 

「仕事に戻ると言ってそのままお帰りに」

 

「そうですか……あ、クラリッサさん申し訳ないんですが、これ取ってきてもらえますか?」

 

そう言い携帯端末の画面を見せる

 

「新作のゲームですね?わかりました」

 

「店員にミスブルースと言えば出してもらえるはずですので」

 

「お得意様と言う事ですねわかりました、ではしばしお待ちを」

 

一礼をし、病室から出ていくクラリッサ

 

「さて、これで話の腰は折られなくて済みそうだ」

 

携帯端末の時刻を確認する、あと数分もあればくるであろう

 

ーにしても、俺に知られたくないような話って何だろうか?

 

あまりにも心当たりが無さ過ぎて困り果て考えていると、コンコンと病室の扉をノックする音が聞こえる。

 

「開いてるぞ」

 

そう返答するとぞろぞろと入ってくる一夏ラバーズ、皆表情は浮かない顔をしている。

 

「さて、ここに呼んだ理由は察してると思うから単刀直入に聞く……何があった?どうして俺の元に情報が入ってこない?」

 

皆、口を紡ぎ互いの顔を見る。

 

「その顔を見るに千冬さんから口止めされたと考えていいか?」

 

無言が続き静寂な時間が流れる。

 

ーこれは……よっぽどだな、クラリッサさんが戻ってくるのを踏まえても時間は余りないあきらめて地道に答えを探すか?

 

そう思い目を閉じた時だった、静寂に耐えかねた簪が口を開いた

 

「あ、赤城兄さん「簪ダメよ、千冬さんから固く言われているでしょ?」

 

口を開きかけた簪に鈴音がそう諭す

 

「で、でも」

 

「言えないなら無理には聞かないさ、んじゃ俺の仮説だけでも聞いてくれないか?」

 

「そ、それくらいならいいよね」

 

「構わないだろう、あくまで我々は真実の情報を伝達することを禁止されているだけだ」

 

デュノアがラウラに振るとそのように返答した。

 

「そうかすまないな、それじゃ話を進めるとしよう」

 

お茶を飲み一息入れてから話し始める。

 

「まず一つ目は、一夏との連絡がここ2~3日取れてない事だ、通話はもちろんメールも出したが両方音沙汰がない」

 

「二つ目、俺が病室にいるということは、少なからず一夏もここの病院に入院をしたはず、なのに千冬さんは俺の所にしか顔を出していないに近い、さっきもそうだったから恐らくもう何日も前からここへ来て帰るの繰り返しのはず」

 

話をしながら全員のしぐさを注意してみていくと、箒が一番わかりやすい行動をとっていた。

 

ー眉が動いたな、あと瞬きの回数も増えた、視線の挙動も激しいな

 

「そして三つ目、俺が聞きたいであろう一夏の話を伏せているこの状態だ、このことから俺は『一夏の身に何かあった』と推測した」

 

そこまで言い切り箒を見る、瞳孔が少し開き眉間にシワがよった。

 

ー当たりか……

 

「これが俺の仮説だ、あくまでもな」

 

「そうか、仮に私の嫁に何か「反論はしなくていい、答えは得たからな」

 

ベッドから立ち上がり上着を手に取り扉へ近づくと、鈴音とセシリア、簪が扉の前で立ちふさがる。

 

「やはりこうなったか」

 

「こうなるとわかっていたから千冬さんとクラリッサさんは口を閉じていたのに」

 

背後からラウラとデュノア、そして俯いたままの箒

 

「勘違いすんな、ISないのにどっか行く訳ないだろう?左腕だってくっついてないんだから」

 

「ではどちらに?」

 

「手がかりを探しに一夏がいた病室まで……な」

 

セシリアの頭をポンと叩き押しのける。

 

「あと、お前ら暫く鍛錬は禁止だ、いいな」

 

「なんでよ!こちとら体動かしたくて「気持ちの整理もついてない状態で鍛錬しても身が入らないだろう?あと怪我をするからだ」

 

鈴音の言い分にそう切り返えしてやる

 

「俺からは一つだけだ、『前を向いて歩け、じゃないと全て無になる、だから今やれることをやれ』それが今のお前らへの課題だ」

 

扉を開き病室内にいるラバーズにそれだけ告げ、そっと病室の扉を閉め上着を羽織る。

 

ーさて、気持ちを切り替えていくか

 

教師モードから思考モードへ移行する。

 

久方ぶりにこの状態になるかもしれない、主にこのモードを使用するときはプログラミング時やギャルゲ時、脱出ゲー時に使う奥の手、これを使用すると反射速度がかなり下がる為、もっぱら趣味の時にしか使わない代物である。

 

一夏の病室の場所はそこまで時間はかからず見つけることができた。

 

「203号室、ここか」

 

扉を開けるとそのままの状態で現場は保存されていた。

 

病室内に入り辺りを見渡す、争った形跡はなく、あまりにもひどくきれいな室内

 

ー侵入経路は窓が無難か

 

病室を出ると直ぐ近くにナースステーションがあり人眼が多くリスクがある。

 

窓へ近づき鍵を開け開く、高さ的に俺がいる病室とさほど変わらない、訓練を受けている人間なら苦労することなく上りそうだ

 

ふと、視線を窓の端に向けると、キラキラと光る何かの切れ端が落ちていた。

 

「なんだこれ?」

 

手で拾い上げ蛍光灯に当ててみると、過去に一度どこかで見たことのあるような色と指触り、詳しくは病室に戻ってから1人の時にしよう。

 

窓を閉め今度は一夏が眠っていたと思われるベットを調べることにする、ベッド下を見るが痕跡らしきものはない、屈んだ態勢から立ち上がりベッド上を調べる。

 

掛け布団を捲り、枕を動かすと明らかに男性の髪の毛とは思えない長い髪が数本落ちており、癖っ毛の無いストレート故に、千冬さんの物ではないだろう

 

ー決まりだな、何者かがここにいたそれも親しい人間だろう

 

ポケットからハンカチを出し、先ほど拾った破片と髪の毛を包む。

 

「情報収集はこれくらいにして戻ろう、そろそろクラリッサさんが戻ってくる頃合いだろう」

 

ハンカチをポケットに戻し病室へ戻るとラバーズが椅子に座っていた。

 

頭をポリポリとかき口を開く

 

「なんか飲むか?コーヒー、緑茶、ポ〇リくらいだが」

 

戸棚から紙コップを取り出しお盆に乗せていく

 

「あ、赤城兄さん手伝うよ」

 

「というか、赤城さん怪我人なんだからベッドに座ってなさいよ」

 

簪と鈴音が、そそくさとこちらへ来て飲み物を入れていく

 

「悪いな助かる」

 

「そもそも貴様は病人なのだから静かにしているべきではないのか?」

 

「よく言えるな、さっきまで意気消沈していたのに」

 

「む」

 

「まあまあ、それより赤城さん入院はいつまでですか?」

 

普段の2人のやり取りに割って入り話題をずらすデュノア

 

「そうだなあと数日程度か?下手すれば伸びるかもしれんが」

 

「でしたら退院祝いをしなくてはいけませんわね」

 

「いや、別にやらんでも」

 

「いいんじゃない?少しはそれで気分晴れるでしょう……ね、箒」

 

「あ、あぁ……」

 

セシリアの提案に肯定し窓の外をボーっと眺めていた箒へ話を振る鈴音

 

ー一番ダメージデカいのは箒か……

 

「はい、あったいものどうぞ赤城兄さん」

 

「ありがとう」

 

緑茶を受け取り飲む

 

「それで一夏の病室で何か成果はあったか?」

 

「ほとんどないな」

 

「だよね」

 

「この話は進展があるまで蓋をしよう、気分が滅入るばかりだろう」

 

「賛成」

 

「話は変わるが、お前ら文化祭休日どうするつもりだ?」

 

話を振ると皆返答に困り果てていた。

 

「なんだ何も決めてないのか、折角の休みだぞ」

 

「て、言われてもね」

 

「どこに行きたいという事もなくてな」

 

そんな話をしていると病室の扉が開く

 

「でしたら、新しくできた水族館へ行ってはどうです?」

 

クラリッサさんが買ってきた荷物を持って入ってくる

 

「水族館か久々にいいかもしれませんね」

 

「ではそのように手配しておきますね」

 

日程が決まり始めると共に、ひっそりと魔の手は進行を開始していた。

 

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