アメリカ弾丸旅行を終え数日、日付は8月下旬へと入った。
生徒にとっては長期に渡る休日の終わりを告げる頃合いと共に、暦上では夏の終わりを告げる時期でもある。
そして、教師陣達も新学期のため忙しくなるのだが…………
「…………」
どういう訳か俺だけは、休暇になっていた。
理由は簡単、教師達が休日の間ひたすら出勤していた為である。
―いかがしたものか…………
積みゲーの消化はとっくに終わっている。だからと言ってやりたいゲームも出ている訳でも無い。
詰まる所…………
「暇だ…………」
ベットに横になり、風鈴の音を聞きながら天井を見始める。
―やばい、このままだと寝そうだ
ボケーと天井を見続けていると不意に風に乗って何かが窓から入ってきた、一瞬だけだがパッと見たところビラのようで夏祭りの文字が読み取れた。
「レジャーランドと夏祭りか…………」
起き上がり、飛んできたビラを手に取り軽く眺めると、日付は今日であり、場所もわりと近い。
「レジャーランドは無理でも夏祭り位は行けそうか?なんか前に、クラリッサさん浴衣がなんたらとか言ってたしな」
―詳しくは覚えていないが
確かに、あの二人の浴衣姿なら見てみたい気もするが…………
「しかし仕事忙しいだろうしな、やめとくか?」
ボリボリと頭をかき、ビラをちゃぶ台に置き買い出しに向かうこととする。
「買い出し終わってからでも遅くないだろう」
ヘルメットとエコバッグ、財布を持ち、スーパーカブを吹かしいつものスーパーへと向かう。
―もやしーもやしー
彼が家を出てから数十分、部屋の鍵が回りドアが開く
「久々に本部の仕事をして体にくるとは、私もまだまだですね……」
軍服に身を包み、書類ケースを片手に入ってくるクラリッサ
「優様ぁ、お腹が空いたので何か食べたいのですが…………あれ?いない?」
部屋を見渡すが彼の姿は見えない。その代わりに見えたのはちゃぶ台に置かれたビラだった。
「ほぅ、夏祭りですか…………経験が生きましたね優様、そうとなればちゃちゃっとシャワーでも浴びますか」
鼻歌をしながら、手慣れたようにボイラーに火をつけ、居間に戻り軍服をハンガーに掛け、夏仕様のメイド服に袖を通し、冷蔵庫からキンキンに冷えた麦茶を出して喉を潤す。
「生き返ります…………」
湯が沸くか沸かないかといった所で、またドアの鍵が回る。
ガチャリ
「ふぅ、今日も疲れたな…………優!飯とビールを…………なんだクラリッサしかいないのか」
「えぇ私しか、いませんよ」
「そうか」
ネクタイを緩め、その辺に上着を投げ冷蔵庫に入っている珈琲牛乳をコップを使わずにグビグビと飲み干していく。
こう言っては何だが、非常にだらしがない。
投げ捨てられた、上着を拾いハンガーに掛けるクラリッサ、本来の役割で言えば今不在の(絶賛タイムセール戦の中で奮闘中の)彼がやるはずの仕事である。
「お湯沸きましたけど、千冬氏から入りますか?」
「いや、私はもうしばらく涼んでからにしよう」
「わかりました、ではお先に…………」
扇風機の前に陣取り涼む千冬の背中を見届け、脱衣場へ向かうクラリッサ。
そんな事とは知らずに、買い出しと言うなの戦争から帰宅するこの部屋の主。
「ただいま帰りましたよーと」
「あぁ優、今帰ったのか…………ビールは買ってきただろうな?」
完全にカリスマ性は投げ捨てられ、扇風機前でダラダラとする千冬
「えぇまぁ…………」
冷蔵庫に戦利品を仕舞いながら、適当に返事をする
―一番安い奴だけど…………
「ふぅ…………いい湯でした」
湯上がり姿のクラリッサが居間へと姿を表す
「あれ、クラリッサさんも来てたんですか」
「はい、いち早く駆け付けました、どうやら今日は何やら宴の香りがしたもので」
「「宴?」」
千冬と声が揃う。
「優、詳しく話を聞かせてもらえるか?」
「いや、俺に聞かれても」
先程まで失っていたカリスマ性を取り戻し、
俺に詰め寄る千冬の隙をつき、空いた扇風機前を占拠し涼み始めるクラリッサ
―うーむ…………なんの事やら
不意にちゃぶ台の上に置きっぱなしのビラが視界に入った。
「あ」
「何か思い出したか」
「えぇまぁ…………夏祭りの事を言っているのではないかと」
「夏祭り?あぁそう言えば今日だったか」
「えぇ私、夏祭りは行ったことが無いんですよ……後浴衣も着たことがありませんでしたし」
目をキラキラと輝かせてこちらに訴え掛ける
「どうします?」
「クラリッサが行きたいと言っているのだ、行くしかあるまい、それにどうせお前の事だ、私が行かないと言っても行くように説得するのだろう?」
―オンヤマー、そこまで見透かされましたか
「そうと決まれば、私は湯に入ってくる」
「はいはい……浴衣はどうします?」
「私に当てがある、その辺は気にするな」
「さいですか」
そうとなれば、俺も準備に勤しむとしよう。
まずは、所持金チェック、尻ポケットから財布を出し開く…………
ーこれくらいあれば余裕だな…
「優様は、夏祭り毎年行っているのですか?」
「え!えぇ暇なら行ってましたね」
一人で…………
一人虚しくなり始めると脱衣場から戻った千冬さんと目があった。
「優、あがったぞ」
「早!烏の水浴びか何かですか」
そう切り返すと湯上がりで、顔の変化は分からないが恐らく赤くなりながら、木刀まで歩いていく。
「う、うるさい!さっさと行ってこい!馬鹿者が」
木刀を手に持ったあたりで潔く脱衣場へ逃げ込むことにする
「あぶねぇあぶねぇ」
こちらもシャワーだけ、ちゃちゃっと浴び居間に戻ると二人の姿はなく、変わりにちゃぶ台の上に紙が置かれていた。
「えぇと何々、浴衣を着に行くので先に行っていてくださいbyークラリッサ」
ーの所は、乱雑に消されていた。
恐らく嫁と書いたんだろうな。
激しい戦闘があったのだと思いながら、扇風機の前にしゃがみ…………
「あーーー」
誰もがしそうな事をしながら髪が乾くまで待つことにする。
数分おきくらいに髪を触り、あらかた乾いた辺りで扇風機を止め、戸締りをし部屋を出る。
「んじゃ、行くとするかね」
軽く背伸びし徒歩での移動を開始
交差点を越える度に、人並みに浴衣を着た人達が徐々に増えていくのが目に見えてわかった。
ー賑わってるな
夏祭り会場に着いたところで、喉を潤すついでに時間潰しも兼ねて、自販機で飲み物を買い、自販機近くで二人が来るのを待つ
ガヤガヤと賑わい始める人だかりをボーと、飲み物を飲みながら眺める。
しかし…………
見渡した人だかりは、何故だろうかやたらと、手を繋いだカップルばかりが目に入る。
ーくそっ
グシャ!っと思わずスチール缶を派手に握り潰し、中身が盛大に溢れだす。
「お前は何に対して、そう苛立っているのだ」
背後から、聞こえなれた声で話し掛けられる
「いえ……ちょっと心が荒んだもので」
振り向きそう答えると、黒に金のラインの入った浴衣を着たポニテの千冬さんと、白に赤のラインが入った浴衣を着たクラリッサさんがいた。
思わず、小さくガッツポーズする。
「優様ぁいかがですか?この浴衣」
その場でクルクルと回る。
「えぇ、似合ってますよ「そんなことよりも、ホラ」
袖からから、ハンカチを出し俺に渡す千冬
「あぁ、すいません」
渡されたハンカチで手を拭き
「千冬さんの浴衣もバッチリ似合ってますよ」
「そ、そうか、それはよかった」
笑顔で感想をのべると、千冬さんは明後日の方を向き顔を赤くしていた。
ーあぁ、やっぱ千冬さんかわゆいわぁ
おっと思わず、鼻から自制心が…………
「それじゃ楽しみますか」
「「あぁ(はい)」」
3人並んで夏祭り会場へと入っていく。
「優様、あれは何ですか?」
指差された屋体には、かたぬき屋と書かれていた
ーさすがに、かたぬき屋は知らんのか
「あれは、かたぬき屋と言って、砂糖菓子で作られた薄く脆い板に描かれた形をくり貫くゲームをする屋体ですね」
「かたぬき屋か…………懐かしいな、昔一夏と一緒に行ったくらいか」
かたぬき屋の前で歩みを止め、しみじみと眺める。
「一回やってみます?」
「あぁ、隣がやりたくて仕方ない目をしているからな」
おじさんにお金を払うと、伏せられた3つの板が並べられる。
ーくり貫く形は見せないのか……
「クラリッサさん先にどうぞ」
「では…………」
真ん中を選び、ひっくり返すとハートが描かれていた。
「ハートですか…………」
ーあ、あれ?もう当たり引かれた感じかな
半ば冷や汗をかきながら千冬さんが引き終わるのを待つ。
「ふむ、これで行こう」
一番右を選び、ひっくり返す。
「ほう、ウサギか…………難敵だな」
「んじゃ、俺はこれを…………」
残った一枚をひっくり返す、描かれていた形はひょうたん
ーよっしゃ!もろたで!
3人とも針を貰い、ショリショリと削り出していく。
終始無言で黙々と手だけを動かす。
ークビレは何とか抜けた、後は慢心せずに進むだけだ
気を引き締め、ラストスパートをかけると
「ひぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」
クラリッサさんの悲鳴が聞こえ、恐る恐る手元を見ると無惨にも砕け散ったハートがそこにはあった。
「あぅぅ、優様のハートが…………」
「やめて!確かに俺のメンタルは脆いけど!やめて!」
激しいつっこみを入れていると、千冬さんがふぅと息を吐き自慢気にこちらへ顔を向けていた、そんな自慢気な彼女の手元を見ると、精密にくり貫かれたウサギがそこにはあった。
「う、うまい」
「昔の勘は鈍ってはいないようだな、それに優お前も中々じゃないか」
「いやいや、難易度的に言ったら俺の下の下で「お二人さん、景品何にする?」
会話を遮り、おじさんが後ろの景品棚を指しながらこちらを見る。
「んん!では私は簪にしよう」
咳払いをし簪を指差す
「クラリッサさんどれにします?」
景品を見て思わず苦笑い、これといって目ぼしい物は無く、ガックリ肩を落としたクラリッサさんのテンション回復を見越して聞いてみる
「ふぇ?」
「俺欲しいの無いんでクラリッサさん選んでいいですよ」
「で、でしたら、その…………クシを」
「あいよお二人さん、お兄さんいいねぇ両手に花じゃねぇか、うらやましいねぇ」
景品を受け取りながら、そう言われ思わず照れる二人
「茶化さないでくださいよ、では、これにて」
軽くおじさんに手を降り、かたぬき屋を後にし
トボトボと歩く3人
終始ご機嫌なクラリッサさんを見、辺りを散策していると、見なれた二人が金魚すくい屋台で奮闘していた。
「ちょっとラウラ、早く行かないと置いてかれるよ」
「あと少し、あと少しで取れそうなのだ」
必死にポイで出目金を取ろうと掬うが、ポイは破け水槽の中へ
「く!」
「何やってんだお前ら?」
そんな二人に声をかける
「あぁ、赤城さん、それに千冬さんにクラリッサさん」
「金魚すくいですか隊長」
「知っているのかクラリッサ」
「えぇ、やってみたことはありませんが」
「このポイと言うのは不良品ではないのか?」
破けたポイを見ながらそう言い放つ
「取れないからってそんなこと言うもんじゃありません」
「では貴様はこのポイで金魚を掬えるのか?」
立ち上がり破けたポイをこちらに向ける。
「毎度毎度なんで、お前は上から目線なのかな?ラウラさん」
ラウラの両頬を掴み引っ張りながらそう答えてやる。
「いひゃい、いひゃい」
「はぁ、ポイ1つ下さい」
溜め息をつき、ラウラの両頬を放しポイを1つ貰う。
「んで、どれ狙ってんだ?」
「あのデカイのだ」
引っ張られ赤くなった両頬を撫でながら答える
「え、お前出目金でいいのか?」
「なんだ、取れないのか」
「いや、出目金でいいならいいが」
ー出目金が欲しいとは…………
ポイを静かに沈め、早々と出目金の頭目掛け進み、出目金の動きに合わせ水面へ斜め移動させ
、後は素早く桶へ最短で入れる。
「うし、捕れたぞラ「フジャケルナ!」
「ヴェ∑(OwO)!」
「貴様に貴様に何が分かる!」
「お前いったい幾ら注ぎ込んだんだ?」
「軽く野口3人かな?」
デュノアに抱き着きうわぁぁぁぁぁぁぁんと泣き始めるラウラに変わり、そう答えるデュノア
ーしゃーねぇな…………
頭をかき店主に聞く
「おっちゃん、ポイは何処まで破けたらアウト?」
「ポイ半分じゃよ」
「そっか…………んじゃ」
「優?」
『ポイ半分破けなきゃ幾らでも金魚掬ってもいいわけだ』
「優様……まさか」
「別に全部掬ってしまっても構わんのだろう?」
不敵な笑みを浮かべ、ジャブジャブと桶に金魚を掬っていく。
余裕そうに腕を組んでいた店主の顔色が徐々に青くなっていくのが目に見えて分かる、そしてその光景を眺める4人
「に、兄ちゃん、もう…………それぐらいにしてくれないか?」
「え?まだポイ半分破けて無いんだけど?」
「た、頼むよ、これ以上捕られたら、もう店を畳むしか無いんだよ」
泣きすがる店主に対し俺は…………
「駄目だね、やられたらやり返す、倍プッシュだ」
鬼の所業を与えてやった。
「ふぅ久々に金魚すくいやったな」
両腕を上げ首をコキコキと鳴らす、後方では袋いっぱいに入った金魚を持つラウラがいた。
「まさか、本当に全部掬ってしまうとはな、驚いたぞ」
「最初は元分だけ取ろうかと思いましたが、ちょっと熱が入り始めまして」
「よかったですね、隊長」
「あぁ」
5人に増えた団体が歩いていると
「ふふふ!私の華麗なる狙撃の前にひれ伏すがいいわ」
「あんたさ、もうそれぐらいにしときなさいよ、もう一夏いないわよ?」
射的屋台で、やたらテンションの高いセシリアとその横でリンゴ飴をかじりながら、セシリアが取ったであろう景品を持つ鈴音がいた。
ーまぁこの二人がいればラバーズは全員いるよな…………
「なんだ、貴様ら一夏とはぐれたのか?」
「んな訳けないでしょ、あんたじゃあるまいし」
ラウラの問いに対しそう答える鈴音
「随分沢山取ったね、これ全部セシリアが取ったの?」
「当然ですわ!私に掛かればこれくらい当然ですわ」
ライフルを肩に担ぎ優雅にデュノアに答えるセシリア
「て言うかセシリアもそうだけど、あんたも随分金魚捕ったわね」
「ん、あ、あぁ私に掛かればこれくらい」
鈴音の問いに対し、しどろもどろに答えるラウラ、その横でデュノアは苦笑い。
「もしかして、赤城さんが捕ったのこれ?」
ー鋭い!
「俺のログには何もないな」
自然と鈴音から視線を外し、口笛を吹く
「あぁ赤城さんが捕ったんだ、やっぱり」
「やっぱりとはなんだ、やっぱりとは」
「初心者のあんたがそうそう捕れるもんじゃ無いってことよ」
「ぐぬぬぬぬ」
ーやはりバレるか
チラッと携帯の時刻を見る。
「そろそろ、行かないとマズイですね」
「マズイとは?」
「あぁ、神楽舞か」
「うっそ、もうそんな時間」
「ほら、ささっと行ねぇと一夏取られるぞ」
ラバーズ煽るように急かす
「優様、かぐらまいとは?」
「神楽舞は神に奉納する舞の事です、前回は箒が舞っていましたから、今年も箒では無いかと」
「なるほど」
「ほう、随分詳しいじゃないか優、まるで毎年来てるようだな」
ーやべ、口が滑った
「そ、そんなことより!神楽舞始まりますよ神楽舞!」
次なる追求を防ぐため二人の背中を押しながら進む
舞台に着く頃には神楽舞は始まっていた。
舞を見る限りまだ最初のようだ、当然舞っているのは箒であった。
ー今年は前回より全然いい舞だ
「これが神楽舞」
クラリッサさんは神楽舞に釘付けのようだ。
「して、優よ、お前から見て今年の神楽舞はどうだ?」
「全然いいですよ、下手したら今まで一番いいかもしれません」
「そうか」
舞が終わり、割れんばかりの拍手の後一礼し舞台から降りる箒
「後は花火だけですね」
「だな、その前に屋台で色々買っていくか」
「はい」
屋台を何軒か回り、焼きそば、たこ焼き等々を買い花火が見える休憩所へと歩いていく
「これだけ買えば全員文句無いでしょう」
ドサッとテーブルの上に置き椅子に座りクラリッサの様子を見る。
「はい、では後程この場所で落ち合いましょう隊長」
携帯端末を切りこちらに戻ってくる、話は着いたようだ。
「では我々は一足お先に…………」
ガサゴソと袋を漁り、キンキンに冷えたビールを掴む手を掴み、その手からビールを取り上げる。
「駄目ですよ千冬さん」
「頼むちょっとだけ、ちょっとだけだから…………な!」
こちらの襟首を掴み、訴えかける。
ーここは断固たる態度をとらなくては
「駄目です」
「お前は私に腹を切れと言うのか」
「んな、大袈裟な話じゃないでしょう!」
そんな二人の様子を見てクスクスと笑うクラリッサ
「でしたら、千冬氏何か条件付きでの我慢でしたら文句は無いのでは?」
その言葉にピクッと反応する。
「そうだな、条件付きなら我慢してやらんこともない」
「はいはい、何がお望み何ですか」
半ば呆れながらも、そう答える
「か、髪に先程の簪を着けてくれ」
簪をテーブルに出して髪をほどく。
「分かりましたよ」
簪の封を開け簪を手に取る、すると横からクシが渡された。
「クラリッサさん?」
「使ってください」
「では遠慮なく」
簪をくわえ、クシで髪を梳いていく。
その間の千冬さんはやたらと体に力が入っている、恐らく顔は真っ赤といったところだろう。
「優様手慣れてますね」
ポニーテールにし、しっかりと簪で止める
「そうか?母親の髪はよく梳いてたしその影響かもな」
席に着き、ラムネを飲み一息。
ーやっぱ千冬さん似合うな…………
しばし見惚れていると、夜空に光が幾つも灯る。
「打ち始まったな」
「え!、えぇそうですね」
視線を花火に向けた時だった。
カシュ!
ーあ!しまった
喉を鳴らしながら、飲み干していく。
「くー!我慢したビールは上手いなぁ!」
「うふふ、それでは我々も頂きますか」
「え!いいんですか?待たなくて」
「先程、連絡の方があり、あちらはあちらで楽しんでるみたいで、遅れるとの事です」
割り箸を割り、焼きそばをすすり始める。
「そっか…………楽しんでのか…………ならいいか」
こちらも袋から、たこ焼きを出し食べる。
ーお、旨い
「優、そのたこ焼き美味しそうだな、1つくれ」
「あ、いいですよ…………はい」
爪楊枝にたこ焼きを刺し、千冬の口元へ持っていく。
「すまんな」
そのたこ焼きを食べようとした時、俺はふと思った。
ー火傷しないか?これ
そう判断したこ焼きを千冬の口から逃がす、当然そうとは知らない千冬は…………
「…………」
顔を赤くし、わなわなと震えていた。
「すいません、一口でいったら火傷するかと思いまして、すいません」
その光景にトランス状態に入るクラリッサ
「お前と言う奴は!!」
ーえ、ちょま!
「ひぇー!!」
夏の夜に
打ち上がる花(鼻)
赤飛沫
by赤城