アテネちゃんの執事!   作:通行人A'

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Task107:君の名は――アリス?

 

 

 俺様の財宝が欲しいか?

 探せ、この世の全てをそこに置いてきた──

 

「で、お馴染み。じーちゃんの三千院家本邸にようこそ──と言いたいところじゃったが」

 

 というわけで、日本のどこか。

 ここは三千院家本邸。その応接間は相変わらず無駄に広い。天井は高く、壁には古い油彩画が並び、重厚なソファがゆったりと配置されている。

 

 その中央に座る老人──三千院帝は、来客に視線を向け、そのまま目を点にしていた。

 原因は彼の視線の先である。ため息をつくアテネと、彼女の執事のアイル──ではなく、2人の間にちょこんと立つ、1人の幼女。

 

 容姿はアテネをまんま小さくしたような金髪縦ロールで、赤い瞳。そんな幼女──アリスを、帝はまじまじと見つめる。視線は一度アテネへ移り、またアリスへ戻る。今度はアイルに、そしてまた戻る。

 

「……え?お前たち、いつのまにか子供作ったの?」

「もうそのネタはいいですわっ!!」

 

 

 

 さて、改めて三千院家本邸にやってきた天王州組一向。ややこしい話になるであろうこと山の如しというわけで、ヨゾラとマキナは車に待機。アイルとアリスを引き連れて、三千院家当主の元に殴り込みをかけた訳である。

 

 アイルはこれまでの経緯──この謎の少女が、突如としてアテネの元に襲来した件についてを説明する。ある朝、いきなりアテネのベッドに眠っていたこと。容姿から何まで、幼少期のアテネに瓜二つなこと。アテネはもちろん、幼女本人も目的も正体も分からないと宣ったこと──などなど。

 

 話を聞いていくたびに、帝の眉をみるみると下がっていった。

 

「……いや、確かに厄介事とは聞いておったが」

 

 彼は今一度アリスを見つめて、目を瞬かせる。一方、アリスは丁寧にスカートの両裾を摘み、恭しくお辞儀をしてみせた。

 

「ご機嫌よう、三千院家のご当主様。私のことはアリスと呼んでくださいな」

「ほぇー」

 

 間の抜けた声を上げつつ、アテネに視線を向ける。え?お前マジ?お前らの子とかじゃないの?まだその方が現実味あるまであるよ?的な視線を送る。

 

「いやまぁ、お前さんらがそういう関係だったらそれはそれで衝撃なんじゃけども」

「そんなわけがないでしょう。もう左脳が壊死でもしてしまってるのかしら?」

「相変わらず口悪いしこの子」

 

 ピシャリと否定するアテネ。当然、アイルも全く心当たりがないと首を振るのみ。

 

「いやしかし、本当に昔のアテネにそっくりでのぅ……いや双子と言われるよりも、マジでそのものっちゅーか。あれか、一部が分離して人間を形成したみたいな」

「人をアメーバみたいに言わないでください」

 

 そうでもなければ説明がつかない。そんな驚きと困惑の表情のまま、帝はソファにゆっくりと腰を下ろした。

 顎に手を当て、もう一度だけアリスを見たあと、再度アテネに視線を向ける。

 

「……つまり、ワシに相談というのは」

「身元調査の協力をお願いしたく」

「デスヨネー」

 

 帝は頬杖をついて唇を尖らせる。

 

「いやまぁ、可愛いお前の頼みじゃから協力してやることも吝かではないのじゃがな。とはいえ、君ら最近ワシのこと便利屋みたいに扱いすぎじゃね?」

「そうでしょうか?」

「そうじゃ!ほら、ワシってば原作でも当初はニヒルなラスボスキャラっぽかったじゃん?確かにおちゃらけてるけど、裏ではめちゃくちゃシリアスみたいなさ!なのにこんなんじゃワシの格?みたいなのがドンドン下がっていく気がして」

「……そうでしょうか?」

「ちょっと面倒くさがって返事一辺倒にするのやめて!?」

 

 まぁまぁと、アイルが間に割って入る。

 

「お嬢様も突然の事態に混乱しているところでして。最早頼れるのは帝様しかいらっしゃらないのです。ここは一つ、どうか」

「むぅ……」

「この件以外、〝他の事〟では極力ご迷惑をおかけしないように致しますので」

 

 スッと神妙な表情になったと思えば、帝は力なく背もたれに体を預ける。

 

「……まぁ、分かった。とはいえ、あまり期待はするなよ。事態が事態だけにの」

「ありがとうございます」

 

 お辞儀をしつつ、アイルはアテネに目配せする。彼女は軽く頷くと、一歩前に出た。

 

「あと、彼女の事は従姉妹、ということにしておきますので。お爺様も口裏合わせだけお願いします」

「ふむ……ま、その嘘もどこまで持つかは怪しいもんじゃが」

 

 帝は今一度アリスとアテネを交互に見つつ。

 

「やっぱり、お前さんらの子供の方が良いんじゃね?色んな意味で」

「脳を摘出しましょう。アイル、メスを」

「ごめん嘘やめて」

 

 

 その後、何やら今後についての話があると帝はアイルを連れ立って一旦別室へと移動していった。残ったアテネは所在なさげに窓の外を見つめていたが。

 

「ねぇ、天王州アテネ」

「……なに?というかフルネームで呼ぶのはやめてくれる?」

 

 ソファに腰掛けて足をぷらぷらとしていたアリスが退屈そうに顔を向けてきた。

 

「でしたら何と呼べば?」

「フツーにアテネで良いわ」

「分かりました。天王州アテネ」

「話を聞いていて?」

 

 アリスはしばしアテネを見つめ、それから小さく首を傾げる。

 

「退屈ですわ。少し、散歩してきてもよろしくて?」

 

 確かに、ここに来てからアリスはずっと付き添いのみ。特にやることも無ければ、アイル達の話がいつ終わるかも分からない。

 

 アテネは小さくため息をつきつつ、考える。ここは三千院家の本邸。警備のレベルは小国の大統領府などには引けを取らない程で、安全性は折り紙付きだ。

 

「……別に構わないわ。ただし敷地の外には出ないように」

 

 ぱっと表情を明るくしたアリスは、そのまま応接間を出て行った。そんな様子を何とも言えない表情で見送るお嬢様。

 

 それから約十分後。奥の部屋から、帝とアイルが先程と変わらない足取りで戻ってくる。

 

「早かったのね?」

「えぇ。帝様が今年はお嬢様の水着生写真を同人誌に付属して荒稼ぎしようという提案をしてきたので、宥めるのに苦心してました」

「そう。ではアイル、開頭手術の準備を」

「ちょっとアイル君!?嘘いうのやめて!?」

 

 目が座っている天王州家の当主様に誤解だと必死に弁明する三千院家の当主様。

 と、冗談もそこそこに、アイルは周りを見回して眉を吊り上げる。

 

「おや?アリス様は、どちらに?」

「退屈だったみたいで。お屋敷を散歩したいと」

 

 アテネはそっと椅子に腰掛け直すと、ドアの方に視線を投げた。

 

「そうでしたか。一応お側にいた方がいいでしょうか」

「過保護すぎるわ……それにこの屋敷なら変な心配も無用でしょう」

「まぁ、それはそうですが」

 

 そこで、帝はあっと思い出したように声を上げた。

 

「そういや今日、ナギたち来とるんじゃったわ」

 

 言葉が落ちた瞬間、アテネとアイルの視線が交わる。

 互いに何を考えたかを確認するように、わずかに目が細まった。

 

「まずいですね」

「え、ええ……」

 

 ナギが来ているということは、専属執事である綾崎ハヤテも屋敷内にいる可能性が高い。

 

(幼少期のお嬢様をよく知ってる綾崎君が、アリス様と会えば……)

 

 ――面倒な事態になるのは想像に難くないわけで。

 

「急いで探してきます」

「そう、ね……私は」

 

 若干気まずそうに言葉を濁すアテネ。理由は聞くまでもない、アイルはドアノブに手をかけつつ、

 

「お嬢様はこちらに待機を。入れ違いになっても困りますから」

「……分かったわ。ではお願いね」

 

 彼女は小さく安堵の息をついたことを確認して、執事は部屋を出ていった。

 ふとアテネが振り返ると、帝が何か言いたげに口元を緩めて、彼女に視線を向けていた。絶妙に癪に障る顔である。

 

「……なにか?」

「べーつに。青春よろしおすなぁ、と思ってな」

 

 にやにやは止まらない。アテネはきっとその老人を睨みつけると、

 

「……次余計な事を口走ったら、切り落としますわよ」

「なにを!?」

 

 

 

 

 その頃――三千院家本邸の中庭。

 

 手入れの行き届いた芝生と、季節の花々。噴水の水音だけが静かに響いている。

 暫くその景色を眺めつつ、歩き回っていたアリスは、ふと顔を上げた。前方から、誰かがこちらへ歩いてくる。

 

「……え?」

 

 声をもらして、足を止めたのは相手の方だった。

 少年――いや、執事服の青年は、目を丸くして固まっている。アリスは小首を傾げ、スカートの端をつまんで軽く会釈した。

 

「ご機嫌よう。三千院家の執事の方かしら?」

 

 青年の口がわずかに震える。

 

「アーたん……?」

「……アー、たん?」

 

 意味の分からない呼び方に、アリスの眉がぴくりと動く。青年はゆっくりと、確かめるように彼女に近づく。

 

「ど、どうしたのアーたん。なんか、すごく縮んでるけど……」

「なっ!?」

 

 次の瞬間、アリスの顔が真っ赤に染まった。

 

「何なんですのいきなり! ち、縮んでるとは失礼ですわっ!これでも毎日スクスクと成長しています!!」

 

 中庭に高らかな抗議が響き渡る。

 

 その声を聞きつけたのか、すぐに別方向から足音が近づいた。

 

「……アリス様?」

 

 現れたのはアイルだった。

 アリスは彼の姿を見つけると、すぐさま駆け寄り、執事服の裾をぎゅっと掴む。そして背後の青年をびしっと指差した。

 

「アイル! 敵ですわ! 私を縮んでると侮辱しました! 即時始末を!」

「物騒極まりない命令をなさらないでください」

 

 アイルは苦笑し、アリスの頭を軽く撫でて落ち着かせると、青年へ視線を向けた。

 

「彼は綾崎ハヤテ君。三千院家のご令嬢、ナギお嬢様の専属執事でいらっしゃいます」

 

 ハヤテは困惑したまま、視線をアリスとアイルの間で往復させる。アリスは警戒を解いたのか、ようやく裾から手を離した。

 

「ハヤテ……?」

「ご存知ですか?」

「いえ……ただ、名前だけは聞いたことがある、ような」

 

 歯切れの悪い返答に、アイルは一瞬だけ目を細める。しかしすぐに穏やかな表情に戻った。

 

「驚かせてすみません、綾崎くん。こちらはアテネお嬢様の親戚の子で、アリス様です。お嬢様に非常によく似てらっしゃるので、混乱される方も多いんですよ」

「親戚の子、ですか……」

 

 ハヤテは言葉を失ったまま、アリスを見つめた。

 

 確認するようにまじまじと、顔の造形を辿る。

 額。睫毛。赤い瞳の色。金の縦ロールが揺れるたび、幼い記憶が引きずり出される。

 

(似ている……アーたんに。いや、似すぎている)

 

 その視線に、アリスは不審げに身を引く。

 

「な、なんですの……?」

「あ、いえ……すみません」

 

 ハヤテはかぶりを振ると、困惑の色を残しつつも微笑んで見せた。

 

「アーたん……じゃなくて、昔の友達に貴女がそっくりでして……人違いしてしまったみたいです」

 

 そのまましゃがみ、視線を同じ高さに落とす。

 

「えっと……アリスさん、でしたよね?」

「ええ……」

 

 戸惑いながらも頷くアリス。ハヤテはまだ半信半疑の顔のまま、

 

「失礼な事を言ってしまい、すみませんでした。変なことを言ってしまって。気を悪くされましたよね」

 

 そして、おもむろに頭を下げる。アリスは腕を組みつつ、小さく頬を膨らませた。

 

「当然ですわ。初対面で縮んだなどと――」

 

 そこで言葉を切り、ちらりとアイルを見る。彼が小さく頷いたのを確認し、小さく息を吐いた。怒りの熱はすでに下がっているようだった。

 

「……まぁ、誤解と分かれば不問にしてあげなくもありませんけれど」

 

 ハヤテは少し安心したように笑った。

 

「ありがとうございます。アリスさん」

 

 その呼び方に、アリスは一瞬だけ目を瞬かせる。

 

 ハヤテはふと何かを思い出したように顔を上げた。

 

「あっ、そうでした。お嬢様にドラ〇エ7リイマジンドのを頼まれていたんでした」

 

 すみません。これで僕は失礼しますね。

 そういって踵を返しかけ――止まる。

 

「……」

 

 振り返って、わずかな間。

 彼は言葉を探すように口を開き、しかし閉じた。

 

「――いえ。何でもありません」

 

 小さく首を振ると、今度こそ中庭を後にした。

 アリスはその背をしばらく見つめ、やがて視線を上げた。

 

「……変な人ですわね」

 

 まだ腑に落ちない色を残しながら、その遠ざかる背中をじっと見つめていた。

 

 

 屋敷に戻るべく、中庭を離れるアイルたち。

 中庭を抜け、屋敷の扉をくぐると、冷たい廊下の空気が彼らを迎えた。

 そのまま角を曲がったところで――

 

「おお、見つけた見つけた。」

 

 出会いがしらに、姿を現したのは帝だった。

 

「おや、お嬢様とご一緒ではなかったのですか?」

「いやー」

 

 帝は言いにくそうに人差し指を突き合わせながら口ごもる。

 

「なんちゅーか、からかいすぎたら怒っちゃってサ。めっちゃ怖かったから逃げてきたというか」

「はぁ」

「なんじゃその気のない返事は。マジで怖いんだぞあいつ」

 

 アリスはくいっと執事服の裾を引っ張ると、心底呆れたような視線を向ける。

 

「アイル、このご老体は本当に三千院家の当主ですの?その辺の路上で拾ってきた替え玉とかではなくて?」

「ねぇ……この子ホントに昔のアテネまんまじゃん」

 

 

 一行が廊下を歩いていると、前方から見覚えのあるツインテールの少女が歩いてくる。

 

「げっ、ジジイ」

「孫娘よ、『げっ』はひどくね?」

 

 不機嫌そうな表情を隠そうともせず、腕を組んだまま三千院ナギは舌打ちを一つ。

 

「お前専用の挨拶だ、短くて覚えやすいだろ」

「なにをぉ!」

 

 どうどう。

 今にも掴みかかりそうな勢いの帝をなだめつつ、アイルが二人の間に、すっと滑り込んだ。

 

「なんだエドモンド、こんな老いぼれの肩を持つ気か?」

「いえ、そんなつもりは毛頭ございませんが」

「ええッ、無いの!?」

 

 がっくりと肩を落とす老人を無視し、ナギはアイルに向き直る。

 

「そういえば、臨時執事はいつでも復活歓迎だからな。また顔を見せに来い。ギリシャ以降、マリアも随分寂しがって──」

「ナギ」

 

 柔らかな声が横から割り込むと同時に。ナギの言葉を遮るように現れたのは、白いエプロンドレスの女性――マリアだった。

 

「こんにちは、アイルくん」

 

 彼女はナギの隣に並ぶと、たおやかに微笑みを浮かべて上品に会釈をひとつ。

 

「この子の言葉は無視してくださいね。でも、いつでも歓迎してますから。また遊びに来てください」

「えぇ、勿論です。ありがとうございます」

 

 そこでマリアの視線がふと下に落ちた。

 アイルの執事服の裾を掴み、ちょこんと立っている小さな影。

 

「ところで、そちらのお子さんは?」

 

 ナギも気にはなっていたらしく、軽くアリスを見つめて小首をかしげた。

 

「ジジイの親戚……ではなさそうだな」

 

 彼女はお嬢様の親戚で――そう、アイルが口を開きかけた時、帝が被せるように割って入った。悪戯っぽく口元を緩めながら。

 

「あー、この子はじゃな」

 

 帝はアイルとアリスを交互に指差す。

 

「アテネとこやつの娘じゃよ」

 

 ・・・・

 

「は?」

「じゃーかーら、隠し子ってやつ」

 

 空気が凍り付くかと思いきや、マリアはにこやかな笑顔のまま頷いてみせた。

 

「まぁまぁ、そうだったんですか。通りでアテネさんにそっくりな。けど、アテネさんとアイル君の───」

 

 言葉が途中で止まる。

 マリアの目が、ぱちぱちと瞬いた。

 

「え?」

 

 もう一度。

 

「え?え?」

 

 メイドさんの思考が次第にフリーズしていくように。そのまま、ゆっくりと瞳から正気が抜けていく

 

「あ、ははは……そ、そうなんですね。あ、あの、えっと、遅ればせながらおめでとうございます……この度はお日柄も良く、おめでたい日にピッタリな──」

 

 かと思えば、途端に意味不明な祝辞を述べ始めるマリア。明らかに混乱しているようだったが、ナギは露骨にため息をついてみせる。

 

 

「いや嘘つくにしても、もう少しマシな事言えんのか。これだからジジイは」

「うわー、孫娘ないわー」

 

 帝が腕を組んで首を振る。

 

「マリアがこんなに乗ってくれてるのに一人だけ冷笑とか寒いわー。冷笑してる俺カッケーですか、今時痛いよそういうの」

「黙れハゲ。声優やお天気お姉さんに勝手にガチ恋しては結婚報告で恨みつらみ吐き出す社会不適合者はとっととくたばれ」

「ハゲとらんわっ!!」

 

 帝は頭を押さえる。

 

「別に恋してませんー!純粋に応援してるだけですぅー!それにその手のアタオカを相手にしたくないなら、そういう色恋を意識した営業しなきゃいいんじゃないですかねぇー!」

「こういうのが将来老害を超越したモンスターになるんだろーなぁ。他人には石投げるくせに、自分には投げるなっていう周りが見えない孤独なモンスターに」

「あー、言っちゃったよこの子。ライン超えちゃったよこの子。よろしいならば戦争じゃ!」

「かかってこいこの死にぞこない!」

 

 ついに帝とナギが取っ組み合いを始めた。

 一方。

 

「マリア様」

 

 アイルは静かに声をかけた。

 

「帝様の冗談ですよ」

 

 その一言で、マリアの瞳にふっと光が戻る。そのまま、はっとしたように瞬きをし、軽く首を振った。

 

「……も、勿論分かってましたわ」

 

 咳払いを一つ。

 

「ちょっとお爺様の冗談に乗ってあげただけです」

 

 頬はほんのり赤い。

 その間にも、ナギと帝の喧嘩は続いていた。

 

「このクソジジイ!天下布武は貴様には渡さん!」

「おのれ光秀!貴様が裏切るかッ!」

 

 三千院家現当主vs次期当主候補による天下動乱編がまさに勃発せん勢いで――

 

 アイルとマリアは顔を見合わせ、なんとか二人を引き離した。

 

「ふん!」

 

 互いに顔を背けたまま、その場を離れる。まるで小学生のケンカである。

 アイルはアリスと共に、帝を引きずりながらその場を後に。

 

 

「覚えとれよ孫娘!ワシが声優さんとラブラブデートにこぎつけてもサインもらってきてやらんからの!」

「妄想は寝るときだけにしとけボケ老人」

 

 いがみ合いつつその場はお開きに。 

 マリアはといえば、去っていく一行をしばらく見送っていたが、やがて――

 

「ふぅ」

 

 小さく、本心からのため息をついた。そんな様子に、ナギは怪訝そうに眉をひそめる。

 

「何だマリア、どうかしたのか」

「別に、何でもありませんわ」

 

 わざとらしく咳払いを一つ。くるりとスカートを翻して、歩き出す。

 

「さ、ハヤテ君が帰ってくる前に、お屋敷に戻りましょ」

「……そうだな。世界の本当の姿を解き明かす冒険が、私を待っている!」

 

 少し疑問を抱いたナギだったが、すぐに石板集めの旅に思いをはせていた。

 

 

 

 ちなみに。

 

 

「それで?揃って出ていったにも関わらず、思い切りハヤテたちに見つかった挙句、話をややこしくしかけたと?」

「ごめんなさい」

 

 揃ってお嬢様に怒られる執事と当主であった。

 天王州家の受難は続く……

 

 

 

 

物語の終わり方について

  • エンディングは一つのみが好ましい
  • 各ヒロインのルート分岐などがあっても良い
  • どうでもいい
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