ジングルベル、ジングルベル。
今年も残すところあと2週間。た雪がチラつく都心では、人足はより一層と忙しなく、一方で町並みはイルミネーションやオーナメントなど、きらびやかな装飾が着々と進んでいる。
「クリスマスパーティーですか」
「ええ、白皇学院で毎年恒例の行事らしいんですけど」
白皇学院生徒会室。
ヒナギクは、机に積まれたパンフレットの山から、一冊を引き抜くように手に取った。表紙には『白皇学院 第56回クリスマスパーティー 良い子の為のしおり』と、赤と緑の洒落たフォントが踊っている。
「もうそんな時期なんですね」
クリスマス。どこかの国のお偉いさんの生誕を祝うお祭りごとは、今や日本でも当たり前のように国民にとっての一大イベントとなっている、
どこか懐かしむように目を細めるのはアイル。生徒会のサポート役も兼ねている彼は、今日も今日とて雑談も交えつつ、執行部の業務補助をしている訳だが。
「アイルさんの時も、クリスマスパーティーはあったんだよな?」
「ええ、一応。ただ私の時は、通常の行事とは少し異なりまして」
書記の千桜がメモ帳を閉じつつ目を向けると、彼は何とも言えない表情で肩をすくめる。
「皆さん、大バブルクリスマスパーティーという行事をご存じですか?」
大バブル。何とも昭和の香りが漂う、希望に満ちているようでそこはかとなく危険な雰囲気が感じ取れるワードである。
「聞いた事があるわ。確か白皇学院の伝統行事の一つ。読んで字のごとく、湯水のようにお金をつぎ込み享楽の限りを尽くすという」
「ええ、花菱さんの仰るとおり。この世の理不尽を煮込んだような催しです」
どこからともなく話題に乗ってきた自称情報通もとい、美希は普段は一切開かないであろう生徒手帳をめくりながら続ける。
「一応、行所の名前だけは生徒手帳にも記載されているわ」
「ホントどうでも良いことだけは詳しいな」
「よせやい褒めるなちーちゃん」
「褒めとらんわ」
今後そのページが役立つ事はあるのだろうか。
「かつてはネズミの国からこの為だけにエレクトリカルなパレードを呼んだり、理事がトッ○ガン好きだからって米国からF-14の実機を借りて空中演習させたりとか。まだまだ挙げればキリがないですが」
「神経を疑う行事ですね」
「まったく」
どこまでが本気なのか、否白皇であるなら全て事実だとしてもおかしくはないのかもしれない。それほどのタガが外れた規模の学校法人なのだ、資産も思想も。
「そんな恐ろしいイベントがアイルさんの時はあったんだな」
「ええ。私の時は理事が面白がって、2年連続で実施されましたね」
当時を思い出したのか、諦めたような生気のない目で窓の外を見る執事。
一体どれだけの金がつぎ込まれ、そしてそれにどれほどの人員が割かれたのか、想像もしたくない。運営主体が生徒会の行事である以上、当時の生徒会の労力は推して知るべしもない。
「ま、まあ。今回は普通のパーティーですから」
「何よりです」
「それで、後夜祭というか、白皇の生徒間で打ち上げがあるんですが。天王州さんやアイルさん達も良かったらいかがですか?」
ヒナギクの言葉に、執事は一瞬きょとんした表情をしたものの、すぐに微笑んで返す。
「それはありがたい申し出です。お嬢様もきっと喜ぶと思います」
「もちろん仕事もあると思いますから。もし予定が合えば」
とんでもない。
「お嬢様友達100人計画が大きく進展しますから、是非」
「まだ続いてたんですかそれ」
しかし、2時間後。
「え、アテネに戻る?」
白皇学院理事長室にて。
「えぇ、向こうの連中に呼ばれていてね。無下にすると後で揉めそうだから」
「あぁ、なるほど。となると年末年始はずっと向こうになりそうですね」
「でしょうね」
理事長と刻まれた金のプレートをつまらなさそうに指で叩きながら、ため息をつくのはアテネ。執事も同じように若干肩を落とす。
「どうしたの、名残惜しそうな顔をして。もしかして、こっちで恋人でも出来た?」
「そんな色っぽい話はありませんよ、今のところ」
軽く首を振りつつ、彼は先程の生徒会での話を伝える。ヒナギクたちがクリスマスパーティーの後夜祭に是非にと誘ってくれた事を。
「そう、それはタイミングが悪かったわね」
「この場合は仕方ありませんよ。連中に好き放題言わせるわけにもいかないでしょう」
そうね。
彼女は頷くものの、少し思案するように視線を彷徨わせて。
「でしたら、アイル。貴方だけでも出てきてあげて」
「自分ですか?」
「向こうの件は私がいないと話にならないし。だけど、ヒナたちの誘いを断るのも悪いわ」
せっかくの誘いだ。理由があるにしても全員が欠席というのは天王州家のメンツが立たないというのだろう、主人の意見も重々分かる。
「しかしお嬢様、向こうに行くのに……その、大丈夫ですか」
「平気よ、行っても数日ですし。マキナもいるから」
何か言いかけた執事は、逡巡して言葉を探しているようだったが。
「分かりました。ではそのように」
やがて、首肯にとどめるのだった。
「それにしても、最近やけに素直ね。不気味なくらい」
「最近、ここの執事で良かったと心底思う機会が本当に多くて……改めて謙虚になろうかと」
無茶な笑いに命を求めるお嬢様、国境すらもテレポートしそうなお嬢様、掃除で屋敷そのものを破壊しかねないお嬢様。色々なお嬢様像を改めて目の当たりにしてきた訳だが。
考えてみれば自身の主人は笑いに命をかけないし、テレポートもしなければ、屋敷を破壊もしない。無茶ぶりはよくあるが。
「何故今にも泣きそうになっているのよ」
「お嬢様はお一人でも目的地に歩いていくことができる、それは素晴らしい能力です」
「バカにされている気分だわ」
扇子を開いて口元を隠すつつ、瞳は細めて目の前の執事を睨め付ける。
「それはそうと、お嬢様」
「なんですの」
「綾崎くんの件です」
ピクリと、彼女の肩が小刻みに震えた。構わず執事は手帳を開いて続ける。
「あれからも定期的に観察はしているのは知っての通りかと思いますが」
「え、えぇ。その都度報告は見ていますから」
「特段の変化はありません、両親は家にはほぼいないようで。彼は学業とバイトに精を出していますね」
ここだけを聞くと非常に勤勉で真面目な学生に思えるが、実態は無職の両親のせいで生活費を稼がなくてはいけない青年という、過酷極まりない環境に身を置いているのだから笑えない話だ。
「昨日、彼のクラスメートに変装して、学校に行ってきたのですが」
「またさらっと危険な事を」
「彼は24日はご学友たちとクリスマスパーティーをするみたいですね。ご友人の1人が誘うと言っておりましたので」
友人とパーティー。そう聞いて、彼女は一瞬安堵したような表情をしつつ、噛みしめるように数回頷いて見せた。
「どうされます?」
「そうね、いい加減このままというわけにはいかないのは分かっています」
視線をあてもなく宙に彷徨わせながら。
「確かに、彼の両親は人間のクズよ。他人を食い物にして不幸をまき散らす、あんな連中を彼のそばに置いておくことは」
「同意です」
「だけど、それでも……」
あの子の血のつながった両親なのよ。
そう呟いて、アテネは寂しそうに目を細める。
脳裏によぎるのは昔の景色。小さな少女と少年が罵り合い、ぶつかり合い、にらみ合い。そうして少年は、彼女の元を去って行った。彼を守ろうとした少女の元から、両親の元へ。
「あの子はどこかできっと信じてる。両親が更生すると」
「……」
「甘い話でしょう」
かつて、彼女は大きな失敗をした。それは悔いても悔やみきれない、取り返しのつかない後悔で。その痛々しい笑みが如実に語っていた。
「無理に引き剥がせば、彼が悲しむか」
「変な話よね」
「いえ、親子というのはそういうものなのかもしれません。私には皆目見当がつかないですが」
そっと執事の表情を盗み見るが、考え込むように腕を組む彼の表情はうかがい知れなかった。
やがて、彼女はぴしゃりと扇子を閉じて小さく息を吸い込む。
「そうはいっても、もう逃げているばかりでもいけないわね」
「ふむ?」
「年始に日本に戻ってきたら、ハヤテに会いましょう」
その紅い瞳に覚悟が宿るのを、アイルははっきりと見て取った。そのまま立ち上がって背を向ける主人に尋ねる。
「策は」
「ノープランよ」
「清々しいですね」
それでも執事は嬉しそうに笑う。
「では、年始に向けて準備します。こちらの事はご心配なさらず」
「誘拐以外の方法でね」
「善処します」
お辞儀をすると、部屋を出て行く執事。
アテネはそっと息をつくと、大きな窓の外に視線を向けた。前方にそびえ立つ時計塔、その背景に広がる青空に、かつての自分の思い出が映し出される。
一面に広がる白百合の海。その丘にたった一つだけそびえるその城には、神様が住むという。
――
「あ、お嬢様。自分への土産は現地産のはちみつを2瓶と、オリーブを1キロほどお願いします」
「謙虚さどこいった」
そんなこんなで、時は流れ12月24日。クリスマスイブ。
白皇学院の敷地内は、煌びやかなイルミネーション装飾が至る所に施され、山小屋風の洒落た出店が列をなすように建ち並ぶ。決して下品ではなく、しかし活気の良い声が飛び交い、聖夜の雰囲気を盛り上げてくれている。
そしてなんと言っても注目は、時計塔前の中央広場には巨大なモミの木だ。
雪に覆われたかのように真っ白になった葉や幹は北欧の針葉樹林から一飛び出してきたような幻想的な光景を思わせる。控えめながら、木が約黄金や白銀のクリスマスベルと、下からは赤や青、緑など様々な光色が代わる代わるライトアップされている。
「ふむ、中々立派なツリーではないか」
「ですねー」
ツリーを見上げていたナギとマリアは声をあげた。
「マリアは白皇に通っていたんだろう、見慣れたものじゃないのか」
「いつ見ても、クリスマスツリーの煌びやかさは素敵じゃないですか」
ブラウンのダッフルコートを羽織ったマリア。白い吐息をついて、まるで少女のように微笑む。
「少女ですが?17歳ですよ?」
「い、いや私は何も言ってないぞ」
ナギは何故か焦ったように両手を振って精一杯の否定を試みる。厚手の黒い皮のコートは彼女の小さな体にはいささか重そうだ。
「しかし、ここは日本だというのに。どうして異国の地の教祖を崇め奉る行事に便乗しているのか」
「またそんな」
辺りを見回せば、どこもかしこもロッジ風の出店やレンガ作り風の屋台など、西洋感を演出しようとしているのは明白だ。
まなじ資金はかなりかかっているので一つ一つが出来が良く、本当に現存する町並みを演出できてしまっていそうな所が学院の規模を感じさせる。
「キリスト某を祝うなら、日本らしく縁日で祝えば良いではないか」
「そんな風情のないことを言わないの、ナギ」
マリアは近くにあった出店を指さす。そこは色とりどりの綺麗な装飾がずらりと並んでいる。
「例えばほら、あれはオーナメントやクリスマスベルのお店です」
「飾りを売ってどうするのだ」
「周りの小さなツリーに飾り付けるんですよ」
マリアの言うとおり、店の周りや広場など敷地内にはいくつも1mくらいのもみの木が植えられていた。来場者が好きに飾り付けをしていい自由なクリスマスツリーである。
「オーナメントは幸せや実りを願いに、ベルは喜びを分け与える願いに込めるんです。リースは恋愛成就の意味合いもあるんですよ」
「全部プラスチックだろ、あれ」
「いやそうですけど」
元も子もない回答である。
「では、あのキャンディー探しはどうですか。小さな袋にいろんな味の飴を入れて」
「飴を買えばいいではないか」
「あ、七面鳥なら」
「あれ食べにくいじゃん」
ばったばったと提案をぶった切るお嬢様。聖夜の鈴もこれでは鳴る甲斐もないではないかと、相変わらずのこじらせ具合に困惑しているメイドさん。
「こーら。せっかくのクリスマスを片っ端から否定しないの」
「む?」
こてん。ナギの頭に乗せられた手に、彼女はびくっとして慌てて振り返ると――
「ヒナギク!」
「まったく、少しは純粋に楽しみなさい」
生徒会長が呆れたような視線を向けてきていた。無理もない、祭りのド真ん中で冷めるような発言ばかりしているのだから。
「ヒナギク、お前もこの祭りに来ていたのか」
「あのねぇ、私はここの生徒会長なのよ?今は見回り中なの」
そういえばそうか。ナギは適当に相づちを打つ。
「けど珍しいわね、アナタがこんな人の集まる場所に来るなんて」
「人を引きこもりみたいに言うなっ」
「違ったんですか?」
堪らずつっこむマリア。このお嬢をして引きこもりと言わないならば、引きこもりの定義は激しく揺らぎそうだ。
「マリアさん、お久しぶりです」
「こんばんは、ヒナギクさん。大変ですね、生徒会はお忙しいでしょう」
「えぇ。まだ慣れないことの連続で。でも新鮮で楽しいです」
マリアは穏やかな笑顔でヒナギクを労ってみせる。生徒会の先輩として、後輩に声をかける感覚なのだろうか。
「ところで、後夜祭パーティーが会場であるけど。ナギ達も寄っていく?」
「あー、うむ、人混みに酔った。少し椅子で休みたいのだ」
ナギは頭を人差し指でこめかみを押さえる。
「もう、体力のない子ですね。せっかくのクリスマスなのに」
「お前が無理に引っ張ってきたのだろう。私は家に籠もってエル○の王を目指したかったのに」
「どこからどう見ても引きこもりじゃない」
返す言葉もないはずだが、ナギはどこ吹く風である。
彼女にとってはクリスマスよりエルデ○リングの修復の方が重要らしい。世界を救うためには選択肢は限られているのだ。
「まだ後夜祭までは1時間くらいあるけど」
「あー、私だけでいいぞ。マリアは好きに回ってくるといい」
ナギは面倒そうにあくびを一つ、ぐっと伸びをしてみせる。
「そうですか?」
「うむ、私はしばらく新育成シナリオで育てないといけないウ○娘がいるからな。気にするな」
「アナタって子は」
呆れたように半目を向けるメイドさん。でも育成、大事、絶対。
「ではSPの皆さん、少しの間ナギをよろしくお願いしますね」
「かしこまりました」
ともあれ、主人の言葉に甘えることにしたメイドさん。心なしか彼女がうきうきしているのは気のせいだろうか。
「一緒に回りませんかヒナギクさん。見回りも手伝いますから」
「え、良いんですか?」
「えぇ、もちろん。色々と見て回りたいですし」
満面の笑みで返すメイドさん。やはり彼女が一番楽しみにしていたのだなと、現生徒会長は確信した。
「ふふ、相変わらず無邪気なお姉さんですね」
「困りますよ、本当に。授業で勉強を教えないで野球を始めたりするんですから」
20分くらい敷地内を歩いた頃。
『こ、これで30杯目だぁああああ!この勝負、一体どうなるのか!?』
異様な歓声に包まれた一角で、2人は足を止めた。そうして顔を見合わせる。何事か。
群衆の集まり方が尋常ではないのである。上を見れば、イベントのタイトルであろう、アーチの垂れ幕にはでかでかとこうあった。
『超メガ特盛り肉丼 大食い頂上決戦~真の王者が今夜決まる~』
「あー、大食い選手権的な。時代を感じますね」
「ですねー、昔は番組でもよく見かけましたけど」
今ほとんど見なくなったのはいろいろな大人の事情が絡んでいることは想像に難くない。2人ともいつの話をしているのかというツッコミはなしの方向で。
『ああっと!前回チャンピオンの
人混みの奥、おそらく戦いが繰り広げられている先からは気っぷの良い司会の声が聞こえてくる。
『歴代王者たちすらも一切寄せ付けずに置き去りとは!この執事さんは一体何者なんだ!?』
どうやら、チャンピオンなる人物が苦戦を強いられているらしい。だが人の壁で前方が全く見えないがマリアは何かピンと来るモノがあったようだ。
「執事、ってもしかして」
「マリアさん?」
2人は人混みの間を縫いつつ、騒ぎの中心へと顔を出したのと同時。
『倒れた、遂に王者が陥落したぁああああ!!まさか、こんな結末を誰が予想しただろうか!』
大きな巨体の男性が、目を回して仰向けに地面に倒れ伏していた。さらにその後ろの長テーブルにも、何人ものがたいの良い男達が突っ伏して伸びている光景が。
その中にただ1人、平然とした顔つきで座る男の姿。白いナプキンで優雅に口元を拭う、その執事服の男には大いに見覚えがあった。
「アイルさん!?」
「やっぱり」
唖然とするヒナギクとため息をつくマリア。対照的な反応の2人だが、そんなことはお構いなしに、司会の男はアイルの元へと駆け寄っていく。
『優勝は、飛び込み参加の執事アイル選手!白皇の新レジェンドの誕生だぁあああ!』
立ち上がったアイルのよりも積み上がったどんぶりの方が高い。彼は群衆に向けて爽やかな笑みを浮かべて一礼。それを見届けた途端、歓声は最高潮に高ぶり、冬の夜空を貫いた。
「いやー、まさかお二人ともいらっしゃってたとは。見苦しい所をお見せしました」
「色々ツッコミたい所が多すぎて整理しきれません」
何事もなく笑う執事に、顔を引きつらせるヒナギク。マリアはといえば呆れたように頬に手を当てている。
「この人は、見た目に反して大食漢ですから」
「そんなレベルですかアレ!?」
大食い会場にあったどんぶりはとてもではないが1人前の量ではないのは明らか。それに大量に盛ってある白米と肉の量も尋常じゃない、それを30杯以上など。
「あれだけの量を食べて動けるなんて、いや食べるだけでも異常ですけど」
「そうですか?まだまだ余裕でいけますよ」
軽く言ってのける執事にドン引きの生徒会長。この人の胃袋は次元超越でも引き起こしているのだろうか、真剣に検査してもらうべきではなかろうか。
「ところでヒナギクさん達は何をしていらっしゃるので?」
「見回りです、そろそろパーティーの方も終盤なので」
時刻は午後8時半。帰宅の用意を始めている来場者の姿も多くなってきた。
「私は引きこもってたナギを連れ出してきたんです。あの子、クリスマスまで引きこもろうとしてたので」
「ナギお嬢様らしいですね」
結局人混みに疲れたと離脱してソシャゲに走ってしまったが。
それより。マリアはずいっと彼に顔を近づける。
「アイルくん。無茶な暴食はダメだと昔から言ってるじゃないですか」
「あー、いや。普段はしてないんですけど、お祭りの雰囲気というか」
「そう言って、学生の時のクリスマスでも同じ事をしていたでしょう」
「そんな昔の事よく覚えてますね」
とにかく、ダメですよ。
メイドさんにたしなめられ、小さくなりつつ頷く執事。
年齢はどう見ても彼の方が上なのに、上下関係は完全にマリアが上になっている。
そんな様子が少しおかしくて、思わず小さな笑いがヒナギクの口からこぼれてしまった。
「アイルさんも後夜祭、参加されますよね?」
「そうですね、お嬢様の分もということで」
開始時間もそろそろだ。
「お嬢様も残念がってました。せっかく誘って頂いたのに、申し訳ないと」
「いえ、仕事なら仕方ないですよ。楽しみは後に取っておくって事で!」
「そう言っていただけると助かります」
帰路へと歩く来場者たちの流れに乗りつつ会場の方へと歩き始める3人。
そんな中、人の流れに逆らうようにして、前方から黒服の男が数名駆け寄ってきた。
「マリア様!た、大変です!」
三千院家のSPたちだ。普段のポーカーフェイスな彼らが焦りを隠そうともしない、ただならぬ事態なのはヒナギクたちにもすぐに伝わった。
「皆さん、どうされましたか?」
「そ、それが!少し目を離した隙に、お嬢様がいなくなってしまって」
舞い散る白雪。闇夜を照らす満月。
「僕は、君が欲しい。本気なんだ!」
「な――っ」
公園の自動販売機の前で、1組の男女がイブさながらの恋愛劇場を繰り広げていた。
だが、このとき執事は知るよしもなかった。
主人の意中の男――綾崎ハヤテが、三千院ナギの細い腕を掴み、迫っているなどとは。
今回で、原作前が終了です。次回からは原作の時系列に入っていきます。数章分原作をつまみながらも、独自展開を進めていき、分岐点のアテネ編という予定です。今後ともよろしくお願い致します!
★おまけ
1部終了時点でのキャラクターのプロフィールです。原作と設定が違うキャラもおりますので、基本設定含めて今更な説明のキャラもありますがご了承下さい。
2部終わったくらいでまた近況追加の紹介を追加していければいいなと思ってます。
※追記 seven74様より、アイルくんのイメージイラストをいただきました。本当にありがとうございます!
─天王州家関係者─
【プロフィール】
年齢 :17歳*1
身長 :151㎝
誕生日:11月30日
血液型:AB型
世界でも有数な大財閥の一つ、天王州家の当主。幼くして両親が亡くなっており、年端もいかない頃から家を守るために大人たちの権力闘争に身を置いてきたので、年齢の割に考え方が大人びている。魔法のような特別な力を扱うこともできる。
白皇学院では理事長を務めているものの、本人は放任主義で実質的な運営は理事や生徒会が引き受けることに。かつての恋人であったハヤテに幸せになってほしいという思いが彼女の行動原理の中心。周囲のボケにも、ため息をつきつつ律儀にツッコミを入れてくれる苦労人ポジも兼ねる。機械にめっぽう弱い。
【補足的ななにか】
金髪、ドS、ツンデレ、縦ロールとまさにテンプレ、本来はメインヒロイン予定だったのも納得の可愛さですよね。アホ毛が正義とは誰の言葉だったか。原作では裏ヒロインといった感じでしたが、本作では主人公の1人です。物語の中盤、原作でいうアテネ編以降により一層メインキャラとしてのスポットが当たるかなと思います。
アイル
【挿絵表示】
seven74様よりいただきました、キャラクターのイメージです。
【プロフィール】
年齢 :不明
身長 :180㎝
誕生日:不明
血液型:A型
アテネに付き従う専属執事の1人。黒みがかった赤髪に褐色の肌。スラリとした長身だが、見た目とは裏腹に大食漢の一面も。周囲の話では見た目が全然変わっておらず、年齢は不明。周囲の人間曰く見た目は20歳前半くらい。
特技は変装。他人の声を模倣する技術もあり潜入、諜報活動に精通している。
日本ではアテネの執事の他に、白皇学院理事長の秘書や理事会の補佐、生徒会の補助*2など多忙を極めるが、当人は忙しい方が好きな模様。
【補足】
原作にはいないオリジナルキャラで、今作のもう1人の主人公になります。アテネがツッコミ気質なので、基本ボケの立ち位置です。ただ変装が十八番な関係で、ツッコミもこなせるオールマイティなキャラクターでもあります。名前の由来は天王洲アイル駅。
マキナ
【プロフィール】
年齢 :不明
身長 :125㎝
誕生日:9月24日
血液型:O型
アテネのもう一人の専属執事。白髪に褐色の肌で、年齢は見た目10歳に満たないくらい。
アテネが大好きで、褒められる度に喜びをあらわにする。最近アイルが教育係として、執事の指導をしている。ハンバーガーが大好物。
【補足】
原作ではアテネの専属執事だった彼ですが、諸般の事情でショタ化してしまいました。本作のマスコット枠。原作でも何かと謎が多かったので、その辺は今作でも妄想で書いていこうと思います。
─三千院家関係者─
【プロフィール】
年齢 :13歳
身長 :138㎝
誕生日:12月3日
血液型:AB型
天王州家と肩を並べるほどの大財閥、三千院家のご令嬢。金持ちオブ金持ちの代名詞で、練馬区の面積とほぼ同じ敷地の超大豪邸に住んでいる。わがままで引きこもり、サブカルをこよなく愛する厄介系オタニートだが、資産運用など不労所得の嗅覚は抜群に長けている。その有り余り資産故、数億円程度の資産はゲームのロード時間にこしらえるほどの圧倒的才能を持つ。実の祖父である帝とは犬猿の仲。
【補足】
いわずとしれた原作のメインヒロイン。原点にして頂点ですね。ハヤテとナギのコンビは序盤からずっと好きで、特に初期のガンダムやSONYネタには何度も笑ってました。個人的に最も印象が強かったのはアテネ編の中終盤、正直かっこよすぎて惚れました笑
今作でも2人の阿吽の呼吸のごときネタの応酬をしていきたいです。
マリア
【プロフィール】
年齢 :17歳
身長 :158㎝
誕生日:12月24日
血液型:O型
怠惰なナギお嬢様を支える有能メイドさん。屋敷には数え切れないくらいのSPが所属しているが、実質彼女がトップに君臨し、生殺与奪も握っている。メイドになる前は三千院家で帝の保護下にあり、アイルも執事を務めていた。
白皇学院の卒業生の1人で、高等部を10歳で入学、13歳で卒業した希代の天才。元生徒会長。副会長だったアイルや志織とは同じ生徒会だった。多分彼が頭が上がらない唯一の人物。
【補足】
メイドさんに萌えたのはやはりマリアさんが最初でした。読み切りの時はドS思考なのも好きでしたね。初期は屋敷外に出るのも私服でしたが、次第にメイド服がデフォになってしまった印象です(京都・修学旅行などは私服でしたが)。もっと私服を見たかったという思いから、外では私服多めという方向性に舵を切ろうかなとか思ったり。あと原作よりも茶目っ気も増してます。
【プロフィール】
三千院家の現当主。いわゆるラスボス的な存在。世界の半分くらいは倒せばくれそう。声優さんのラジオとかにお便り送りまくってる変な人。あと夢小説とかも書きまくってる変な人。
【補足】
悪役のように立ち塞がるかと思えばハヤテに想いを託したり、原作でも最後まで読めない人物でした。何気にその後の人生が気になるキャラクターですね。
─白皇学院関係者─
【プロフィール】
年齢 :15歳
身長 :161㎝
誕生日:3月3日
血液型:O型
頭脳明晰容姿端麗文武両道、才色兼備の塊のような白皇学院生徒会長。剣道部の主将でもあるが、いずれも一年生にしては異例。教師・生徒間の圧倒的な支持率(ほぼ満場一致)で、生徒会長に当選した。
まだ就任間もないので、慣れない立場に戸惑うこともありつつ、仕事はきっちりこなす。アテネと直接面識のある数少ない友人の一人。
【補足】
言わずもがな、原作1番人気のヒロイン。裏話にもありましたが、彼女が連載継続の救世主というのも納得のヒロイン力ですよね。自分もオタクになった原因のキャラクターです、ハイ。原作の恋に空回りする可愛いヒナさんも大好きですが、今作ではもっと格好良さに振り切って、戦闘力に磨きをかけていきたいなと思ってます。
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :160㎝
誕生日:10月9日
血液型:B型
ヒナギクを支える生徒会執行部の副会長。冷静で頭は切れる、たまに毒舌なお姉さん。相手が困ったり助けを求める表情や状況が好きというちょっぴり困ったお姉さん。
【補足】
原作ではミステリアスキャラかと思いきや、はっちゃけたり、乙女チックだったりと非常に手札の多いキャラクターだった印象です。本作ではどういった感じになるのか……
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :158㎝
誕生日:8月30日
血液型:A型
メガネが似合うクールが売りの生徒会書記。いつも文庫本を片手に、生徒会内でのはちゃめちゃにツッコミを入れている。たまに「ん?」と分かる人には分かるアンテナが反応するときがあるが果たして。
【補足】
ギャップと言えばこのキャラクターでしょうか。どっちのスタイルでも可愛いとか無敵かよ、と。
もう一つの側面がどういった形で現れるかはまだ未定ですが、なんだかんだ絡みは多くなりそう。
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :157㎝
誕生日:6月21日
血液型:A型
3人娘のリーダーポジ。司令塔的リーダーではなく、中心にいると自然と人が寄ってくるタイプの委員長。明るく天真爛漫、ひまわりみたいな女の子。
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :151㎝
誕生日:9月9日
血液型:AB型
3人娘の策士的ポジ。しかし策士のように見えてそうではないような、雰囲気だけが先行する副委員長。ただ調べ物にかけてはコネを含めて群を抜いている。
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :167㎝
誕生日:7月13日
血液型:O型
3人娘のミステリアスポジ。と見せかけて実は何も考えていない気もする風紀委員。下らない思いつきにかけては右に出るものはいないと自負している。
【補足】
3人娘はやはりムードメーカー、物語をおもしろおかしく引っかき回すキャラクターとして、本作でもその魅力を目一杯振りまいて欲しいです。
―愛沢家関係者―
【プロフィール】
年齢 :13歳
身長 :142㎝
誕生日:4月3日
血液型:AB型
三度の飯よりも笑いに心血を捧げる関西娘。細かいボケには頭より先に身体が反応してしまう。ハリセンの扱いは関西でも五指に入るとか入らないとか。下に4人も弟妹がおり、お姉さん属性の一面も垣間見せる。
【補足】
原作で大きく役割やキャラクターが変わった1人だと思います。明るく活発でたまに乙女なところが可愛いですよね。アテネはローテンション、咲夜はハイテンションとツッコミ役も棲み分けになりそうです。
―鷺ノ宮家関係者―
【プロフィール】
年齢 :13歳
身長 :144㎝
誕生日:9月24日
血液型:O型
名家鷺ノ宮家のご令嬢。普段から着物姿で、基本ぽーっとして何を考えているか分からない。アテネ以上の機械音痴。代々妖怪退治の生業を請け負う家柄のため、そういった仕事もこなしている模様。世界最強の迷子スキルの持ち主。
【補足】
原作でもバトル要員の代表格ですよね。本作でもそうなるかなと思います。加えてボケのレベルが多種多様なので、いろいろな話でも絡ませやすい気がします。
ーその他ー
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :168㎝
誕生日:11月11日
血液型:A型
都内の公立高校に通う16歳の少年。人間を辞めているのかと疑うほどの身体能力を発揮して、日々過酷なバイトをこなす。停職に着かず、ギャンブルやパチスロに夢と希望を求めるダメ両親の元で身銭を稼ぐ不幸な少年。高校での交友関係は意外と広く、バイト優先ながらそれなりに行事には参加して楽しんでいる模様。
【補足】
原作の主人公、最強の不幸スキルをもつハイパー執事ですね。本作では2部から物語のメインになってきます。原作とは異なる展開を繰り広げながら、アテネと彼の物語がどう決着するか、どうか見守っていただけると嬉しいです。
【プロフィール】
年齢 :16歳
身長 :162㎝
誕生日:5月15日
血液型:A型
ハヤテの通う高校の生徒でクラスメート。初対面でも優しく接してくれる社交的な性格だが、割とおっつおこちょいな一面も。勉強はあまり得意ではないらしい。帰宅部。
【補足】
原作では最後まで最も重要なキャラにだった女の子でしたね、最後のシーンは特に他ヒロインとは一線を画す貫禄を見せつけられた気がしました。本作でもハヤテにどう影響するか気になるところです。
【プロフィール】
年齢 :22歳
身長 :156㎝
誕生日:10月20日
血液型:B型
マリア、アイルと共にかつての生徒会執行部を支えた副会長、もといマッドサイエンティスト。作り出すロボットは大半が暴走するか爆発するのでそう名付けられた。マリアと同学年で、アイルの後輩。現在は三千院家の傘下の組織で技術屋として働いている。
【補足】
数あるボケキャラの中でも、物理(ロボット)を仕掛けてくるキャラとして印象が深いキャラでした。個人的には面白いツッコミを引き出すキャラとして好きなので、今後もマリアさんらとセットでちょいちょい登場させたいなと思ってます。
物語の終わり方について
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エンディングは一つのみが好ましい
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各ヒロインのルート分岐などがあっても良い
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どうでもいい