まだ見ぬ冒険へ向けて、最後の試練の突破に向けて。
ハヤテ一行は、導かれし勇者を捜し求めていた。
「ふん、まぁこの僕が仲間になったんだ。あとは人数合わせで誰でもいいんじゃないか?」
白皇の敷地内を歩きながら、ナギは難しそうな顔をしたまま腕を組む。
「他の仲間についての宛てはあるのかハヤテ?ヒナギクに断られたのは戦力的に大きな損失だぞ」
「そうですよね……しかし、ここは近接戦闘に長けた人間が欲しいところです。諦めずに考えましょう」
「ふっ、それは問題ないだろう。白皇学院剣道部の次期エースのこの僕がいるんだからな」
万夫不当の豪傑にして白皇の頂点。彼女がパーティーに加わってくれればどれだけ心強かったかは言うまでも無い。ハヤテも同意見だったが、しかし過ぎたことを気にしても仕方が無い。
「ナギお嬢様、ハヤテ様。ここは一つ、三千院家の執事長を頼るというのはいかがでしょうか」
「えー、クラウスぅ?」
「聞くところによると、この御仁は執事界でもかなりの実力者とのこと。戦力に加わってくれずとも、どなたか腕の立つ方を紹介してくれるかもしれません」
ヨゾラの提案だったが、ナギはあからさまに嫌そうに顔をしかめてみせる。一方ハヤテは神妙な表情のまま首を横に振った。
「いえ、そもそもこれはクラウスさんが与えた試練。ここであの方を頼るのはリタイアを宣言するも同じです、一流の執事を目指す身としてそれは避けたい所です」
「でなくとも、アイツに泣きつくなどゴメンだけどな」
「はっは!それなら問題無い、一流の執事を従えている僕がいるのだからな!なんでも聞くと良いさ」
なるほど。従者コンビの意見にヨゾラは首肯するも、ではとまたも人差し指を立てて提案を続ける。
「では執事つながりで、ハヤテ様のご学友を頼るというのはいかがでしょう」
「え」
「執事といえば交友関係が広いと相場が決まっているもの。数打ちゃ当たるの原理で動くのもアリかと」
ハヤテは何回か瞬きをして、頬を掻く。
「あ、えっと……僕、友達少ないというか、いないというか、ははは」
「なら交友関係が膨大な僕を頼ると良い。きっとお前達にふさわしい人材を見つけ出してやろう」
ヨゾラは胸に手を添えて深々とお辞儀をする。
「大変失礼致しましたハヤテ様。中々ご学友ができずに、「あれ?これお嬢様いなきゃ僕トイレでぼっちメシコースじゃね?」などと苦しんでいる最中だというのに私の不用意な発言で少年の繊細な心の傷を抉ることになってしまい。ですが大丈夫、きっとハヤテ様にも親友ができるはずです。だから希望を持って、頑張って学校通いましょう」
「ぐはっ!」
「おお、まるで不登校の子どもを諭す母親のごとき優しさ、一方で的確かつ鋭く急所を突く口撃。やはりこのメイド、やり手だ」
がっくりと膝から崩れ落ちる執事をみて冷静に分析するナギお嬢様。優しさと厳しさは表裏一体なのである。
「って聞けお前らぁぁぁッ!!僕の存在を無視するなぁぁッ!」
怒号が響き渡り、3人はようやくその主の方に顔を向けた。
「何なんですか大声で。もう出番は終わったでしょう、クランクアップですよ東宮さん」
「オイィィ!前回のあれだけで退場させようとするなよ!いくらなんでもあんまりだろ」
悲痛な声を上げるのは東宮康太郎。白皇学院剣道部に所属する自称エースである。
「いや、大きな見せ場があっただろ。それで満足しろヘタレの宮」
「一瞬の輝きみたいに言うな!あと僕の名前は東宮だッ!」
鬱陶しそうに眉をつり上げるナギらに、俄然もう抗議をする康太郎青年。怒れ怒れコータロー。
「大体、僕は生徒会長、桂さんの推薦なんだぞ!お前らが困っているからわざわざ来てやったというのになんだその態度は!」
「えー」
顔を見合わせるナギとハヤテ。
「嘘だろ」
「嘘ですね」
即結論。
「嘘じゃないわ!絶妙にハモるな!」
「ヒナギクはお前のようなヘタレを寄越すわけがあるか、寝言は寝て言え」
「三千院容赦なさ過ぎない?」
有無を言わさないお嬢様ら。そこにひょいと右手をあげる人物が一人。
「ちょっとよろしいでしょうか」
「ヨゾラさん?」
メイドさんである。
「東宮康太郎さん。6月24日生まれ、蟹座のA型。白皇学院高等部1年B組、剣道部所属。趣味は家庭菜園、好物はそば、好きな人は生徒会――」
「ちょっ、ちょっと待てぇ!いきなりなんなんだアンタは」
「白皇学院のメイドのヨゾラです。白皇学院の全生徒のデータはざっとですが、先週この頭にぶち込みました」
さらりと言ってのけ、お辞儀をするヨゾラ。
「東宮さんには野々原さんという女性の従者がいらっしゃいましたね」
「そ、そうだけど?」
「野々原さんは確かこの夏まで剣道部で主将を務めていらっしゃり、部内でも最強の実力だったとか。後を引き継いだヒナギクさんとも非常に良好な関係であったそうですね」
つまり、と指を突きつけるヨゾラさん。
「私の推察するところによれば、ヒナギクさんが推薦したのは野々原さんだった。しかし彼女にはどうしても外せない用事があった。なので、東宮さんに代わりに現地に赴かせた」
「うぐっ!」
「その経緯をすっ飛ばして、ヒナギクさんから頼まれたと見栄を張った。そんなところでしょう」
苦い顔になる東宮とは裏腹に、目を輝かせるナギ。
「おお!さながら弾丸で論破するような流れるような推理!」
「メイド探偵黙示録ヨゾラ。次回から連載開始です」
「いやいや勝手に連載始めないでください」
たしなめるハヤテの携帯に一通のメールが。開いてみると、宛先は「野々原楓」となっている。噂をすればというやつだ。
『野々原です。事情は聞きましたが、私も予定がありお力になれません。代わりに坊ちゃまを派遣します。
この機会に一流の男にしてやってください、特訓よろしくお願いしますね』
「って、もう趣旨変わってませんこれ?」
「完全におもりを頼まれた感じだな」
「誰がお守りだ!誰が!!」
とはいえ、派遣した本人がこう言っているのでは。ハヤテは深くため息をつくと、一同を見回してみせた。
「こうなったら仕方ありません。東宮さんもパーティーに入ってもらいましょう」
「くっ!その渋々な感じが腹立つが、今に見てろ!大活躍をして、泣きながら『この私めが間違ってました』と詫びさせてやるからな」
東宮康太郎が仲間になった!
「では、あと1人ですが最後の一人が重要です。皆さん慎重に勧誘しましょうね」
「おー」
ハヤテは焦っていた。今のパーティーを振り返れば、その焦りも当然。貧弱な
(あれ、客観的に見てこのパーティーやばくね?)
否、ここに集いし勇者たちは互いの欠点も補って余りある、絶妙にバランスのとれた――
「ま、この僕がいるんだしあとは人数合わせで誰でもいいだろう」
東宮康太郎
特性:ヘタレ
必殺技:野々原!助けて!
「そうだな、ヘタレの宮は肉壁くらいにしか役に立たんだろうが、この天才賢者の私がいれば誰が来ようとお釣りがくる」
三千院ナギ
特性:引きこもり
必殺技:働いたら負けかなと思っている
「では、俺Tueeeをする為にまず訓練所で能力ポイントの割り振りで最大値を出すべく粘りましょう。気合いと根性です」
ヨゾラ
特性:クーデレ(自称)
必殺技:結局画面の中には入れない現実を受け入れろ
(ごめん、やっぱつれぇわ……)
綾崎ハヤテ
特性:不幸
必殺技:超不幸
そんな風にハヤテ一行がスパークしまっている一方、鷺ノ宮家では。
「なるほど……教会に棲みつく悪霊、ですか」
「はい」
湯飲みをすする伊澄の向かいには、シスター服を着た老女が1人。穏やかな顔つきなものの、刻まれたしわからは苦労も垣間見える。
「ここ数週間は教会を留守にして、仲間とジャ○ーズの全国ツアー応援に帯同していたのですが」
「いやどえらい元気やなバーさん」
伊澄の隣にいた咲夜がたまらずツッコむと、シスターは軽快に笑って返す。
「ほっほ、まだまだ若い方には負けません。テ○ミュやとう○ぶ、ツイ○テのイベントなどにも積極的に参加してますから」
「負けるどころか追い越してるんちゃう?」
「まぁまぁ咲夜。人の趣味はそれぞれですから」
伊澄は本題へと引き戻すべく、一つ咳払い。
「それで、悪霊とは?」
「当教会では幽霊や物の怪などは昔から様々住み着いておりまして、私も霊体などは幼い頃から見えているのですが」
「さらっとすごいこと言ったでこのバーさん」
シスターは出された湯飲みを傾けて一息、話を続ける。
「ただ、最近は地下で怪奇現象などが多発しておりまして。ポルターガイストのような霊障まで出てきて、このままでは外部にも迷惑がかかると判断しまして、相談に参った次第です」
「って、そんな状況で数週間もツアー行ってたんかい」
「ジャ○ーズは私の都合など待ってくれません。ですが教会の霊は待ってくれますから、時間があるときにしようと」
「いや待ってくれへんやろッ」
まあまあ。伊澄は咲夜を宥めつつ話を促す。
「特に最近教会では最新鋭のVRフルダイブシステムを試験的にお借りしたのですが、悪霊がその機械に影響を与えないかも心配で」
「いやいや、また教会にどえらい代物があるんやな。なんやオンライン礼拝でも考えてるんかいな」
「いえ、仮想世界でも推し活をしたいのです」
「めっちゃ私的な代物やん」
咲夜と伊澄は顔を見合わせる。動機はともあれ、悪霊事案であることには変わらない。
「まぁ事情は分かりました。どこまで出来るか分かりませんが、お力になりましょう」
「おお、本当ですか!」
伊澄はおもむろに立ち上がった。
「では、準備をして向かいましょうか。咲夜、準備をしてちょうだい」
「って、ウチも行く前提なんかい」
面倒そうな表情をしつつも、咲夜ものろのろと立ち上がる。
「そういやワタルはどーしてん?」
「これ以上サキさんにお店を任せておけないと言って帰ったわ」
「アイツ、面倒事を察知して逃げたな」
ちゃっかりとエスケープした幼なじみに恨み言を一つ。
伊澄は障子を開けて、シスターに改めて振り返った。
「では、貴女はこの家で待っていてください。現場はどんな危険があるか分かりませんので」
「本当にありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
「礼には及びませんよ。シスター・フォルテシア」
時は進んで、アレキサンマルコ教会前。
「結局見つからなかったか」
ハヤテ一行は、入り口で途方に暮れて顔を見合わせていた。
「ま、一朝一夕でパーティーが揃う方が稀だしな」
「確かに。基本パーティーが揃うまでにはそれなりの時間を要するのがRPGのお約束です」
結局、彼らは勧誘活動を試みたのだが。
『はぁ?フルダイブのVRMMO?んなもん現実にあるわけねーだろ、今店が大変なことになって――ってサキ!?その棚をひっくり返すなぁぁ』
『申し訳ございません綾崎様。伊澄お嬢様ですが迷子になってて、今メキシコで見つかったとの情報が』
『ふむ、大河ぼっちゃんのお世話より儲かるのなら考えてあげてもいいよ?』
基本的には皆忙しそうで空振りばかり。興味を持ってくれる人こそ少人数いたものの。
『えー!かそうせかい?なんだか面白そー!いいんちょさんにお任せなのだ!』
『おっと泉。無条件で受けるな、もったいない。これは取引だぞ』
『そうね、ハヤ太君が私たちの夏休みの宿題を肩代わりしてくれれば――っておい!逃げるな!』
戦力になりそうな人材はとんと見つからなかったのである。
そんなこんなで、手ぶらで教会に戻ってきてしまったのだが。
「こうなった以上は仕方ありません!我々4人で挑戦しましょう。余りあるそのお力をどうか僕にお貸し下さい」
「てか、人数揃えるのも試練ってやつなんじゃないのか?」
「……ですよね」
全くもっともな東宮の一言に、決意もそこそこに肩を落とす執事。さてどうしたものかと一同が頭を抱えていると
「お、借金執事やないか。それにナギも」
ふとかかってきた声。顔を上げると、咲夜が手を上げてこちらに駆け寄ってきているではないか。
「咲!お前どーしてここに?」
「ん?んー、そうやな。まあ色々と複雑な事情があるねんけどな」
歯切れが悪そうに頭を掻く咲夜。
すると、ハヤテははっと何かを思いついたのか、咲夜に近づいてその両手を包み込むようにとってみせた。
「咲夜さん!今すぐ僕と一緒に来て下さいませんか?」
「ほぇ?」
「僕には貴女が必要なんです!本気なんです!」
いきなりの告白に思わず目を点にして固まる咲夜。突如投げかけられた言葉を脳内で何回か反芻して、彼女の頬はみるみる真っ赤になっていくが。
「アホかお前はぁぁぁあああ!!」
「へぶ!?
ナギのフライングニールキックが見事にハヤテに炸裂。その技を間近でみた東宮康太郎は、後にこう振り返っている。
「彼女のあの技だろ?覚えているよ、あれほど美しく、それでいて鋭く迫力のある技を見たのは初めてだったからね。86年の大阪城ホールにでもいる気分になったよ、正直ね。あんな美しいでもそうそうお目にかかれないよ」
~東宮康太郎の漫画道、2章78Pより抜粋~
吹き飛んだハヤテはそのまま地面を転がり、そのままうつ伏せに。
「おお、格闘王さながらの妙技!やるな三千院!」
「素晴らしいものを見せていただきました。今日は良い酒が飲めそうです」
拳を作って身を乗り出す東宮に冷静に拝むヨゾラ。そんな2人にはお構いなしにナギは追い打ちとばかりに倒れ伏したハヤテの指を突きつける。
「まったくハヤテはまったく!言い方を考えんか馬鹿者、あれではまんまプロポーズではないかッ!」
「ずびまぜん……」
・・・・・
「なるほど、ほなら借金執事はこの教会でシスターから試練を受けとるっちゅーわけか。んで最終試練に向けて仲間を集めとると」
「まぁそういう訳です」
改めて説明を受けた咲夜は合点がいったように腕を組んで頷いてみせた。
しかし、と考え込む。先ほど鷺ノ宮家でこの教会のシスターには会ったばかりだったが、そんな話は一切していなかった。わざわざするような話でもないということだろうか、何か話が微妙にかみあっていないような気がする。
「それで、どうしても仲間が集まらなかったところに咲夜さんが来て下さり、つい勧誘をしてしまって。すみませんでした」
「うーむ」
咲夜は考え込むように目を閉じていたが、やがて1人納得したように数回頷いてからハヤテたちに向き直った。
「ま、どーせ暫くヒマやしな。伊澄さんも速攻で迷子になっていつ戻るかも分からへんし」
「え、伊澄さんとご一緒だったんですか?」
「あぁ、こっちの話こっちの話」
何でもないと軽く手を振って。
「ええで。なんや面白そうやし、ウチも協力したるわ」
「え、ホントですか!ありがとうございます!」
「ああ、お姉ちゃんに任しとき」
ポンと胸を叩いて、パーティー加入を快諾してみせた。
愛沢咲夜が仲間になった!
「しかし咲が仲間になってもなぁ。運が良いだけで後ろで遊んでばかりいる芸人じゃ戦力にならんぞ」
「やかましいわ、誰が遊び人じゃッ!」
愛沢咲夜
特性:一蓮托笑
必殺技:特に意味も無いネタ振りがアナタを襲う!
「よくぞ導かれし勇者たちをお集めになりました。これで魔王に染められしこの国にも一縷の希望が――」
「いやアンドレさん、まだRPG始まってないんで」
教会の地下、研究室のような部屋に戻ったハヤテ一行を迎え入れたのはアンドレだった。
「そういえばシスターは、お姿が見当たりませんが」
「彼女はミッションが始まったらここに来て、皆さんの動向をこのモニターでチェックするそうです。」
「なるほど、ここに仮想世界の僕らも映るわけですね」
ハヤテは巨大モニターをまじまじと見つめる。
「しかし、これが噂の教会にあるフルダイブシステムっちゅーやつか」
「なんだ咲、知っているのか?」
「こっちの話や、気にせんといて」
きょろきょろと物珍しそうに周りを見渡すのは、咲夜だけでなく東宮もだった。
「へー、マジでこういうのあるんだなぁ。漫画だけの世界かと思ってたぞ」
「ですね、まるでSA○のようで」
「いやお前!○の位置を考えろよ!!」
メイドの恐れ知らずな発言もそこそこに、ハヤテたちはヘッドセットを装着。そしてカプセルの中に仰向けに横になる。
全員が横になったのを見届けて、アンドレはバインダーの紙に目を落とした後、周囲を見回した。
「えーと、ではシステムを起動する前に今回のミッションについて簡単に説明します。
「え、もう始まるの?こんなあっさり?」
「ご安心ください、システムが起動したらもっと詳細な説明があるようですから」
修道士は構わず続ける。
「皆さんにはとある王国の訓練所で冒険者登録をしていただき、パーティーを組んでいただきます。そしてギルドで簡単な任務をいくつかクリアしたら発生する、最初のボス討伐クエストをクリアしてもらいます。それでゴールです」
「マジで体験版じゃんそれ」
「まぁデモバージョンなので、続きは製品版をご購入ください」
「いや製品版ないやろコレ」
では、良い旅を。華麗にスルーしながらアンドレが中央にあるスイッチを押すと、カプセルが自動で閉じた。
そのほぼ同時に、奥からシスターがこつこつと歩いてくる。
「アンドレさん、皆さんは旅立たれましたか?」
「えぇ、たった今。その言い方だと意味違って聞こえますけど」
教会だけに。
「そうですか。では後は私がやっておきますから。少し早いですがアンドレさんは上がってください。お疲れ様でした」
「あ、了解しました。ではお言葉に甘えて」
バイトを早く上がれるのが嬉しいのか、待ってましたとばかりにそくさくと部屋を後にするアンドレ。その後ろ姿を見送って、シスターはそっとモニター前の椅子に腰掛ける。
「さて、無事に旅立ちましたか。三千院ナギとその執事」
にやりと、邪悪に口元を歪めながら。
「死よりもツライ地獄への旅路に、せめてもの手向けを」
そう言って、手に持っていた百合の花をそっと机に置くのだった。
『ようこそ。SUVシステムへ。私は皆様の安全な旅をサポートする案内ナビです。これから皆様が向かう旅先の説明をさせていただきます』
凄いな。
ハヤテは目の前の光景に思わず感嘆の声を上げそうになった。
先ほどまでカプセル内だったはずの空間は、いつのまにか高層マンションのガラス張りのエレベーターのような移動する空間に早変わり。
『この空間は目的地まで向かう演出で高層エレベーター風にしております。いわゆる待機ロビーです、まだ本編ではありませんのでご留意ください』
「へぇ!すごい、こんな拘りまであるんだ。令和ってすごいな-」
目を輝かせて周りを見回すハヤテ。なお元号は特に気にせずに。
『さて、今回皆様が向かう先は、砂漠の中心にあるとある王国『アルダハ』に行ってもらいます』
「ん?大丈夫かな、ちょっと場所といい似てる名前があるけど気のせいだよな。他意はないよな」
他意はない、はず。
『このアルダハの訓練所で冒険者登録をしてもらうところから、アナタの物語はスタートします。仲間たちとパーティーを組み、砂漠の王国が抱える問題を解決するのです。そうすれば、アナタは晴れて冒険者として一目置かれ、まだ見ぬ国――森の囲まれた『ガリダニア』、海に隣接する『ラムサ・ロミンサ』にも足を踏み入れることが出来るでしょう』
「本当に大丈夫だよな!?どこからもパクってないよなこれ!?」
『大丈夫です。飽くまでオリジナルで、どこのスクエアからもエニックスからもインスパイアはされていませんので』
「答えちゃったよ案内ナビ。凄いなその技術」
ハヤテは1回息をついて、自分を落ち着かせる。大丈夫、ナビが大丈夫と言ってるから大丈夫。
『なお、今回はデモバージョンのため、序盤の冒険しか体験できませんのでご注意ください。では良いた、た、た、た』
「ん?あれ、なんかナビの様子が」
『たたたたたたたttttttttt』
突然、ナビの言葉が詰まり、そしてキーボードを打ちっぱなしのように連打され始める。慌てて周りを見回すと、みるみるうちに景色が赤く染まっていくではないか。
何かの演出か。いやそれにしてはおかしい。異常事態、それはハヤテも直感的に感じ取った。
「え!?ちょっとこれ、どうなって――」
そして次の瞬間。
ハヤテの目の前は真っ暗になった。
死ぬまでに一度はフルダイブしてみたい
物語の終わり方について
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エンディングは一つのみが好ましい
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各ヒロインのルート分岐などがあっても良い
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どうでもいい