アテネちゃんの執事!   作:通行人A'

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Task57:Routes―あなたを想いたい―

 

 

 

「みゃあ」

 

 白いタオルの中から、ひょっこりと顔を覗かせた子猫は気持ちよさそうに声を洩らした。そんな様子に、ヒナギクとヨゾラは堪らずに頬を赤らめていた。

 

「か、可愛い……子猫って本当に凶悪に可愛いわね」

「くっ、あざといと分かっていてもこの可愛さ、もはや犯罪です」

 

 わいわいきゃいきゃい。乙女たちがタオルに包まれたその愛くるしい小動物に夢中である。

 

「でも、すごく元気ですね。本当に良かったです」

 

 そんな様子を微笑ましそうに眺めつつ、ハヤテはまくっていたシャツの袖を戻しながら近づいてきた。

 

「ごめんなさいねハヤテ君、仕事中なのに私のわがままに付き合わせちゃって」

「いえいえ、放っておけない気持ちはよく分かりますから」

 

 それに、と彼は携帯を取り出す。

 

「お嬢様に報告したら『全ての予定に対して最優先で子ネコの世話をして安心安全を確保せよ』とチャットもありましたし」

「あの子も相当猫好きなのね」

 

 

 スーパーでの買い物後、ヒナギクたちは道ばたに捨ててあった子ネコを発見した。今日び決して珍しい光景ではない、道中にはネコには目もくれない人も大半だった。それでも彼女は見て見ぬ振りは出来なかった。

 

 結局家に連れて帰ることにヒナギク。ネコなど拾ったことなどない彼女たちはどうしたものかと途方に暮れそうにそうになったものだが、そういう時こそ助けになるのがこの男、綾崎ハヤテである。

 

 

 子ネコを綺麗なダンボールに移し替え、身体についたノミなどを道具を使って丁寧に除去。その後怖がる子ネコを優しく洗い、目やになどを取ってあげた。毛並みを整え、毛布でゆっくりと温めてあげれば、いつのまにか人懐っこく鳴きはじめた。

 

「元気そうですし、問題ないとは思いますが念のため病院で診てもらいましょう。今日はもう日が暮れてますから、明日にでも」

 

 一連の行動はなんとも手際のよい保護措置、執事の手腕には思わず彼女たちも舌を巻いたものである。

 

「本当にハヤテ君がいてくれて助かったわ、私こういうの初めてだったから」

「いえいえ、このくらい。僕も行くアテも食うアテもなくて、お嬢様に拾ってもらった立場ですから慣れてるのかなーって」

「中々笑えないジョークですね」

 

 頭を掻いて平然と笑うハヤテ。言葉の端々に苦労が滲む少年だ。

 

「あとは、この子に食べ物をあげてみましょう。お腹をすかせていると思うので」

「だったら、家に牛乳とかあったけど」

 

 そう言って立ち上がろうとするヒナギクを制止する。

 

「あ、牛乳はお腹を壊しちゃうネコも多いんです。なのでここはネコ用ミルクをあげましょう」

「そっか、でもネコ用のものとかウチにないわね」

「人肌で温めて薄めてからあげてもいいんですが……拾ったばかりなので、できれば栄養のある方がいいですね」

 

 顔を見合わせる2人。すると、すっと立ち上がったのはメイドだった。

 

「そこはお任せください。私の方で手配しますので」

「え、ヨゾラさん?」

「つい今し方先輩に連絡したところ、離乳前用のキャットミルク、哺乳瓶や猫砂、ケージなど諸々用意してくださるそうです」

「えらく迅速な対応ね……」

 

 ナギといいアイルさんといい、私の周りって猫好きな人が多いのかしら。

 

「流石に届けてもらうのは申し訳ないので、私はちょっと先輩の元へひとっ走りいってきますね」

「ありがとう。ごめんなさい任せちゃって」

「構いません。お嬢様はここで、ハヤテ様と2人きりのラブコメ展開を思う存分繰り広げてください」

「勘違いされるような事は言わないで」

 

 言いたいことだけいって颯爽と部屋を後にするメイドさん。

 

「愉快な方ですね」

「えぇ、本当に」

 

 まるで嵐のようだ。顔を見合わせて苦笑する2人。

 

「あ、そうだ。私ちょっと離れの様子見に行ってきてもいいかしら。お母さんたちが帰ってくる前に少し片付けておかないと」

 

 桂家の敷地内にはプレハブ小屋がある。もともと家の物置用だったら、近年は姉、雪路専用の部屋、もとい隔離部屋になっている。昼夜問わずに酒を持ち込み1人宴会を開くので彼女が離れに追い出したそうだ。

 

「分かりました。ネコは僕が見ておきますので」

「ごめんね、すぐ戻るから」

 

 快諾してくれたハヤテに手を合わせつつ、ヒナギクはそう言って廊下に出た。壁に掛かっている鍵かけから、一つの鍵を手に取ると、そのまま玄関を開けて外に出る。

 

「あれ?生徒会長さん?」

「え?」

 

 その矢先だった。

 自宅のすぐ前には、見覚えのある少女が1人。

 

「貴女確か、西沢歩さんよね?」

「はい!覚えていてくれたんですね!」

 

 目を輝かせて近づいてくる少女、もとい歩。何故か腕には焼きたての焼き芋が入った袋を抱えている。

 

「あ、桂って。そっか、ここ会長さんのお家だったんですね」

「あ、うん。そうなのよ」

「でも奇遇ですね!こんな所で会長さんと再会できるなんて」

 

 歩は微笑みながら手に持っていた焼き芋を頬張る。

 

「私、焼き芋屋さんを追いかけ続けて、気が付くと知らない場所にいたんです。もしかして会長さんもこれから焼き芋屋さんを追いかけようと家を出たとか」

「あ、いえ。そんな愉快な理由ではないんだけど」

 

 満面の笑顔の歩とは対照的に、ヒナギクの表情は心なしか強張っていた。

 彼女の頭をよぎっていた考えは、この状況が非常にマズイ状況、ということだったからである。

 

「あ、焼き芋食べます?」

「ありがとう。でも、大丈夫」

 

 彼女の記憶が正しければ、バレンタインデーに歩はハヤテに本命のチョコを渡したはずだ。本命のチョコを渡す、それすなわち恋愛感情があるということ。

 さて、今自分は自宅の目の前にいる。もっと言えば、ハヤテがいる自宅の前にいる。

 

 恋愛に疎い彼女でも直感的に分かる。

 このままいけば、なんとなく自分の家にハヤテがいることがこの西沢さんにバレてしまい。なんだかんだと誤解され、話がまたややこしくなるのは明白!ラブコメ的に!ここはそういう流れ!

 

(慎重になりなさいヒナギク!ここは何としても誤解をされないようにしないといけない所!ここで西沢さんと別れた後に、落とし物をしたとかで彼女が家に届けにきてバレる……みたいな初歩的なミスは絶対にしないように)

 

「あ、ヒナギクさん!僕お風呂とか沸かしておきましょうか?」

「はぅッ!!」

 

 そこはやっぱりお約束。

 にへらと人懐っこい笑顔を浮かべた執事が、玄関の中から出てきた。

 

「なんてことをしてくれたのハヤテ君!!」

「うええ!?何を!?」

 

 ハヤテの首根っこを掴んで揺さぶる生徒会長。

 一方、歩はといえばぽかんとして瞬きをしていたが、やがてハッとしたような顔つきに。それもそのはず、意中の人が他の女の家から出てきたのだ。「お風呂沸かしておこうか?」なんて新婚みたいな台詞を口にしながら。それが何を意味するのか。

 

「あ、あの……」

「違うわ!今貴女が考えているのは誤解なの!大いなる誤解よ、だから冷静に」

 

 言い終わらないうちに、歩は「失礼しました!」と声を張り上げて走り出してしまった。

 

「ああ、もう!ハヤテ君、1回家戻ってて!」

「え、ヒナギクさん!?」

 

 ヒナギクもまた走り出す。スタートが遅れたため距離は離れているが、そこは天下の生徒会長。類いまれな運動神経で、前方を走る歩へ一気に距離を詰めた。

 

「ねえ!ちょっと待ちなさいってば!」

 

 歩も負けじと両足に力を入れるが、距離は縮まるばかり。

 

「なんで追いかけてくるんですかー!」

「貴女が逃げるからでしょ!」

 

 そう言って、ヒナギクは遂に歩の手を取った。

 

「西沢さん!私の家に泊まっていかない!?」

「え?」

 

 さらに投げかけられた、思いがけない言葉には、歩も足を止めて振り返る。

 

「泊まって?」

「えぇ。そうすれば、余計な誤解も解けると思うわ。中途半端な誤解でもやもやするよりも、そっちの方がいいでしょ?」

「で、でも、そんな会長さんとハヤテ君の愛の巣に……私なんかがいてもいいんでしょうか」

 

 そういうヒワイな表現は止めてくれる?

 ヒナギクはため息をつきつつ、真剣な目で彼女を見つめる。

 

「それに、ハヤテ君のことを本気で好きなんでしょ?これくらいで諦めてどうするのよ!」

「はわわわわ!?だ、ダメなんじゃないかな、そんな本人の前で好きなんて言っちゃ」

 

 真っ赤になって両手を振る歩。なんとも可愛らしい反応に苦笑しつつも、半ば強引に家に引き連れていくことに。

 

「あ、お帰りなさいヒナギクさん」

 

 玄関から顔を覗かせたハヤテはきょとんとした表情で、ヒナギクの後ろにいる少女に目を向ける。

 

「あれ、西沢さん?」

「ひ、久しぶりハヤテ君。会長さんに拾われてきちゃいました」

「えぇ」

 

 状況がまったく呑み込めないのか困惑気味のハヤテをよそに、自宅に入る女子2人であった。

 

 一方その頃。

 

 

「ありがとうございました先輩。『捨て猫なんていくら拾ったって無駄。生存競争に破れたものに手を差し伸べるのは傲慢を通り越して悪意そのものだ』とか言い出すのではないかと」

「どんな人間だと思われているんですか、アナタの中で」

 

 呆れたような目をしながら、アイルはトートバッグを差し出した。ヨゾラが中を確認すると、キャットミルクや猫砂、組み立て式のケージなど、ネコに必要な道具などが一式が入っているらしかった。

 

「これらを選ばれたのはお嬢様です。あと、全ての予定を優先して子ネコの安全安心を確保せよ、との命も賜ってます」

「ははあ、なるほど」

 

 どこかで同じ台詞を聞いたような。そんな事をぼんやり思いつつ、トートバッグを受け取るヨゾラ。

 

「では、迅速に帰るふりをしてゆるやかに帰還しようと思います。ハヤテ様とヒナギクお嬢様がラッキースケベからのラブコメ展開になってるかもしれないので、メイドとしては空気を読まなくては」

「それはそれでうちのお嬢様的には複雑ですが」

「むしろ対抗馬を増やした方が、焦りから動きやすくなる可能性もあるのではないでしょうか」

「な、なるほど……」

 

 女性の駆け引きというやつだろうか。一理ある……のか?

 

「では、私はこれで。ありがとうございました、先輩」

「あ、ヨゾラさん」

 

 踵を返そうとするメイドを呼び止める。くるりと振り返ると、いつになく真剣な執事の顔が。

 

「もしかして愛の告白でしょうか?まだ心の準備が」

「違います」

 

 きっぱり。

 

「そうではなくて、お嬢様のことで」

「アテネお嬢様の?」

 

 彼は小さく頷くと、どこかバツが悪そうに頬を掻いてみせた。

 

「その、お嬢様のこと、これからもよろしくお願いしますね」

「また急に、どうされたのですか?まるで死亡フラグのようですが」

「ははは」

 

 苦笑しつつも、彼の瞳は真剣そのものであった。

 

「正直、お嬢様がアナタを引き取ると言ったときに賛成はしませんでした。完全に信用してはいませんでしたから」

「……なるほど」

「気を悪くさせてしまったらすみません。ですが、ここ一ヶ月でその考えも改めました。メイドとしての仕事ぶりもそうですが、何よりも」

 

 お嬢様への姿勢から、アナタが嘘を付いていないことを確信できましたから。

 

「ですから、まずは疑っていた謝罪をさせてください。そして、これからは本当に意味で仲間として、よろしくお願いします」

 

 そう言って手を差し出す執事。どうやら、少なからず彼女を警戒していた彼なりのけじめらしい。

 

「良いのでしょうか」

 

 しかし、ヨゾラはその手を取ることはなく、俯いた。

 

「私はまだ自分のことを全く思い出せません。出自どころか自分の本当の名前すらも、全く」

「……」

「そんな私を拾ってくださったことには本当に感謝してます。ですが、私自身どういう人間かも分からないのに、そこまで信用してくださるのは……もし、私が皆様にとって」

 

 アイルは彼女の言葉を遮るように、口を開いた。

 

「私も、ヨゾラさんと同じなんです」

「え?」

 

 彼は首に掛かっていたペンダントを、彼女の前に差し出す。細い皮のひもの先には碧い小さな丸い宝石のような石。そこには見たことがない金色の模様が刻印されていた。

 

「これは?」

「私が拾われたときに付けていたもの、らしいです」

 

 拾われた?

 ヨゾラは目を丸くして、執事を見上げた。彼はおもむろに頷いてから続ける。

 

「私も記憶がありません。自分が何者なのか、どこで生まれたのか。そんな状態である人に拾われて、もう十数年になりますが、記憶に関しては変わっていませんね」

「そう、だったんですか」

 

 語られる内容とは裏腹に、アイルの表情や口調は穏やかそのものであった。

 

「怖くはないのですか?もし自分が」

「もし自分が、お嬢様を傷つけるような存在だったら?」

 

 言いたいことをぴたりと当てられてハッとするヨゾラ。

 

「まぁ一度も無いといえば嘘になりますが……お嬢様の下で働いてきて、そんな考えは消え去りました。立て込んでいる事情が多すぎて、考えてる余裕がなかったというのもありますが」

 

 彼はまた苦笑する。

 

「お人好しすぎるし、常に自分より相手を慮るし、他人に甘すぎる時もある。ですがそれは彼女の美徳ですし、それを守るのが、多分私たちの最も大事な仕事なんだと思います」

「……」

「私たち自身が疑心暗鬼になってしまっては、彼女のその優しさを裏切ることになってしまうでしょう」

 

 彼女はそっと、自分の手元に目を落とした。トートバッグには主人、アテネが懸命に選んだであろうネコの道具がぎっしりと詰まっている。

 

「向き合うべき時は来るのかもしれません。ですがそれまでは、守るべきものを守る。それが私たち従者ができる、主人への恩の返し方ではないでしょうか」

 

 それに、と彼は続けた。

 

「ヨゾラさんが今見ている景色は、それほど悪いものじゃないでしょう?」

 

 そう言って、小さく微笑む執事。メイドは彼の表情をじっと見つめたが。

 

「そうですね、分かりました」

 

 やがてフッと肩の力を抜く。そして笑顔を浮かべて。

 

「つまり先輩は同じ境遇を明らかにすることで、私を口説いているわけですね」

 

 がくっと膝から崩れそうになる執事。

 

「確かに一般人女性なら即オチ待ったなしでしょうが、まだ詰めが甘かったですね。私を落とすには一歩足りませんでした」

「はぁ」

 

 冗談です、そういっておかしそうにまた笑うメイドさん。そのまま、彼の左手を引き上げるように掴んで、強く握手をしてみせた。

 

「しかし、先輩の思いはしかと受け止めました。ついでに私の先輩への好感度ゲージは2ポイントくらい上昇しました。その調子で引き続き頑張ってください、先輩」

「アナタという人は……本当にブレませんね」

「ふふ、メイドですから」

 

 くるりと再び踵を返すヨゾラ。そのまま上機嫌な足取りでその場をあとにする。

 

 

 ふっと息をついてその後ろ姿を見送ってから、アイルは後ろにあった雑木林に視線を向けた。

 

「ふむ、あの子がアテネの新しいメイドちゃんか」

 

 その視線に返事をするように、木陰から姿を現したのは帝であった。

 

「ふむ、しかし、うん。可愛いな、実に可愛い。特に素直にならずにボケに走る所とかタイミングとかポイント高いぞい」

「ちゃんと伝わってるのかものすごく不安なんですけど……」

「馬鹿者!」

 

 帝はぺしんと執事の頭を叩く。

 

「ちゃーんと伝わっておるわ、ギャルゲ歴50年、夢小説歴30年以上のこのワシが保証するわい!彼女のことは全く知らんけど!それでも客観的に見てれば分かるわい馬鹿者!」

「そうでしょうか」

「そうなんじゃ!お前さんはもうちっと女心を勉強しておかんかッ!」

 

 ぺしぺしと何度も頭を叩く帝。

 

「で、そんな事よりも。今回の件、彼女は力になるって事でいいんじゃな?」

「さぁ」

「さぁってお前!あんなに熱を入れて語っていたではないか!?え、まさかあれ全部上辺だけの建前?あんなに爽やかに心にもないことを並べてたの?いや詐欺師じゃんそれ!サイテーじゃんお前」

 

 うわぁ。

 帝はドン引きしたように非難するような視線を送ってくる。

 

「嘘偽りない本音ですよ、全て」

 

 ただ、と執事は肩をすくめる。

 

「こればかりは確証はできない賭けって事です。とはいえ、最悪の事態を考えると、マキナだけで対応できるとは思えない」

「ふむ、それはそうじゃろうが……」

 

 帝は腕を組んで唇を尖らせる。

 

「分かっておるか?もし、アテネが世界の敵になるようなことがあれば……」

 

 分かってます。アイルは数回頷いてから続ける。

 

「まぁ、彼女であれば」

 

 アイルはもう一度、ヨゾラが去って行った方向を見つめた。

 

「お嬢様を、任せても大丈夫だと思います」

 

 

 

 桂家のリビングにて。

 

「ははぁ、つまりハヤテ君は買い物帰りの会長さんと偶然会って、更に帰り道にこのネコちゃんが捨てられてたので一緒に保護してた、と」

「そうよ。改めてあらすじ説明みたいになってるけど」

 

 リビングでテーブルを囲んだ3人。納得顔の歩はそのまま決まりが悪そうに笑いながら頭を掻いてみせる。

 

「あはは、なーんだ。私てっきり2人は新婚で新居生活を始めて、私はそうと知らずに不倫を持ちかけていたのかと思いましたよー」

「どこからツッコめばいいのか分からないくらい飛躍してるわね」

 

 ため息をついて額に手を当てるヒナギク。思い込みは往々にして結論の飛躍を招くが、それにしても限度があるだろう。恋する乙女は盲目というやつだろうか。

 しかし、とヒナギクは2人を交互に見る。

 

「2人が会うのってバレンタイン以来なのかしら」

「え」

 

 途端に固まる2人。みるみるお互いの顔は赤らんでいく。

 

「あ、あの!このネコちゃんは大丈夫なのかな!?」

「あ、あー!そうですね!ヨゾラさん戻ってくるの遅いな、何かあったんですかね」

 

 あからさまに話題を逸らしにかかる2人。よく見れば目を合わせていないではないか。

 

「ヨゾラさんなら、さっき戻るって連絡があったわ。もうすぐ帰ってくると思うけど」

「そ、そうですか」

 

 立ち上がろうとしていたハヤテは再び椅子に腰を下ろす。しかし、気まずい沈黙がリビングを支配するのみ。

 

「えーと、私席を外した方がいい?」

「いいえ!会長さんはここにいてください!」

「そうですよ!家主であるヒナギクさんが出て行ってどうするんですか!」

 

 天下無敵の生徒会長といえど沈黙に耐えかねて脱出を試みるものの、2人に全力で止められる。しかし、室内を支配するのはやはりなんとも言えない沈黙である。

 

「だったらその、えーと、何かしゃべってもらえると」

「うぅ」

 

 ハヤテと歩は互いに顔を赤らめたまま俯いてしまう。とはいえそれも無理のない話。なにせ告白した側と告白された側。しかも返事は保留という顛末の2人なのである。

 次顔を会わせたらまずはその件に触れなければ他の会話もままならない。しかしお互いどう触れていいやら分からずどうしていいやら。

 

 という両者後ろ向きなにらみ合いの状況。が、ここで歩が動いた。

 

「あ、あの、ハヤテ君!」

「は、はい」

 

 このまま停滞させておくことなどできない。正面からぶつからなければいけない。もう逃げ場はない、腹はくくった。

 

「あのバレンタインのことだけど、その、つ、つまり」

「に、西沢さん」

「わ、私は、ハヤテ君のことが……!!」

 

 がちゃり。

 リビングのドアが開く音。

 

 3人の視線が一斉に送られたその先には、目を点にしたヨゾラの姿が。

 

「……確かにラブコメ展開をどうぞ、とは言いましたが」

 

 パチクリと数回瞬きをして、合点がいったようにポンと手を打つ。

 

「いきなり三角関係とは」

「違うから(違います)ッ!」

 

 

 一斉にツッコまれた。

 

 

 

 

 

 





 ハヤテのごとく・完全版8を読んで
 まさかまさか、文化祭やヒナギクさんの過去が語られる可能性があるとは……!!最高ですね、もう最高としか言葉が見つかりません。おまけマンガでハヤテくんたちが楽しそうに暴れているだけでも眼福ものだというのに……!!ああ、生きていてよかった……!!


して、この二次創作でヒナギクさんの過去について、現時点で明らかになっている情報を元に推察し、独自で妄想したものを書こうかと思っていました。がしかし、公式原作からそんな最高の供給があるのであれば、それを是非とも堪能してから書きたいとも考えてしまってます。
しかし、その間ずっと更新を止めるのも自分自身のモチベーション維持ができなくなりそうで。。。

ですので、少なくとも、根幹部分が大きく原作と設定が矛盾することがないように、今まで以上に慎重に書いていきたいなと考えます。
例えばヒナギクさんの旧姓や昔の両親がどうなっているかなどは、明言はされてませんが原作の扉絵などから推察することができます。この辺の推察部分は盛り込みつつ、独自妄想で補完しながら、といった感じで。
万が一どうしようもないくらいの齟齬が生じることがあれば、土下座をしつつ、書き直させていただいたりすることがあるかもしれません。何卒ご理解のほどよろしくお願い致します。

長々と厄介オタク感満載の戯言でした、お目汚し失礼致しました。
次回もよろしくお願い致します!!

物語の終わり方について

  • エンディングは一つのみが好ましい
  • 各ヒロインのルート分岐などがあっても良い
  • どうでもいい
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