アテネちゃんの執事!   作:通行人A'

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遅くなってしまい本当に申し訳ございませんでした!(土下座)


Task62:Explanation

 

 

「――と言うわけで、どうにか伊澄さんの元に駆けつけた次第でして」

「さすがの判断ですアイル様。ですが更新には随分時間がかかりましたね」

「ははは、相変わらず痛いところを突きますね」

 

 ちゃぶ台を挟んで向かい合うアイルに、伊澄はたおやかな笑みを浮かべながら、湯飲みを傾ける。容赦のない一撃を添えて。

 

「まぁ時間がかかった理由は然るべき所に釈明させるとして、この事態の収拾の為にお力をお貸し頂けませんか?」

「話は分かりました。そちらの男性の方のご記憶、そして使命を取り戻し、成仏させて差し上げればいいのですね」

 

 そして、今度はアイルの隣に座る――スーツ姿の男性に目を向けた。男性は目を丸くして、その和服の少女へ振り返る。

 

「おお!お嬢さんは私が見えているのですか!?」

「えぇ、モチのロンです」

 

 瞳をキラリと光らせて古いギャグを放つ伊澄嬢。

 

「ああ、今僕に実体があれば抱きしめているところです!なんと悔やまれることか,この霊体でもワンチャン抱きつけるのでは」

「止めて下さいね、強制的に成仏させざるをえなくなりますから」

「じょ、冗談ですよいやだなー」

 

 執事服の内ポケットに手を入れるアイルに、男性は苦笑いしながら頭をかいてみせる。しかしその冷徹な色の瞳は本気(マジ)の証拠であった。

 

「止めておきたまえ。ここのお嬢さんはそんじょそこらの霊媒師とは訳が違うぞ」

 

 すると、どこからともなく男性の声が聞こえてくる。アイルたちが見れば、縁側の柱によりかかった礼服姿の神父が1人。

 

「歴代の鷺ノ宮家の中でも最強の力を持つ巫女、1000年に一度の逸材との呼び声も高い実力者なのだよ」

「いえ、何故神父さんが自慢げに話しているんですか」

「はっはっは、気にするな。私もファミリーの一員みたいなものじゃないか。各琥珀紀に一度開かれるセレモニーに参加すれば、君たちもファミリーの一員だぞ」

「勝手に宴の星の話を混ぜないでください」

 

 ペラペラと男にジト目を向ける伊澄。そんな彼女の様子を見て目を丸くするアイル。

 

「あの伊澄さんが自らツッコみをなさるとは……何者ですかこの男は」

「ほう、君は私が見えているのか」

 

 同じく意外そうな表情をする神父。

 

「ふむ、我々はどこかで一度会ったことがあったかね?」

「いえ、記憶にはありませんが……どういう意味でしょうか」

 

 アイルは訝しげに首を傾げる。

 

「そうか……まぁ稀にそういうこともあるようだ。君も力に適正のある人間ということになるわけだ、私の姿が見えるということはね」

「いや、そんな異能力学園RPGみたいな雰囲気で言われても……」

「あぁ失礼。私はこの世の者ではないからね、そういう意味さ」

 

 さらりとそう宣う神父さん。

 

「ええ!?この人死んでるんですかッ、僕と一緒じゃないですか!」

「そういうことになるな、同志よ」

 

 アイルの隣にいたサラリーマンも文字通り飛び上がる。神父はぐっとサムズアップ。居間には4人、うち2人の男は幽霊。客人は2分の1幽霊。

 

「話を戻しましょう」

 

 一つ咳払いをしつつ、伊澄は居ずまいを正した。

 

「その方が使命を果たせば、未練が無くなり成仏することにつながる可能性が高いという事なのでしょう。迷える魂を導くのは鷺ノ宮家の定め。喜んでお力をお貸ししましょう」

「ありがとうございます。創世の慈母のように深い伊澄さんの御心に感謝がたえません」

「ふふ、大げさですよアイル様」

 

 口調とは裏腹に、まんざらでもなさそうに口角を上げる伊澄。

 

「では準備をしてきます、少々お待ちください」

 

 そのまま彼女は立ち上がると、軽快な足取りで居間をあとにした。

 

「君は彼女の動かし方をよく心得ているのだな」

「人聞きの悪いことを言わないでください」

 

 神父は腕を組みながらアイルに改めて目を向ける。そのままじっと見つめて、もう一度小首をひねる。

 

「……やはりどこかで会ったことがあるのではないか?」

「いえ、私には記憶にありませんが」

 

 一方のアイルは申し訳なさそうに首を振る。神父の生前はかなり昔のようだし、生身で顔見知りという可能性はないだろう。そもそも何故アイルに霊体が見えているのかという疑問も当然出るわけであるが。

 

 

 さて、伊澄が居間を後にしてから待てど暮らせど音沙汰がない。男性陣は怪訝そうに顔を見合わせ始める。

 

「あの……先ほどのお嬢さんはどうしたのでしょう?やはり準備に時間がかかるのでしょうか」

「あ」

 

 そこで何かを思い至ったのか。はっとしたアイルは慌てて立ち上がると、「少々お待ちを」と言い残して、そくさくとその場を後にした。

 

 そこから更に時間が経ち。

 

 

「お待たせしました皆様」

 

 居間に戻ってきた伊澄。涼しい表情でぺこりとお辞儀をしてみせた。

 

「まさか北欧の孤島で謎の宗教団体に神と崇められているとは思いませんでした。鷺ノ宮家の執事の方々がいなかったらどうなっていたことか……」

 

 疲弊しきっているアイルを連れて。

 

「すみません。ケガをしている方がおりまして、放ってはおけなくて」

「いえ、国境をも越えた伊澄さんの慈悲深さには頭が下がります」

 

 苦笑する執事の目には明らかな疲労の色が貼り付いていた。迅速にヘリを用意し、身柄の確保に動き出した彼女の執事たちの徹底ぶりにはもっと頭が下がる思いだった。

 

 

「では、早速始めましょう。幽霊さん、私の前までいらしてください」

「は、はい!」

 

 仕事モードの表情になった伊澄の言葉一つで、室内の空気は一気に張り詰める。そのオーラに思わず気圧された男性もまた緊張から背筋が伸びたまま、彼女の前へと歩み寄った。

 伊澄は何も言わずに、男の胸元に右手を添える。そして目を閉じると、彼女の手からは優しげな光があふれ出した。一体何が行われているのか、力を持たない男性陣には想像も付かない。私語をするのも憚られるほどの緊張感ゆえ、ただじっとその儀式のような光景を見つめているしかないのである。

 

「はい、結構です」

 

 そんな状況が10分間続いて、ふと伊澄が手を放した。これで儀式は終わったのだろうか。

 

「あれ、伊澄さん口元が」

「え?」

 

 彼女の口元を伝うのは一筋の滴――気が付いた伊澄は急いで口元を拭うと、何事もなかったかのように軽く首を振ってみせた。

 

「え?ひょっとして寝てました今?」

「寝ていません」

「いやでも口元に」

「残像です」

 

 きっぱりと言い放つ伊澄嬢。心なしか頬が赤い気もするが、彼女が残像だといえば残像なのだろう。アイルは首肯し、それ以上の追及を避けることに。

 

「どうでしょうか、何か思い出しましたか?」

 

 伊澄は目の前の男性を見上げて問いかけるが、彼は目を閉じて首を傾げるのみ――かと思えば、はたと目を開いて天井を見上げた。

 

「なにか……ちょっと」

「?」

「なにか、ぼんやりと頭の中に浮かんできて……光景が」

 

 思わず顔を見合わせる伊澄とアイル。やはり光の巫女の力は間違いないようだ。

 男はぼんやりと部屋の屋根裏を見つめていたが、再び目を閉じる。脳裏に浮かんだらしい光景に思いを馳せているようだ。そんな様子をじっと見守る伊澄たち。

 

「白い部屋、ベッド、カーテン……これは、病室?」

「病室……どこかの病院でしょうか」

 

 伊澄の問いかけに、男性はおずおずと頷く仕草をする。そしてもう一度目を閉じる。もうあるはずのない脳内を探り、細い記憶の糸を辿るように。

 

「病室から山が、眺めの良い……そう、あれは川乗山だったはず。ああ、あと近くにお寺がありました、狐の銅像がたくさんあったような」

「都内か。そこまで分かれば絞れそうですね、調べてみます」

 

 アイルはすぐ立ち上がると携帯を片手に居間を後にした。

 

「ふむ、さすが光の巫女様だな。死人の記憶まで呼び起こせるとは」

「えぇ」

 

 しかし伊澄は、神父の賛辞を受けても堅い表情のまま頷くのみだった。

 

 

 

 所変わって、白皇学院生徒会室。

 

「これで、行事の準備もほとんど完了ね。ありがとう、倒れちゃって迷惑かけたけど皆のおかげでなんとか間に合ったわ」

 

 会長机に座っていたヒナギクは資料の重なったバインダーを閉じると、笑顔で室内を見回した。集まっていた生徒会役員らもおのおの満足気に頷いている。

 

「ふっふっふ。ま、我々生徒会役員の力を結集すればこの程度朝飯前さ」

「なのだー!」

「ちょろあまってやつだな、うん」

 

 美希、泉、理沙の3人娘もご満悦名表情である。

 

「調子に乗らないの、って言いたいけど今回は本当に助かったわ。ありがと」

 

 やれやれとため息をつきつつも、彼女らに軽くウインクしてみせる。美希たちは照れたように頭をさすってみせる。

 

「ま、普段からちゃんと仕事をしろと、我々は言いたいですが」

「そうねー」

 

 書記と副会長からは厳しい意見も忘れず。

 

 さて。一息ついてヒナギクは1枚の資料を手元に出した。

 

「あとは、ホール利用の申請の件ね。これは――」

「おっと!それは私たちだけで処理しておくから大丈夫だ!」

 

 すかさず駆けよってきた美希が、ヒナギクの手から資料をひったくる。

 

「ちょ、何よ突然?」

「いーからいーから!ヒナちゃんはまだ病み上がりなんだから、今日はもう帰って休んでて!」

 

 続けて、泉がヒナギクに鞄を持たせて、ぐいぐいと背中を押しやる。

 

「私たちがいかに有能かは身をもって体験したはずだぞ。たまには人に頼ることも学びたまへ」

「アンタ達、日頃の行いを棚に上げてよく言うわね……」

 

 高らかに笑う理沙を明らかに不審そうに見つめる

 

「また何か変なことを企んでるんじゃないでしょうね?」

「何を言う!私たちがいつ悪だくみをしたっていうんだ!」

 

 常日頃からである。

 

「ま、この3人が変なことをしないかは私たちがしっかり見張っておきますから。会長はゆっくり休んでいてください」

「そうよ、本番に倒れたら元も子もないんだし。休める時には休まないと、ね?」

 

 ここで千桜と愛歌のしっかり者勢も3人娘に加勢。何かを斯くしていることはまず間違いないが、どうしてもヒナギクを輪に加えるわけにはいかないようだ。

 

「はぁ……分かったわ。それじゃお言葉に甘えようかしら」

 

 ここは折れるしかない。ヒナギクは両手を挙げて降参のポーズを取ると、鞄を手に持ち直して生徒会室を後にすることに。

 

「皆、あまり遅くならないように帰りなさいね」

「はーい」

 

 扉が閉まるや否や、慌てて顔を見合わせる役員たち。

 

「いやー、ちょっとあからさますぎたか」

「そうだよー、美希ちゃん顔に出やすいから」

「泉にいわれちゃおしまいね」

「ええ!?」

 

 がやがやと長テーブルに集まり始める生徒会役員たち。

 

「別に無理に隠さなくても、誕生会やるってヒナに言えばいいじゃないですか」

「いいや!こういうのはサプライズが大事なんだ!サプライズで感謝された方が、なんかほら、感謝度が高そうじゃん!」

 

 そーだそーだ。後ろからは美希に向けて歓声が上がる。

 そう、彼女たちはこれから極秘に企画した「桂ヒナギク生誕祭」の最終準備に取りかかるべく、士気を高めているのだ。その舞台が、白皇学院の大ホールである。

 

 呆れたように目を細める千桜だったが、サプライズの部分は譲れない生徒会の総意らしい。

 

「いいんじゃない千桜さん、こういうのも。ヒナが感動・号泣して、その涙で海が出来る様を見てみたいでしょう」

「そんな創世神話な光景に遭遇できるものなら」

 

 愛歌は面白ければなんでもいいという考えのようだ。もちろん、千桜としても誕生会をやって、ヒナギクに喜んでもらいたいと心の底から思っている。

 

「はぁ、ではさっさと準備をしましょう。ヒナに気が付かれないように迅速に」

「なんだかんだでクーデレなんだからー、ちーちゃんは!」

「ちーちゃん言うな」

 

 生徒会メンバーは和気藹々とホールに向かうのだった。

 





 えー、気が付けば新年度。最後の更新から2ヶ月以上放置しておりました。誠に申し訳ございませんでした。というのも1ヶ月半ほど入院をしておりまして、退院したのが3月中旬。ようやく問題なく動くようになって、普通の生活が出来るようになったわけであります。

理由は単純なもので、単車の事故で足や腕の骨折です。完全な自損事故で、巻き込んだ人もいなかったのがせめてもの救い。実家に帰る途中の山道ですってんころりんとやってしまいました。残ってた雪に足をとられたのだと思います。お恥ずかしい限りです。なんとか退院して、痛みもほぼ無くなりました。家族や周りの皆様、医療機関の方々、多くの方に多大な迷惑をおかけし、猛省しきりでございます。
今後は安全運転を絶対遵守し、日々の生活を心がけたいと思います。
学校の単位はヤバイですね、今はそっちの方が心配です。

ともあれ、もうしばらくは安静とのことで、ポチポチ文字を打っていければと思っております。この度は長らく放置してしまい申し訳ありませんでした。また更新を再開しますので、何卒よろしくお願い致します。

物語の終わり方について

  • エンディングは一つのみが好ましい
  • 各ヒロインのルート分岐などがあっても良い
  • どうでもいい
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