――これで何人目だろうか。
溜め息と共に漏れたのはそんな愚考。
そんな事を言っても無駄なのは分かっている。
これは俺に与えられた使命……なのだから。
『海斗(かいと)! あなたには精霊とデートして、デレさせるという使命を与えるわ!』
唐突に姉から伝えられた俺の使命。最初は勿論断ったさ。でもな――
最初に会った精霊は、俺の幼馴染だった。
『海斗……助けてっ』
アイツを救ってからだったな。俺が決意を固めたのは。
必ず精霊を救ってみせるってな。
それから数年経って、今攻略した精霊で19人目だったか。
正直もう、限界だ。
もし誰か同じ目にあってる奴が居るのなら、せめてこの悲痛を分かち合いたい。
まぁ、そんな奴いる訳ないか。
『海斗! 精霊よ! すぐに空中艦で回収するわ』
静粛限界か。もう慣れたな。
まぁ、いい。
今回もすぐに終わらせてしまおう。できるだけ早く、な。
急な浮遊感の後、一瞬にして空中艦の中へと移動している。
「今回の精霊はプレイヤー。最近頻繁に観測される精霊よ。いい? 分かってるとは思うけど――」
「分かってるよ。俺がそいつを、デレさせる」
姉は首肯すると、精霊の位置を割り出す。
「天宮市のゲームセンターね。空間震は起きていないわ。静粛限界よ」
さて、始めるか。
ゲーム、スタート!
地上に降り立つとゲームセンターを探索する。
幸い空中艦の人達が手配してくれたようで、周りに他の一般人は居ない。
「あれか」
レースゲームに興じてるようだ。
このタイプ……攻略は簡単だ。
彼女の隣のレースゲーム台に座る。識別名プレイヤーはすぐさま注意を向けてくる。
「一緒に、どうかな?」
なるべく爽やかに言い放つ。これは完璧だ。
「うんっいいよ!」
なかなかの好反応。これは手早く済みそうだ。
「あー負けた! 自信あったんだけどなぁ……」
結果は俺の惨敗。
「もーう弱いなぁ! あはは」
でも、この流れはかなり良いぞ。
インカムをつついて好感度の上昇具合を聞いてみる。
(どうだ?かなりいい線いってるんじゃないのか?)
小声で呟く。しかし……
『それが、イレギュラーよ。さっきから好感度の動きが全くないわ』
姉が言ってきたのは予想外の言葉。
「はぁ!? そんなわけないだろ!?」
「えっ……どうしたの? 負けたのがそんなに悔しかった? そんなに怒る事ないってー」
やべっ。もしかして好感度下がっちゃったんじゃ……
『海斗、多分あなたの予想は外れてるわ。彼女の好感度はびくともしないもの』
な……に!?
この笑顔いっぱいの精霊が……感情が露わに出てる精霊が……なんで!?
「あっ、あなた名前は?」
唐突にプレイヤーが問うてくる。でもまぁ、当然の流れか。
「俺は海斗。海に北斗七星の斗だ」
「なにその説明。ふふふ。海斗くんって面白いね!」
『先に言っておくけど、好感度は全然だからね』
期待くらいはさせてくれ……
「私は零夜(れいや)。数字の零に夜だよっ。よく男の子みたいな名前って言われるんだけど、見ての通り可愛い女の子だからねっ」
自分で言うなよ……前の俺なら口に出してたかもな。
でも、今の俺は違うぜ。
「否定できないのが困るなぁ。いや、本当に可愛いな」
「ふぇ……!? そんなにストレートに!? ……ふえええ」
いや、いくらなんでも照れすぎだ。まぁ、可愛いけどさ。
『海斗ぉ、この零夜って子……感情あるの?』
(おい、まさか……)
『そのまさかよ』
おいおい、勘弁してくれよ。