――海斗、もし私と同じ運命を辿っている精霊がいたら……助けてあげて?
俺は幼馴染のアイツと約束したんだ。
絶対に、零夜を攻略してみせる。
「さて、あれからデートの約束をしたところまでは良いとして……海斗、結構痛かったわよ」
「うっせーな!? ほっといてくれよ」
それにあれは俺が悪いわけじゃないだろ。
零夜……アイツは何なんだ。
最初はただのゲーマー少女だと思っていた。
それなら一緒にゲームする過程で攻略を進めればいいと考えていた。
でも好感度は全くの上昇もない。
しかも下がりもしないというのは明らかに異常だ。
もしかして……レズ、とか。
「あの零夜っていう精霊。もしかしたらレズかもしれないわね」
「奇遇だな。今俺も同じことを考えてた」
瞬間、姉の口元がにやっと歪んだ。
なんだか……嫌な予感がする。
「海斗、黒髪ストレートロングと茶髪ゆるふわロング。どっちがいい?」
「どっちもお断りだよ!」
「あら、察しが早いじゃない」
「無理だからな!? 見てみろよこの顔の造形!」
「そんなことは……な……いわよ?」
「なんで口ごもった!」
「大丈夫よ。私の弟でしょう?」
「残念ながらお前の顔の造形もぐふぇ!!」
「なぁに? もう一度言ってみてくれるかな?」
「お姉さまの弟の僕になら可愛い女の子になれますー」
「それでいいのよ」
嫌な予感、的中。
「女装なんて生まれて初めてだからな。よくわかんねえぞ?」
「初めてなの?」
「当たり前だろ!」
「私の弟なら当然やっているものかと」
「それ自虐だからな!?」
「分かっているわ。あぁ、快感」
「本当にお前の弟ならやってそうだわ!」
「で、次のデートだけど」
「流したな!?」
「場所はどこだっけ?」
「あぁ、それなら確かゲーセンだったはずだ」
「海斗、頑張りなさい」
「何を!?」
「出来るだけ女装と気づかれないように施すから」
「そこでやんの!? 公共施設だぜ!? 一般人も居るし……」
「海斗、頑張りなさい」
もう、勘弁してくれよ……
「それで海斗……どうするの?」
「何がだ?」
「選択肢、よ」
「っ……!」
選択肢を使わなくなったのは10人目の精霊を攻略した時。
あの時の精霊の天使は、人の心を読む能力。
俺が何の為に、なぜ精霊に近づくのかが完全にバレた。
精霊の好感度は急降下。いや、好感度だけじゃない。裏切られた、と思ったんだろうな。その精霊は反転した。
しかし、俺が攻略のためにその精霊に近づいたというのは事実だ。
もう、どうしようもない。
そう思ったさ。
でも、その時俺を救ったのは幼馴染の言葉だった。
『海斗が精霊を助けるって決めたこと。それも、全部使命感だったの? ううん。私はそうは思わない。海斗に救われた時、私は嬉しかった。私の存在は確かに海斗のために必要だったんだって。他の精霊の子たちもそう。心が読めなくたって、それが嘘ならなんとなく察しちゃうもん。海斗が本気だって思ったから……私たちはこうして生活してるんじゃない?』
俺が精霊を攻略するのは、姉に命じられたから。
今までそう思っていた。
でも、俺は心の底から精霊を救いたいんだって、気付かされたんだ。
だから俺は、選択肢を捨てて自分の言葉で、自分なりの言葉で攻略を進めてきた。
でも、それでもダメなら……
「選択肢、頼む」
「了解」
もうとっくに気付いている。
今回の精霊はかなり厄介だ。
でも……面白いじゃねえか。
ここまでやらせた精霊は初めてだ。
精霊、零夜。絶対に攻略してみせる……!