私には大切な仲間、寝食を共にし、共に死闘を乗り越えた正義の仲間たちがいた。
行く宛てがなく、私を救い出して受け入れてくれた主神と団長と団員。
オラリオに訪れた『暗黒時代』に闇派閥との大抗争を、邪神とかつての英雄たちとの戦いを乗り越えた私の大切な人たち。
大切な人たちの中に、一人変わったヒューマンがいた。
オレンジ色の髪に仲間が着ていた服と同じような黒い装束。身の丈近くある無骨な大剣。
どこから来たかもわからない、いきなりオラリオに現れ、闇派閥の襲撃に偶然居合わせたその人は私たちなんかより圧倒的な力をもって闇派閥を撃退した。
力をみても当時のロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの第1級冒険者たちと同等かそれ以上に感じられた。
そんな力を持つ冒険者なら、二つ名や存在、そして男の主神の名が轟いていてもおかしくない。なのに誰も知らなかった。
そんな彼は、このオラリオを、いやこの神々とモンスターが存在するこの世界のことを何一つ知らなかったのだ。
私たちは彼を主神のもとへと連れていき、そこで彼は私たちにこの世界とはまた違う『異世界』からやってきたことを告げた。
神々すら認知することができない、異なる力異なる存在異なる理を有した世界からやってきたそのヒューマンはこの世界のこと、そして今のオラリオがどうなっているのかを聞き、
『俺にもこのオラリオを護らせてくれねえか?』
と、自ら申し出てきた。
異なる世界の出来事に自ら首を突っ込もうとした。当然私たちは反対した。無関係な彼に今のオラリオの惨状に関わらせることはできない。それが団員の総意だった。
しかし主神は違った。
『あなたの力をこの世界のために使ってもらえないですか?』
彼女は彼の力をオラリオのために使ってほしいと、私たち正義の剣と共に振るってほしいと。
『正義なんて大層なもん持ち合わせてねえけど、誰かが傷つくなら俺はこの力で護ってみせる。俺の魂に誓って。』
彼の決意は私たちにとやかく言えるものではなかった。その瞳から感じる想いに私は自分の中に何かを生み出した。
そして彼を加えて、私たちは戦った。
邪神の言葉と大切な友を失ったことにより、私は自分の正義がわからなくなったこともあった。
正義とはなんなのか、なんのために戦うのか、何を求めて正義の剣を振るっているのか。
私にはわからなくなった。
尋ねたことがあった。なぜあなたは戦うのか、何を求めてその剣を振るうのかと。
『俺はずっと護る力が欲しかった。護る為の力を大切な仲間からもらって、俺はずっと護る為に戦ってきた。何度も迷ったし絶望もしたさ。それでも俺はみんなと一緒に何度も乗り越えてきた。みんながいる限り俺はずっと護り続ける。それだけだ』
この人は愚直なまでにまっすぐだった。私みたいに言葉一つで見失ったりしない。この人には確固とした『正義』があった。
邪神と再び相まみえ、私は彼の言葉を思い出した。
私の中で何かが変わった、散らばっていた何かが固まりだした。
正義には形がない、正義は1つじゃない。一人一人が正義を持っている、その正義は誰かが決めたものじゃない。
私の正義は主神が、団長が、団員が、ましてやあんな邪神が決めたものじゃない。
あの人がきっかけをくれた、私を信じてくれた人たちがいた。私の正義が何なのかを邪神に唱え、私は再び彼と仲間と戦い続けることができた。
そして『静寂』、かつての『英雄』を乗り越えるために私たちは圧倒的なレベル差を仲間との連携と彼の力で戦い続け、勝利した。
大抗争を終え、私たちはギルドの指令でダンジョンへ赴いた。
不審な動きをする冒険者たち、恐らく闇派閥がダンジョンで暗躍していると予想した私たちは迷うことなくそれを引き受けた。
しかし、その判断が私たちに悲劇を招いた。
27階層に到着した私たちを待っていたのは闇派閥が大抗争で数多くの死傷者を出し大切な親友を殺した『火炎石』による闇派閥の罠だった。
ダンジョンがかつてないほどの崩落を起こし、仲間の多くが巻き込まれた。
しかし、悲劇はそこからだった。見たこともない聞いたこともない異形の存在がダンジョンから生み落とされた。
仲間たちはなすすべもなく殺されていった。逃げるしかできなかった彼と団長と私は、逃げることで精いっぱいだったが、
『あなたは生きて。あなたが私たちの希望なの。忘れないで、正義は巡るから』
私を庇って大切な人がまた死んでしまった。固まり戦意を失った私を彼も同じように私を庇い逃がそうとしてくれた。
『俺は死なねえからよ。お前は生きて待っててくれ。すぐ終わらせてくる。』
異形の存在に向かっていく彼の背を見て、私は自分の無力を嘆いた。
再び崩落していくダンジョン。私は崩落から逃れ、地上へと帰還し、ホームで主神とギルドに報告し今回起こったこの事件は箝口令が敷かれ、一部の者たちしか知らない『27階層の悪夢』へとなった。
私と主神は絶望に打ちひしがれながら、彼の帰還を待ち続けたが、彼は二度と帰ってくることがなかった。
私は復讐心と激情に駆られ、これからする出来事とこれから見せる醜悪で正義もない姿を見せるわけにはいかないため安全のために主神をオラリオの外へと逃がし、私は手段をいとわず闇派閥のファミリアを壊滅させた。
ギルドのブラックリストにのり、賞金をかけられた私は頼れるあてもなく逃げ続ける日々を送り、そしてついに力尽きた。誰もいない場所で人知れず死ねる、仲間のところへいけると、最後の願いが叶うことを信じて……。
目を閉じた瞼裏には、彼の後ろ姿が鮮明に映し出されていた。
「一護……。」
二度と会えることがないであろう、その名を口にして……。
前作とはかなり設定変えます。
てか、一護をゼノスとして登場させるのも考えたりとかしてめちゃ悩んだ。