ホロライブラバーズ外伝 有り得たかもしれない未来   作:アズール

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 今回は、バットでもトゥルーでもないいわゆる、ノーマルっぽい終わり方をした世界の話。

 まぁ別の意味で愉悦できるかもしれないのでよかったら見ていってください


断罪者七夜 とある1日

  現在は夜更け、明かりの無い家は真っ暗で、真夜中にも働かなくてはならないものは、闇夜に怯えながら、仕事をしている。中世ヨーロッパみたいな建物が多く、電線や機械類の類いも見ない。故に明かりは原始的な物か、機械ではなく、魔道具で光を灯す家が多い。この中で、一際輝いている家がある。

 

 

 そこは、とある貴族の屋敷。豪華な飾りや、大きな魔道具の明かり、所謂豪邸という感じの家だろうか。そこに、とても華やかな服装で着飾った存在がいる。領主だろうか、手にはワインを持っており、優雅に窓から下を見下ろしている。

 

 「んっふっふ、私の領民(奴隷)どもよ。こんな時間まで御苦労なこった。あんなに働くなど…精が出るのぉ…ま、わしは此処でぞんぶりかえって、王に媚を売るだけで、楽なもんじゃい!」

 

 

 彼はそう言うと、グラスのワインを一気飲みする。そして、グラスを机におき、再び見下ろす。…いや、見下しているが正しいだろう。

 

 

「わしはお前らのために、この金を使うなど…あり得んなぁ…!上にたっているものは、下から搾取する。弱肉強食とは、良く言ったものよ!」

 

 

 彼はそう言うと、ベルを鳴らす。従者を呼ぶためである。彼は外に出ることはせず、一日中部屋の中で仕事をしている振りか、王にゴマをすりにいく位だ。故に、何かあればベルを鳴らして従者を呼んでいる。

 

 

 「……なんじゃ…誰も来んではないか!まったく!」

 

 

 しかし、すぐ来るはずの従者は、一向に来る気配がない。彼は、気が短く、怒りっぽい。なので直ぐに行かないと、こうやって直ぐに怒る。所謂面倒くさい上司の古典的な例だ。故に従者は飛んでくるはずなのに、今回は誰も来なかったのである。

 

 

 「此処から動きたくないしのぉ…来るまで鳴らしてやる!」

 

 

 彼はそう言うと、ベルを鳴らし続けた。そうすると、廊下から足音が聴こえてきた。

 

 

 「ようやく来たのか!遅いぞッ!何をやっているッ!」

 

 

 ドア越しに怒鳴り付けるが、一向にドアが開く気配がなく、疑問を持った。すると、再び足音が聞こえ、ドアを開ける。

 

 

 ──………

 

 

 「…!?誰だ貴様ッ!」

 

 

 ドアを開けたものは、黒い外套を身に纏い、手には、刀を持っている。

 

 

 ──あんたが、クラベリーク伯爵で間違いないか…?

 

 

 「貴様ッ!無礼だぞッ!様を付けろ、様を……ひィィ!?」

 

 

 彼がそう怒鳴たが、黒い外套を着た男が、一気に間を詰めて、首に刀の刃の方を向けて再度語り掛けてくる。

 

 

 ──あんた、状況理解できてないようだなぁ…今は俺が質問していて、あんたは俺の質問に答えるしかないんだ。ま、その反応だと、あんたはクラベリーク伯爵で間違いないな。噂通りだ…なら次の質問だ。あんたの汚職の証拠。何処にあるんだ?

 

 

 「貴様…一体、何が目的だッ!」

 

 

 貴族は、男に怯えながらも、質問する。学ばない奴とはこういうことを言うのだ。しかし、男は怒った様子もなく、逆にその質問に答えたのだ。

 

 

 ──目的…目的ねぇ…今言った通り、あんたの汚職の調査と、汚職を手伝った奴の洗いだし、あとは…ま、後は、追々分かるさ。

 

 

 「そうか!なら金をやる!それで此処は勘弁しろッ!何もなかったことにしてやるから、さっさと立ち去ってくれ!」

 

 

 彼は、金で男を釣ろうとした。所詮は、金で雇われたのだろうと、そう思ったからだ。しかし、そんな提案をしても、彼は退かずに、再び、貴族を睨み付けながら、脅す。

 

 

 ──今まではそれで逃げれただろうがなぁ…今度こそ、終わりだ!えっと、こういうの、年貢の納め時って言うんだっけ?まぁ良いや、あんたは別に、居ても居なくても、俺のやることは代わり無いからさ…

 

 

 「(バカめッ!今すぐ、このボタンを押せば、衛兵が来る。その隙に逃げて、証拠を消せば…)」

 

 

 等と、腹の中でも黒いことを考えていたら、彼が思い出したかのように、言葉を出す。

 

 

 ──おっと、伝え忘れてたが、あんたがどんなことをしても、衛兵は来ねぇぜ?道中にいた奴は気絶させたし、寝てる奴も一応起きれなくしたからな。来るのは、一般人…いや、奴隷くらいだぜ?しかも非戦闘用の、それに…こんなところ、奴隷に見られたら、どうなるんだろうなぁ…?

 

 

 貴族は、その言葉を聞くと、顔を青ざめ、体から汗という汗が吹き出てきている。理解してしまったのだ。自分はもう助からないのだと。

 

 

 ──ようやく、理解したらしいなぁ…ま、今さらだけどな。質問に答えて貰おうか。…汚職の証拠、何処にある?

 

 

 「だ、誰が言うもんかッ!わしはなんも知らんッ!言い掛かりはよせッ!」

 

 

 ──まぁ、そう言うと思った。だから、質問を変えよう。その、汚職の書類は、どの引き出しの何番めにとか、そう言うことを聞きたいんじやぁない。どの家にあるんだ?この家か?…それとも、あの貴族様には似合わない小屋か?

 

 

 男がそれを言ったら、まるで、隠していたものがバレた時のような顔をして、更に青くなった。もう少しで白くなるのではないかと言うくらい、顔から生気が無くなっている。

 

 

 ──はっ、そう言うのもバレバレなんだよ。なるほど此処には無ぇ、って事か、なら、あんたにもう用はないな。

 

 

 そう言って、男は刀を首から離し、そのまま背を向ける。

 

 

 「何だと……?逃がしてくれるのか…!?」

 

 

 貴族は、床へへたりこみ、男に疑問をぶつける。それに答えるように首だけ貴族の方へ向き、疑問に答える。

 

 

 ──まぁな、別に、殺せって言われた訳じゃねぇから、汚職の証拠探し出せって言われただけだからな。

 

 

 そう言って男は扉の方へ歩き出す。貴族は、それを見て、安堵し、そして、同時に屈辱を味わった。何故、一般の人間にここまでの事を許してしまったのか。それに気づき、もう一度、男の姿を睨む。無防備に背中を晒している姿をみて、貴族は思ってしまった。

 

 

 「(今ならば、わしのこの剣で、下賎な者を成敗できるということか!ならば…)……死ねぇぇぇぇぇい!?」

 

 

 そう言って、そのふくよかな体からは考えもしない早さで、男を襲う。しかし、男は、ふと、立ち止まり、こう呟いた。

 

 

 ──ああ、一つ忘れてたましたわ…そういや、大事なお願いをされてたんだった……

 

 

 男は先程まで、完全に無防備な背中を見せていたのに、此方に元から気づいていたかのように振り向き、手に持つ獲物で、貴族を切り捨てた。胴体袈裟斬り。綺麗にそれが決まり、貴族は血を流した。

 

 

 「がはぁ!?……ば、…バカな………何故……?殺さない、はずじゃ……?」

 

 

 

 そう言って、貴族は倒れ伏す。なにもしなければ、そのままの垂れ死ぬだろう。その貴族に対して、男は説明するように語った。

 

 

 ──おいおい、敵襲うのに殺気丸出しで、声まであげられたら、そりゃ分かるでしょ?ついでに、思い出したって言っただろ?あれな?…クラベリーク伯爵を殺して復讐してくれって奴。依頼とか関係なしに、頼まれてたからすっかり忘れてたわ。

 

 

 だから、ちょうど殺せたから、これで良いだろうさ。残念だったな。余計なことしなけりゃ、生きてたかも知れねぇのにな。

 

 

 男はそう言って、血を払い、その場を後にする。貴族はそのまま息絶え、絶命したのを確認してから。

 

 

 外に出て、敷地を後にし、外套を脱ぐ、素顔が明かされる。

 

 

 

 ──ふぅ……これで良いだろうさ。死体は…まぁ朝には見つかるだろ?それに、後はあの"白銀騎士団"がどうにかするだろうしな。俺は、さっさと部屋に戻りますか…っと。

 

 

 彼の名は魔切。権力による弾圧に負け、自身の無力さから、法で裁けない悪を裁く…断罪者。それこそが、今の彼であり、彼のそれは、完全に慈善ではなく、独善的な行動だと理解して、行動している。救い用の無い偽善者なのである。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 【白銀聖騎士団、またまた汚職を発見。元凶の汚職貴族は何者かに殺害された模様。口封じか!?】

 

 

 

 ──へぇ…まぁそうなるよな。さて、今日もちまちま働きますかぁ…

 

 

 彼は下町…城下町に住んでいる。といっても、宿屋の一室をずっと借りて、持ち家はなく、細々と生活している。決まった仕事をやらず、何処かの困った人間を助ける…所謂何でも屋をやっている。

 

 

 

 宿屋から出ようとすると、後ろから急に声をかけられる。振り向くと、その声の主は、この宿屋の店主からだった。

 

 

 

 「よう!魔切。暇なんだろ?だったらうちの手伝いしろよ!給料安いかも知れねぇがよ!」

 

 

 そう言って、ニコッと笑いかけてくる。それを見て、しまったっ!という顔をしてしまう魔切。枯れがその言葉を自分に掛けるときは、いつも、とある人物からの呼び止めがあるからだ。しかし、世話になっている以上、その言葉を無碍に出来ず、結局承諾してしまう。

 

 

 ──あー、はいはい、分かってますよ。どーせ、また騎士団長様が直々に来るってことだろ?それまで拘束時間のために、わざわざ俺を働かせてくれるとは……

 

 

 「仕方ねぇだろ?美人の言うことは、絶対!俺ァそういう質なんでね。ま、ノエルちゃんはまだ可愛いだけどな。ハッハッハ!」

 

 

 ──…それ、ノエルの前では絶対に言うなよ?じゃねぇとあのおっかないメイスが飛んで…

 

 

 「ん?何がおっかないメイス飛んでくるって?」

 

 

 魔切が冗談交じりで注意しようとするところで、急に後ろから圧が襲い掛かりながら、言葉が聞こえてくる。後ろを向くと、黒いオーラを纏ったノエルが、いかにも此方をすぐにでもミンチにする勢いの圧を出しながら、此方を見ていた。

 

 

 ─(そこまで言いきってなかっただろ…)あはは……優しくな?

 

 

 しばらく、ジト目で睨んでくるが、慣れた。みたいな反応をし、ため息を付きながら話しかける。

 

 

 「はぁ…別に今回はここを壊したくないからしないよぉ?だけどさ、今回の事でちょっと事情聴取を……ね?」

 

 

 そう言って、オーラを消しながら、宿屋の食事場で、席に座る。それに続いて、向かい側に黙って座る魔切。いかにも知らないですよ。という顔をしながら、魔切はノエルの話を聞く態勢をとる。此方から話す気はないと言わんばかりの態度で。

 

 

 「………はぁ…仕方ないね。はじめから説明するよ?今回の被害者は、クラベリーク伯爵。汚職しているって有名だったね。何回か調査に入ろうとしたけど、権力を行使されてなかなか調査に入れなかった所の1つだね。」

 

 

 ──へぇー、んで、なんで今さらそんな話を俺に?言っときますけど、騎士団長様に言えることなんて…

 

 魔切は言葉を言いきる前に、ノエルの顔を見て、黙り込む。その顔はニコニコしているが、物凄く怒った顔をしており、絶対に逆らったら容赦無しで攻撃されると思ったからである。

 

 

 「……それでね。朝、団長達が、出勤する時にさ、急に出動命令が出たんだよね。それも何回交渉しても、応じなかったあのクラベリーク伯爵の所にね。」

 

 

 ──へぇ…良かったじゃねぇか。調査に行けたんだから、それで汚職が分かったんだろ?最高じゃねぇか!流石は期待の騎士団長様。人気に答えるねぇ…?

 

 

 そう魔切が煽ると、青筋を浮かべ、いかにも直ぐに暴れだしそうな雰囲気を出し始め、周りが騒ぎ出す。それを見て、イタズラ成功みたいな顔をしてから、本題を切り出す。

 

 

 ──そんで、俺に何が聞きたい?ある意味昨日はアリバイがあるんだ。何聞いても……

 

 

 「ミリアナお嬢様から全部聞聞いたよ!依頼したって。だからそのアリバイは嘘だよ!」

 

 

 魔切がシラを切ろうとすると、ノエルが畳み掛けた。ミリアナとは、公爵家の令嬢。王家の血を引くものの家系で、極秘で暗殺やら密偵やらを担当する家系でもある。魔切は実際、そこから頼まれており、逃げることが出来なくなったのである。

 

 

 ──…ったく、なんで喋っちまうかな……仮にも極秘暗殺部隊の長かよ……

 

 

 「それで、なんで殺したの?別に殺さなくても良いって言ってたんだけど!魔切くんはなんで、"また"殺したの!!」

 

 

 ノエルが怒っているのは、殺さなくても良い人間を殺したからである。この国にも、当然法がある。罪を犯せば捕まり、罰せられる。しかし、魔切は肩をすくめ、こう話す。

 

 

 ──"法"ねぇ……それで、"あいつ"に逃げられ、立場が危なくなったのにか?それでよくマトモでいられるよな。尊敬するわ。ノエル。

 

 

 「ッ!!………」

 

 

 "あいつ"とは、過去に関わることなのでここで触れられ、思わずノエルは苦悶の表情を浮かべる。それを見てため息を付くと、魔切は謝る。

 

 ──わりぃ、忘れろ。あれはノエルは全く悪くないんだ。悪いのは…

 

 

 「魔切くんは悪くないもん!!だってあの時は!」

 

 

 ──落ち着けって!話振った俺も悪いけど、ここは公共の場だ。取りあえず、続き言いたいなら、俺の部屋でしろ。でないと、"あいつ"は何処にでもいるからな…

 

 

 魔切はそういうと、店主におことわりを入れて、部屋に戻る。そして、話の続きを始める。

 

 

 ──あの話は、ここの奴らには聞かせらんねぇからよ。わりぃな。だけど仕方ないだろ?あの時は…

 

 

 そう言って、彼は数ヶ月前の話を思い出す。彼は白銀聖騎士団の団員であった頃。ようやく馴染んできて、実績を積んでいた頃だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数ヶ月前~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──行くぜッ!蒼破刃(そうはじん)ッ!

 

 

 ギャウン………

 

 

 ──ざっとこんなもんだな。さぁて、次は何処だ。ノエル。

 

 

 

 魔物に技を当て、その魔物はたまらず絶命。城の外周警備の任務を受けて、魔切とお目付け役(という名のデート)のノエルは、順調に城の外の魔物を蹴散らしていく。

 

 

 「もう今日の外周警備はいいよ。この辺りは団長達が全部片付けたっぽいよ。お疲れ様。それでね、魔切くん。」

 

 

 ──なんだよ…折角ノエルとの初任務っていうのにさ、こんな緩いので良いのかよ?

 

 

 

 魔切は不貞腐れながら言う。それを見て、少し微笑みながら、ノエルは説明する。

 

 

 「だって、それほどここは危なくないもん。だからゆっくり出来るし、それに……」

 

 

 

 そう言うと、ノエルは魔切に近づき、そのまま後ろから抱き締めた。

 

 

 「……こういう時間だって取れるし……ね?」

 

 

 ──……ったく、職権乱用だっての。そんなことして良いのかよ、騎士団長様?

 

 

 「──今は…ノエルだよ?」

 

 

 そう言って後ろから囁かれる、照れ隠しをまさかの追撃で、魔切は思わず、顔を赤くしてしまう。それを見て満足したのか、抱擁を解除して、笑いかけてくる。

 

 

 「まだまだだね。魔切くん♪︎それじゃ詰所に戻ろっか!」

 

 

 そう言って駆け出す。そのノエルの顔も、また赤かったという。見られないよう、追い付かれないように先に駆ける。

 

 

 ──まったく、ノエルめ……ま、そこに惹かれたってのも事実だしな……誰より高潔で、綺麗な白い騎士。──白銀ノエルってか?ま、俺はアイツの隣で居れば、それで良いしな。……さて、追いかけますか!

 

 

 

 魔切が詰所に着くと、何やら騒がしい様子、どうやら、最近財政が操作知れており、横流しが発生しているとの噂があり、その原因が、マカブル公爵(ミリアナとは別の爵位持ち)の息子。ハイドンが、原因とのこと。マカブル公爵は、知らぬ存ぜぬとの一点張り。故に、捜査をお願いされたらしい。

 

 

 ──なるほどねぇ……怪しいんだろ?そのマカブルって奴も。

 

 

 「マカブル公爵様だよ。それ本人達の目の前でやらないでよね?そんなことしたら……」

 

 

 魔切は、昔から権威を奮う貴族があまり好きではなかった。騎士になったのも、ノエルと一緒に居れるからで、忠誠心や愛国心などは、まったくなかった。

 

 ──分かってるって!そんなヘマはしませんよっと!そんで、俺はどうすれば良いんだ?

 

 

 魔切がそう言うと、ノエルも暗い顔をして、状況を説明する。

 

 

 「今はね、捜査に入ることは出来ないよ。貴族は、基本王国の調査には受けないといけない義務があるけど、それがギリギリ一週間。送っていてから、返事が来るまでの時間の猶予があるの。だから…」

 

 

 ──なるほどねぇ……その間に、隠蔽工作してから返事を送っても、全然猶予があるってことなんだな。ったくこれだから、ずる賢い貴族は…

 

 

 「しかもね。伯爵以上は、忙しい場合は、その調査、捜査すら、あまり応じなくても、良いって感じで……」

 

 

 ──……なんだそりゃ……つまり、逃げられ続けるってことか!?

 

 

 「簡単に言えばそうなるかな……?」

 

 

 驚くべき事に、この貴族社会では、王族の言うことは絶対ではあるが、事あるごとに、逃げて、逃げて準備が整ったら、その命令を受諾するというふざけたことが、横行している。

 

 

 男爵や騎士爵の人間は問答無用で入れるのだが、伯爵、公爵になってくると、公務や遠征などで度々不在の場合があるため、猶予を半年まで最大延長出来るのだ。

 

 

 つまり、どれだけ疑わしくても、直ぐに調査することが不可能ということだ。

 

 

 ──なんだよ、それ!そんなんで良く国が動かせるなッ!なんで俺たちはこんなに立場が低いんだ!

 

 

 「……魔切くんは低くないじゃん……私たちより……ずっと…」

 

 

 魔切は貴族であるフルネームにすると、マキ・クルスニク・ナナヤ。暗殺部隊七夜の父とクルスニク公爵息女の息子だったのだ。継承権はないが、血は繋がっているため、純粋な平民生まれではないのだ。

 

 

 ──……すまねぇ…今のは悪かった。だけどさ、ノエル。そう落ち込むなって!

 

 

 「──団長こそごめんね?ちょっと弱気になりすぎてたかも!よーし、今は、この名前に恥じないように!頑張るぞ~!」

 

 

 ノエルはそう言うと、再び笑顔になり、団長としての仕事の処理に行った。

 

 

 ノエルはというと、代々白銀騎士団を継いできた家系で、苗字を持っている。しかし、血統としては何処までいっても平民なのだ。それによる劣等感が、たまにノエルの心の闇として、顕現する時がある。

 

 

 魔切はなるべく、身分の話をしないようにしているが、たまに許せなくて、こういう事故が起きる。なので、会話の時は毎回注意しなければならないが、今回は、まだマトモだが、酷いときは、物凄く建て直しが一日使わないと不可能な位落ち込む時もある。

 

 

 ──(ノエルのそう言うところを、分かってそれでも好きになったんだ。俺が頑張って支えていかないとな。)

 

 

 彼は胸の中でそう誓い、次の任務が来るまで、部屋で待機しようとした。振り向こうとした時、後ろから肩に手を置かれた。そちらに振り向くと、鎧を着た騎士がいた。

 

 

 「よ、お疲れ様。相変わらずお熱いことで…」

 

 

 ──なんだよ。キザール。お前だったのか!お前、見回りはどうしたんだよ。

 

 

 「こっちも終わって、部屋で休もうとしたら、目の前でラブコメ見せられてたんだよ!羨ましいぜ!うぉりゃ~!」

 

 

 ──茶化すなって!お前だって婚約者居るだろうに!

 

 

 彼の名はキザール・トーテンツ。魔切の同僚で、仲が一番良い友人である。おそらく騎士団内では、唯一心を許している存在である。今、そのキザールから絡まれ、少しだけ鬱陶しいが、心地よい友人関係を築いてると実感している魔切。絡んでいたキザールが、突然、離れ、ある提案をして来る。

 

 

 「あ、そうだ!お前、今から暇だろ!だったら下町行こうぜ!勿論、私服でだぜ?」

 

 

 ──わかった、わかったって、どうせおんなじ部屋なんだから帰ってから部屋に戻ってからでも良いだろ?

 

 

 実は、部屋割りも同じ部屋に居るので、もう親友と言っても過言ではないくらい、仲良くなっている。誤解して欲しくないのは、そこまで深い仲ではないとだけ言っておこう。(二人とも彼女持ちだぞ?)

 

 

 「それじゃ、先行ってるぜ!」

 

 

 ──まったく、落ち着きがねぇ奴だ。

 

 

 魔切はそう言って後を追いかける。平和な1日の様子だった。下町では、老人から子供まで、幅広く愛される二人。家を飛び出して、騎士になったキザール。教育ということで、家から出されて、騎士の道に行くことになった魔切。(ここは単に邪魔だったからってだけです。メイドのあくたんは激怒した。)

 

 

 騎士とは、普通は貴族などを守る存在であるが、2人は下町で育ち、下町を守る存在であった。故に、騎士になっても、この2人だけは、下町へ出てみんなの状況を知る。仕事を終わっても、下町を守る事だけは、やめられなかった。

 

 

 「キザ兄!マキ兄!おれもきしになれるかな!」

 

 

 

 「あぁ、勿論なれるさ!その心があればな!」

 

 

 「うん!がんばる!」

 

 

 ──よし、良い子だ。俺達がここに来たのは黙っておいてくれよ?じゃないとお祭り騒ぎになるからな!

 

 

 「わかった!じゃーねー」

 

 

 普通、騎士になるには、貴族しか成れない…訳ではないが、とても苦労するだろう。2人は貴族という立ち位置を使わずに、騎士になったがゆえの励ましだが、少年は、その励ましが一番嬉しくて元気に去っていった。

 

 

 「……さて、俺等は少し歩いてから帰るか!」

 

 

 ──ったく、心配性なのか気まぐれなのか…お前。俺はお前がここで住んでたなんてまったく分からなかったが、教えてくれりゃあ良いのによ!みんなさ。そうしたら俺等もっとやんちゃやってたかも知れねぇな!

 

 

 「………そうだな。俺も早く知りたかったよ。こんなに気が合うならさ!」

 

 

 ──だよな!ま、過去の事なんて置いといて、さっさと行くか!ほら、お前から言い出したんだぞ?行くぞッ!

 

 

 一瞬だけ、暗い顔をしたキザールであったが、魔切は気づかなかったのか、そのままスルーされ、安堵している。そのまま1日が過ぎ、次の日になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「魔切、すまんな。これも、俺が悪いんだ。なんとでも言ってくれ、だけど、俺の邪魔だけは……しないでくれよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──………キザール?

 

 

 何か、キザールが言ったのかと、目を覚ます魔切。隣を見ると、既にキザールの存在はなく、身体を起こし、キザールを探そうとした時、急にドアを叩く音がした。

 

 

 「魔切くん!大変。起きて!」

 

 

 ──起きてるぞ?どうしたんだよ。

 

 

 「マカブル公爵が……禁忌に手を出してたの!……今、街中に魔物が沢山居るの!」

 

 

 ──なんだって!?わかった。直ぐ行くッ!

 

 

 ノエルから、その報告を受け、直ぐに騎士の制服に着替える。戦い方で、制服が決まるので、魔切はスピードを駆使して戦う戦闘なので、金属製の物はなく、軽装で頑丈な防具をしているので、余り時間を掛けず、出撃できる。

 

 

 ──っ……はぁっ……くっ……

 

 

 全力で駆けて、街がよく見えるところまでかける。何がどうなっているか、確認するためだ。

 

 

 ──……はぁ…はぁ……──なんだよ……これ……

 

 

 目的地に着き、街を見渡すと、街中に魔物が出現し、住民は家から出られず、騎士が対応しているが、何人かやられてる姿を見える。又、住民に手を出そうとする魔物もちらほら出てきて、最早、平和とは掛け離れた状況になっている。

 

 

 ──…畜生!……そうだ…下町の所に行かねぇと!あそこは……一番危ねぇ!

 

 

 下町は、ほとんど騎士が立ち寄らず、守るのも自警団がやっていることが多い。キザールはいち早く到着しているとは、考えにくく、自分しか行かないと理解すると、魔切は下町へ向けて走り出す。

 

 

 

 数分後、下町に着くと、いつもは活気溢れている場所が閑散としており、皆、家の中へ避難しているようだった。安堵したが、逃げ遅れている人が居ないか、魔切は全力で下町を周った。辺りを探ったが、人気はなく、皆、避難していると考え、貴族街へ戻ろうとした時。1人の鎧を着た人間に出くわす。

 

 

 ──……キザール?お前が避難させてくれたのか……?

 

 

 その鎧の主は親友のキザールであり、魔切は避難させていたのは、いち早く察知して逃がしたのだと理解した。しかし、帰ってきた返答は、予想外の答えだった。

 

 

 「避難等手伝ってない。俺は、邪魔者を排除しに来ただけだ……」

 

 

 ──邪魔者……?キザール、お前何を……ッ!なにすんだ!

 

 

 戸惑う魔切に対して、有無を言わさないような感じで、魔切を槍で攻撃をするキザール。辛うじて避けるが、魔切は納得しないように話を続ける。

 

 

 

 ──どうしたんだよキザール!なんでお前がこんなこと……

 

 

 「………マカブル公爵様のため、この王国を、粛清する。改革するのだ。我ら、トーテンツ家はマカブル公爵様直属の騎士部隊を作るため、様々な環境で育つことを義務付けられ、下町で育ったに過ぎん。故に、ここに思い入れはなく、またお前は、マカブル公爵様の邪魔をなす危険因子と判断し、粛清する。」

 

 

 ──そんな……お前、本当にキザールなのかよ!俺の知ってるキザールは……ッ!くそッ!

 

 

 魔切は、親友の裏切りを知り、動揺する。一方キザールはそれに漬け込まんとして、追撃を止めない。魔切は、キザールがこんなことをする人間ではないと、思い込んでしまい、身体が鈍る。

 

 

 「フンッ!ハァッ!」

 

 

 ──っく……キザール……なんで……

 

 

 「言ったであろう?お前の知るキザールは、作り物であると、私が作った人格(ペルソナ)だ。割り切れなければ…死ぬぞ?」

 

 

 ──……うおぉぉぉ!!蒼破刃ッ!円閃牙(えんせんが)ッ!

 

 

 魔力を込めた剣撃を飛ばし、直ぐに追い討ちをかけるように、刀を回転させながら切る技を使う。

 

 

 

 「やはり、危険だ、排除する!」

 

 

 ──キザールゥゥゥ!!

 

 

 

 

 しばらく打ち合いを続けているが、既に、キザールの鎧は、ボロボロで、生身が見えた状態になっている。一方魔切は、服が少し裂けているくらいで、余り血が流れておらず、実力差と相性が分かる。

 

 

 

 「うぐっ!ここまでか……」

 

 

 ──キザール、降伏しろ、今なら独房で……

 

 

 「我が忠誠は……不滅だ!」

 

 

 ──!?おい!ま……

 

 

 魔切は、降伏を促すが、キザールにその気はなく、魔切の制止を聞かず、キザールは持っていた槍で自害する。それを見て、魔切は全力で殺しあいをしていた相手にも関わらず、側に近寄る。

 

 

 ──キザール!なにやってんだよ!何でこんなことを!

 

 

 「魔切……すまん、これは俺の家の掟なんだ。マカブル公爵に何かあれば、必ず味方になり、擁護せよ。ってさ……嫌だけど、そうしないと、生きていけないんだ。……俺、もう死んでてさ、心臓の代わりに、魔道具で生きてるんだけど、それを持っているの、マカブル公爵なんだよな。」

 

 

 ──そんな……だからって!

 

 

 「……魔切、俺さ、お前が下町(ここ)で早く会いたかったって言ってくれてさ……嬉しかったんだ。……だから、お前と戦いたくなかった。」

 

 

 キザールは、自身に置かれた状況や、心境を説明していく、魔切はそれを聞いて、涙を流すが、黙って聞くことにした。

 

 

 「だって、初めて、仲良くなってさ、他人と……それで、バカやって……本当に楽しかったんだよ……死んでるのが、嘘みたいだった……」

 

 

 治療はもうやっても不可能な傷を負いながら、キザールは話を続ける。

 

 

 

 「現実は、許してくれなくてさ、結局、命令されたんだ。……騎士団長、白銀ノエルを、殺せってさ、………無理だよ……親友の好きな奴……殺すのなんてさ……」

 

 

 ──キザール……

 

 キザールからも涙が溢れ、そして、魔切にしがみつくと、そのまま警告するように伝えてくる。

 

 

 「いいか!マカブル公爵は絶対に捕まえても、死刑以外にするなッ!その場で殺せッ!じゃないと……あいつ等は……死なないし、消えることはない!だから……あいつ等を……殺してくれ……魔切……俺からの……最後の……頼みだ……!」

 

 

 ──……わかった。だからもう、お前は休め。頑張ったな。

 

 

 キザールはその声を聞き、安心したかように微笑んだあと、力なく手が離れ、息を引き取った。魔切は、キザールの身体をゆっくりと持ち上げ、詰所に戻る。辺りの騒ぎも、ノエルにより鎮圧されており、元凶のマカブル公爵も捕らえられていた。魔切の姿を見て、駆け寄ろうとするノエルだが、キザールの姿を見て、唖然とし、魔切も涙を流しながら、ゆっくりと、キザールを埋葬した。

 

 

 

 

 

 

【マカブル公爵無罪!事故であると主張し、証拠不十分にて無罪を証明!】

 

 

 

 ──……キザールが言っていたのは……こういう事だったのか……

 

 

 「魔切くん……大丈夫?」

 

 

 ──やっぱり、貴族って奴は……

 

 

 ノエルの声も届いていない位、魔切は怒っていた。マカブル公爵は現在、屋敷でこちら、白銀聖騎士団を、起訴すると意気込んでおり、そのため、騎士団は皆、待機命令を出されていた。

 

 

 「ごめんね?魔切くんが大変なの分かるけど……」

 

 

 ──こっちこそ悪ぃな、構ってやれなくて。

 

 

 魔切はノエルの声を聞き苛立ちを顔から消し、にこやかに笑う。そして、暫くして、急に魔切が、ポツリとノエルに質問する。

 

 

 

 ……ノエル、法で裁けない悪ってさ、お前ならどうする?

 

 

 「……どうも出来ないかも、だって法が絶対なのに、それで裁けないなら、どうしようもないよ……」

 

 

 ──そっか、そうだよな……

 

 

 魔切の問いに真剣に答えるノエル。魔切は、納得したかように頷く。

 

 

 

 

 

 

 数日後、魔切は、騎士団を辞め、姿を消す。その次の日に、マカブル公爵が、遺体となって発見される。裁判の前日の話である。又、マカブル公爵家から、革命のための計画書や、前日の事件の計画書も見つかり、白銀聖騎士団は、無実となり、マカブル公爵の遺体は反逆者の名の元に燃やされた。

 

 

 

 ──これで良いんだ。キザール。俺は、騎士を止めちまったよ。お前と、一緒に、上へ駆けようって言ったけど、俺は、俺なりの正義を、見つけたから、法で裁けない悪は………俺が、断罪する。だから、お前も見守ってくれよ?間違ってるのは俺だが、もう、止まれねぇから。

 

 

 魔切は、この日から、断罪者として生きていくことを決意。ノエルには暫く黙っていたが、とある日に見つかり、泣きつかれ、今の関係になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在~

 

 

 

 

 ──下町の奴らには、キザールは昇格してお城に行ったって言っちまったんだ。辞めたのは、ちょっと騎士は合わなくなったって冗談混じりで言っちまったし、不自然なことあんまり言うなよ?じゃねぇと心配かけちまうからな。

 

 

 「団長の事は心配掛けまくったのに?」

 

 

 上目遣いで睨まれ、たじろぐ魔切。それを見て、元気が出たのか、少し笑顔になり、甘えるように抱きつく。

 

 

 「………もう、居なくならないでね、魔切くん」

 

 

 ──ノエル……

 

 

 「よし!そろそろ戻らないと、でもね!もう殺しちゃ駄目だよ!また殺したら、今度こそ許さないから!」

 

 

 そう言って、離れると、ドアの方に行きながらノエルが叱ってくる。

 

 

 ──…それは約束できねぇな!俺のやることは変わりねぇからな!

 

 

 2人は暫く見つめ合い、少し笑い合い、お互いの居場所へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 この世界は、お互いの事を、今一度踏み切れず、幸せとは程遠い普通の世界。二度と動かない世界が、時の刻みを歪ませるのはもう少しあとの話である。

 

 

 




 あくたんは激怒した、必ず、かの邪智暴虐な領主に抗議しようと決心した。あくたんには相続争いなど分からぬ。あくたんは魔切のメイドだ。家事はあんまり出来ないし、ドジをする。しかし、人一倍、忠誠心が強かった。


 等ととある構文使いましたが、これ下手したらあくたんルートってのが怖いですねぇ……あ、本編(この話)ではまったく影も形もないんですけどね。
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