運営が本気でメイプルを潰しにきたようです   作:名無しの固有名詞

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サクサク進めて行きましょう。


邂逅

 

 

 

〈メンテナンスの少し前〉

 

 

 

「さて、レベルもなかなか上がってきたところだしそろそろ作戦の二段回目まで移りたい。」

 

 

第一段階目は、まずはプレイヤーとして強くなること。ある程度のレベルが無ければ、上からの仕事をこなせない。そのために、多くの時間を費やしてレベル上げを黙々とこなし、既に28まで上がっていた。

 

 

第二段回目は、実際のゲームバランスの確認だ。第一回イベントで情報は把握できているもそれは一部に過ぎない。まだまだ隠し技を持っている可能性だって捨てきれないのだ。

 

 

「一番何か隠し持ってそうなのは、やっぱり…」

 

 

 

~~~

 

 

 

「噂だと最近はここにいることが多いらしい。地底湖とは、なかなかマイナーなところを選ぶなぁ。」

 

 

地底湖、文字通りの湖で基本誰かが立ち入らないような場所だ。掲示板などでもただの釣りスポットのようになってしまっている。誰も湖の底のダンジョンを知らずに。

 

 

「それを見つけられたらそれはそれで…いや、あれは問題ないか。」

 

防御極振りのメイプルにはどうやっても攻略できない、それがこのダンジョンだ。杞憂だった。

 

 

 

 

「いや、それじゃ逆に一体何の目的でここに?」

 

 

一つの疑問が浮かぶ。素材集めだとしても、ここよりももっと効率の良い場所なんてザラにあるし、釣りも然程成功しないだろう。それでは何の徳があるのだろうか?

 

 

「まあいいか、それより仕事をしないとだ。」

 

 

そう切り替えると、運営本部から届いた薬を飲む。すると、ワーカーの姿はみるみると変わり、角が生え、身体は黒く染まり、刺々しい人型のモンスターになる。一見悪魔にでも見えるだろう。

 

 

 

「やはり、一人のようか。なら都合が良い。【跳躍】」

 

その声はいつもより一層低く、ノイズ混じりになっていた。それはさておき、ワーカーは高く跳び、地底湖へ進んだ。

 

 

そこにいたのは地底湖の近くを何かを待っているように、我慢できず歩き回っているメイプルだった。

 

 

「わっ、なになに!?」

 

 

メイプルの眼前に着地したワーカー。その衝撃でメイプルは後ろに尻餅をついた。

 

 

「………」

 

 

ワーカーは何も発さず、尖った左手の爪をメイプルに向けて大きく切り裂く。

 

「【悪食】」

 

咄嗟に大盾で防ぐ。すると、【悪食】が発動し爪がえぐり取られる。ワーカーは思わず怯み、後退した。

 

 

「今のうちに、【毒竜】!」

 

 

戦闘態勢が整ったメイプルは新月をワーカーに向け、三つ首の猛毒でできた竜がワーカーを襲う。

 

 

「………」

 

 

しかし、メイプルの前に立っていたのは姿形が変わらないワーカーだった。ワーカーには状態異常無効により毒無効を所有している。

 

 

「え、どういうこと」

 

 

「ファストインパクト」

 

 

次の瞬間、メイプルに急接近し大盾ごと殴り飛ばす。【悪食】は発動したものの、スピードで誤魔化せたようだ。メイプルは壁に勢いよくぶつかったが

 

 

(煙で見えないが、やったか?)

 

 

「【毒竜】!」

 

 

 

「!?」

 

砂埃を起こした場所から空を切り毒竜がワーカーを襲う。毒耐性のあるワーカーに毒自体は効かないが毒竜自体の衝撃も無効化できるわけではない。ワーカーのHPゲージが削れていく。

 

 

「危なかった、それよりサリーを見つけなきゃ」

 

 

 

 

 

 

〈地底湖の隠し部屋〉

 

 

「時間切れ、か。全く、酷いもんだ。」

 

 

元の姿に戻ったワーカーは形こそ整えど痛みの残った左手を触りながら座り込んでいた。

 

 

「やっぱり【悪食】は弱体化決定だ。【毒竜】に関してもいささか火力が高すぎる。少し抑えてもらうか。」

 

 

ワーカーが今回、メイプルを強襲した理由は力試しだった。因みに、戦闘前に飲んだ薬はステータスと姿を変化させるためのものであり、目安レベルは40だった。

 

 

「二倍くらいのレベルに互角、いやそれ以上になるなんてこのゲームかなりスキル依存だな。」

 

 

運営側としてはそこまでスキル贔屓にしたつもりはなかったのだがここも調整は必要そうである。

 

 

 

 

「さっさと報告の方を済ますか。」

 

 

 

 

「あれ、メイプルじゃない。お兄さんは誰?」

 

 

後ろから声が聞こえた。振り返るとそこにいたのは地底湖のユニーク装備を身につけた少女だった。

 

 

「ただのプレイヤーさ。人でも探しているのかな?」

 

 

「はい、友達を探しているですけど迷っちゃって。お兄さんはここの出口わかりますか?」

 

 

 

「うん、わかるよ。確かこっちだったはず」

 

 

どうやらメイプルの友達のようだ。親切心で頭に叩き入れた脳内マップを頼りに歩き進める。しかし、出口だったはずの場所が消えていた。おそらく、先ほどの衝撃のせいで本来の出口が壊されたのだろう。

 

 

(しょうがない、裏道を使うか。)

 

 

「私、サリーって言います。お兄さんは?」

 

 

「ワーカー、よろしく。」

 

 

ワーカーは杖を取り出し

 

 

「ちょっと下がってて。【真空波】」

 

 

杖から放たれた空気は壁を突き破り、外へとつながる小道を見つけた。

 

 

「ここを真っ直ぐ進めばここから出られるよ。お友達にも連絡とって外に出るように言えばきっと会えると思う。」

 

 

「はい、ありがとうございます。」

 

 

サリーは礼儀良く頭を下げると颯爽と出口へ向かった。

 

 

「さて、もう少し仕事していくか。」

 

ワーカーは戻って修復作業に移るのだった。

 

 

 

「それにしても、さっきの子もユニーク装備だった。メイプルとも友達だそうだし、一応注意はしておくべきか。」

 

 

ユニーク装備を持っているにも関わらず第一回イベントで見かけなかったということは、つい最近急激に強くなったか、イベントに参加していなかったかの二択だ。

 

 

「どっちでも嫌だ。運営に優しいプレイヤーでありますように」

 

 

この祈りが無駄だったということをワーカーや運営が知るのは第二回イベントなのだがそれはまた違う話。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「【ファイアボール】 ここのダンジョンも異常なしと」

 

 

ダンジョンを抜け出すと聞き覚えのある通知音が鳴る。第二回イベントが三日後と迫っている中、ワーカーに一通のメールが届いたのだ。それは、運営からの活動方針のようである。

 

 

 

「自由に取れる時間は…丸々二日か。」

 

 

七日間あるイベントの内、五日間はバグ検査や情報収集に当たり、残りの二日間は自由に行動していいそうだ。

 

 

「いつ休もうか?」

 

 

イベントは七日間とかなり長い。そのうち一番重要そうなのは

 

 

「初日は空けるか。スタートは肝心だ。」

 

 

第二回イベントの詳細は既に発表されており、メダルは総計300枚と定数である。ダンジョンに潜るにしろ、探索で見つけるにしろ、早いもの勝ちなのだ。よって、初日にいかに稼げるかが重要である。

 

 

「で、もう一つは」

 

 

そのまま続けられる二日目か、最後の挽回ができる最終日か。普通はその二択だろう。

 

 

「六日目にするか。」

 

 

本人曰く、七日目は仕事に入るべきだと考えたそうで楽しみは最後にとっておきたいそうだ。

 

 

「世紀末みたいにプレイヤー同士のバトルが見れそうだ。」

 

 

自分がその場に立つであろうことを忘れ、スポーツ観戦のようなワクワク感を抱く。実際、第一回イベントのバトルもなかなかに見応えのあるものだった。可哀想なことに、それよりもメイプルの暴走で考えられなかったのだが。

 

 

 

「詳しいことはどうせ当日にならないとわからないみたいだし、レベル上げでもするか。」

 

 

時間外労働でもきっちり働くワーカーであった。

 

 




次回、第二回イベント入ります。
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