雪だるまのような少女は、真白い肌と銀の髪をしていた。噂に聞くブルーグラードの人々がそうだと聞くが、実に幻想的な姿だ。今少し年が近ければ、何か起こす気になったかも知れないが……
「私は
「分かりません……無我夢中で」
「そうか。まぁ気長に探すとしよう。君が倒れていた方角に進めば、何かあるかも知れない」
少女の手を取り、歩き始める。
先程の連中……竜人と表現すべきだろう。フラッシング・ソーサーの際の感触では、かなりの硬度を持っていた。しかも小宇宙は
あれほどの存在が徒党を組んでいるのなら、極めて厄介だ。
聖闘士のような神の戦士は意外に多い。
先代
果たして俺の手に負える集団だろうか……しかし、聖域は聖闘士に余裕が無い。決して負けてはならないのだ。そして、俺は足を止めた。
「出てきたらどうだ。そこまで暑苦しければ、感じるまでもなく分かる」
「へっへぇ。ではお言葉に甘えて……」
炎が前方に向かって飛び込んでくる。雪は溶け、周囲は熱を帯びる。先程の竜人達と似ているが、全身が聖衣にも似た鱗で覆われ、炎を纏っている。
「わたくしはぁ……ラミャのプラーミア。先程のお手並みは見事でしたねぇ……わたくし達の面目は丸つぶれです」
「お前が首領……というわけでは無さそうだな」
前かがみで手を半ばだらりとさせた様はどこか滑稽で、情けなくも見える。だが、違う。この男は強者だ。感じる小宇宙も相当なものであった。
「ズメイ……」
背にかばう銀の少女が呆然とつぶやいた。ズメイ……確か北から東欧や中欧にかけて、ドラゴンという意味の言葉だ。
「そう。わたくしはズメイの一人。偉大なるアジュダヤ様に仕える一人の闘士でございますぅ。探しましたよ、今代のスネグーラチカ」
「え!?」
「……この子が雪娘?」
スネグーラチカは北の伝承に登場するジェド・マロースの孫娘とされている。一方で、雪原に放り出された娘に問いかけをするともされているが、一体このズメイ達と何の関係性があるのか。
「何か事情がありそうだが、私がやることは変わらん。お前たちを倒し、生き残った村人を守る! 銀の車輪を味わえ! フラッシング・ソーサー!」
腰の
「へへぇ。
防がれた衝撃と相手の口上に油断していた。プラーミアの炎が勢いを増していく。
「それではぁ、今度はこちらから参ります。パジャールグースリ!」
プラーミアの鱗から熱線とでも言うのか、炎が線状になって放たれる。単純だが、線の数々がこちらの逃げ場を防ぐかのように飛び散る様は圧巻。
「くぉぉぉお!? ローリング・ソーサー!」
自身は小宇宙を高め、ソーサーをスネグーラチカという少女の周囲で回転させる。避けそこねて一撃をもらったが、幸い少女は無事だったようだ。
「ふむふむぅ。あなた様は実に奇妙だ。攻撃は白銀を遥かに超えているが、肉体は実に脆い。ははぁ……黄金聖闘士候補生で、聖衣から認められなかったわけですかなぁ?」
「……なんだと?」
それは事実だった。聖闘士でありながら、痛痒と後悔、そして怒りがこみ上げてきた。どれだけ己を高めても、どの黄金聖衣も私とは共鳴しなかった。
自分に何の資格が足りないのか! 教皇のシオン様など牡羊座の聖衣から呼ばれて黄金聖闘士になったというのに!
そんな胸中を知らずに敵は舌を回転させる。
「もうお察しの通り、わたくしはこう見えて事情通でしてねぇ。黄金に匹敵する闘士がいることは存じあげておりますよ。先代
何かが切れる音がした。体面など知らぬとばかりに、小宇宙を攻撃的に燃やす。
「随分と聖域に詳しいようだ。なら知っているだろう? 私はぁ……テネオ様からも師事を受けているのだ!」
小宇宙を凝縮して光弾のように放つ。プラーミアは余裕顔でそれを避けるが、もはや関係ない。
「メンカリナン・ノヴァ!」
放った光球が滞空し、雷撃のように降り注ぐ。テネオ様のプレアデスノヴァと同原理の技。テネオ様はここから地面に対する技へと繋げるが、その必要は無かった。
「ああぁ、大地に血が……」
鱗を残したまま、プラーミアが燃え尽きた。その姿こそ竜の姿に見えた。
テネオ様良い…