秋川やよいさんが推しです   作:スーパータヌキ

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 5話

 ある時、突然理事長に呼び出された。あまりにも突然だったので何かやらかしてしまったのかと焦ったがそんな事はなかった。

 理事長曰く、俺のトレーナーとしてのスキルを見たいらしい。

 

 この2年で俺のトレーナーとしての力がどれだけついたか調べるテストみたいなもんだ。にしても本当に突然だ。いきなり大声で呼び出された時は心臓が飛び出るかと思った。理事長は話し方も独特だし、どう見てもロリなのに威厳がすげえからよくわからない。トレセンにはよくわからないのが多いように感じる。この前も食堂で大盛りライスを何杯も食べていたウマ娘がいた。あまりにも量が多いのでちょっと引いた。

 

「では取柄菜さん、今からあるウマ娘に1キロ走ってもらうのでそのウマ娘の改善点を持っている紙に書いていってください」

 

 理事長の秘書のたづなさんからそう言われ、試験が始まった。

 早速ウマ娘が走る準備を始めたのだが、何だか見たことがあると思ったらあれメジロパーマーかな? 

 

 彼女はまだトレーナーになったばかりの頃にトレセン内を案内してくれた恩人だ。あっいや、恩ウマ娘かな? 

 

 早速走り始めたのだがきれいなフォームで走るなぁ。すげえ腕ピンとしてるし、今までその走りでトレーニングをしていたからなのだろうか、走る姿からは自信すら見える。問題はない筈なのだが……

 

(なんか、なんだろう、姿勢が良すぎるせいかな? すっげえ違和感を感じるんだけど)

 

 胸の中にある違和感はとりあえず放っておこう。今は試験だ。試験に集中せねば。とは言っても改善点なんてものはないんだけどさ。

 あの走り方が彼女にはあってるみたいだし、下手に走り方を変えさせれば返って遅くなることだってありえる。

 

「改善点はなしっと、はいたづなさん、終わりました」

 

「はい! 試験は終わりです。お疲れさまでした」

 

 ああ緊張した。やはりいくつになっても試験はつらい。もう二度とやりたくない。もう凄い疲れたから家帰って寝たい。布団に潜り込みたい。冷房をガンガンにつけて冬用の布団に潜りながらスマホゲーでもやりたい。そんな事を考えていると、

 

「慰労っ!! 突然試験をさせてしまってすまないっ!!」

 

 理事長が話しかけてきた。あんまり話す機会もないし、何より話すことがない。あとちょっと怖い。年下に怖がるのは少し情けないかもしれないが、なんでだろうか、すごく怖い。

 

「あっいえ大丈夫ですよ失礼しますぅ」

 

「せっかくのいい機会だ! 少し話でもしないかっ!?」

 

 ああいいえって答えたい。多分話が続かなくてお互い気まずくなるだけだろうし、今すぐ断ってしまいたい。だがそんな事できるわけがない。いくら理事長と言えど相手は年下。子供とも言える年だ。そんな彼女の頼みを断れば子供の頼みも聞けない薄情者だと多くの人々から思われてしまうかもしれない。来年はURAがあるし、ここで悪目立ちする訳にはいかないのだ。

 

「あっいいですよ、飲み物でも買ってきましょうか?」

 

「私は大丈夫だっ!!」

 

「あっはい」

 

 結局理事長との話が始まったのだが、向こうが気を使ってくれたのか、質問をたくさんしてくれたのでかなり話しやすかった。だが一時間くらい経ったある時、事務作業をしていたたづなさんから電話がかかってきた。どうやらゴルシと他のウマ娘が口論になっているらしい。ゴルシが激怒しているので止めに行ってほしいとのことだ。

 

 ゴルシは文句は言うが、めったに怒らない。空腹のゴルシの目の前で大食いとかしない限りゴルシは激怒することはないだろう。一体どうしたのだろうか。何となく嫌な予感がしたので急いでゴルシの元へ走ることにした。

 

 

 ∼∼∼∼

 

 アタシは激怒していた。自分でもここまで激怒できるなんて知らなかった。それくらいにはキレていた。きっかけはアタシが自主練に励んでいた時だった。何故かよくわからんウマ娘が練習の邪魔をしてきたのだ。仕方ないので休むことにしたのだが、そしたら突然アタシの悪口を言い始めやがったのだ。それだけでもゴルシちゃんのイライラメーターが爆発しかけたのに、アタシが無視し続けていたらアタシではなくトレーナーの悪口を言い始めたのだ。老けているだの、凡人だの、早く死ねばいいだの、言いたい放題言ってくれやがった。ここでアタシは我慢の限界がきたんだ。

 

 こんな初対面のやつにいきなり嫌がらせを始めるような奴にあいつの何がわかるっていうんだ? 

 あいつはいつだってアタシの事を考えてくれている。風邪をひいた時も、赤点を取りかけた時も、前方伸身宙返り3回半ひねりをしようとして手首を痛めた時だって、アタシの為に色んな事をしてくれた。第二の親と言っていいくらい色んな事をしてくれたんだ。

 そんなあいつを馬鹿にした事によってアタシはブチギレてしまったんだ。

 

 何分か大声で怒鳴っても全然苛立ちがおさえられなくて、遂に手を出しそうになった時にあいつがどこか悲しそうな顔でやってきたんだ。

 

 ∼∼∼∼

 

 ゴルシがいるトレーニング場についたとき真っ先に聞こえたのがゴルシの怒鳴り声だった。めちゃんこキレてる。やべえ急いで止めないと相手殺される。ゴルシのマジのドロップキックくらったら相手死んじゃう。えっ? お前マジではないけどドロップキックくらってたのに怪我1つしてねえじゃねえか、だって? 俺は頑丈なのさ! 後日検査したら骨にひび入ってたけど俺は頑丈なのさ! 異論は認める。

 

 とにかくゴルシが手を出す前に早く止めに行かねば。

 

「おいゴルシ!! もうやめろ!」

 

「っ!! 取り柄なし!?」

 

「であいがしらにそれか!! 泣くぞ!! で、一体どうしたんだ?」

 

「ああ実はこいつが『こいつがあなたの悪口を言っていたので止めたらキレ始めたんです!!』

 

「!?!?」

 

「この娘、あなたの事早く死ねとか老けてるとか言ってましたよ!」

 

「…………」

 

「はあっ!? てめえが言ったんだろうが!! 何言ってやがんだ!」

 

「ほらこんなふうに!! トレーナーさん、信じてください!!」

 

 なんですかこのモブウマは、嘘つくの下手すぎんだろ。もっとつくならうまくやりなさいよ。涙目にしてるつもりなんだろうができてないよ。全体的に下手くそなのよまじで。俺のほうが上手くできる自信があるぜ! えっ? その自信はどこからくるんだこの取り柄なし、だって? ほっとけ。後取り柄なしとか言うなよ。

 

「まあ、うん、信じるよ」

 

「っ!!! トレーナー、お前……」

 

「ゴルシを」

 

「「えっ?」」

 

「いやさ? 一応俺2年こいつといたのよ? ゴルシがやる事とやらない事くらいならわかるよ」

 

「トレーナー……」

 

「それで? 一体誰に差し向けられたのかな名も知らぬウマ娘さん?」

 

 おっと? 今の俺ちょっとかっこよくなかったかな? よくある漫画の強キャラっぽくなかった? 取り柄あるんじゃあないかな? 取り柄なしとかこれから言えないよゴルシくん? 

 

「ッッッ!!」

 

「あっ逃げた」

 

「肝心なとこでやっぱしだせえとこ見せてくるよな取り柄なし」

 

「てめえはやっぱり言うのな? いい加減泣きそうなんだけど」

 

「だけど、まぁ、さっきは少し、かっこよかったぜ」

 

「ゴルシが褒めたっ!? ありえないっ!!」

 

「なんでだよ」

 

 ゴルシが褒めたのは少し意外だな。まぁ嬉しいけどさ? この流れで取り柄なしって言うのもやめてほしいな? 

 だけど本当にさっきのウマ娘は何だったんだろうか。なんか俺とゴルシの仲を悪くするように仕向けてたけど。

 とりあえずゴルシにはよく注意をしておこう。なんか嫌な予感もするしね。

 

 ていうかさっきからゴルシの顔が若干赤いんだが、まだきれてんのか? 焼肉奢ったら機嫌良くなるかな? ウマ娘食う量半端ないからしばらくもやし生活になるが問題はないね! えっ? 泣くな、だって? 泣かせてください。

 

 結局この事件の真実はわからないまま一年が経った。

 

 今思えば、あの時もう少し調べていたほうが良かったと思う。

 

 本当に、そう思う。




メインヒロインやよいさんなのに過去編だから全く出せてないなあ。 

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