「結論っっっっ!!! 私は、取柄菜くんの事を好きなようだっっっっ!!」
「はいはい、それもう今日で8回目ですよ理事長?」
季節は春、このトレセン学園の理事長である秋川やよいは自室であり、理事長室でもある一つの部屋でそう叫んでいた。
叫ぶのは一人の男に対する真っ直ぐな思い。だが、一頻り叫ぶとその少女は少し俯きながら
「しかし……絶望っっっ……私と彼とでは年が離れすぎているのだ……」
そう、この少女でありこの学園の理事長でもある秋川やよいはまだ少女と言って差し支えない程幼いのだ。ぶっちゃけ幼すぎるのだ。
彼女を始めて知った人々は皆、憲法はどうしただのこれありなのかなどと言っているが、まぁ大丈夫なのだ。出張とか行かされてる辺り大丈夫なのだ。
そして彼女の叫びを聞いている人物が一人、駿川たづなである。
彼女はこの理事長の秘書であり、この学園でウマ娘達を指導しているトレーナー達を支えている人物である。
そんな彼女はなんと全速力のウマ娘に追い付くことができるのだ。
その為、彼女はウマ娘なのでは? とか実は筋肉ムキムキとか噂があったりなかったりしているがともかくすごい秘書なのだ。
「どうしたら取柄菜くんとの関係を進展出来るんだっっっ! たづなぁっっっ!!」
「叫ばないでください。聞こえてしまいますよ?」
「う、むう…………」
すぐに指摘され俯く少女を見て、たづなはどうすべきか迷っていた。
というのも、たづなは知っていたのだ。取柄菜というトレーナーがこの秋川やよいという少女に恋愛の感情を抱いているという事を。
だが、この二人をくっつける訳にはいかない。色々とアウトなのだ。年とか立場とか色々とあるからだ。この事実が世間に広まれば、トレセン学園の信用を失いかねないのである。
だが、たづなは一人の女性としてこの恋が上手く行ってほしいとも考えていた。故に迷っていた。
「取柄菜くんはかっこいいじゃないか!! そんな彼と色んな所へ行ってみたいんだこの気持ちがわかるかたづな!!!」
「だから叫ばないでくださいって、具体的に何処へ行ってみたいんです?」
「…………山?」
「ほんっとにお似合いですね……」
「ん?? なんか言ったかたづな?」
「いえ何でも、それにしてもですよ理事長、この忙しい時に何を言っているんですか? 今後の予定は盛り沢山なんですから、しっかりしてくれないと……」
「しっかりしているだろう!!!」
「してないから言ってるんですよ?」
若干口論になりつつある中、たづなは遂に一歩踏み出す事を決意した。
「自分から会いに行ってみたらいかがですか? そうすれば何か進展があるかもしれませんし……」
「成程!! では早速いってくるっっっっ!!!」
「あっっっ!!! ちょっと待って下さい!! せめて会議までには帰ってきてくださいよ!!」
だがたづなのその声は届くことはなかった。何故なら少女は物凄い勢いで走って行ってしまったからである。
一人ポツンと残されたたづなは僅かに溜息をついたあと、机に置いてある資料を取った。
そこにある資料はとあるウマ娘のデータと一人の女性の情報。
「アオハル杯復活の直前にここに理事長代理として来るなんて……樫本さんは一体……」
これから何かが始まるのではと思いながら、たづなは少女の後を追うのだった。
〜〜〜〜
取柄菜はその時、僅かに焦っていた。というのも自らに課せられた仕事があまりにも多すぎたからだ。
自らの担当ウマ娘のゴールドシップの健康状況や成績等をまとめた報告書や、今後体験に来ると言っているゴールドシチーの為の下準備などやるべき事が山積みになっていたのだ。
朝からぶっ通しで仕事に取り組んでいたのだが、他のトレーナーからの頼みなどを快く引き受けていた結果、あっという間に夕方になっていた。
結局家に帰っても仕事をしなければいけなくなり、若干肩を落としながら歩いていると、
(……ん? あんなウマ娘いたかな?)
小柄で緑色の目を持った今まで見たことのないウマ娘が歩いていた。
転校してきたのかと思いながら通り過ぎると、
(…………っっ!!!?)
通り過ぎるだけで分かるほどの、通り過ぎただけで身震いがするほどの覇気を感じ、驚愕する。ポテンシャルはゴールドシップクラスだと一瞬にして悟ってしまった。
(おいおいおい……! 何でこんなにえげつない実力持ってんのに何で今までマークしてこなかったんだ俺は……!?)
取柄菜は自分自身の不甲斐なさに若干失望しかけながら、敵になって欲しくないとそう思いながら帰路につくのだった。
本当はやよいさんと海へ行く内容になる筈だったのですが、データが吹っ飛んでしまった為、今回は内容を変更する事にしました。楽しみにしていた方には本当に申し訳ないです。
ここから話の流れは、
ゴールドシチー編に3話
アオハル杯編に5〜8話
にする予定です。
続編読みたいですか?
-
はい
-
いいえ