メタル&スラッグ   作:あおい安室

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Mission2:黒森峰女学園

 最初に眼鏡の女性が訪れたのは10万人以上の人口を誇る超大型学園艦、黒森峰女学園。戦車道の名門でもあると共に西住流の影響を強く受けているそこを眼鏡の女性は最初に訪れることにした。

 

「なるほど。事情は分かりました」

 

 出迎えてくれたのは戦車道部で隊長を務めている学生、西住まほ。西住しほの実の娘である彼女の目つきは母親同様に険しく、一瞬怯えたのは内緒である。そんな彼女にメタルスラッグのプレゼンをするべく、学園の演習場の片隅を借りて現物の前で話し合っていた。

 

「そ、それで、現物がこちらになるんですけど……どうですか?」

 

「砲や機銃サイズが車体にしては妙に大きくて変わったデザインだな、とは思いますが今のところはそれくらいです。というのもそちらから機体スペックの正式な資料がないのが原因なのですが」

 

「え、えーっと……人事部にこの仕事をして来いと言われた時に資料をもらえてなくて、私も実は詳しいスペックがよくわかってないといいますか……現場でも大体そんな感じで使ってたし」

 

「え?」

 

「あはは、なんでもないです。平気です、大丈夫です!」

 

 何が大丈夫なんだろうか、と首をかしげる彼女に申し訳なさを感じる。次の学校を訪れる時には後で技術部に資料請求しておかなければ。冷や汗をかいていると、メタルスラッグの上部ハッチが開いて白みを帯びた髪の学生が顔を出した。

 

「隊長!操縦系の確認は終わりました。大体は既存の戦車と変わりないですし、ある程度戦車道を嗜んでいる学生なら十分操縦できるかと」

 

「ありがとう、エリカ。資料に記載されていた一人乗りというのは事実か?」

 

「内部には大分余裕がありますから無理をすれば三人程は搭乗できるとは思いますが、操縦系統や通信系は全て一人で行えるようにされていて座席も一つしか見当たりません。事実です」

 

 そう答える彼女は副隊長の逸見エリカ。メタルスラッグ内部をチェックしてくれていたのだ。

 

「よくわかった。動かすのに必要な人員が最低一人ではなく、元々一人で動かすことを前提に設計されているのか?練習で使うとしても、通信主か戦車長用の副座席が欲しいところだな」

 

「わかりました。後で本社に掛け合ってみますね」

 

「お願いします。エリカ、このまま砲撃に入って有効射程を調べてくれ。まずは榴弾砲からだ」

 

 さっ、と敬礼するとエリカさんはメタルスラッグの内部へ戻って操縦する。少し距離を取って所定の位置につくと、訓練場にいくつかの的が出現した。それを狙ってメタルスラッグは榴弾砲を放ち始めた。

 

「……ふむ。射程は思ったよりも短めだな」

 

 が。砲弾は的の少し手前に落ちてばかりだった。

 

「メタルスラッグはどちらかと言えば近距離攻撃に念頭を置いていまして、射程距離は短いんです。とはいえ、曲射砲撃なのでもう少し砲台を上に向けて山なりに充てることを意識すれば当たるかと」

 

「了解です。エリカ――」

 

 まほさんが通信機越しに指示を飛ばす。それを聞いてからはそれなりに命中するようにはなった。

 

「主砲の射程はまずまずね。エリカ、次はバルカンを使ってみてくれ」

 

 主砲の後ろに備えた二門のバルカンを撃ち始めるメタルスラッグ。その姿にまほさんはほう、と驚いた様子を見せた。

 

「すごいですね、流石近代兵器というべきでしょうか。射程距離や連射速度もかなりあるように見えますが」

 

「ぶっちゃけ射程が微妙な主砲よりも弾数に余裕があるあっちの方がメタルスラッグのメインウェポンですね」

 

「……主砲よりも副兵装の方が強いというのはある意味欠陥戦車では?」

 

 ぐうの音も出ません。

 

「そういえば、装填はどうなっているのですか?」

 

「自動装填装置があるので装填手は不要です。一応手動でも行えるようにはなっていますけど、多分そっちの機能は戦車道では使わないんじゃないかなって」

 

「……いや、自動装填装置は戦車道に用いる戦車には大抵装備されていないから本来は使わない装備なんですが」

 

「でも、メタルスラッグの手動装填機能ってアーマーピアサーを拾った時の交換用なんですよ?」

 

「アーマーピアサー?」

 

「いわゆる徹甲弾です。直線状に発射されるためメタルスラッグの射程を上げる有効な装備なんですけど火力が高すぎまして。会社の試験では敵戦車を特殊カーボン装甲材で覆われた乗員室ごと貫いてたかな」

 

 戦車道は乗員保護のためにわざわざ特殊な装甲で乗員室を保護するというのに、それすら破壊するのは流石に不味いだろう、と上層部も気づいていたようで、戦車道用の装備から外れていた。

 

「えっ……そ、その。乗務員の方は無事だったので?」

 

「……多分無事です?」

 

「すぐに整備員を呼びます。エリカ、テストは中止だ。装備されている弾薬を全てチェックするぞ」

 

 その後。搭載されていた弾薬の中にアーマーピアサーが紛れていたことが発覚。御社の戦車には安全性が確認されていないため導入は見送る、という結論に達してしまいましたとさ。

 

「うちの会社……人事部だけじゃなくて整備部も問題あるんですかぁ……」

 

「申し訳ありません。ですが、一言言わせていただいてもよろしいでしょうか」

 

「なんでしょう?」

 

「豆戦車をまともに採用していない我が校に売り込むのも問題では?」

 

 反論できません。せめてもの協力として、操作説明マニュアル作成に協力してもらえたのが救いです。その過程で発覚したいくつかの機能にドン引きされましたけども。

 




・アーマーピアサー
 主砲の弾が直進して敵を貫通性質を持つようになる。これで倒したときだけの専用演出がある敵もいたり。基本的に放物線を描いて落ちるメタルスラッグにとっては射程を伸ばすこともできる有効な装備……なのだが、最近のゲームには出てなかったりする悲しみの装備。
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