メタル&スラッグ   作:あおい安室

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Mission3:アンツィオ高校

「で。うちに戦車を売り込みに来たと」

 

「はい。豆戦車を採用している強豪校としてまほさんからアンツィオ高校を紹介されまして」

 

「強豪!?そ、そうか……そこまで評価されていたとはな」

 

 うんうん、と嬉しそうに頷く少女はアンチョビさん。かつて衰退しつつあったアンツィオ高校の戦車道を見事に再建した彼女のことをまほさんも高く評価していたのだ。ただし、学校そのものが財政難かつということもあって戦車のランクは一段下。

 故に豆戦車もここでは一線級の戦力という悲しい事情もあるそうで……正直、うちの会社も今でこそ安定してるけど昔はアレだったからあんまり人のことも言えないかも。

 

『ヒャッホー!気持ちいいっスーー!!』

 

「おい、ペパロニ!一応借り物なんだから無茶な運転して壊すなよ!!」

 

『わかってますって!そーれ、もうひとっ走り!!』

 

「あいつめ……その、すみません。わざわざ持ってきてくれたというのにあんな奴に使わせてしまい申し訳ないです」

 

「いえいえ。むしろあれくらい派手に乗り回してもらった方が足回りの頑丈さのプレゼンにはなるんじゃないかな、とは思っています」

 

 アンツィオ高校の演習場を走り回るメタルスラッグ、その操縦者は副隊長のペパロニさん。

 黒森峰女学園で作成してもらったマニュアルをパパっと読むとそのまま持ってきたメタルスラッグに乗り込んで演習場を自由気ままに走り始めて、通信機からも楽しそうな声が聞こえてくる。

 

「しかし、一つ気になっていることがあるんだが。あれは一応最新の戦車なんだよな?」

 

「んー……制作されてからちょっと年月経ってますが、ほぼ最新と言っていいかと」

 

「その割には少し遅い気がするぞ。うちのCV33よりちょっと早いくらいに見えるんだが」

 

「元々最高速度はそんなにない戦車ですから。歩兵に随伴する形で火力支援を行ったり敵拠点の最深部で小回りを利かせて暴れたりしてたかな」

 

「なるほど……なるほど?実際に戦う場面を見たことがあるのか?」

 

「見てたと言いますか、乗り回してたと言いますか……ま、まあそんな話はともかく。実は黒森峰の方からお土産をいただいておりまして。こちら、ノンアルコールビールです」

 

「ほう。あそこのビールはうまいからな。少しもらっても?」

 

「どうぞどうぞ。私のおすすめのサンドイッチもいります?」

 

「いただこう。だが一体どこからそんなものを出した?それにレジャーシートなんてあったか?」

 

「細かいことはあんまり気にしない方がいいですよ」

 

 宿敵を追い詰めたら最後の最後でいきなり火星人が出てきたりとか、この世界は割とぶっ飛んでるものですし。あ、これハムカツサンドだ。日本のサンドイッチって美味しいなぁ。

 

『くっ……そこまでですよ、ペパロニ副隊長!!』

 

「あっ」「ふむ」

 

 ビール片手にサンドイッチをつまむ一見大人のダメ昼食を堪能していると、ペパロニさんの駆るメタルスラッグが他の訓練中だった戦車達に囲まれた。

 

『なっ、い、いつの間に囲まれてるんスか!?』

 

『ふっふっふ……私たちだって新型戦車に乗りたいのに、何時までも独占させませんよ!』

 

『私たちだってドゥーチェの指導を受けてるんですからね!これくらい簡単です!』

 

「……ドゥーチェ?」

 

「イタリア語で総帥という意味だ。あいつらはどうも私のことを尊敬しているというか、神格化しているというか……だから、私のことをドゥーチェなんて呼ぶんだよ」

 

「でも、嫌いじゃないんでしょう?」

 

「……まあな。さて。ペパロニ。ちょうどいいしそろそろ変わってやれ」

 

『う、ぐぐぐ……!でも、姐さんの頼みとは言えどこいつの真骨頂を見せるまでまだまだ降りるつもりはないっスよ!』

 

 ギュンギュン、とメタルスラッグのキャタピラがうなりを上げる。

 

『『『「なっ!?」』』』

 

 初めて見るであろう光景にアンツィオ高校の面々は驚き、私はやっぱりそれですよねー、と納得していた。メタルスラッグが、飛び上がったのである。

 

『ヒャッホーゥ!!』

 

 囲んでいた戦車の上に乗るとそのままもう一度ジャンプ。戦車と戦車の隙間に着地すると、そのままキュラキュラと走り抜けていく。特殊なサスペンションを持つメタルスラッグならではの機能だ。

 

『う、嘘ぉ……!?なんでジャンプするのアレ!?』

 

『新型戦車ってスゲー!!』 

 

『い、いいから追いかけるよ!』

 

『そう簡単にうまく行くと思わないことッスね!メタルスラッグ、しゃがみモード!!』

 

 向きを変えて追いかけようとする戦車達をあざ笑うかのようにメタルスラッグは砲塔を前部へ移動させるという普通の戦車ではありえないギミックで車高を下げて森へと突っ込む。森の中へ小さな体を隠したメタルスラッグに戸惑いながらも追いかけていくアンツィオ高校一同。

 

「……なあ。これ、本物のビールじゃないよな?私、酔ってるよな?戦車が飛ぶわけないよな?戦車が縮んだりしないよな?」

 

「飛ぶし縮むんですよ。それがメタルスラッグです」

 

「どんな戦車だ!?いや、それは戦車なのか!?」

 

 あんな戦車です。としか答えようがありません。

 

 

 その後、ある程度好評だったことと操縦を覚える入門用に良さそうということで、ジャンプ機能やしゃがみ機能を封印したものであれば購入を検討してもいいとは言ってくれました。

 

「……検討?」

 

「ああ。その……導入に協力する分にはいいんだが、予算がないからうちで購入できると確約できないんだ。そもそもメタルスラッグは一台いくらくらいなんだ?」

 

「えーっと……このくらい?」

 

 アンチョビさんの顔が青く染まりました。うーん、やっぱり高すぎる?




・ジャンプ&しゃがみ
 どっちもメタルスラッグ最大の特徴。現実的に考えるとなんで飛べるんだあれ。大きめのキャタピラに秘密があるんだろうか。後普通にしゃがめるのもおかしくないか。細かいことは気にしたら負けかもですけど。
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