メタル&スラッグ   作:あおい安室

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Mission5:大洗女子学園

「……うーん……そもそも戦車道の試合形式で見たら練習で使う意味がないような?」

 

「身も蓋もない意見!?」

 

 日本全国の学園艦を駆け回って最後に訪れたのは、戦車道の力で廃校の危機を救ったというあの西住みほさんが在籍している大洗女子学園。紹介状を持っていることもあってあっさりと彼女に会うことができたけれど、これまで各学園艦で撮影したメタルスラッグの映像を見せたらこれだ。

 

「機動力はまずまずあるみたい。主砲の射程は短めですけど、これは戦車本体のサイズが小さいことを踏まえれば十分だとは思います。バルカンの方が射程が長いのは謎ですけど」

 

「謎……ですねぇ。主砲使うくらいならしゃがみモードでグレネード投げた方が敵戦力を早く殲滅できることもありますし。手法も使えなくはないんですけど、ちょっと頼りない?」

 

「グ、グレネード?戦車道でそんなものは使わないと思うんですが……」

 

「あっ。な、なんでもないです。平気です、大丈夫です!」

 

「何がですか!?」

 

 何かが、です。うっかり失言してしまったがそれを何とかごまかして話の続きを促す。

 

「基本的な性能はまだ気になるところはあるんですけど、そっちは秋山さん達に調べてもらっているので後で話します。後、やっぱりジャンプ機能やしゃがみ機能ってすごいとは思うですけど……戦車道で必要ない気がします。その、普通の戦車って飛んだり跳ねたりはあんまりしませんし」

 

「あ、でもあんまりなんですね」

 

「あんまり、だからです。基本的な戦車道とはかけ離れた動きをされても実戦形式の訓練や、教導でも使わないと思いますよ」

 

「……だから皆さんやんわりと一部機能を取り除いた簡易版の方を求めるんですね……」

 

 みほさんに苦笑いで返された。薄々は気づいていましたけど、やっぱりかぁ。ため息を吐きながら頭を抱えていると、部屋のドアがノックされた。

 

「西住殿ー!頼まれていた検証が終わりました!」

 

 部屋に入ってきたのはここの戦車道部のメンバーの一人。秋山優花里さん……なんだけど。

 

「あ、あの。大丈夫です?なんだか焦げてるように見えるんですけど」

 

「ああ、これはメタルスラッグの内部で事故があっただけなのでご心配なく」

 

「じ、事故っ!?怪我はしてないの!?」

 

「大丈夫ですとも。撃墜判定を食らって少しボーっとしていたら内部の機材が突然煙を吹きだしただけですので。制服も一見ボロボロに見えますが、全部汚れですよ」

 

「……すみません。お姉ちゃん……じゃなくて、黒森峰女学園のレポートに安全性に問題あり、ってあったんですけどこういうことだったんですか?」

 

「え、えっと、その、ですね。元々のメタルスラッグが規定以上のダメージを受けた後放置していると爆発するギミックがありまして。多分それを整備部が再現したんじゃないかなーって……」

 

「その機能も採用するのなら取り外した方がいいと思います」

 

 わかりました。わかります。わかってますから……!その、怒った表情で距離を詰めないでください。やっぱり優しそうに見えても西住家の人だ、視線が怖い!

 

「あの、被害に遭った私が言うのもなんですが意外と楽しかったですよ?撃破寸前の戦車に乗ってる気分を味わえましたし」

 

「そ、そう言ってもらえると助かります、はい……」

 

「……はぁ。それで、秋山さん。検証結果はどうだった?」

 

「はっ!西住殿の予想通りおおよそ二発の有効弾を受けると行動不能判定が出る模様です。衝撃についてはジャンプやしゃがみと言った通常の戦車では考えられない動きをするためか、作動した場面はありませんでした」

 

 行動不能判定。戦車道に参加する戦車全てに搭載されている機構で、判定装置が有効弾を受ける、エンジンがオーバーヒートを起こす、戦車が壊れるほどの強い衝撃を受けるといった要因で作動して白旗を上げる装置である。

 

「受けた有効弾の種類もまとめてる?」

 

「勿論。こちらになります」

 

 秋山さんが差し出した手書きのメモを西住さんと一緒に確認する。受けた砲弾、発射した戦車、命中した距離、さらに詳しい状況といったことが細かく描かれているそれを見た西住さんがうなずく。

 

「やっぱりだ。主砲の口径で威力がバラバラなはずなのに、どの場合でも二発食らったら撃破判定が出てる。凄く低威力な砲撃でも二発でアウトになっていることもあれば、逆に高威力二発で落ちることもある。撃破判定の基準がちょっとおかしい気がします、このメタルスラッグって」

 

「あー……やっぱりそうですか?」

 

「心当たりがあったんですか?」

 

「なくはないと言いますか。酷い時は拳銃二発で爆発四散しますから、メタルスラッグ」

 

「そこまで脆いともはや戦車ではないのでは?」

 

 否定できません。

 

「それでですね。全体的なスペックを見ての感想が、戦車もどきみたいな感じがあるんですよ」

 

 火力もまずまず、機動力もまずまず、防御力もどこかおかしいけどまずまず。

 特殊な機能もいくつかあるけど、それは本来の戦車道であればまず使わない機能。

 

「言い方は悪いんですが……豆戦車との模擬戦用にしかならないような気がします。その割にはお値段もお高めですし……もうちょっと安くないと、使い道がただのコレクションしかないかと」

 

「キャアーーッ!!」

 

 思いっきりの正論!やっぱり西住家の人って厳しい!!

 

「お、お気を確かに!私は乗ってて楽しかったですから!メタルスラッグはいい戦車ですとも!!」

 

「ふ、ふふふ……ありがとうございます、秋山さん……」

 

「お姉ちゃん経由で聞いてたけど、ショックを受けると本当に死んだみたいに倒れるんだ……」

 

 変な噂を流さないでください、西住のお姉さん。

 

「でも、確かにそうなんですよね。私はまだ乗れてないんですけど、飛んだり跳ねたりしたりと走破性は良くて主砲に機銃と戦車の基本兵装も揃っていると基本は抑えてる。面白い戦車ですよね」

 

「そ、そうですか……うーん、やっぱり戦車道に売り込むのは無理ですかね」

 

「戦車道……の、本筋から離れた末端の末端くらい、宣伝とかその辺でなら本格的に使えそうな気がします」

 

「やっぱりそうなりますか。となると人気がブレイクしたりとかは難しいかなぁ……もういっそ、このメタルスラッグで戦車道協会に乗り込んでルール改定を迫るのもありかな」

 

「やめてください!?」

 

「あはは、冗談ですよ、みほさん。たまたま操縦をミスした戦車がビルに激突してしまうくらいにしますから」

 

「規模以前の問題ですよ!?しかもそれ、例の自爆攻撃やるつもりですよね!?」

 

「……冗談ですよ?」

 

「冗談に聞こえません……!」

 

 ちょっとからかいすぎたか。慌てたみほさんにゆさゆさと揺さぶられながら苦笑しつつ思考を巡らせる。後少し、本当に後少しでいいから売れてくれればいいんだ。それで多分、私の夏のボーナスも減額なしで支給……支給……されるんだろうか。

 知波単学園で試作機一台ぶっ壊しちゃったしその分ボーナスから引かれそうな気もする。そもそも整備部がそんな機能を戦車道仕様に残すな、という話なんですけどあの人事部だから聞いてくれる気がしない。

 

 少し悲しくて涙が出そうになったその時。

 

「やっほー。何やらお困りの様子だけどどしたの?」

 

 ツインテールの少女が教室内に入ってきた。あの姿は――!

 

「ナディアさん!?今までどこに行っていたんですか!?」

 

「えっ。いや、違うけど。そんな外人っぽい名前じゃないよ?」

 

「……あっ。本当だ、別人ですね。髪型がどこか似てるのでつい……」

 

「髪型だけが判断基準ってどうなのかな」

 

 小さい画面ではそれくらいでしか見分けが付かないのですよ。なんの話なのやら、と苦笑したツインテールの少女はこの学校で生徒会長を務めているという角谷杏さんだった。

 

 彼女の提案で、私は最後の場所へと向かうことになるのであった。

 

 果たして、私のボーナ……もとい、メタルスラッグはどうなるのやら。

 

 

 

「何食べてるんですか?」

 

「ん、干し芋。食べる?」

 

「やめておきます。食べ過ぎるとナディアさんみたいに太っちゃいますから」

 

「ふーん……ちなみにそのナディアさんってどんな人だったの?」

 

「食べ過ぎで信じられないくらいに太っちゃってモデルをクビになりかけたのでにゅうた……もとい、戦車道を始めてダイエットしてた方です」

 

「そんな理由で戦車道する人初めて聞いたよ」




・グレネード
 歩いている時は画面内に最大二つまでしか投げられないグレネードがなぜかメタルスラッグに乗ると無限に連射可能。持っている分しか投げられないけど、それでも十分強力。
・耐久力
 実際はゲージ制で燃料をいれるはずのジェリカン使うと回復したりと現実的に考えると割りとよくわからないのですが極端な例のネタとして使いました。
・「キャアーーッ!!」
 丸眼鏡の女性が死んだ時の叫び声がこんな感じ。
・ナディア
 本名:ナディア・カッセル。諸事情で一作しか出番がないツインテールの女兵士。食べ過ぎて太る云々は公式設定どころか、その作品のベストエンディングでも食べ過ぎて太っちゃう。でも太るのは全員だし大差ないか。
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