魔剣王正伝   作:プルプルマン

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【朗報】プルプルマン的声に出して読みたい学名ランキング堂々の一位
ネオケラトドゥス・フォルステリに決まる。


ボコボコのボコ

ジュラは必死で思考を巡らせていた。

なにせただでさえ自身の魔法が通用しなかった相手に加え、もう一人厄介な搦手使いが増えているのだ。

仮に、ヴァニラとかいうやつの方が落下の衝撃で瀕死だと見積もってみても攻略は無理難題であると言い切れる。

ましてや後ろの二人を守りながらなど…

『なぁ、イオン。ちょっとだけ自分を守れるか。』

『も、もちろん!私だってただのお荷物じゃないってこと見せてあげるわ!』

『助かるぜ…じゃあちょっと行ってくる。』

『気をつけるんだよ、ジュラ君。』

『ありがとよ、ふぅ…ウオォォォッ!』

ジュラが果敢にヴァニラへと切り掛かる、その狙いは少しでも勝率が上がるよう一対一での勝負に持ち込むことだった。

『そこだー!いけージュラー!』

『いいぞいいぞー!そのままパンチを…うわぁ痛そうだね…』

『負けるなぁー!目玉だ、目玉を狙うんだよー!』

『うわっ、とても見てられない…ムゴイ。』

数秒後、飛び出して行った勢いは見る影もなくジュラがボコボコに殴打され、トドメのアッパーで吹き飛ばされて地面でバウンドする。

『むりだ〜しぬ〜。アイツのパンチマジにヤバい〜。よく考えたら、おれの魔法効かない時点で察するべきだった…』

彼の顔は無惨にも通常の3倍ぐらいに膨れ上がっていた。

『だ…大丈夫?こうなったら一か八か私が直接…』

バールを握りしめたイオンの前に立ちはだかる姿が一人。

『ランスさん‼︎』

『よしておきなよ。君に武器を振るわせるようなことになっちゃ男の名折れだ。ここは私が出よう。』

いやもうさっき扉に向けて振るってたような…

『ヴァニラ君にパラミツ君、君達のやり方はあまりスマートとは言えないね。なぜなら、そう、槍術の心得がある私に進んで武器を渡してしまったのだから。』

ランスが破壊された部屋の残骸から細いが強度のある鉄柱を拾い上げ、二人の敵に突きつけた。

『敵に塩を送る君達の騎士道精神に敬意を表して、私もサシでの闘いに応じよう。降りてきてくれ、パラミツ君!』

 

パラミツは呆れたようにため息を吐き、頭を掻く。

『あー、翻訳するとあれか?2対1じゃどう足掻いても勝ち目なんてないのは分かりきってるし、そもそもヴァニラに勝てる気しないからせめて俺とタイマンしたいですってことだろ?ナメやがって…地獄を見せてやる。』

ランス流話術(命乞いともいう)が通じたのか、パラミツは正面からランスと対峙してくれるようだ。

『それじゃあ、踊ろうか、パラミツ君?』

そこにゴングは無く、冷たい槍の一閃が勝負開始を告げるゴングの代わりとなった。

『そこだー!いけー!ぶっ飛ばしちゃえー!』

『見てるこっちが痛えや…ひでぇ。』

『いまだっ!喉だよー、喉狙ってー!』

『あ、槍折れた。』

顎に強烈なキックをもらって打ち上がったランスが空中で激しく回転しながら落下し、瓦礫の山に頭から激突した。

『ランスさん大丈夫⁉︎』

『意識がとおーくなってきたー。ふわふわするねー。』

『ふわふわしてんじゃねー!死ぬぞ⁉︎』

『イオン君達も一緒にどうだいー?川でも渡っていこうよー』

『ララララ、ランスさん⁉︎多分その川渡っちゃダメなヤツです!戻ってきてー!』

 

『なぁ、ヴァニラ。俺達はいつまでこの茶番を見せつけられるんだ?』

『さぁ?もうめんどくさいし全部吹っ飛ばしちまうかァ!』

『はぁ…なるべく掃除しやすいようにな。』

体に密着させられたヴァニラの腕からエネルギーが吹き出し、三人の方へと突進し始める。

そのエネルギーを考えると半端に瓦礫で身を隠したところで生きのびることなどできないのは明らかだった。

『っつ…後先考えてる場合じゃねぇ‼︎止まってくれよォ⁉︎魔剣 バール アメーリオ‼︎』

彼の手に握られた魔剣がより強く輝き、魔力を集中させる。

今の彼が扱える最大級の大技であり、同時にスタミナを大きくすり減らす切り札でもあるそれを構え、ジュラは正面からヴァニラを迎え撃った。

二つの大きなエネルギーが衝突し、その余波だけで通路の壁や天井に大きな亀裂が走ってゆく。

二人は数秒間拮抗し、その後弾けて両者ともに吹き飛ばされた。

『ジュラッ!』

床を跳ねて転がるジュラにイオンが駆け寄る。

『はは…火事場の馬鹿力ってやつかな…ただ、次は防げねえかも。』

そう弱音を吐いた彼の手は震え、今はまともに剣を握ることさえ困難になっていた。

とはいえひとまずの無事に僅かな安堵を抱く彼等に、その声は情け容赦無く試練を告げる。

『なんだよ、そんな隠し玉あるなら早めに出しとけよなぁ。』

頭を掻きながら立ち上がったヴァニラの衣服は少し切り裂かれているものの体に外傷はほとんど無く、目立ったダメージを受けている様子も無かった。

『おーいちち、指をケガしちまっただろうがよぉ。決めたぜ、お前たちは確実にミンチだ。』

一歩ずつ歩み寄る二人の足音にジュラは逃れられない死の絶望を感じていた。

最大の技がまたしても簡単にいなされたのだ、それも今度は高速で向かってくる相手と打ち合って。

高速で飛ぶものに高速で振る武器を合わせればその分破壊力は増すものじゃないのか?

力の差は歴然だった。

そんな怪物たちの前に一人の少女が立ち塞がる。

それは戦いをただ見ているだけだったイオンであった。

『なんだ?今度はお前が俺らと戦うつもりか?』

パラミツが呆れたように手を振る。

『やめとけやめとけ、痛くしねーから大人しく待ってな。サクッとやるだけだぜ〜。』

『それとも使う気か、仲間にしてください作戦でもよ。悪いが答えはノーだな。』

彼女は目を閉じたまま口を開いた。

『ついにきてしまったかな…我が最強の秘密兵器を使う時が…』

その言葉に場の空気が一変する。

ジュラとランスはまだ当てになるものが残っていたことで希望を取り戻し、ヴァニラとパラミツは不敵なイオンの態度に警戒して歩みを止めた。

『…ただのハッタリだろうが、くだらねぇ。』

『それはどうかな?よく見てなよ!』

イオンがゆっくりとポーチに手を伸ばし蓋のボタンを外す。

中にあるその【何か】を彼女が掴み取り出したその瞬間、その手には銃身だけで成人男性の身長を軽々と超える大きさのバルカン砲のような物が抱えられていた。

『さぁイオン式蓮巣砲「カシパン」始動だよ!』

『ちょちょちょ、ちょっと待ったァ!』

発射準備を整えたイオンをパラミツが慌てた様子で制止した。

『何?コレ結構重いから用事なら早く言ってね。』

『イヤイヤ、どこから出したそれ⁉︎』

『えー、貴方も見てたじゃん。ポーチから出すとこ。』

『いやまぁそれはそうなんだが、物理的にありえねぇだろぉ⁉︎ちょっと取り出すところからもっかい見せ…』

『あーもう!腕、限界!くらえぇぇっ!』

イオンがボタンを押すと六つの銃口が次々と火を吹き、瞬く間に二人の男は後ろに吹き飛ばされ、周囲は硝煙に包まれる。

同時に撃ち出された弾が着弾した地点でも爆発が巻き起こり、伴って発生した土煙は辺りの視界をより悪化させた。

濃い硝煙と耳が痛くなるような発射音の中、ジュラがイオンを見やると彼女はいつのまにかあらぬ方向に銃口を向けて撃っていた。

どうやら反動に耐えきれなくなって振り回されているらしい。

『ったくしょうがねーな…』

ジュラは痛む体に鞭打って立ち上がった。

 

イオンは自らが抱えるソレを制御できずにいた。

その威力から発生する反動は想定よりずっと強く、銃身がブレないどころかまともに狙いも定まらない。

おまけに反動による吐き気も込み上げてきたことで彼女は自分が性能に振り回されていることを実感している際中なのだった。

それ自体は悔しくともどうしようもない事実だが、問題はこれ以上銃身が暴れ続ければ倒しきれなかった敵が懐に飛び込んで来たり、この場所そのものが崩落する可能性もあることだ。

頭ではわかっているものの技術が足りず歯を食いしばって振り回されるがままの彼女を、突如何かが受け止め支える。

ふわりと漂う香辛料の香りに彼女は口元を緩め、二人は何とか反動を押さえ込んだ。

 

数十秒後、弾切れによって停止したカシパンを投げ出しイオンが仰向けに寝転がる。

『ぶへー、きもちわるー。次は反動軽減機構組み込んでから使おっと。』

『ごくろーさん、それはそうと無茶すんなよ、物理的に骨折れるぜ?』

『いやー、もうこれしかないかなーって。ともかく、ありが…』

言葉を遮ってそこそこ大きめの天井の欠片が二人の間に落ちてくる。

残念ながらジュラの介入は間に合わなかったらしい。

『崩れてくるぞ!逃げろ!』

『ちょっと待って…膝がふほひひ笑ってるの〜!』

仕方なくイオンを担いで逃げるジュラの背中を瓦礫の中から二つの視線が捉えていた。

 

『音、もう聞こえなくなったな。ひとまず危機は脱したってところか。』

『そのようだね。まったく、君たち二人には助けられっぱなしだ。ここを無事出られたら是非とも恩返しさせてくれ。』

『そりゃかまわねーけどよ、出口どころか今俺らがどこにいるかもわかってないぜ?敵の大ボスはまた別にいるらしいしよ。』

徐にダウンしていたイオンが起き上がり、その拍子に頭を打ったランスが痛がっている。

『復活ーー!さぁ、あっちへ向かうよ!』

彼女が指差したのは薄暗い通路の先にある重々しい金属製のドアだった。

残念ながらどう見ても速やかな脱出にはつながりそうもない。

『お前なぁ、今の状況わかってんのか?あんなバケモノ連中がまだ出てくるかもしれないんだぜ?とっととこんな陰気臭いとこ出た方が…』

ジュラの反対意見を遮るようについ先ほど通ったばかりの道から轟音が響き、足元が揺れる。

それは明らかに猛スピードで接近していた、それもドス黒い殺意を持って。

『おい、まさか…』

『やっぱダメかぁ、そんな気はしてたんだよねー。』

結局、現状で一番安全なのは彼女の指差した道だった。

三人は全力で走り、扉を蹴破る。

その先にあったのは露天掘りの跡地のような地下へと続く大穴の中に掛かる一本のみすぼらしい木製の道だった。

『え?ここ渡んの?』

底が見えない大穴にジュラの足が無意識に震えだす。

『うーん、気は進まないが渡らなきゃ後ろの彼等に何をされるかわかったものじゃないからね…』

『そういうことね、じゃあみんな私に続けー!』

だが、勢いよく踏み出したイオンの一歩は見事に腐った木を踏み抜き、そのまま重力に従うことになる。

『おわ〜〜〜‼︎』

情けない叫び声をあげながら落ちていくイオンに手を伸ばしたくても身体が動かない、言うことを聞いてくれない。

やたらと喉が乾く、心臓がうるさい。

ただ目を見開くことしかできないジュラの横でランスが跳んだ。

『イオン君、捕まるんだっ!』

彼が投げたのは逃げる時に瓦礫の山から失敬してきた丈夫そうなワイヤーだった。

イオンがその端を掴んだのを確認すると、ランスはワイヤーを弛ませて僅かに突き出た岩肌のでっぱりにひっかけることに成功し、窮地を脱したのだった。

ワイヤーが二人を重しとして振り子のように揺らしている。

『登れるかい、イオン君?今はもう使ってなさそうだけどあそこに通路らしきものがある。そこへ避難しよう。』

『りょ、了解!』

二人が慎重にタイミングを合わせながら登り始めたのを見て安堵するやら情けないやらで複雑な気分に浸るジュラだったが、それも長くは続かない。

迫り続けていた轟音はついに彼の真後ろまで来て止まった。

『なんだぁ?お前一人ってことは置いてかれたのかぁ?』

『それとも、お仲間にはここは俺が食い止めるとでも言ってきたのか?泣かせるじゃないか、カッコいいねぇ〜。』

ジュラは振り返り覚悟を決めつつ叫んだ。

『逃げろ!全力でだぁ!』

その意図を汲み取った二人はすぐさま蜘蛛の巣だらけの通路を奥へと走り出した。

『あんなこと言ってるぜ〜兄貴ィ。舐められたもんだなぁ。』

『まったくだ、じゃあここはお前に任せたぞ。』

その言葉が終わらないうちにパラミツは煙を残して姿を消し、ジュラの背後へと移動していた。

『残念、この施設は至る所に「監視精霊」が仕込んである。つまり、お前らの行動だとか逃走経路は筒抜けなんだよ。安心しな、棺桶は一緒にしてやるよ。』

ジュラが阻止する間もなくパラミツはスルスルと岩肌を駆け降り、二人を追って暗い通路へと消えた。

そちらに気を取られたほんの一瞬で距離を詰めていたヴァニラの拳が腹部に突き刺さり、ジュラがくの字になって飛ばされる。

不幸中の幸いは落下した道の木材が腐っていなかったことだろう。

『ガフッッ、オオォ…ッッ…』

『お前もバカだなぁ。空中戦が本領の俺をこんなとこで迎え撃つなんてよ。それともあれか、イカれたマゾヒストなのかぁ?』

浮遊し見下ろしてくるヴァニラに対し、ジュラはなんとか腹を押さえながら立ち上がった。

『へ…こっちは勝つつもりでやってんだ。そっちこそいいのか、そんなバカみてーなお喋りにエネルギー使ってよ…脳ミソまで熱で蕩けてんのか?』

彼なりに精一杯張った虚勢であった。

だが、沸点の低い相手はそれが癇に障ったらしい。

青筋を立てたヴァニラの腕が吹き出すエネルギーはより激しさを増してゆく。

 

 

 

『うぺっ、のあっ、顔に蜘蛛の巣ついた!』

『安心するんだ!毒蜘蛛じゃないよ!』

顔にへばりつく蜘蛛の巣を取ろうと下げたイオンの頭の上を一瞬遅れて銀色の針が通り過ぎ、壁に当たって不愉快な金属音を立てた。

『ッチ、また外した。これで二回目だぜ?かなり屈辱だ。』

若干苛立ちを見せるパラミツは右手で弄んでいた針をイオンの胸に狙いを定めて投擲する。

『まぁ今度は体幹の中心を狙った。どうあがいても避けられることはない、まずは一人…は?』

命中を確信したパラミツであったが、その予想とは反し正確無比に飛ぶそれが命中したのは狙ってもいないが、割り込んできたランスの上腕だった。

実力で圧倒的に勝るパラミツがこれにて3度も少女一人を仕留め損ねたのだ。

『ランスさん、毒がっ…』

『昔、私も色々あってね…多少の毒耐性は持ってるのさ。それより逃げるよ!』

大急ぎで距離を離そうと廊下の奥へ逃げる二人の後ろでパラミツは拳を握りしめてワナワナと震えていた。

その視線の先は仮面によって見えないがイオンに注がれていることは明らかだった。

『…もうお前をただのガキとは思わない。確実に始末だ。』

そう呟いた彼は懐から小さな黒い玉を4つ取り出し、静かに二人の頭上へと放った。

『いて、頭になにかぶつかった…大きめのクモかな?』

ランスが頭の上のそれを払いのける。

クモにしては硬い手応えに違和感を感じ、払いのけたものを見やった彼の顔に冷や汗が吹き出した。

『しゃがむんだ!イオン君!』

『へ?でも逃げな…』

爆竹を強烈にしたような乾いた破裂音が狭い通路によく響いた。

 

『さて、今度こそ仕留めたかな?』

煙の晴れた通路を見回すパラミツは崩れた通路の残骸の中に血痕を見つけほくそ笑む。

少なくともどちらかは大きなダメージを負ったようだ。

パスッ

地面を見つめて隙だらけに見えたパラミツだったが、彼目掛けて飛んできた試験管を一瞥もせず掴み止めたところを見るにその態度は演技だったらしい。

『くっ、ダメだった。もはやこれまでか…』

パラミツが栓を開け試験管の中身をそっと床に垂らすと、見る見る間に煙を噴き上げ穴が広がって行く。

『おいおい危ないもん投げつけんなよ。種類まではわからんが強酸だろ、これ。』

うまく引っかかった獲物の様子を確かめるために彼らの方向を見たパラミツは、爆発から運良く逃れて無事だったランスが逃げなかった理由も同時に察することになる。

その先には、飛散した通路の欠片が左肩に突き刺さった挙句、瓦礫の隙間に足が入り込んで動かせなくなっているイオンがいた。

息は荒く、衣服も血で赤く染まっているが意識はあるらしい。

『なるほど、血痕はお前のだったか。頭とかが吹っ飛んでないのは流石のしぶとさだが、悪運じゃ面の制圧は防げないよなぁ。』

念願の一撃にパラミツは笑みを抑えられない様子で次の爆弾を取り出す。

その数七個、彼がこのまま二人にとどめを刺すつもりなのは明白だった。

『そのまま楽にしてな、少なくとも肩の痛みは感じなくなるだろうよ。』

ただでさえ狭い通路には瓦礫が散らばり、薄暗さも相まって素早い身のこなしなど不可能な上に相手はダメージを負っている。

もはや狙いをつける必要はないと言うようにパラミツは大きく腕を振りかぶって全力でトドメの爆弾を投じた。

その直前、ランスの手元から何かが放たれ、パラミツの足元にある小さめの瓦礫の陰に着弾した。

勝利を確信した彼はそれを見たところで素早い対応はできなかった。

『は?』

『イオン君、君の作戦は成功したよ。私達の勝利だ。』

その瞬間、パラミツを中心に青い半透明のドーム状空間が展開された。

『これはッ、最初の罠を防いだ小賢しい道具の…』

『彼女に代わって言わせてもらうが、ピンポンスフィアだ。君が試験管を見てる間に転がしといた。それと、よく足元を見たほうがいいよ。全力で防御をしなきゃ君だって死ぬかもしれないからね。』

反射的に足元を見たパラミツが目にしたのは、それほど広くないバリアの内側に転がる七つの爆弾と瓦礫の陰に隠れた丸い機械、そしてその起動ボタンと思しき部位に挟まった小さなナットだった。

そこから導かれる結末にパラミツの思考を一気に焦りが支配する、しかし彼はまだ冷静であった。

迷いなく地面に転がる機械を破壊しようと手を伸ばす。

『流石にいい判断だね…けど、私達が一手早かったようだ。』

残念ながら彼の手が届くより早くバリアの内部を爆発が満たし、強烈な光に中にある全てが包まれ、数秒後に空間の境界は本体ごと壊れて消えたのだった。

 

だが、逃げ場のない爆発のエネルギーをまともに浴びたにも関わらず、男は立っていた

『俺は…生きてるぞ…仕留めそ…こねた…お前らの、負けだっ…』

現実に彼にはこの黒焦げ状態からでも易々と二人を「始末」できる力があった。

だが、同時に彼は「戦闘」を行うにはダメージを負いすぎていた。

本来なら簡単に防いだ上で逆に腕を小枝のようにへし折ることさえできる程度のランスの拳による突きを躱すことができず、まともに右肩で受けてしまったのだ。

『ぐ…くだらない抵抗しやがって…そこ動くな、お前からしま…』

パラミツが袖から取り出した針を取り落とす。

その指は物を握るのも困難なほど震えていた。

徐々に足からも力が抜けその場に立っていられなくなり床に膝を付く。

『ああ…そうそう、君の針だが借りっぱなしは悪いから返しとくよ。サービスで手持ちの一番強い毒も付けといたんだ。傷口から無理矢理引っこ抜いたものだから不衛生かもしれないが、そこは勘弁してくれ。』

他にもランスは何か言っていたかもしれなかったが、そこまで聞いて意識を失ったパラミツにはわかりようの無いことだろう。

軍配は未だ動けないイオンと疲れ切ったランスに上がったようだ。




パラミツ君は忍者に憧れていてどこからともなく東方の武術書を買ってきては模倣・アレンジしているという裏設定があります。

用語集

カシパン
イオンがポーチに仕込んでいる連射式の銃火器。
しかし、実弾は惨いから好かないという理由で撃ち出す弾は全て大気中の魔力を集めて着弾点で炸裂させるものとなっている。
どうやってしまいこんでいるかは本人すら把握していない。

監視精霊
人工精霊類似体の中でもほぼ意思を持たず、映像の中継と異常の検知にのみ特化したもののことを指す。
汎用性が高く便利な割に安価なのもグッド。
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