魔剣王正伝   作:プルプルマン

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蛍光灯切れたけど買いに行くのめんどいし蝋燭で過ごしてみようかなんて考えてる今日この頃。


宙を砕いて

『ところで、俺はどうやったらここからオサラバできるんだ?流石にずっとこんなとこに居るのはゴメンなんだが。』

そう、ジュラ達は勝利という美酒に酔い、完全に祝勝饗宴4次会ムードであり、問題が何一つ解決していないのをすっかり忘却の遥か彼方に押しやっていたのだ。

『…さぁな?私より外にいるヒステリックムチ女に聞いた方がいいんじゃねーか?まだ通信つながってんだろ。』

『なんだ、知らねーのかよ。』

『おうおう、こちとら生まれて落ちてまだ一年経ってねーんだよ。知らねーことだってあるに決まってんだろうが。』

『ああそーかい。…もしもし、聞こえるか?誰でもいいから返事してくれ。』

『もしもし、こちらランス。ああ、聞こえているとも。先ほどの会話も含めてね。それで、そこからの脱出方法についてだが…すまない、クイーン女史に尋ねてはいるんだが知らぬ存ぜぬの一点張りなんだ。もう少し問い詰めてみるからそっちでも色々試してみてほしい。あ、通信はいつでも繋がっているよ。』

この空間の制作者すら脱出方法を知り得ないことを聞いたジュラの脳内には最悪の想像がありありと浮かび上がっていた。

それは、このまま意識が仮想世界内に囚われ、肉体が朽ちた場合だ。

もう一生本物の風を感じることもなく、ハーブの衣を纏った肉が香ばしく焼ける本物の匂いを感じることもできない。

或いは長くこちらで長く過ごせばアミンのようにある程度再現した物体を出現させることもできるようになるのかもしれないが、どこまで突き詰めようとそれは偽物。

銀は金にはなれないのだ。

早くも永劫に何かを模倣するばかりのディストピアでどのように身を振るかを考えて落ち込んでいるジュラの後頭部にアミンのゲンコツが振り下ろされ、油断していた彼は大きくつんのめった。

『おぅっ‼︎いってえなぁもう、何すんだよ…』

『ハン、文句を言う元気はあるじゃねーか。それより、気をつけた方がいいぜ。あのトカゲ野郎まだ何かやるかもしれねー。』

彼が頭をさすりながらアミンの睨む方向に目をやると、そこには動作を停止して倒れているにも関わらず、説明できない異様な重圧を纏うスターフルーツがいた。

『確かに、ちょっとヤバそうだな。一応、もっと距離取っとくか?』

『珍しく得策じゃねーか。おめーにゃ見えねーかもしれないが、アレの内部数値が異常な変動起こしてやがる。それに、妙なコードも見えるしな…』

突如、骸の如く倒れているスターフルーツの周囲で激しく巨大なエネルギーが渦を巻いた。

それに伴う突風に煽られて吹き飛びそうになる2人であったが、姿勢を低くすることでなんとか堪え、腕を顔に翳した防御体勢のまま何が起こっているのかを伺う。

床から1cm、また1cmとスターフルーツが浮かび上がり、やがて完全に直立姿勢で高度15m付近まで上昇して停止する。

数秒の沈黙…その後、無個性な声を持つ何かは唱えた。

『仮想禁呪【ハオウ・マ…』

世界はそれまでより遥かに獰猛な白が支配した。

 

 

 

 

スクリーンに映し出される景色が完全に白一色になると同時に、ランスたちが居るラボでは尋常ではないエネルギーの乱高下によるシステムの危機を告げるようにあらゆる警報器が作動し、回転する赤いランプが部屋中を照らし出していた。

『これは一体…ミス・クイーン、意地を張らずに教えて欲しい。ジュラ君の脱出方法はどうすればいい⁉︎早急に脱出しなければ我々全員の危機かもしれないんだ‼︎』

『だからぁ、知らないっつってんでしょ?今回の実験はこっちにとってもイレギュラーが多すぎるの!もう何が起こっても不思議じゃあないわ。』

『なら、彼を見殺しにしろと言うのか⁉︎そんなことは許さな…』

言い争いをする彼等の真横で針が激しく揺れ動いていた計器がショートを起こし破裂する。

ガラスの割れる音にランス達が気づいた時、ラボの最奥で演算を繰り返していたマザーコンピュータは限界を迎え、意識が遠のくほどの閃光・轟音と共に自壊したのだった。

 

 

 

最初に目を覚ましたのはランスだった。

咄嗟に頑丈そうなテーブルの下に潜り込んだためか、特に外傷などはないらしい。

自分の体が問題無く動くことを確認した彼は同じ場所に飛び込んでいたクイーン(気絶中)を押し除けて外に這い出る。

もう赤いランプの光はどこにも無く、むしろ数時間ぶりの懐かしい光、太陽光が燦々とラボ内を照らし出していた。

どうやらコンピュータの自壊と共に洞窟の天井が崩落したらしい。

瓦礫の間を潜り抜け、イオンを寝かせてあった場所へ向かうと、これまた頑丈そうな機械の下を選んだのが功を奏したか彼女もまた無事であった。

そのことに頰を緩めるランスであったが、どうも何か忘れている気がする。

立ち上がった彼が周囲を見渡した時、それは頭の奥から飛び出した。

ラボの奥へと続く階段があったであろう場所が大柄な瓦礫に押しつぶされている。

『あの場所…何か………あ!ジュラ君の体がッ!』

大慌てで瓦礫を退けようと押してみるもランスの膂力ではうんともすんともいわない。

並のことでは動かせないと判断した彼は回収していたアルファウスの先端を瓦礫の隙間に捩じ込み、起動スイッチを押してみることにした。

どうやらその判断は間違っていなかったらしい。

瓦礫は粉塵を飛び散らせながら破砕し、役目を果たしたアルファウスの先端が床を打つ音が響く。

『…よかった。』

ジュラの体は潰されていなかった。

どうやら最初にクイーンが床を打ったことによってできた亀裂が崩落の影響で拡大し、床の一部が陥没した隙間に滑り落ちて助かったらしい。

ランスが足元に気を配りながらジュラの体を引っ張り上げる。

『よいしょっと…さて、これからどうしたものか。崩落が起きている以上ここに長居するのは危険だが、私一人で全員運べるかな…』

自身の平均より細く頼りない腕を見つめる。

それは、疲労とダメージで若干震えていた。

誠に遺憾ながらどう見ても無理がありそうだ。

ふと背後から何かが動く音が響き、振り向くと同時に残り少ない薬品の小瓶を構えたランスであったが、そこにはジュラ以外に誰もいない。

『もしや…ジュラ君、意識が⁉︎』

先程まで浅い呼吸を繰り返すばかりであったその体は少しずつ指が動き、血色も良くなってきていた。

ランスが見守る中、固く閉じていた瞼が薄く開き瞳孔に光が灯る。

『おはよう、ジュラ君…君の帰還を嬉しく思うよ。』

『アンタ…ランスか……ッッ!ッゥ〜〜イッテェェェェェ‼︎』

『どどど、どうしたんだい⁉︎死ぬな、死ぬんじゃない‼︎ジュラ君‼︎』

目を覚ました途端に転げ回って悶えるジュラに困惑するばかりのランス。

当事者であるジュラも含めて彼等はまたしてもすっかり忘れていたのだ。

ジュラは、並の人間なら全身が砕けるような武器の一撃で昏倒していたことを…

数分後、なんとか痛みに慣れたジュラが魔剣を杖代わりに立ち上がった。

『おーイチチ、流石にきついぜ…あのコンピュータ?だっけか。世界を作ってたあれが壊れたから出て来れたんだと思うが、アンタはどう思う?』

『うーん、私もこの分野は完全に専門外でね、適当なこと言う訳にはいかないしなぁ。』

『そうか…てか、そういやイオンは?もう避難したのか?』

『ああ、彼女ならそこの大きい機械の陰で寝てるよ。そっとしといてあげてほしい。』

『んー、わかったぜ………って、うおぁあ‼︎スプラッタ⁉︎おい、イオン!大丈夫か⁉︎おーい!』

『うー、何?まだねむ…ジュラだ!出て来れたの?よかった〜』

『ああ出てきたよ、なんだ結構大丈夫そうじゃねーか。ヒヤヒヤさせるぜ。』

『ふへへ、なめないでもらおう。私は、今!全身が痛いし一歩も動ける気がしません!重傷患者です!ところで、ジュラこそ大丈夫?なんか生まれたばっかりの子山羊みたいになってるけど。』

その足は音叉もかくやと言わんばかりの勢いで震えていた。

『フッ………実は、割ともう立てねぇ。』

イオンの隣で仰向けに倒れ込んだジュラの目に青い空と白い雲が写る。

そこにかの不気味な六角形は影も形も無く、見慣れてきた麗しく青い空であった。

その光を浴び勝利の余韻を嗜むジュラだったが、悲しいかな一条の閃光と何かが弾けるような音が彼を残酷極まりない現実に引き戻す。

痛む上体を起こして音の鳴った方を確認すると、そこには異常なほど高密度に収束し光の像を伴って現れた魔力エネルギーの集合体が顕現しつつあった。

『なんだよ…ありゃあ…「精霊」?いや、まさか、あのバケモンか⁉︎』

エネルギー体は変形を繰り返しながら拡大を続け、一瞬の収縮の後に怪物スターフルーツの姿をとって完成された。

『すばらしい、すばらしいわっスターフルーツ!本当に今日は良くも悪くも私の予想を悉く上回ってくる日ね。最後の最後に期待は裏切らなかったっていうのも実にグッド!』

ジュラは立ち上がって剣を構える気にもなれず、立ち尽くしていた。

このボロボロの体で、どうやって2人を庇いながらあんなバケモノと闘えというのか?

ましてやアミンの助力も得られない実像的三次元空間で。

もはやそこにあるのは絶望のみであった。

エネルギー体はすでに内に秘める莫大な力を稲妻の様な形で放出し始め、灼かれたラボ内の各所からは鼻腔を突く焦げた臭いが漂い始めている。

『ちぃっ…兎に角、今は逃げるぞ!ランス、そこで呆けてるバカを支えてくれッ!』

幼子の様に輝く目でスターフルーツの顕現を眺めているイオンの面倒をランスに依頼し撤退を試みるジュラたちであったが、それを絶対に許さないであろう人物が1人、その背中に言葉を投げかけた。

『あらぁ、逃げられるなんて本気で思ってるのかしらぁ!かわいいとこあるわね〜、スターフルーツ!目の前の邪魔者を!細胞の一欠片すら残さず消し去りなさいッッ‼︎』

指令を受けたスターフルーツがゆっくりと3人を見据え、翼を広げて浮遊する。

視線の先のジュラ達は無視できないダメージのため未だ碌な移動ができずにいた。

この超兵器にとって彼等3人を消すだけなら死にかけのハエを潰すよりも楽な指令だっただろう。

だが、超兵器スターフルーツは顔を上げて青い空を見つめると険しい表情を浮かべ、クイーンの意図通りジュラたち3人を攻撃するわけでもなく目にも止まらない速度で上昇し始め、やがて少し濃くなった雲の合間へと消え去ってしまった。

『…………ハァ?』

意図が読めないその行動にただただ困惑するその場の4人、彼の行き先を見つめる8つの瞳の中で超新星が瞬いた。

 

 

 

 

高度3000m、層積雲が吹き散らされ急激に気温が低下する。

 

高度6000m、高層雲を上下に貫きつつ渡り鳥の隊列を吹き散らす。

 

高度11000m、巻層雲を構成する氷塊中の原子は一瞬にしてプラズマ様に変化し急激に気圧が低下。

 

オゾン層を通過、情け容赦の無い放射線が降り注ぎ空が光を失い始める。

 

そして…高度100000m、スターフルーツは宇宙と呼ばれる場所へ到達した。

一面見渡す限りの星々、視覚データとして得ていた情報とは全く違うその光景に一抹の感動のようなものを覚えたスターフルーツであったが、あまり浸っている暇は無い。

圧倒的な熱量を感じさせる太陽を直視しないよう魔力でスコープを作りつつ討つべき標的を捜索するが、先程感じた敵性反応はもうとっくに消失していた。

標的を見失った彼が渋々ながら自らの来た道を振り返ると、はるか下に幾つかのドーナツ状に穴が空いた雲の下に広がる森林地帯。

スコープの倍率を上げるとその一点に存在する生まれ故郷の研究所が目に入った。

さらに最大倍率のスコープで補足した研究所内部の3人組。

見失ったのであらば反省・改善すべきだろう、だが標的に過不足無し。

エネルギーを体の前方に集中させたスターフルーツは、本来の機能を存分に発揮せんと無音の咆哮を轟かせ、眼下にある青い青い宝玉の一点に照準を合わせた。

 

 

 

 

一方こちらは崩落したクイーンの研究所内部。

『あれ?え、ウソ、故障?ちょっと⁉︎スターフルーツー!戻ってきなさい!』

『どうなってんだ?アイツは星にでもなりたかったのか。』

『だとしたら彼の目論見は大成功だね。まだ日も高いというのにあんなに明るく輝く星になっているよ。』

『うーん、それならお祝いしてあげたいけどどうやってプレゼント渡そう…郵便って頼んだら別の星まで届けてくれるかなぁ?』

『切手代で宮殿が建ちそーだな、それ。まぁ、今は船に戻って休もーぜ。もういい加減体が動かんぜ。』

『だねー、私もまた意識遠のいてきたよー、そういえば燃料無いけどどうしようかなぁ。』

『貧血だね、栄養のある薬膳を振る舞わせてもらうよ。燃料の件は…また後で考えようか。』

何も視界に入らないほど混乱しスターフルーツの名を呼び続けるクイーンを尻目に、帰路を歩み出した3人の背後で雷を数十本束にした様な閃光と轟音が炸裂した。

真っ先にイオンと彼女を背負うランスを守るため身を翻したジュラであったが、あるはずの地面に足が着かず慌てて見えた床にしがみつく。

どういうことかと振り返った彼が見たものは今し方自分が足を踏み入れたものの正体であり、直径3.5m程の床から奈落まで続いているのではないかとすら思える様な底の見えない縦穴であった。

恐らく、先程の爆発的な何かによって形成されたのであろう、その壁の一部は赤熱し煙を立ち上らせていた。

『なんだ…?さっきまでこんなの…』

更なる危機に緊張した空気が満ちるラボで余裕を浮かべる者がいた。

数秒前とは打って変わって顔に笑みさえ浮かべながら彼女は言う。

『あらあら、何かと思えばそういうことね…決して反撃を許さないために上空から…いいわ、クレバーよ。さて、あなたたちには見せてあげないとね、真なる『神の杖計画(ドラゴンズメテオ)』を。』

『何を言ってんだ…?その計画とやらは六角形に空を切り分けることだったんじゃ…』

『それはそっちの勝手な勘違いでしょう?事情も知らないあなたたちに邪魔されてこっちも迷惑してるのよ?』

『何?どういうこ…』

上空の光がより強く輝く。

全員、その意味は自ずと理解できた。

『飛べェェェェー‼︎』

ジュラが叫んだとほぼ同時にランスもがむしゃらに横へと飛び退き、少し遅れてまたしても閃光が大地を貫いた。

『アッハッハ、滑稽ね。いいわ、楽しませてくれたお礼に無知蒙昧なあなたたちに我が計画について教えてあげる。』

『てめぇ…今、それどころじゃ…』

『そもそも、あなたたちは「神の杖」という言葉が何を指すか知っているかしら?』

改めて問われるとどこかで聞き覚えはあるがイマイチ思い出せないジュラに代わって、息を整えたランスが口を開いた。

『最初にその名を聞いた時から引っかかってはいた…神の杖、その昔天界の主「大神様」が怪物不死身のマオウを地界に封印するために行使したとされる大魔術だ。天界から一直線に伸びる光を杖に見立てた古い俗称だが…なるほど、さっきの攻撃を見てるとこれ以上無い名だと思うよ。』

『解説どうも、計画の目的はまさにその再現だったのだけど…おっと、頭上注意よ〜』

またもや走る閃光、ジュラが残り少ない魔力で唱えた盾の呪文も簡単に破壊され吹き飛ばされる。

『グッ…なんでそんなことを…』

『あー、世界が一歩進む時っつったら決まってるでしょ?私の所属する中央連合王国は実質的な世界の治安維持役。そんな重役なんだから世界中を監視できる目と距離を問わない砲があれば便利でしょう?要は戦争用よ。私だって暮らすなら強い国がいいもの。』

実に、実に愉快そうにクイーンは語り続ける。

『なるほど…その役目の苦労は私の様な素人にも察せられるし、敬意も払おう。しかしそれじゃあまるでこれまでに存在した数多の独裁者と変わらないんじゃないかい?』

その口調に反してランスの顔に余裕はなく、むしろ引き攣ってさえいる。

『独裁結構。安全で快適な研究環境さえあればどーでもいいわ。さ、私の安息のためにまずはあなたたちから消えて無くなって頂戴な。』

光が降り注ぎ、同様に跳んで躱そうとするジュラだったが、今度のそれはこれまでとは比較にならないほど大きく、研究所そのものを丸ごと消し去ることが可能な程であった。

そのことに気づいた彼が死を覚悟した瞬間、光は大きく横へ逸れて森林へ着弾し、大木が数十本舞い上がる大爆発を引き起こした。

その破壊力に絶句するジュラたちの耳にノイズ混じりの音声が届く。

『オウ、オマエラ生キテタカ。とかげ野郎モ大概シツコイモンダ。負ケタヤツガウダウダ言ッテンナヨナァ。』

声はランスの腰ポケットから聞こえてきていた。

『もしかしてアミン⁉︎アミンなの⁉︎よかったー生きてて!私てっきり何かあったのかと…』

『マッタク、連絡スンノニ手間取ッタゼ。使エル通信機ガ白モヤシノフッルイノシカ無クテヨ。』

『あら、さっきの妙な干渉はあなた?喜んでるとこ悪いけど、一度照準妨害に成功したからって次は学習してよりシステムが強固になるだけよ。ま、どちらにせよあなたたちは詰みということ。』

『アア、ソーダローナ。ダカラ代ワリニまざーこんぴゅーたノ魔力供給ニ関ワル部分ヲブッ壊してキタ。アレ、自分を削ッテ撃ッテルダロ?供給ナシデドレダケ持ツカ見モノダナ。』

『んなッ…コイツ…!』

冷や汗を流すクイーンを無視してアミンは3人に呼びかけた。

『全員冷静ニナレヨ。ソウ何発モハ落チテコネェ。魔力ぷろてくとヲ逆ニ利用シテヤレ。健闘ヲ祈ル。』

光は降り注ぎ続けていた。

しかし、ジュラとランスはイオンの指示に従って魔力プロテクトが残る機械の残骸を渡り歩いて手傷を負うことなく生き延びていく。

そんな状況にクイーンは例えようのない焦りを感じていた。

『どうする…?私も危なくなるが、プロテクトを解除すべきか?このままではスターフルーツがもたない…』

迷いに迷った彼女はドラゴンズメテオの残弾数1、それが放たれた直後のタイミングでそれを解除することを選んだ。

彼女が手元のコントロールパネルを弄ると3人の周りを取り囲んでいた魔力プロテクトがかき消され、無防備となる。

クイーンが勝利を確信した時、始めからそうする気であったかの様にすかさずジュラが呪文を唱えた。

『【プロトン】!この時を待ってたぜ。』

一瞬焦るクイーンであったが、彼等の頭上にできた盾はあまりに弱々しく小さい。

『ハン!その鍋の蓋にもならなそうな盾で何を防げるのかしら⁉︎』

『ああ、十中十二くらいで防ぐのは無理だろうな。だから、こうすんだよ。』

ジュラは盾を傾け、傾斜を作り出す。

光を受けた盾に大きくヒビが入り軋むが、直撃は避けていたため壊れるには至らず角度を変えて逸らすことに成功したのだ。

そして、光の行き着く先には自らプロテクトを解除したクイーンがいた。

『あ、え…?』

巻き起こった爆発は洞窟全てを揺るがし、瓦礫の嵐を巻き起こした。

幸にして作っておいた盾によって瓦礫は防げたらしく、片手を上げて盾を支えていたジュラの口元から溶けかかった錠剤がこぼれ落ちる。

先程イオンが使用していたランス製肉体強化薬の残りであった。

『ふふ…俺にも効いてよかったぜ…』

青空にもう星は輝いていない。

スターフルーツとの闘いは今この瞬間完全に決着したのだ。

しかし、緊張がほぐれ座り込む彼等を世界はそう簡単に祝福してはくれないらしい。

 

『お前たちィはよくやったァ…だから、誇って死んでいけヤァ。』

声の主は体の大部分を失い、リフトの下敷きになったはずのヴァニラであった。

その奥には気絶したクイーンを抱えたパラミツの姿もある。

『驚いてもらえたか?俺とヴァニラには自己修復機能が搭載されている。オーバーなダメージを受けても多少時間はかかるが活動可能な状態まで復元することができるということだ。我々の負けは認めよう。だが、生かして帰すわけにもいかない…許せよ。』

ヴァニラが拳を振り上げる。

もはや誰にもそれを受ける力は残っておらず、体を満足に動かすこともできない。

振り下ろされたそれの軌道はまっすぐにジュラの頭を狙っており、彼自身避けようがないことを悟ったその瞬間、その拳は突如現れた黒い人影とそれが作り出したドロリとした何かに阻まれた。

突然の介入に誰もが息を飲む。

静まり返るラボで最初に声を発したのはその人影であった。

 

『この度は私の作品「Dr.C.Fのカラクリ式嘘発見器」を御購入いただき、誠にありがとうございます。性能に関してお問合せの葉書を受け取りましたので馳せ参じました。』

 

そう言い放つ彼の姿はシルクハットから気取った燕尾服、革靴に至るまで全てが黒一色であり、何より顔の中心にはその半分を覆い尽くさんばかりの大きな瞳が1つぎらぎらと妖しく輝いていた。




スターフルーツは指令を遂行できませんでした。

登場人物

大神様
マオウ正伝におけるおおかみさまと同一の存在。

用語集

精霊
自然界にある様々なエネルギーが魔力の作用で塊となったもの。
時に意志や力を持つことがある。

神の杖
マオウを封印するための術式。
現在管理しているのは地上と冥界に住まう四方神で、特に冥界は要となる。
術式そのものが常に変化し続け決まった解法が存在しない。

Dr.C.Fのカラクリ式嘘発見器
謎の黒い人影が暇つぶしに200個ほど作ったらバカウケした嘘発見器。
メカニズムは企業秘密。
正答率は驚異の100%!
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