魔剣王正伝   作:プルプルマン

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オリジナル作品を作るのは初めてなので、結構ワクワクしております。
設定等拙いところがあると思いますが、どうぞご容赦くださいね。


その日、空は渦巻いた

その日、地界の空は今にも落ちてきそうなほど黒く染まり、轟音をたてながら渦巻いていた。

重い鉛の様な灰色の雲が空の一点に向かって渦を巻き、その異様な流れによって生まれた静電気は赤黒い雷となって時折空を灼いている。

まるで、世界の終わりの様な光景に人々は何事かと恐れ、パニックに陥っている場所も珍しくなく、生を謳歌する動物達も本能が嫌なものを感じたのか姿を隠してしまっている。

 

その頃、多くの悪魔や魔物が住む「魔界」では…

『魔剣王様、仰せのとおりに術を仕掛けて参りましたが…その、今回のことにはどの様なお考えが…?』

魔界の中心にある巨大な宮殿、その中心部である玉座が置かれた煌びやかな部屋にて、そこに座す「魔剣王」と呼ばれた男にその部下と思わしき顔に大きな傷のある悪魔が問いかける。

『いや、心配しなくて良い。不安になる気持ちはよくわかるが、今回どんなことになろうとも責は全部俺が受ける。お前は命令通りに動いてくれればそれでいい。』

『そ…そうですか、有り難きお言葉です…!』

『よせよ、勝手しといていざ危なくなったら部下を矢面に立たせるなんてことをしちゃあ魔剣王の名折れってもんだ。それに…今回のことは、全て俺がやりたいからやっただけのこと、その責任だけを放り出すってのは情けない話だろう?』

『流石でございますッッ!…あ、それともう一つご報告が…』

『?…なんだ、何かあったのか。』

『ハッ、宮殿内に二名の侵入者です!ただいま近衛兵隊長のカブウさんと近衛兵団が対処にあたっております!』

『そうか…よし、もしもカブウが負けたらここにそいつらを案内してやってくれ。みんなの魔剣王として話ぐらいは聞いてやろうじゃないか。』

『し…しかしッ…』

『しかしも何も、カブウが負ける相手にお前らじゃどーにもなんないだろう?だったらここに連れてきて俺が話を聞いた方が早いし生産的だ。』

『り…了解致しました…失礼します。』

部下が困惑しながらも巨大な観音開きの扉を押し開けて出て行ったことを確認した魔剣王は玉座の背もたれに体を預け、大きく息を吐いて呟く。

『いや、意外と来るの早いな…』

 

 

 

それから、ものの10分も経たない内にその侵入者達と魔剣王は3人で対面していた。

どんなに厳ついのが来るのかとひっそり身構えていた魔剣王であったが、予想に反して侵入者は赤いマントとやや錆びついたチェーンメイルを着込み頭にバンダナをつけた齢15ぐらいの青髪の人間の男と上品な桃色のドレスを着ている身長20cmほどの悪魔の女という線の細い組み合わせだった。

お世辞にも魔剣王の座す城に乗り込んでくるような命知らずには見えないが、見た目と中身の乖離した者などいくらでも見てきた。

故に王は決して警戒を緩めない。

『さて、ずいぶんと俺の家で暴れてくれたらしいが、まあその件については一旦置いておくとして…何か俺に御用かな。』

魔剣王が言葉を発すると、口調は柔らかくそれほど大声でもないというのに侵入者達の体はその奥底にまで響くほどの衝撃を感じ、その背筋を寒気が走りぬけた。

男は思わず唾を飲み一歩後ろに下がりそうになるが、後ろから確かに押される感覚を感じて踏みとどまる。

『×××、ここまできて怖気付いてるなんてあり得ないからね!』

ずっと旅をしてきた小さくも大きな存在の声が聞こえる。

『ご…ごめんよ。ちょっと気押されただけだから!ほら、もう大丈夫…多分。』

そんな人間と悪魔のやりとりを見て、意外にも魔剣王は戯れ合う子犬を見ているかの様にニヤニヤと笑っているだけだった。

その時、初めて魔剣王の姿をまともに見た青年は不思議な感覚に陥る。

彼はその大層な肩書きからは想像もつかないほど若く、少なくとも外見の年齢だけならば自分とさほど変わらないのではないかとさえ思われた。

しかしながら、纏う雰囲気はフレンドリーな好青年を演出しつつ王の重圧をも確かに感じるもので、他者を従わせるのには十分すぎるほどだ。

その見た目と雰囲気のギャップから来るいまいち掴みどころが見当たらないチグハグな印象に酩酊感すら覚えそうになるも、丹田に力を込めて相手を見据え問いかける。

『俺は、地界が一角「カロウエル」の×××!魔剣王に問う!何故地界の空にあんな「魔法」をかけた!それ相応の理由がなければ、お前を倒してでもやめさせるッッ!』

震える声を隠しきれていない青年の問いかけに魔剣王はほんの少しの間だけ目を瞑って黙り込んだ後、静かに口を開いた。

『魔法ねぇ、逆に聞くけどよ…お前らはなんだと思う?イッパツで正解したら魔界で一番美味いスイーツパーラーを教えてやるよ、ヒトケタナンバーの会員なんだ。』

『な、なにをッ!』

若干ふざけた様な魔剣王の言葉に男が憤慨しながらも戸惑う。

しかし王はその反応を無視して更に言葉を続ける。

『良いじゃねーか、少しのおしゃべりぐらいならよ。宮殿への侵入者なんてだいぶ久しぶりだしさぁ。…そういや、そっちの小さい方ってウチの悪魔だろ?人間と悪魔なんてずいぶんとけったいな組み合わせだが、今までどんなことがあったのか教えてくれよ〜』

『そ…それは今関係ないだろ!それよりも、こっちの質問に…』

『あっそ、教えてくれないってんなら俺もお前らに喋ることはねーよ。帰れ帰れ。』

『ま…魔剣王様ってこんな性格だったのね…なんかショック…』

相棒が謎にショックを受けているが、目の前の男を見ているとなんとなくその気持ちも察せられる。

確かにイメージとは違って軽い存在だったが、このまま何も聞かず武力行使に踏み切るのもしのびない。

『ぐ…話せば良いんだろ、話せば。』

馴れ馴れしい魔剣王に対してシャクではあるが今までの経緯をあくまで簡素に話していく。

2年前、悪魔の○○○○が庭に倒れていたこと、彼女は心踊る冒険がしたくて無理を通して地界へとやってきたこと、それから2人で様々な場所を巡ったこと、旅の中で敵味方問わず多くの人と交流したこと、何度も困難を乗り越えて成長したこと…だいぶかいつまんだものの時間にして15分ほどはかかっただろうか?

その話を魔剣王はとても楽しそうに、時には相槌を打ちつつ終始微笑んだ顔で聞いていた。

『なるほどな…いいじゃないか。聞いてるこっちまで胸が躍っちまうぜ。濃厚なロードムービーを見た後みたいな気分だ。』

『こっちの事情は話した。次はお前の番だ!』

青年に追求された魔剣王はサイドテーブルに置かれた写真立てを手に取り、中の写真を懐かしむ様に眺めながら話し始めた。

『我が家…つまり、王家だな。その家訓にはこうある。

【幼い悪魔は人間と共に過ごすべきである】

良いことだぜ、お前らみたいにコンビ組んで冒険するってのはな。』

この男は突然何を言い出すのだろう。

自分達の行動を肯定されて悪い気はしないが、それを言うにはあまりにも突然すぎる。

相変わらず、写真を眺めながら魔剣王は話し続ける。

『また話が脱線して悪いが、なんでわざわざ俺に理由なんて聞くんだ?相手は座ってんだし、黙っていきなり切りかかった方がお前らは有利だぜ?』

『…魔界に入る前、妙な老人に言われたんだよ。今回のことはいずれおさまるから放っておいてはやれないかってな。だから、倒すにしても理由ぐらいは聞いておきたかった。』

『そうか…あのジーさん、そんなことするキャラでもないだろうに…今度礼でも言っとくか。』

魔剣王が何かブツブツと呟いていたかと思えば、徐に声が大きくなり顔を上げる。

『よし!お前ら、ちょっとだけ俺の昔話を聞いてくれないか?なあに、時間はそんなにとらせねーよ。ドンパチする前のほんの余興だぜ。』

突然そんなことを言い出した魔剣王の口から何が語られるのか、いつの間にやら2人は固唾を飲んでその男の方を見つめていた。




【幼い悪魔は人間と共に過ごすべきである】

登場人物

魔剣王
魔界を統べる偉い奴。
自在にどこからでも取り出せる魔剣と呼ばれる剣を一本前後持って生まれてくる一族が世襲している。
因みに、今回登場したのは33代目らしい。

部下
多分これ以降出てくることはないであろう魔剣王の側近。有能

カブウ隊長
魔剣王の兵の中でも特に手練れらしい。
主人からの信頼も厚い。

侵入者達
人間の青年と悪魔の少女のコンビ。
幾度も冒険を繰り返してきたらしい。
強い絆で結びついている。

妙な老人
一体何者なんだ…?
魔剣王とは面識がある様子。

用語集

魔界
悪魔などの住処であるちょっと暗い世界。
そのため、ここで長く過ごしてから地界などへ行くと、しばらくはサングラスが手放せないであろう。

悪魔
生来強い「魔力」を持つ種族で、人間の様な見た目に角や羽が生えていることが多い。
一説には、天界で爪弾きにされた者達の末裔とも。

カロウエル
地界にある国の一つ。
華の国と称されるほど煌びやかな服や建物が多く、その面積の6割を花畑が占めている。

魔法
大気中や生物の体内などに存在する、魔力を利用して任意の効果を得る技術のこと。
一度に扱える魔力量や使用方法など、設定を全部説明していてはスペースが足りないので、作中で少しずつお見せします。
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