みんな大好き悪童の花見真が呪術廻戦の世界に転生する話
自分が自分じゃないことに気づいたのは赤ん坊の頃、それも生まれてすぐのときだった。
「でかした、呪力持ちで男児だ」
そんなことを言われて生まれてきた自分。まだうっすらとした光がはっきりと像を結んだ時見えたキモグロイ「怪物」。広義的な意味で「呪霊」、と呼ばれるそれを視認した途端に溢れ出す在りし日の思い出。そう、自分はこれに見覚えがある。
気まぐれで仲間――あいつらを″仲間″と形容するのは鳥肌が立つことだがチームメイトでは関係性が遠すぎるので――の中でも随一の残酷さを持つ男がフーセンガムを膨らましながらオススメしてきた漫画。
「光系主人公が曇らせられるの、好きっしょ?」
なんておちゃらけた口調で渡された十数冊の単行本。
そのタイトルの名前は、呪術廻戦。
白昼夢と言われた方がマシなあまりの現実に優秀と自負している頭が硬直するのを知らず、
記憶にあるより黒髪の残るたっぷりとした髭をはやした好々爺、つまり父親である禪院直毘人は言った。
「お前の名前は直哉だ。せいぜい禪院の名に恥じぬよう精進しろ」
この日、全国統一模試一位、学年首席、霧崎第一バスケ部主将兼監督。
悪童花宮真は人生において初めてキャパオーバーというものを知った。
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この世は言わずもがなクソ。
呪術界はもっとクソ。
花宮真はそんなことを死んだ目で思った。
その赤銅色の瞳に映るのは今まさに殴られようとしている人間。花宮づきの侍女だ。
男尊女卑蔓延るこの呪術界、女性の地位がこの上なく低い禪院家に置いて珍しくない光景だった。
戯れにそのようなことが起きるのは。
女性。母子家庭だった花宮にとって女性とは侮れないものである。それは女手1つで生意気な己を育て上げた母や、会話をしたことのある高名な女教授や研究者を見ても言えることだ。
才能に性差は関係ない。
そんな花宮にとって男尊女卑とはあまりいいものではなかった。はっきりいって不愉快に価するものである。
男は花宮の冷たい視線に気づかず、侍女に拳を振り上げた。
あの女、なかなか使えるしな。
歳若い割にくるくるとよく働く侍女の姿を思い出す。物怖じしない態度で本家の者に接することの出来る人材だ。恐らくそれが癪に障ったのだろうが。
しょうがない。人助けじゃなくて人的資源は大事だからな。
「ねえ、そこで何してはるん?」
幼い関西弁が響いた。世話役の影響で「禪院直哉」は関西弁を喋る。某サトリを思い出すような方言。最近舌っ足らずでなくなったそれが威圧感を灯すのを見て上出来だな、とおもった。
「ひっ、直哉様!こ、これは」
「その子、俺のとこの子なんやけど」
使えなくなったらどうするつもりだ、という言葉を飲み込んで睨みつける。禪院当主候補に男はすごすごとひいて言った。
「大丈夫ですか?」
「直哉様、ええ、怪我はございません。
助けていただきありがとうございます」
「気にせんでええよ。美人さんに傷がついたらえらいことやからな」
「そのような…」
まぁ、といった顔になる侍女。家でろくな扱いを受けていなかったのか信じられないような顔をしている。目の膜に水が張るほど感激しているらしい。
あぁ、
不愉快だ。
表情には出さずにそう思う。
俺に媚びへつらう分家の男たち。
女と言うだけで母すら蔑視する家のものたち。
非術師を見下す呪術師たち。
この家にいるのは汚くて無価値で無能ばかり。
息をする事に自分が汚染されていく気がした。
本当に、
気に食わないな。
だから。
こんな家、ぶっ壊してやる。
その日、花宮真――否、禪院直哉はそう心に誓った。
**********
禪院甚爾がその子供に出会ったのは、夏の日のことであった。
家の者たちも立ち入らぬような屋敷の外れ。
物心着く前から物置部屋よりも狭いそこに押し込められていた甚爾は、その日躯倶留隊(くくるたい)に呪霊の囮として使われたせいで満身創痍で転がっていた。たまにくる侍女――甚爾の顔に血迷った女だ――が包帯を持ってくる以外には傷を癒すすべもなく、肩からダラダラと流れる血を止めようとなけなしの着物を裂こうとしてポンポン、と叩かれた。
気配がしなかった。
びくりとして振り返るとそこには子どもがいた。
その小さな手には似つかわしくない大きな救急箱を持って。
「おにーさん、大丈夫…、じゃないな。これ、使うか?」
思わず怪訝な顔をしてまじまじとその少年を見る。
話しかけてきた京都弁訛りの少年を、甚爾は知っていた。
「……なんの真似だ」
だから、警戒した。
禪院の中でも最も恵まれた子供を。その少年――禪院直哉が己に優しくする理由がわからなかったからだ。自分は猿だ。ニンゲンサマの慈悲もすら与えられぬものだ。
「なんで怪我してる奴を心配したらアカンねん」
半分呆れたように言われて驚く。
そんなことを言われるとは思わなかった。禪院家で「この家」こんなに親切にされたことは無い。正直、生まれて初めての労りだったと思う。
どうしていいのか分からなくて黙りこくった甚爾に、直哉は焦ったように言った。血がダラダラと垂れていて貧血をおこすんじゃないかと気が気ではなかったからだ。
「おにーさん。貰えるもんは貰っといた方がええよ。なんにも要求せんから。でないと倒れてまうよ」
あわあわとする子供。
それでも動かない甚爾にしびりを切らしたように助けを求めた。
「なぁ〜、やっぱ無理やって」
斜め後ろに向かって話しかける。
いつからかそこにはもう1人、子供がいた。
直哉とは正反対の無表情で答える。
「ずっと話しかけたがってたじゃないか。今日だって心配して自分の救急箱を持ってきたくせに」
「せやかてお前。要らんお節介っ言葉があるやろ?」
「じゃあ命令でもしてみたらどうだ」
「命令てお前。何様やねん」
「おしい!なんでやねんが出なかったとは」
「俺で遊ぶなや!」
ぽんぽんと交わされる会話。使用人らしい少年と気さくに話す直哉に警戒するのは無駄だと思わず脱力した。
「はァ。おい坊主」
ため息をついた。話しかけられたことにパッと顔を喜ばせた直哉はなになに?と目を輝かせてこちらを見ている。
なんでこんなに懐かれているんだか、と思いながら礼を言いつつ救急箱を受け取って消毒を始めた。
怪我の手当など手馴れたものだ。
少年たちはそれを見て「慣れとるな」「かかりつけ医のじいさんよりも上手いんじゃないか」などと話す。
「なぁなぁ、質問してもええか?」
「治療が終わるまでな」
すっかりその様子に毒気が抜けてしまった甚爾は答える。絆されたともいえた。
「おにーさん、この家で1番強いのになんで出ていかんの?」
思わぬ問いに包帯を巻く手が止まった。
「あ?」
「だってそんなん猿でもわかるやろ、なぁ?」
「この家で親父よりも強いんはおにーさんやろ?
なんでこんな家ぶっ壊さんのや」
「……お前、この家嫌いか?」
「おん。せやから不思議やねん。おにーさんがこの家壊さん理由。自分を認めんヤツら全部ぶっ飛ばせばええやんか。
自由に生きれば、ええやんか」
目から鱗が落ちる思いだった。
そんなこと、考えたこともなかったので。
「それとも何か、縛りでもしてはるの?」
どこまでも純粋に、その質問をする子供。
生家を嫌い、厭うイカれた子供。
その目に己はどう映っているのだろうか。
「……俺は、人間か?」
「?、当たり前やろ。こんな男前なひと、俺初めて見たわ」
その答えにふはっと笑ってしまった。この年でこいつ、面食いかよ。
ひとしきり笑った後――生まれて初めてこんなに笑った――こちらを見てくる黒くて丸い瞳を見て思わず頭を撫でる。
こんなに愉快な気分は久しぶりだった。
「ありがとな」
それに少年はにんまりと笑ってこう言った。
「どういたしまして」
甚爾が出奔したのは、その翌日の事だった。
********
「あーあ、仲良うなれる思たのに」
「そりゃあんなこと言ったら出ていくだろ」
「その情緒が俺にはわからんわ」
「いい人材なのにな。この家をぶっ壊してくれないかと思ったが。振り出しか」
「落ち込んだってしゃーないわ、それよりお前。
おにーさんがもってった呪具の確認せんといかな」
「あれ、残ってるといいが」
「あないなもん持ってくわけないやろ」
「」
現状抗う思考すら放棄した木偶の坊「猿」に使えるわけねえだろ
********
「虚式 : 茈」
衝撃。
身体に、穴が空く。
致命傷を負ったこの身に溢れ出す走馬灯。
『恵をよろしく』
笑った、笑って逝った顔。
あの光景。
そして、
「なんで、今、思い出すんだか」
あの腐った家に置いてきてしまった従兄弟。
『とーじくんは強いんやから!誰よりも自由や!』
もう、遅い。
あの時持ってきてくれたように、致命傷を癒すすべはない。
だから、ほら死神「ニンゲンサマ」が言う。
「最後に、言い残すことはあるか?」
「……ねえよ」
「2、3年もしたら俺の子供「ガキ」が禪院家に生まれる」
「好きにしろ」
「あと、」
「くそ生意気なガキ「直哉」によろしく言っといてくれ」
禪院にあいつがいるならマシな扱いを受けるだろうが、それはきっと、あいつにとって負担になるだろう。
俺は結局、猿のまま。
人間になれなかった。「自由に生きれなかった」
――――――――――
「以上がアイツの最後」
「おおきに。悟くん」
「先輩って呼べや」
いつも通りの軽口をたたこうとして、震える肩を見る。口元を手を覆い、俯いているせいで表情は見えない。
男を殺した人間に悼む涙を見られたくないだろう。
そのままそっと、彼の部屋から退出した。
「そんなに大事だったのかねえ」
頭の後ろで腕を組んで思う。
呟いた言葉がやけに響いて、頭を降った。
今日は厄日だ。
*********
禪院直哉は五条悟の同志だ。
「六眼」と「無下限術式」の抱き合わせ。
五条家の至宝として生まれた五条は、鳥籠の中で育った。
ペコペコとするばかりの大人たちに囲まれて育った五条はある日、初めてできる友と出会うことになる。
数ヶ月に1回開かれる御三家の集まり。
禪院家に訪れた五条は飽き飽きしながら会合に出席していた。
そこで紹介されたのが禪院直哉である。
初対面の印象はいい子ちゃん。
ニコニコしながら嫌味を受け流し、相手を誉め煽て、それでいて自分の家の主張をはっきりと通す次期当主の鏡のような姿勢。逆に自分が褒められれば謙遜し、権力好きのじじいどもに可愛がられる始末。
そんな相手と歳が近いもの同士、仲良くしなさい「……」と庭先に出された時は最悪だった。
あーあ、
「なんでこないなことせなアカンかんねんジジイ」
驚愕に目を見開く。
横をちらりと見ると優等生ズラはどこへやら、面倒くさそうな顔で庭を眺める少年。
はぁ、とかったるそうに溜息をついたあと、彼は言った。
「じゃ、俺はいくわ」
「は?どこに」
「何言うてんねん。ここ俺ん家やで、部屋に帰るに決まっとるやろ」
「言いつけはいいのかよ?」
「オッエー、何君、いい子ちゃんなん?
んなん、仲良うしたなさそうな相手に親切にする程暇じゃないねん」
「は」
「じゃ、ほなまた」
初めて言われたことだった。
邪険にされたことも、対等な口を聞かれたのも初めてで。
だから、その着物の裾を掴んだ。
「俺の相手しろ」
**********
「禪院直哉いいます。よろしゅう」
「直哉じゃん!!なんで高専にいんの?!」
あれからなんだかんだ仲良くなった五条たちはいわゆる幼なじみという間柄になった。
直哉は相伝を継いではいるものの十種影法術では無いので五条より自由な暮らしをしていた。
彼から様々なことを教わったし、色々な遊びを共にした。
そんな相手が高専にいるので驚いた。
禪院の者は基本的に高専に所属しない。
あの家は家の中で全てが完結しているのだ。
「いややなぁ、そんなん俺が上目遣いしたら1発に決まっとるやないの」
「ハハッそういうことかよ」
この幼馴染は猫被りが大の得意だった。好青年といった見た目とは裏腹に術師としてイカれた側面を持っている。大方、それで家の者をだまくらかしてきたのだろう。
でも、でもだ。
「その髪、ナニ?」
「似合うやろ?」
そう言って笑った男の頭は、金に染っていた。
*******
「悟くん、君は夢、ってある?」
「何?青春トークってやつ?」
「質問を質問で返すなや。まぁ、そんなとこ」
「お前は?」
「んなもん、決まっとるやろ。
実家をぶっ壊すんや。あんな家、潰れた方がええ」
「ふーん、マ、うちよりもひでえからな。お前ん家」
「保身のことしか考えてない馬鹿も術式だけが取り柄のグズも要らんねん」
「俺は、実力主義なんよ」
「へぇ、奇遇だな」
「?、何が」
「俺の夢も、上層部に改革を起こすことなんだよ」
「うわ、被ったわ、最悪」
「おいおい、そこは一緒に頑張ろうねっ言うとこだろ、オエッ」
「自分で言ってて嘔吐くなや!」
*********
歩いてきた。
灰原が死んで、傑が離反して、七海がやめて、
………………傑を殺して。
どんなに仲間が減ろうとも、共に歩いてきた。
直哉だけが、隣にいた。
隣で馬鹿をやって、笑って、殴りあって、
ずっと、隣にいたのだ。
お互い教師になって、
こいつとなら、夢を叶えられる。
そう思って。
そう思っていた。
************
「おやすみ五条悟。新しい世界でまた会おう」
高らかに、夏油傑に入っている男は宣言した。
嘲笑うように。
晴れ晴れとした表情で。
あぁ、しくじった。
「や、悟」
そう言って現れた、傑の身体を持った呪詛師に、反応出来なかった。
気がついた時には既に手遅れで。
この身は囚われていた。
獄門疆が閉じられようとしていく。
「閉門」
ブラックアウトしようとして、カチリとそれが止まった。呪物に対しての呪力供給が止まったからだ。
「ちょっと待てや」
そう言って、現れたのは一人の男。
既に満身創痍な体。左腕はちぎれかけている。
足も痙攣しているのを気合いで押しとどめている状態だ。
しかし、その右腕は偽夏油の心臓部を穿いていた。
「――なっ」
「何故禪院直哉がここに!?」
「そうやな。死ぬはずやったのにって?
特別1級術師に特級三体の任務ぶち当てるとか、ホンマ、大したことしてくれはるわ」
「まぁそんなんどーでもええねん。俺はここに間に合った。それが全てや」
「そんな満身創痍で何が出来る?君の後ろには真人もいるのに?ご自慢の速さもその足じゃ逃げれっこないだろう」
「せやな。知っとるか?特級の術式でもう、内蔵の大半がやられてんねん。反転術式でも間に合わんくらいの重症や」
「やからな、俺、これしか方法がないねん。
堪忍してな?」
膨大な呪力が練られ溜まっていくのを見た。
それらは全て、心臓部に集まっていく。
そして集められた呪力は溜まりに溜まって一気に溢れだそうとしていく。
何をしようとしているのか悟った。
叫ぶ。
動かないこの身が羨ましい。
「おい直哉!!やめろ!!!!」
「じゃあな、悟くん。
あとは、頼むで」
収縮。そして、爆散。
辺にいた呪霊と、偽夏油を巻き込んで。
『頼むわ悟くん。呪術界、ぶっ壊してくれや』
残ったのは、返り血まみれの最強だけだった。
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――――――――――――
こんな家、ぶっ壊してやる。
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「んなワケねぇだろバァカ。そんなめんどくせーこと、誰がするかよ」
ふはっ、と特徴的な笑い声を上げて花宮真は、嗤った。
花宮真が転生を受け入れて最初に思ったことは、呪術師をどう辞めるか「……」だった。
だって、花宮の生きがいは「人「イイコチャン」の不幸を楽しみ、笑うこと」だ。呪術界にはいい子ちゃん――善人なんぞ希少種。すぐに潰されてやめるのがオチ。それはつまらない。それでも胸糞悪いやつが破滅していく様子は悪くない。花宮をつい先日襲った男など庭の鯉の餌にしてやったくらいだ。
最初は、カカオチョコ1gほど思っていたのだ。
上にいる豚共を引きずり下ろすのも悪くない、と。
ふんぞり返っている旧型のくそ野郎どもをコケにするのもいいのではないか、と。
しかし、そんな思いもすぐに掻き消えた。
なぜなら、
「この度、禪院家に仕えることになりました。
古橋康次郎と申しま……花宮?」
そう、霧崎第一の連中がいたからである。
しかもよりによってレギュラーが全員。
古橋は側仕え。瀬戸はお抱え医師の孫息子。
松本は護衛の一族。山崎は分家の跡取り。
そして、原は、呪詛師の息子。
何がやばいって原である。原は秘匿処刑一歩手前で術式目当てに家に連れてこられたのだ。
花宮がようやく会えた時は原は衰弱しきっていた。
花宮は猫をかぶりごまをスり時には脅し、原の権利を奪い取ったのである。
ようやく全員集合した彼ら。まず初めにすることは今後の方針を決めることだった。
「いい子ちゃんが少ない」
「でたお花の持病」
「てか1人だけ成り代わり草」
「てか改変する?」
「渋谷事変は食い止めよう。どさくさに紛れて外国にでもランデブーしようぜ」
「なんで?ぶっ壊せば「思想ってのは根深いもんだよ。壊しきるまでに俺たちが死ぬ。それじゃつまらないんじゃない?」
「それに」
「「「「五条悟「天才」、嫌いなんだよな」」」」
「お前ら……」
「でも嫌がらせはしてくぞ」
「「「「「おう」」」」」
こうして、原作に支障が出ない程度に禪院直哉を演じることになったのである。
目標は渋谷事変で死ぬこと。
五条悟「天才」の前で死ねたらベストだ。
その為には東京に拠点を置かねばならない。つまり、東京高に入学するのだ。
円滑な人間関係のため、五条悟に近づき程よく仲良くなる。いい子ちゃんでは好かれないだろう。
少し猫を剥がした状態で接すればいい。
幼なじみと呼ばれるほど仲良くなったのは誤算だったが。
同級生となった灰原の死、星奬体の失敗――禪院甚爾がなかなか出ていかないのでけしかける羽目になった――、夏油傑の離反。
それらを乗り越えて目の前で幼なじみに死なれる気持ちはどんなだろうか。
最強を自負する男がことごとく失った気持ちは?
「花宮すっごく悪い顔してるな。そんな表情もいい」
「でた花宮厨。そーいえばなんで事変は改変するの?」
「ふはっ、んなもん1000年かけた計画がぐちゃぐちゃにされた男の面がみてえからに決まってんじゃねえか」
こうして、蜘蛛の巣は張られていったのだった。
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「じゃあな、悟くん。
あとは、頼むで」
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「たーまやー!!」
「いやーよく飛ぶな」
「瀬戸の術式、身代わり人形だっけ?よく出来てんねー」
「六眼も欺くとはな」
「お前ら、移動するぞ」
「お、花宮髪戻したのか。……そういえばなんで染めてたんだ?」
「禪院直哉が金髪だって印象づけるためでしょ」
「そう。ザキ、ちっとは頭使えや」
「うるせーIQ高杉共!」
「じゃあ、行くか」
「行先は?」
「まずはクアラルンプール。七海健人が行きたがってたからな」
「うわ、クズ」
「ふはっ今更かよ」