ドラえもん リピーターエディション   作:やまもとやま

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最終話、恐竜の卵

 チーム「ジャイアンズ」に心強い助っ人が2名加わった。

 

「えー、本日は我が永遠のライバルチラノルズとの重要な試合だ。新しいスタメンを発表する」

 

 ジャイアンはそう言うと、実に個性的になったメンバーを発表した。

 

 1番 ペコ    サード

 2番 骨川スネ夫 セカンド

 3番、出木杉杉男、ショート

 4番 剛田武   ピッチャー

 5番 ドラえもん、キャッチャー

 6番 キー坊   レフト

 7番 金尾溜   センター

 8番 山尾昇   ファースト

 9番 野比のび太 ライト

 

 源しずか        マネージャー、チアリーダー

 リルル・アントワネット マネージャー、チアリーダー

 

 スタメン9人中に、犬、謎の植物、猫型ロボットが入るという奇妙なメンバーだったが、不思議なことに違和感がなかった。

 

「ペコはな、誰よりも速く走ることができる。我がジャイアンズの1番打者に任命することにした」

「でも、犬がバットを握れるの?」

 

 スネ夫が尋ねた。

 

「打ってもアベレージヒッターだ。おれの剛速球を難なく打ち返せるほどだ」

 

 ジャイアンの飼い犬になったペコは前足でバットを持つと、器用に振るってみせた。

 

「すごいね。とても犬とは思えないや」

 

 スネ夫はそう言って感心した。

 たしかに、ペコはどことなく犬らしくないところがあった。挙動の1つ1つが人間に酷似していた。

 

「おっ、来たぜ。チラノルズの野郎」

 

 ジャイアンは河川敷の球場にやってきたチラノルズのメンバーをにらみつけた。

 チラノルズのキャプテン、寺野は大柄な男だった。

 寺野はジャイアンと向かい合うと、ジャイアンより一回り大きな体で見下ろした。

 

「ジャイアン、最近新しい助っ人が入ったらしいな。どこのどいつだ?」

「ペコとキー坊だ。助っ人が入ったからには前のようには行かねえぜ、寺野」

「こいつらか?」

 

 寺野はあっけにとられた。助っ人は謎の植物と犬。

 

「おい、ジャイアン、ふざけてるのか? 犬に木にタヌキ。そんなんで野球ができんのか?」

「僕はタヌキじゃないぞ。猫だ!」

 

 ドラえもんは反射的に二人の間に入って、そう主張した。

 

「何でもいい。ともかくそんなギャグみてえなチームでどうにかできるなんざお笑いにもなりやしねえぜ」

「なら決着をつけようぜ。どっちが上か、目にもの見せてやる」

「ふん、面白い。なら、ジャイアン、賭けようぜ。負けた方が目でピーナッツを噛むってことでどうだ?」

 

 寺野はよくわからないものを賭けた。

 

「おもしれえ。負けた方が目でピーナッツを噛む。負けたらやってもらうからせいぜい今のうちに練習してな」

 

 こうして、ジャイアンズとチラノルズの試合が始まることになった。

 

「おい、お前ら。いいな、今日の試合は絶対に負けられないからな」

 

 寺野がメンバーにそう激を飛ばしたが、メンバーは誰も聞いていなかった。

 

「なあ、ジャイアンのチームのマネージャーの女の子、かわいいよな」

「ああ、勝ったらどっちか一人もらえるってんならやる気も出るのにな」

「うらー、お前ら、真面目にやらんか。手加減したら承知しねえからな」

 

 寺野はまるで恐竜のように大きな声を上げた。

 

 ◇◇◇

 

 試合は予想外の展開を見せた。

 ギャグかと思っていた「1番、ペコ」が寺野の125キロの剛速球を打ち返すと、いきなりランニングホームランで先制。

 ペコは鋭い打球で左中間を破り、人間離れしたすさまじいスピードでベースを回り、あっという間にホームに到達した。

 

「さすが、ペコ。お前は間違いなくジャイアンズの切り込み隊長だ」

 

 ジャイアンはペコを抱きしめて喜んだ。

 

「よーし、続け、スネ夫!」

 

 しかし、2番スネ夫は平凡なセカンドゴロで凡退。

 それでも、ジャイアンズ打線は強力で、続く出木杉が一塁線を抜く技ありの二塁打で出塁すると、ジャイアンが打席に立った。

 

「くそう、このおれが初回から失点するとは、何試合ぶりだ」

 

 寺野はマウンドで焦りを見せていた。

 

「おりゃあああ、ジャイアンスイング!」

 

 ジャイアンは寺野の投げた高めの速球を豪快に引っ張った。

 そのボールはホームランゾーンである草むらの中に消えて行った。

 

「いよっしゃー!」

「さすがジャイアン!」

 

 ジャイアンは両手を上げてダイヤモンドを一周した。

 

 続く、キー坊も子供のように小さかったが、信じられないパワーを見せてのホームラン。

 助っ人が次々と活躍した。

 

 守備でも、ペコの鉄壁の守りが光った。チラノルズ打線から繰り出される三塁線の打球を、ペコは完ぺきにさばき、得点を許さなかった。

 のび太のエラーなどで失点は募ったが、投打で圧倒したジャイアンズが14対8でチラノルズを下した。

 

「ば、馬鹿な、俺様が弱小ジャイアンズに負けるなんて」

「おい、寺野。約束だ。目でピーナッツを噛んでみろ」

「ぐぬぬ、その約束はお預けだ。野郎ども、帰るぞ」

 

 寺野は目でピーナッツを噛むことなく、メンバーを連れてさっさと帰って行った。

 これまで最下位に沈んでいたジャイアンズだったが、浮上のきっかけとなる試合になった。

 

「諸君、よくやってくれた。この調子で勝ち進み、今年こそは優勝の頂に上り詰めようじゃないか」

 

 ジャイアンは機嫌よく、メンバーをねぎらった。

 

「では、恒例のボール拾いだ」

 

 河川敷での試合ということで、外野に転がったボールのいくつかは草むらの中に消えてしまった。

 アマチュアの少年野球ゆえに、そんなに頻繁にボールを買い替えることはできないので、ロストしたボールをみんなで探し回るのが、試合後の恒例になっていた。

 

 ジャイアンは嗅覚のいいペコと共に草むらに入り、のび太はキー坊と共に、しずかはリルルと共にそれぞれ分け入って行った。

 

 スネ夫はその日、ノーヒットだったということで、気落ちしていた。なので、一人で草むらの隅っこを目指した。

 

「あー、やはり孤独はいい。この静けさだけが僕の心を癒してくれる」

 

 スネ夫はそんなことを言いながら、メンバーの笑い声を背に川の流れに目を移した。

 

 そのとき。

 

 スネ夫はとんでもないものを目撃することになった。

 スネ夫の視線の先に、存在するはずのないものが顔を出した。

 

「き、き、き、き……」

 

 スネ夫は声を震わせた。思ったように声が出なかった。

 川の水面から顔を出した謎の生命体はジロリとスネ夫のほうに目を向けた。

 

「恐竜だーーーーー!」

 

 スネ夫はそう言って叫んで、しりもちをついた。

 

「助けてー、恐竜だ。恐竜が出たんだよ」

 

 スネ夫は目を閉じて懸命に叫んだ。

 すぐに、ジャイアンとペコがやってきた。

 

「どうした、スネ夫」

「ジャイアン、恐竜が出たんだよ、あそこ、あそこに」

「恐竜だぁ?」

 

 ジャイアンはスネ夫が指さしたほうを見た。しかし、そこには何もいなかった。

 

「どこだよ?」

「あ、あれ? たしかにいまそこに恐竜が」

「なに寝ぼけてんだよ、まったく」

 

 ジャイアンはそう言って笑って、スネ夫の背中を叩いた。

 

「寝ぼけてないよ、本当にいたんだよ」

「恐竜がいるわけないだろ」

「本当にいたんだよ、本当だよ」

「じゃあいなかったら、目でピーナッツを噛めるか?」

「そ、それは……」

 

 スネ夫はさすがにおとなしくなった。

 

「恐竜なんていねえよ。さっさとボールを探せ。あと4つだ」

 

 ジャイアンはそう言うと、草むらのほうに戻って行った。

 ペコはあっけに取られているスネ夫をしばらく見たあと、もう一度川のほうに視線を移した。

 そこには何もなかった。

 

 ◇◇◇

 

 同じころ、のび太と草むらの中をまさぐっていたキー坊が何かを見つけたようだった。

 

「きーきーきーきー」

「どうした、キー坊」

「きーきー」

 

 キー坊は草むらの中にあった土に包まれた丸い岩を指さした。

 のび太はそれを両手で抱え上げた。

 

「なんだろう? 卵みたいな形してるけど」

「きーきーきー」

 

 キー坊は何かを警戒するように騒ぎ立てた。

 

「ただの岩だよ」

「きーきー」

「気に入ったのかい? じゃあ、持って帰ろうか」

「きーきーきー」

 

 キー坊は肯定というよりは否定するように、しばらくの間騒いでいた。

 

 ◇◇◇

 

 しずかはリルルと共に草むらの中を探していた。

 二人は色々と会話をしながら捜索していた。

 

 話がちょうど、将来の夢についてになり、しずかは将来の夢を語った。

 

「私の将来の夢はね、外交官になることなの」

「外交官?」

「ええ、そう言うと、みんなは変な夢だって言われるんだけど、私の子供のころからの夢なの」

「どうして外交官になりたいの?」

「世界平和を実現するため」

 

 しずかは将来の夢の先にあるもっと大きな夢を語った。

 リルルは外交官の夢以上に、世界平和という言葉に首をかしげた。

 

「いま世界中で戦争が起こってるでしょ。だから、そうした紛争を解決する力になれないかなと思って。戦争のない世界になったら、きっと素敵だと思うの」

「……」

 

 リルルはもう一度首を傾げた。

 

「どうして戦争のない世界が素敵だと思うの?」

 

 リルルは割と真剣にそう尋ねた。

 

「だって誰も傷つくことがなくなるもの。戦争の悲劇を繰り返してはならないと思うわ」

「戦争がなくなれば、悲劇がなくなるの?」

「そう思ってるけど」

 

 しずかもリルルの調子に違和感を覚えた。

 リルルはおかしそうに笑った。

 

「ごめん、別にしずかの夢を壊すつもりはないけど、戦争が無くなることはないと思うわ」

「え、どうして?」

「わからないの? 歴史が証明しているじゃないの。戦争をしなければ、人の欲望はどこまでも高まって、ゆくゆくは宇宙のすべてを自分のものにしようとするでしょ? そんな欲望の塊みたいな人間を定期的に掃除しなければ宇宙の秩序は保たれないわ」

「……」

 

 しずかはリルルの言葉に恐怖を覚えた。

 

「欲望に囚われて我を失ってしまうのが人間。だから、私は人間を押さえつけるためにも戦争は必要だと思うわ。いえ、押さえつけるだけではわからない人類には、滅亡というものが必要かもしれないわ」

 

 リルルはいつもとは違う目の色を見せた。

 

「いずれわかるわ。人類の行く末が。10年後には、この地に人はいなくなってるでしょう」

「……」

 

 リルルとしずかはしばらく見つめ合っていた。リルルの目には破滅の意思が浮かんでいて、しずかはその意思を感じ取っていた。

 

「でも、しずかは面白い人だから、サンプルとして生き残らせてあげるわ。楽しみにしているわ」

 

 しかし、すぐにいつもの少女の目に戻り、笑みを浮かべた。

 

 ◇◇◇

 

 その夜、リルルのもとにメカトピアから通信があった。

 リルルは東京タワーのてっぺんでその通信を受け取った。

 

「リルル、遅れたが、いまジュドを転送した。最近、亜空間のところどころが不安定だ。約7万年前の中国大陸あたりを震源に亜空間の爆発があったんだ。その影響か、時空が乱れている」

「最近、東京にも時空嵐が起きたみたい。何者かが意図して亜空間を破壊したのかもしれないわ」

「やはり地球というのは一筋縄にはいかん。逆に言うと、それらをすべて掌握したとき、メカトピアは真の宇宙の帝王となる。リルルよ、引き続き調査に当たるのだ」

 

 通信が切れると、リルルの上空から小さな球形のものが落ちて来た。

 リルルはそれを手で受け取ろうとしたが、その瞬間、突発的な爆発が生じて、リルルはその衝撃でタワーから弾き飛ばされた。

 

「あ!」

 

 リルルは飛行能力があったので、問題なかったが、受け取ろうとしたものを見失ってしまった。

 

「ダメです。ジュドの電波を受信できません」

「消えた? こんなときに時空の乱れの影響を受けるなんて」

「少なくともこの年代にはジュドの電波はありません。どこかの時間にタイムスリップした可能性が濃厚です」

「まずいことになったわ」

 

 リルルはそう言いながら、東京タワーを離れた。

 

 

 プロローグ編終わり。

 

 現在、恐竜編の執筆が進んでいます。恐竜編開始までしばらくお待ちください。

 

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