娼女人形は罅割れない ~手も足も無いけど笑顔はあります!~ 作:白臼
ハイヴェルド大公領、公都ジョンズバーグ。
大公領はアーシルファ帝国五大領邦の一角に数えられるだけのことはあり、その隆盛ぶりは帝国首都にも引けを取らない――――いや、皇帝に対する不敬を覚悟で言うなら帝都を上回るとさえ言える。
古い文献を紐解けばハイヴェルドの地は金鉱脈を求めて入植した人々が居を構えたことが始めにあり、それ以来幾度も土地から生まれる富を巡って争いが起こったと言われる血なまぐさい歴史を持つ。
しかしながら10年ほど前に帝国全土に被害が及んだ『黒魔術戦争』にあっては運よく大規模な戦火を免れつつ、武器と人員の輸出入に専念できたことでその経済は大いに潤っていた。
結果として大公領の中枢たる公都は他の都とは一線を画す繁栄を享受していると言って過言ではないだろう。
栄えている都であるならば、当然のように夜の賑わいも相応のものになる。
惜しげもない投資によって街の至る所には街灯が設置され、人々が行き交う石畳の道路を照らし出している。
表向き法王庁は民間の研究によって発達した『魔術』一般を認めない方針を打ち出しているが、街中に設置された魔道具技術による街灯が撤去を求められたという話は無い。
夜の暗がりを払うことで夜間の治安の維持に貢献し、人々が一日に活動できる時間を大いに延長する。
そういった明確な
そんな不夜城の呈を見せる繁華街、中央の大通りから一つ道を外れた路地へと入る。
表側の喧騒が壁一枚隔たったかのように感じる程度に歩いたところにその店はあった。
歓楽街の一等地に店を構えることができなかったがためにこのような場所を選んだのか……という推測は的を外している。
むしろ余計な人混み、人通りを避けるために敢えてそうしたのだというのが見て取れる。
店の構造は三階建て、かつ一階当たりの面積はかなり広く作られてあり、一見すればどこかの貴族の屋敷とも見紛うほどだ。
門構えの装飾は猥雑な華美さを廃した品の有る作りであることもその印象に拍車をかける。
玄関前に至っては馬車の乗り入れを想定した広い空間までも確保されており、さらには警備員までも目を光らせていた。
そして、今まさにそこへと乗りつけられる一台の馬車の姿があった。
街中を有料で指定の場所へと客を乗せて運ぶ運送サービスのものだった。
そこから出てきた客の男性は自前の馬車も運転手も持っているだけの身分がある人物だったが、極力身内にバレたくないがためにわざわざそのようなサービスを利用したのである。
何せ彼自身
まだ場慣れしていないことが伺える浮ついた雰囲気のまま、顔を隠すように鍔広の帽子を目深に被り、外套の襟をそそくさと正す。
この店は完全予約制、かつ一見お断りと敷居が高く、従業員にもその辺りの意識は徹底されている。
警備員は落ち着かない雰囲気の男性に一声かけて、彼が正式な本日の客であることを確認すると丁重に一礼して扉まで案内した。
ではよろしく頼む、と鷹揚に頷いた男性だが、舌は乾き気味で服の内は仄かに汗ばんでいた。
不安と緊張――――それと期待が彼の鼓動を俄かに逸らせる。
警備員が手を掛けた扉の上には表札のように店の名前が掲げられている。
店の名は『リーベ・エンゲル』。
有体に言って――――娼館だった。
******
高級娼館『リーベ・エンゲル』はその外観に恥じず、内装も相応の優美なものだった。
足先が沈むような柔らかな絨毯、木目の上に光沢も見えるような調度品。
最新式の魔道具を導入した照明は光量こそ控えめだが、それが雰囲気を演出するための意図的なものであることは明らかだった。
全体的に薄暗くはあるが、エントランスホールの吹き抜け構造は圧迫感や閉塞感とは無縁の広々とした作りになっていた。
男は受付で改めて来店を伝えるとラウンジの椅子に腰かけた。
ふぅ、と一息つくがそれが却って自身の緊張の度合いを自覚させる。
シャツの内側にじっとりと汗をかいている感触があり、心臓が肋骨の内で鈍い音を立てている。
手持ち無沙汰をやり過ごすように、目の前の机に置いてある店のパンフレットを手に取ってぱらぱらと捲る。
羊皮紙を束ねたパンフレットはそこそこの
しかしながら今夜男が指名した娼婦はこのパンフレットの内容を吟味して決定したわけではない。
前回来た時にたまたま横ですれ違っただけの相手である。
ただそれだけの事なのだがその時に見た印象的な姿がどうしても脳裏にこびりついてしまい、その悶々とした気持ちを晴らすためにこうして今日来店したのである。
「こんばんは、いらっしゃいませっ♪」
さて彼女の
夜半の娼館には似つかわしくない、
「すいません、お待たせしました。今夜はニーナをご指名頂いてありがとうございますっ」
男が振り向くとそこにいた少女は深々と腰を折って一礼した。
作法に則った所作のはずなのだが、彼女がすると幼い子が背伸びをしているような微笑ましさを感じさせる。
顔を上げると同時に長い髪がサラサラと涼風にそよぐように揺れて、青い果実のような甘酸っぱい香りがふわりと薫る。
上質な麻の糸を一本一本
整った顔立ちに載せた化粧は最小限のものだが、それがむしろ素朴な魅力を引き立たせている。
亜麻色の髪と相まって、立っているだけでそこに小さな陽だまりがあるように思わせる可憐な少女だった。
だが、最も人目を引くのは長く美しい髪でも笑顔でもなかった。
纏っている衣装は襟元に淡紅色のリボンを巻いたノースリーブのブラウスに、ふんわりと広がったフレアスカート。
飾り気はないが全体として清純な雰囲気を感じさせる服装で、彼女には良く似合っていると言えるだろう。それは良い。
それは良いのだが――――そこから覗く手足は人間のモノではなかった。
「あっ。やっぱり気になりますよね?ニーナを指名してくださった方は大体みんなそうですもの」
そう言われて男は自分の視線が随分と無遠慮にそこを眺めまわしていたことを悟った。
バツが悪い気分になってもごもごと謝るが。ニーナと名乗った少女は全く気を害した風も無かった。
むしろこちらに手を見せるように差し出して自慢げな笑顔さえ浮かべていた。
「なんでしたら触っていただいても大丈夫ですよ?――――あたしだって、すごくきれいだって思ってますから!」
ふふん、と元気な笑みを見せる少女の手は無機質なまでに真っ白だった。
その表現は比喩でもなんでもない。指を動かすごとに小さく鳴る
ニーナの両腕は義手だった。
肘のすぐ上に固定用と思われる黒いバンドが巻かれ、そこから指先までが義手になっている。
それだけではない。視線を下げればスカートから覗くほっそりとした白い脚も同じ色合いが見て取れる。
両脚も義足なのだ。
両手足が義肢の少女娼婦――――その事実を認識すると男の胸の内で、心臓が複雑な音を立てた。
「んー?そうですねっ、
固まったままの男を見てニーナは一度手を引っ込めることに決めたようだった。
そこで問われた彼は言葉に頷きを返す。
この娼館は一階にレストランが併設されており、あてがわれた娼婦と共に食事をすることも可能だ。
無論、ただの飲食スペースというだけでなくその後の
同じフロアには小規模ながらも
……とは言うものの流石に高級娼館なだけのことはあり食事自体の質も相応に高く、それを目当てに来る客も一定数いるというのは、一つの余談である。
そちらの方も多少の興味はあるが男が選んだのは、そちらは抜きにして部屋を取る方のみのサービスだった。
確認を取ったニーナはそれではどうぞ、と手招きして二階へと続く階段を指し示した。
先導するように少女が歩くと
少女の両脚の義足が立てる音が吹き抜けのラウンジに小さく木霊していた。
******
ラウンジよりも一段薄暗いように調整された部屋の明かりは、ぼんやりとした間接照明の他にも蝋燭を使っているのが見て取れた。
恐らくはアロマを兼ねたものなのだろう、蝋燭からは甘い香気が
「上着はそちらのハンガー、手荷物はそちらの籠があるのでお使いくださいね。それとお飲み物もご用意しますのでお待ちください」
そう言うとニーナは窓際の小さなテーブルに歩み寄って水差しからグラスに中身を注ぎ始めた。
言われた通りに荷物を片付けながら男は思わず器用なんだね、と声をかけていた。
「すごいでしょう?あたしの手、『先生』が作ってくれたんですっ。こうやってモノを握ったり掴めたり。足だって、ちゃんと立てるし歩けるんですよ!」
その義肢を作ってくれた『先生』という人の事が余程誇らしいのだろう。
ニーナはあどけない顔立ちに爛漫という言葉がそっくり当てはまるようなにこにこした笑みでそう語った。
文字通りに白磁の指先を握っては開いてを繰り返してその出来の素晴らしさをアピールする。
指と掌が擦れ合うと
「あぁ……でもその、まだ普通の人みたいに器用には動かないので……。ちょっとできるサービスは少ないかもしれないですけど、それだけはご了承ください」
そう言うと彼女はしゅん、と肩を落とした。
それは仕方のないことだし気にはしていない、と男は椅子に腰かけながらフォローした。
ニーナが手足に不具を抱えているのを承知で指名したのは男の方なので、その程度の事でどうこうを言うほど器は小さくないつもりだった。
むしろ、こうして接する分には普通に手足がある人間と左程変わりがないように見えることに驚嘆しているほどだった。
「そう言っていただけるとありがたいです。……でも、でもなんですよっ。服を脱がせてあげたりとかー、色っぽく服を脱いだりとかー、お手々で扱いてあげたりとかー、そういうサービスだってしてみたいじゃないですかっ!あたしだってちゃんとした娼婦なんですから、いつまでも現状に甘えてたくはないんですよっ!」
つまるところ彼女の指先は「握る」まではできても「摘まむ」まではうまくいかないのだ。
服の
そういう自身の現状に彼女は憤懣を抱き、それゆえに強い向上心を露にしているのだった。
なので今はナイフとフォークでご飯を食べる練習をしていますっ、と拳を握り締めて抱負を語る彼女に思わず男は苦笑を零しながら手を差し伸べた。
掌を少女の頭に載せてそっと撫でる。健気に努力を重ねようとするその姿が何ともいじらしくて可愛らしく、つい手々が出たのであった。
反射的にやってしまったことだったが、それはそれとしてニーナの頭の撫で心地は男にとっても実に快いものだった。
掌にしっくりと納まるような小さな頭骨の感触に、見ただけでもわかる艶やかな髪の手触り。
淡いベージュの髪はそれ自体が極上の反物のようで、するするとした指どおりの良さは思わずずっと触っていたくなるほどだった。
「……良いですよ、もっと触っていただいて。ニーナも、自分の髪は好きなんです。
――――だからもっと触って、撫でて?と少女が囁く。
男がはっと目を見開くと彼女はそっと細めた眼差しでこちらを見つめていた。
長く繊細な睫毛に縁取られた
甘えるように男の手に頭を擦り付ける仕草は子猫のようにあどけない。
しかしそれとは裏腹に男を見つめる表情は驚くほどに蠱惑的だった。
目線一つ、表情一つでこうも雰囲気がガラリと違う。
今目の前にいる少女はどれだけ子供らしく見えても、一人の夜の女なのだと改めて彼は思い知った。
「ん……っ♡」
髪を梳っていた指がそろりと降りて、形の良い耳を、ほっそりとした顎先へと繋がる柔らかな頬を撫でる。
少女が漏らした吐息は鼻にかかったようなどこか甘い響きのものだった。
明白に
桜色の乙女の唇が揺らめく蝋燭の明かりを反射して艶めいていた。
髪は絹のようで、肌は磁器のようだった。
ニーナに触れた場所はどこも極上の手触りで男を楽しませる。
服のボタン一つ満足に留められない指先である以上、体の
その上でこれだけの質を維持しているのは、ひとえに周りの人々の支えあってのものだろう。
彼女が大事にされているのは愛情故か――――はたまた
そんな言葉が頭を過ぎり、男の胸の内にざわめきを生んだ。
「うん……そこも、触って?」
じっとりと濡れたような、媚びるような響きの声が耳朶に染み入る。
囁きに導かれるままに彼が触れたのは少女の腕だった。
ノースリーブの服から覗くのは華奢という言葉を絵に描いたような小さな肩と二の腕……そしてその半ばに巻かれた固定用のバンドと、すぐ下にある純白の義手だった。
血の通った柔らかそうな乙女の柔肌と、血の通わない硬質な作り物の腕。
同じ「白磁の」という形容が似合う色合いでありながら、その有機と無機の
敢えて彼女が袖なしの衣装を着ているのは、それこそが自身の
両手足が作り物の少女という衝撃的な外観はそれだけ人の目を惹くし、人目を惹くということはそれだけ口端に上りやすく――――つまりは顧客の獲得に繋がるということなのだ。
男は恐る恐るという風にニーナの義手に触れた。
しっとりとした潤いと血の通った暖かみのある生の肌とは全く別の、つるりとした質感。
それでいて肌に吸い付くような感触は別種の手触りの良さで彼を魅了した。
陶磁器のように繊細な美しさを有していると同時に、実際に触れれば大理石のように
思考を反映してある程度の動作をする義肢型の魔道具は近年少数ながら流通している。
外見の美しさを重視した義肢も、腕の立つ職人に発注すれば作ることは可能だろう。
だが、機能と美観の両立を此処までの質で両立しているのはニーナのこれ以外には存在しないだろうと男は確信した。
……果たしてこれを作ったという『先生』とは何者なのだろうか?
「外してみてもいいんですよ?」
黙って思索に耽りながら、腕を撫で擦っている男にニーナが声をかけた。
惑わせるような、からかっているような、それでいて誘うような、そんな
「そこの、腕の留め具のところです。指を引っ掻けて、ちょっと押し上げるだけです……ほら」
彼女の声に誘われるままに彼は金具を指先でくい、と弾くように動かした。
すると、ぱちっ、と小さな音とともにバンドと、それによって固定されていた義手が落ちる。
ごとん、と大きな音を立てて机の上に転がったことに男は微かな動揺を覚えたがニーナは気にした素振りも無い。この程度は問題にならない程度には頑丈なのだ。
卓上に横たわった腕はぴくりとも動かない。使用者から切り離されたのだから当然の事と言える。
だが、先ほどまで
しかしそれ以上に男の眼を惹いたのは、ニーナ自身の腕の方だった。
男の手なら一掴みにできる程にか細い少女の上腕、その半ばから先が綺麗に
本来あるべきものがそこにはない、という異様な風景は見るものに猛烈な違和感とその分だけの強烈な印象を焼き付ける。
あるべきはずのものを幻視して、それでも実際にそこにはないという現実が彼の頭をぐらぐらと揺らす。
「これも『先生』がやってくれたんですよ。
ニーナはそう言って残った方の腕で、なにもない側の
彼女が語るようにそれは美しささえ感じる処置の痕だった。
何せ断面には縫合痕の一つさえ見当たらない。
だが切られた、と彼女は言った。それが生まれつきのものであったわけではないのは確かなようだった。
それは果たして
腕も脚も切り落とされて、そして今はこうして娼婦に身をやつしている。
それはどんな凄絶な過去だったのだろうか?
そしてどんな生き方をしていればその上であんなにも屈託なく笑えるのだろうか?
「ほら?こっちも外してみてください。さっきみたいにぱちんっ、て」
そんな彼の胸の内を知ってか知らずか彼女は艶然とした微笑みを浮かべながらもう片方の腕を差し出した。健気な捧げ物のように。
先ほどと同じように
これで袖なしの綺麗なブラウスから覗くのは、物を掴むのも握るのもできない、芋虫めいた短い腕だけだ。
その
「わぁ、これでニーナは何にもできなくなっちゃいましたっ。……もう、お客様には何されても、抵抗したりできないですね?」
言葉と裏腹に少女の言葉には悲壮さも何もない。むしろ挑発するような婀娜っぽささえ感じさせた。
小首を傾げてこちらへと注ぐ流し目は、少女というにはあまりにも色を帯びすぎていた。
「やだ怖い……。ニーナ、何されちゃうんでしょう?――――あと、脚の方も取られちゃったら、逃げることだってできなくなっちゃいます……」
あぁ、なるほど。これはそういう
最初に少女を一目見たときから悶々と鬱々と自身の内に降り積もっていたものに、静かに火が付いたように
彼女の
ふわりとした裾が愛らしいスカートから伸びるほっそりとした脚はしかし、しなやかな人のそれではなく陶器の光沢を見せる義足のそれだった。
「んぅ……恥ずかしい……♡」
男が先ほど腕に対してそうしたように純白の白い義肢を、その手触りを堪能するように撫で擦るとニーナは恥じ入るように顔を伏せた。
反射的に顔を覆おうとしているのだろうか、手のない腕が中空で蠢いている。
その様が可愛らしく、いじらしく――――哀れで、一層男を興奮させた。
今や遠慮なく彼の手はスカートの中にまで及んでいた。
可憐に広がる布地に隠された、秘されるべき乙女の生足も
視界が通らないスカートの下で彼は、少女の生身の脚と義体の脚との間を何度も掌で往復して双方の感触を味わった。
まだ未熟さの残る肉付きの甘い少女の太腿、そこにピタリと接合された球体関節を覗かせる膝と下腿……。
手と指で舐めしゃぶるようにそれを楽しみつくしてから彼は両腕に対してそうしたように、ぱちん、と留め具を外してしまった。
支えを失った両の脚を、男は貴婦人の靴を脱がすかのような丁寧な所作で取り外した。
血の通わない少女の脚をゆっくりと床の上に置いて、彼は改めて少女を見降ろした。
「…………っ♡」
品よく誂えられた宿の一室、椅子の上に腰かけている幼さを感じさせる少女。
手入れの行き届いた長い髪に滑らかな肌。あどけなさを感じさせる
清楚な雰囲気を醸し出す仕立ての良いブラウスとスカートが良く似合っていて、可憐であると言わざるを得ない。
だが、その少女からは両手足が失われているという一点が、その光景をなんとも冒涜的で倒錯的な物へと演出していた。
――――まるで人形だ、と男は思った。
そしてその言葉は思ったそのままに口からも放たれた。
少女はそんな男にまるで気分を害した風も見せず、それどころか甘い笑みを浮かべてこう言った。
「そう……ニーナはお人形さんなんです。動けないし、歩けない。自分からじゃ何もできないんです。――――だから、今夜はお客様の方からいっぱい、いっぱい、ニーナを可愛がってくださいね……?」
手がない。足がない。
だから抵抗できない。逆らえない。逃げられない。
両腕も両脚も切り落とされて、義手義足も外されてしまえば何もできない憐れな女の子。
可哀想で、だからこそ可愛らしい。
それが娼婦としてのニーナの
……そして、そんな彼女を敢えて指名してくるような人間は好奇心故の怖いもの見たさか――――或いは人並み以上の倒錯的な嗜虐欲を抱えた人間であることが多い。
(んー……この調子だといい感じでいけそうかな?よっし、次の指名に繋がるようにがんばろーっ)
男がぎらついた目で襟元のリボンに手を掛けるのを見て、ニーナはそんなことを考えていた。